広告:放浪息子(4)-BEAM-COMIX-志村貴子
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■春枝(5)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-07-13
 
2019年4月19日(金).
 
この日は満月であった。そして今井葉月(天月西湖)は、この夜、写真家の田中麗華さん、付き添いの原田友恵と一緒に三浦半島の三戸海岸に向かった。
 
実はプーケットで撮影した写真をもとに写真集の構成をしていた時、どうしても満月の下での葉月の写真が欲しいということになり、最初は再度一緒にプーケットに行けないかと、田中さん側から§§ミュージック側に照会があった。時間も予算も取れるには取れるのだが、葉月の体力問題があった。
 
アクアの代役としてひじょうに多忙な日々を送っているので、その中にタイ往復を入れると、葉月が倒れるのではないかとさすがのコスモス社長も心配したのである。それでプーケットに雰囲気が近い場所が国内にどこか無いか何人かに聞いてみたら、三戸海岸は割といいかもという声があった。それで田中さん自身が行ってみたら結構好きだと思ったので、ここで少し追加撮影することにした。
 
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ちなみに「三戸海岸」の読み方は「みとかいがん」である。同じ字を書く青森県の三戸町は「さんのへ」と読むが、向こうは内陸の町なので、海岸は無い。しかし音で「みとかいがん」と聞くと、多くの人が茨城県の水戸かと思う!
 

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§§ミュージックでは、海岸にゴミなどが落ちていたら興ざめなので、前の週の日曜日(4月13日)に50人ものボランティア(ファンクラブから募集した)を動員して、海岸清掃をしている。地元の自治会に照会したら、地元の人たちも出て一緒に清掃活動をしてくれた。多忙なので西湖もアクアも顔を出せなかったものの、参加者にはお弁当・飲み物の他、葉月とアクアの直筆サイン色紙を含むファングッズをプレゼントした。
 
撮影は自治会の人も協力してくれる中、日没直後から始めて夜10時で終了となった。葉月は高校生なので22時までしかお仕事をすることができない(建前)。
 
しかしこの日は晴れていたこともあり、満月の海岸できれいな写真を多数撮影することができた。
 
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「この時期にビキニの水着とか、寒くないですか?」
と地元の自治会長さんが訊いていたが
「お仕事なので、常夏の島にいるつもりになって頑張ります」
と葉月は答えていた。
 
「アイドルってのも大変だね!」
と自治会長さんは感心していた。
 

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千里3は、4月25日からバスケット日本代表の活動が始まり、まずはNTCで合宿がスタートした。
 
一方の青葉はこの日の夕方、日本代表の遠征でオーストラリアのケアンズに移動した。青葉と千里はNTCの選手村の同じ部屋(ツイン)を共用しているのだが、24日の夕方から25日の昼まで同室になり、松本花子の件と、郷愁プールの件で少し打ち合わせておいた。青葉は次の便でケアンズに渡っている。
 
NRT 4/25 20:25 (JQ26 787) 4/26 4:50 CNS (7'25")
 
日本とケアンズは時差1時間なので、ほとんど時差ボケが起きない。国内の夜行列車で移動したのと似た感覚である。特に今の時期はこちらが春、向こうが秋なので、季節の違いもあまり感じなかった。
 
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もっとも合宿は多人数でプールを共用するので、ペースが違う人とレーンを共用することもあり、結果的に思いっきり泳げないし、休憩時間も長くなる。
 
「なんか合宿じゃない時の方がたくさん泳げない?」
とジャネが不満そうに言っていたが、同感だった!
 
青葉は空いた時間に、頼まれている作曲をしたり、卒論の構想を練ったりしていた。卒論では、ネット時代のマスコミを含めたコミュニケーションについて論じる予定である。
 

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青葉が海外遠征に行ってすぐ、4月27日(土)、“10連休”初日にK大プールのプール開きが行われた。まだ“K大水泳部”は活動を始めていないのだが、実際には(部長の)青葉以外のメンバーはほぼ全員顔を見せていた。
 
一般の利用者が自由に泳いでいる中、女子副部長の杏梨は部員を集め、女子水着姿の奥村春貴を横に立たせて言った。
 
「奥村さんですが、昨シーズンまでは男子水泳部所属だったのですが、今シーズンから女子水泳部所属に変更になりましたので、お知らせします。彼女は完全に女の子ですから、女子のみなさん、仲良くしてやってくださいね」
 
「性転換手術したんですか?」
という質問がある。
 
「いやそれが何と言ったらよいやら」
と本人も悩んでいる。
 
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杏梨が説明する。
 
「性別を変更したいということで、過去1年間の男性ホルモン量の測定結果を添えて水泳連盟の方に申請したら、医学的な診断を受けてくれてと言われたので、K医大で精密検査を受けてもらったんです。すると、奥村さんは完全な女性であり、男性というの自体が誤りであるという判定になりました」
 
「ああ、男性器は無くて女性器があるということなんですね?」
 
「それだけではなく、卵巣・子宮もあり、妊娠も可能な完全な女性である、ということです。逆に前立腺・精嚢などの男性内性器も存在しないし骨盤の形も女性型なので、生まれた時から女性であったとしか考えられないそうです」
 
「え〜〜〜!?」
 
「じゃ生理あるんですか?」
「あります」
「だったら本当の女の子だ」
 
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「私もさっぱり訳が分からないのですが、蒸し返すメリットは無いので、その診断書を元に、性同一性障害を対象とする性別の“変更”ではなく、半陰陽を対象とする性別の“訂正”を裁判所に申請して認められました。それで私の性別は二男から二女に変更になりまして」
 
「うっそー!?」
 
「戸籍・住民票も変更になったので、それをもとに大学の学籍簿も水連の登録証も女子に変更になりました。運転免許証・年金手帳・健康保険証などの性別修正から、健康保険、様々な会員登録を変更するのが大変でした」
 
「女子から男子に修正される場合は女子時代の記録は全て抹消されるらしいんですが(*2)、男子から女子に修正される場合は、男子時代の記録はそのまま維持されるということなので、彼女は現時点で200mと400m自由形のインカレ標準記録を突破しています。青葉と百合花ちゃんと3人で400m自由形の表彰台独占ができる可能性も出てくるね」
と杏里。
 
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「すごーい!」
 
(*2)これは女子として出場していた時に実は男子であったと推定されるため。
 

「しかしやはり昨年秋の段階で男子部長は吉田さんにお願いして正解でしたね」
と“女子水着”を着けてきている裕夢が言う。
 
「あんたは性別変更の予定は?」
と百合花から訊かれている。
 
「ボクは別に女の子になるつもりはないけど」
「嘘つくと女性ホルモン飲ませちゃうぞ」
「まだ男は辞めたくないから勘弁して」
「もう手遅れだと思うけど。スカート穿くのも好きなくせに」
 
この2人の会話は取り敢えず黙殺しておいた。
 

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今年のゴールデンウィークは“10連休”という恐ろしいことになり、これにぶつけてアクアのツアーが組まれていた。
 
●アクアの“元号またぎ”ドームツアー
4月27日(土)土曜日 横浜エリーナ
4月28日(日)日曜日 北海ドーム
4月29日(月)昭和の日 (休)
4月30日(火)(国民の休日) 関西ドーム
5月 1日(水)新天皇即位  関東ドーム
5月 2日(木)(国民の休日) (休)
5月 3日(金)憲法記念日 大宮アリーナ
5月 4日(土)みどりの日 名古屋ドーム
5月 5日(日)こどもの日 (休)
5月 6日(月)振替休日 博多ドーム
 
平成最後の日は関西ドーム、令和最初の日は関東ドームということになる。
 
2日歌ったら1日休むというのは、山村マネージャーが絶対に譲らなかったので、10日間に3日の休養日ができた。休養日には取材も入れない。完全休養というのも山村が絶対に譲らなかった。
 
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もっとも実際に歌うのはM,F,Nの3人が交替なので、各々のアクアは1日歌ったらそのあと最低3日休むことができる。山村はアクアに「この機会に普段の過労を少しでも取れ」と言っておいた。
 
一方のリハーサル要員は西湖1人では倒れるのが確実なので、西湖と姫路スピカが1日交替で務めることにした。それで西湖も何とか体力的に持ち堪えることができた。スピカは
 
「こんな広い会場で熱唱すると、頭が一時的に空白になる」
などと言っていたが、西湖は
「あれは気持ちいいよね」
と言っていた。
 
「いや、意味が違うんだけど?」
「え?そう?」
 

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今年のゴールデンウィークが始まる4月26日(金)の深夜(27日0:10-1:00)、青葉が幸花・明恵と一緒に能登半島を駆け巡った《金沢ドイルの北陸霊界探訪》“能登半島不思議旅”が放送された。
 
この番組は本来毎週金曜深夜の『いしかわ・いこかな』の中のコーナーで、だいたい3ヶ月に1度放送しており、前回は3月下旬に慈眼芳子さんの追悼特集(過去の慈眼芳子さん出演シーンのピックアップに加えて霊能者数人の対談をした)を放送したので、次は本来は6月頃の放送になる予定だった。しかし、それではドイルをメインとする番組が空いてしまうことと、取材したのが3月なので放送までにあまり時間が経つと色々各訪問先の状況が変化して新たな編集が必要になる可能性もあったので、あまり時間の経たない時期に放送することにしたのである。
 
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3日掛かりで12ヶ所を取材して回ったものを50分(CMを除くと40分程度)にまとめているので、各々の場所での放送は短時間である。ゴジラ岩・倒さ杉などは丸ごとカットされてしまった!
 
今回の放送の中で、反響が大きかったのは、モーゼの墓、ワープした駅、蛙岩、天狗岩、日本の中心、“のトロ”(人力トロッコ列車)、そして能登半島地震後の様子が公開されたヤセの断崖などであった。ヤセの断崖に関しては「こんなに小さくなってしまったなんて」という声が、崩落前の様子を知っている人たちから悲鳴にも似た感想が多く寄せられた。関野鼻が長らく立ち入れなくなっていたこともあり、地震後の様子を知らない人も多かったようである。
 

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「ここ、番組では前夜の地震で崩れたのかもと言っているけど、その前から崩れていたんだよね」
 
と録画しておいたもらった番組を翌日見た岬は、射水市内の病院のベッドの上で言った。
 
「ああ、合唱部のレクリエーション活動で行ったんだっけ?」
と連休に入ったので、病院に来ている姉の梓が言った。この録画データも梓が昨夜録画して持ち込んだものである。
 
「うん。合唱のイベントが3月初めに珠洲市の“ラポルトすず”であったんだけど、その後、面白いものがあるという話で、連れて行ってもらったんだよね。あの時期はさすがに雪の中だった。だからあの岩の破片は雪に埋もれていたんだろうと思うけど、気付かなかった。それで先生が『ありゃ。無くなっている』と言ってた。それで饅頭岩だけ見て帰ってきた。もっとも番組でも言っていたように、みんな“おっぱい岩”と呼ぶべきと言ってたけどね」
 
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「なんかそこの穴から噴出しているガスが男性に悪影響が出ると言っていたね」
「うん。ドイルさん、男性機能が低下するって言ってたね」
「女性ホルモン類似物質かなあ」
「むしろ霊的な作用のあるものという気がしたよ、ドイルさんの言い方」
「それであんた男の子廃業したんだったりして」
「だったら、あそこに行ったお陰で女の子になれたのかもね」
「ありそー。でもその場に他に男の子は居なかったの?」
 
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