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■春葉(13)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-06-11
 
優子と奏音は1月20日(日)夕方の新幹線で、朋子と一緒に高岡に戻った。桃香と千里は早月・由美という2人の子供を育てる生活に入った。桃香はまだお乳が出るので、由美にもお乳をあげる。本当は早月はおっぱいはほぼ卒業に近い状態ではあったのだが、由美がおっぱいを飲んでいると自分も欲しくなるようで、左右のおっぱいに1人ずつ吸い付いているという状況もよく発生した。たくさん吸われるので「血が足りない!」と桃香が言う。
 
それで千里はレバーとかホウレンソウとか、鉄分が取れそうなものを使用した料理を作ってあげた。また水分をたっぷり取れるように、プーアール茶を沸かしてから冷蔵庫で冷やしておいた。
 
でも千里は自分でも由美におっぱいをあげていた。
 
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「千里、なぜ乳が出る?」
「分かんなーい。でもたくさん出るよ」
 
「青葉のしわざかな?淳もおっぱい出るようにしてもらったようだし」
 
淳のは青葉の“余計な親切”なのだが、千里の場合は去年の8月に緩菜を産んだばかりだからである。桃香の手前理由は知らないことにしておいたが、実際には千里1は自分が緩菜を産んだことは認識しており、だいたい3〜4時間に1回くらい搾乳して、冷蔵庫に入れておく(仙台にいる間は“ヤマゴ”の指示に従い、所定の保冷バッグの中に入れておいた)と、“誰かが”緩菜の所に運んでくれているようであった。
 
時々、南野鈴子や白鳥清羅が緩菜と会わせてくれるので早月と一緒にバスケの練習に連れていくこともある。早月は千里を父とする子供、緩菜は千里を母とする子供なので、ふたりは父も母も異なるのに姉妹である。後に丸山アイはこの2人、あるいは早月と京平のことを、ツイスト姉妹・ツイスト兄妹と呼んだ。
 
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なお緩菜を連れている時に美緒に遭遇したのは千里3である。千葉の玉依姫神社で販売するダルマの仕入れに行っていて遭遇したのである。
 
ちなみに美映は時々緩菜がベビーベットから居なくなっているものの、数時間すると戻っているので、気にしないことにしている!美映は細かいことは何も考えない人である。また美映は自分では搾乳した記憶が全くないのにいつのまにか冷蔵庫に搾乳ボトルが入っているのも全然気にせず、解凍して緩菜に飲ませている。
 

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《じゃくちゃん》は来月の慰安旅行で大浴場に入らなければならないという件を長年の友人である《せいちゃん》に電話して相談してみた。
 
「大浴場?入ればいいんじゃない?広々として気持ちいいじゃん」
「だけど、ボク女子社員として勤めているから、女湯に入らなければいけないみたいで」
「入ればいいじゃん」
「裸になったら男とバレるよ!」
 
「しょうがないなあ。あまり気が進まないけど、俺の友だちの勾美に相談するか?住所と電話番号教えるよ」
というのでメモする。
 
「こいつに会ったらどうにかなるの?」
「女湯に入っても問題無いように工作してくれるよ」
「工作って?」
 
「股間にぶらぶらするものが付いてたら男とバレるから、取ってしまえばいい。こいつそういうのうまいんだよ。取った跡も女に見えるように加工してくれるよ」
 
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「取るって、それ後で元に戻せるよね?」
 
「それは無理。取っちゃったら、このあとはメスの龍として生きていけばいい。女子社員を装うのにも便利だぞ」
 
「嫌だ!それだけは絶対嫌だ!」
 
「お前美形だから、メスになったらもてるのに」
 

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青葉は1月20日は主として§§ミュージックで様々な打合せをした。深川アリーナで少し泳いだ後と夕方仙台に行き、和実の体調監視に入る。10時まではおしゃべりしていて、その後自分の眷属に交替で起きていてもらい、夜通し和実のそばで、付き添い用ベッドで寝る。21日のお昼頃、千里1が由美も連れて来てくれたので交替して帰ることにする。
 
仙台駅までタクシーに乗ろうかなと思いながら玄関を出たら千里3がいる!
 
千里3と判断したのはアテンザのそばに立って誰かとピンクのスマホで話していたからである。千里2は赤いガラケーT008を使っているし、車もたぶんオーリスだろう。
 
「3番さんも来てたの?」
と青葉は声を掛けた。
 
「青葉と交替しようと旭川からここまで走って来たのに、先に1番が入っちゃったというから」
などと千里3は言っている。
 
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「旭川から?じゃ苫小牧から八戸へのフェリー?」
「海の上を走って来たけど」
 
千里がアテンザで海上を走っているシーンを連想する。千里姉ならありえるかも知れんという気がした。
 
「まあいいや。でもそれって誰が調整してるのさ?」
「よく分からないけど、調整していた人物も慌てたみたい。多分1番は自分が行かないと青葉がずっと詰めていることになるだろうからと思って、勝手に来たんじゃないかなあ」
 
「じゃ1番さんが帰るまで待機?」
 
「そうするとまたサイクルがずれちゃうから明日の夕方、練習が終わってから来る。1番の後は2番にやってもらうことになると思う」
 

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それで「まあ乗りなよ」と言われて、アテンザに同乗する。
 
「どこまで送る?高岡まで送ろうか?」
「仙台駅まででいいよ!」
「車で走れば夕方までには高岡に着くよ」
「それ絶対スピード違反だ」
 
仙台から磐越道・北陸道経由で高岡までは530kmくらいなので、時速100kmでノンストップなら辿り着きそうだが、北陸道は80km/h区間がかなりある。トイレ休憩に食事もしていれば交替で運転しても到着は夜10時以降だろう。
 
そんなことを言いながら、仙台駅に向かっていたのだが、信号待ちで停まったところで突然周囲の景色が変わった。
 
「何?何?」
 
車はどこかの駐車場に駐まっている。近くに特徴的な橋が見えている。
 

 
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「内灘大橋?」
と千里が言う。
 
「どうなってんの?」
「分からない」
 
千里が眷属さんと話をするようなそぶりを見せたが、眷属さんたちにも分からないようだ。青葉の後ろで《姫様》も首を傾げている。
 

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エンジンを停める。ふたりは車から降りた。
 
「ここは内灘サンセットパークだ」
「うん。誰かの力でいきなり飛ばされたみたいね」
 
時計を見ると1月21日(月)12:29なので時間は飛んでいないようである。
 
「さあ、あんたちたちも行くよ」
と声が掛かった。
 
「慈眼芳子さん!?」
 
それは入院していたはずの慈眼芳子さんである。白い巡礼服を着ている。ライトブルーの地に花柄(牡丹か?)の和服を着た、お孫さんくらいの少女を伴っているが、こちらを見てドキッとしたような顔をし、はにかむように顔を伏せる。その仕草が青葉にある人物を思い起こさせた。
 
「あ、もしかして夏野君?」
 
「その節はお世話になりました」
と言っている。H高校七不思議の取材をした時、逆さ杉に願を掛けるというのの撮影に協力してくれた夏野明宏君だったのである。
 
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でも少女にしか見えない!
 
それに女の子の声で話してるし!?
 
彼の声はアルトボイスなのだが、話し方が女の子が話しているように聞こえる。テレビの取材で会った時はテノールボイスで、男の子の話し方だった(と思う)のに。たぶん切り替えて使い分けられるのだろう。
 
それにこの子、よく見ると、喉仏が無いみたいに見えるんですけど!?
 

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「あんたこの子を知ってるの?」
と芳子さん。
 
「先日『北陸霊界探訪』で学校の七不思議を取材した時、再現ドラマの撮影に協力して頂いたんですよ。慈眼さんのお身内さんですか?」
 
「あんた、そんなことしてたんだ?」
さ明宏に訊いてから、青葉に
 
「私の姉の曾孫だよ」
と言った。
 
「そうだったんですか!」
 
その瞬間、青葉は思い至った。懐中電灯を持って校内を巡回していた時、寄ってきた雑霊がこの子にはじき飛ばされていた。あれは杉の神霊が彼を守っているのかと思ったが、ひょっとするとこの子自身の力で弾いていたのかも。
 
でもこの子、見た感じはあまり霊感無いように見えるのに!?
 
無自覚だけど強い守護に守られているタイプだろうか?
 
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「あの番組深夜だから、私は生で見るのは禁止なのよね。それでこの子に録画頼んでいたのに、録画失敗したと言っていたけど」
 
「ごめんなさい。自分が出ているから恥ずかしいので失敗したことにしてた。後で見せるね」
 
「うん。逝く前にあんたの活躍を見ておきたい気がするね」
と芳子さんは言っている。
 
「でも今日は何をするんですか?」
と千里が尋ねる。芳子は黙って杖を2本差し出したので、青葉と千里が1本ずつ取った。
 

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途端に周囲の景色が変わった。真っ暗である。町の様子も違う。千里も青葉も古風な和服を着ていた。小袖だろうか?青葉はライトグリーンの地に桜の花、千里はライトイエローの地に蝶である。
 
「ここどこ?」
 
「東京。あまり時間がないからすぐ出発するよ」
「何をするんですか?」
 
芳子が黙って空を指さす。
 
「月食!?」
「今日の12時半から16時くらいまでの間に月食がある。既に部分食が始まったね」
 
「でもそれ地球の裏側で起きるのでは?」
「ここは亜空間ベクトルAXYだからね」
「は?東京じゃなかったんですか?」
「東京のベクトルAXYだね」
 
しかし青葉はふと気付いた。
 
「ここ、夢の中で来たことある」
と青葉は言った。
 
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上空に2本の円弧状の白い雲があり、月の光に照らされているのである。もっとも夢で見た景色ではその円弧状のものは、電線のように見えた。
 
「私もここに来たことある」
と千里も言った。
 
「あんたが昔、封印したんだろ?」
と慈眼芳子は千里に言った。
 
「小学生の頃です。2度もやりました」
 
「その時、あんたは壊れかけていた封印のメンテをした。でもそれは元々が部分月食の時にした封印だから不完全だった。今日は皆既月食だから、完全な封印ができる。これをやれば300年くらいは大丈夫だし、あちこちで壊れかけている様々な封印がまとめて処理できる」
 
と慈眼芳子は言った。
 
「ひょっとして先日奥多摩でした封印とかも?」
 
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「あれもこの基本的な封印が弛んでいたから個別の封印まで弱くなっていた。この封印をすればあの手のものも抑えられる」
 

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「それでどうやって封印するんですか?」
 
「村山さん、あんたは2度もやってるから、巡る道が分かるよね?」
 
「たぶん。道案内できると思います」
 
それで千里が先導して、青葉・慈眼芳子・夏野明宏の4人で月食の終わる15:51まで掛けて多数の神社を巡り歩くことになったのである。
 
最初出発点近くにある神社に参る。ここには徳雲明神と書かれた提灯が掲げられていた。小学生の頃ここに来た時は1度目は「明神」の上の文字が読めず2度目の時は1文字目の「徳」だけ読めて2文字目は読めなかった。たぶん自分のレベルがあがる度に少しずつ読めるようになるのだろうと千里は思った。
 
千里は不思議に思っていた。自分が最初にこの封印の反閇(へんばい)をした時は巡った神社は12個だった。2度目に巡った時は27個だった。しかし2度目に千里を先導した《きーちゃん》は、千里は53個の神社を巡ったはずと言ったのである。
 
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そして今回千里は自分でも記憶のないルートを案内して青葉や慈眼芳子を連れまわることができた。
 
2つ目は「海雲明神」だった。それで千里はたぶん3つ目は「善住明神」かなと思ったらその通りだった。
 
千里が神社と神社の間で、勝手に人の家の中を通過したり、空き地の土管をくぐったり、竹林の中を突き抜けたりするので、青葉も夏野君も驚いていたようだった。5つ目の「解脱明神」の先は広い川を渡らなければならない。
 
「みんな水着に着替えて。泳いで渡るよ」
と言って千里は3人に水着を渡す。
 
「私は大丈夫だけど慈眼さん泳げますか?」
「私は若い頃国体に出たこともあるよ」
「凄い!」
 
青葉は夏野君が女子水着を着ているのを見てびっくりした。
 
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「あれ?女子水着なの?」
と青葉が訊くと
「これを渡されたから」
と夏野君。
 
「ちんちん無いんだっけ?」
 
彼のお股の所には何も突起物が無いように見える。
 
「深く追及しないでくださーい」
 
「この封印の旅は女子にしかできない。確かに女子であることを示すために水着で川を渡る行程が入っている」
などと千里は言っている。
 
「この子は小さい頃から、女の子みたいな子だったよ」
と慈眼さん。
 
「もしかして女の子になりたいの?」
と青葉が夏野君に尋ねると
 
「実は逆さ杉にお願いしたのはそれなんです」
と言って、はにかむようにしている。
 
それで願掛けの内容を訊いた時も真っ赤になって恥ずかしがっていたのか。
 
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「その内きっとなれるよ」
と千里が笑顔で言っている。
 
しかしこの参加者4人の内3人がMTFか!?
 

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