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■春葉(9)

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(C) Eriki Kawaguchi 2019-06-08
 
青葉はこの後、年末年始の間は、東京で過ごした。
 
12月31日には福井県小浜市でローズ+リリーのカウントダウンライブが行われ、前座で§§ミュージックの多数の歌手が出場した。また§§プロの桜野みちるが12月31日の関東ドームでラストコンサートを開いて引退したので、§§ミュージックの関係者の多くがそちらにも出席している。
 
青葉はこのイベントにはどちらにも関わっていなかったのだが、ケイ(冬子)に頼まれて、12月30日から1月3日までマンションのお留守番をすることになった。
 
(本当はカウントダウン自体への出演を打診されていたのだが、直前まで青葉自身のスケジュールが不確定だった)
 
それで青葉はこの期間、恵比寿のマンションに泊まり込み、特に31日夜は彪志も泊まりに来て、ふたりで一緒に新年を迎えた。
 
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1月2日には今年の震災復興支援イベントも発表になったのだが、ローズ+リリーが出演するというので、ネットでは結構な騒ぎになったようである。夜遅く戻ってきた冬子に尋ねたら、政子の赤ちゃんは2月3日に生まれる、と“フランスにいる千里”(ということは多分千里2)が予言したらしい。2月3日に出産したら3月10日の歌唱は可能だというので予定を入れてしまったという。まあ千里姉がそう言うのであれば、その日程で出てくるのだろう。
 

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そして1月3日にはケイのマンションでクロスロードの集まりをしたが、集まったのはこういうメンツであった。
 
冬子と政子、青葉、淳、小夜子と子供たち(あきらは自宅療養中)、あきらの妹・紘さん。若葉と子供たち、紙屋美緒・清紀夫妻と子供。
 
淳はこの所頻繁に東京と仙台を往復しているのだが、この日はたまたま東京に戻っていた。紙屋夫妻は千里や桃香の大学の時の同級生である。2012年1月23-24日に伊豆でおこなったクロスロードの集まりに出席していたらしいが、青葉はこの時は参加していない。
 
ちなみに紙屋清紀さんは女装しているがMTFではなく純粋なゲイ(本人談)らしい。本人は女装の趣味も無いと言っていたが、スカートを穿いて、バストもあるように装い、お化粧もしていて、それが全く不自然さが無い。これで女装趣味は無いというのは信じがたい、と青葉は思った。
 
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彼は実際にはバストなど無いものの、男湯に入ろうとすると追い出されるので仕方なく女湯に入ることもある、などと言っていた。彼はゲイで女性には全く興味が無いので、実は男湯より女湯の方が落ち着いて入れるらしい。女湯にはこれまで5回ほど入ったことがあるものの、騒がれたことは1度も無いと言っていた。実際彼を見たら、男っぽさが全く無いので、お股を見ない限り男とはバレないかもという気もした。でもおっぱいはどうしてるんだ??
 
青葉は、丸山アイがこの人のことを知ったら、CBF(女湯に入る会)に勧誘しそう、などと思った。
 

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夕方、桃香から冬子に電話があった。冬子はスピーカーモードで受けたので会話が全員に聞こえる。
 
「千里、そちらに居ない?本人の携帯に掛けても全然つながらなくて」
 
「ここには居ないよ。繋がらないって、またバッテリー切れじゃない?あの子の携帯よくバッテリー切れているみたいだよ」
 
「そうなんだよねぇ。困ったもので。でもそこに居ないなら会社かなあ」
「会社?千里、どこか会社に勤めてるの?」
「うん。10月中旬からJソフトに復職したんだよ」
 
へ?と青葉は驚いた。
 
そんな話聞いてないし、だいたい千里1はバスケの練習をしてリハビリをしているほか、ここ2ヶ月ほどは頻繁に仙台に行って、和実の身体のメンテをしているはずだ。千里2も3も多忙なので、結果的には千里1が付いている時間が最も長い。その中で大量に楽曲の編曲作業もしている(まだ作曲には復帰していない)から、会社などに出る時間など無いはずである。
 
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「嘘!?全然知らなかった」
と冬子も言っている。
 
「じゃちょっと会社に掛けてみる」
と言って桃香は電話を切った。
 

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実際にはその後桃香はJソフトに電話して、“千里”と話し、桃香と一緒に信次のムラーノを使って仙台に移動することになった。
 
ムラーノの後部座席にベビーシートを2つセットし、片方に早月を乗せ、Jソフト近くの二子玉川駅前まで行き、千里を拾った。
 
実際には電話を受けたのは千里の振りをしてJソフトに勤めている《じゃくちゃん》であるが、彼からの連絡で《きーちゃん》は都内のカラオケ屋さんで作曲作業していた千里1を二子玉川駅前に転送し、桃香の車に乗せた。
 
正確には桃香が運転席に居るのを見て千里1は
「私が運転する!」
と宣言し、桃香は助手席に移動した。早月はここまでの数kmの桃香の運転で恐怖を味わっていたようで、千里の顔を見て落ち着いたような表情を見せた。
 
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なお、千里1は自分がJソフトに勤めていることになっていることは全く知らない!
 
また、ミラではなくムラーノを使ったのはミラではベビーシートを2つ取り付けることが困難だからである。また桃香は千里がアテンザやオーリスを所有していることを知らない。(アテンザにもオーリスにもブラドにも乗ったことはある)
 

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さて、ケイのマンションで、千里が代理母さんに子供を産んでもらっているという話に驚いたのが紙屋夫妻であった。
 
「だって千里、この夏に自分で女の子を産んだばかりなのに」
と言っている。実際、ふたりは千里がその子(緩菜)を連れていて授乳しているところなども見ているらしい。
 
そこから更に、千里と川島さんの結婚は偽装結婚だったのではという話が出る。その証拠に信次と千里が双方署名捺印した離婚届け(2019.2.16付)が存在したと聞き、そんな話は初耳だったので青葉は驚愕する。
 
「そもそも2人は一度も同居してないんだよ」
と若葉は言う。
 
「結婚式をあげた後新婚旅行に行ったけど、新婚旅行先のハワイでは各々別行動していて千里は主としてハイキング、信次さんは主としてショッピングしていたらしい。同じ部屋に泊まっているけどツインの部屋だったらしいから、たぶん別々のベッドで寝ていたんじゃないかなあ」
 
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それは急遽上島作品の代替曲が大量に必要になって、千里1も動員されたせいではないかと青葉は想像した。ハイキングしてネタを探すとともに自分をアルファ状態に置いていたのだろう。かなり大量の楽曲を頼まれていたから、たぶん信次さんとHなことをする時間も無く、必死で楽曲を書いていたのではという気がした。
 
「新婚旅行から戻っても信次さんは千葉市内の実家に居て、千里は同じ千葉市内だけど別のマンションに住んでいた」
 
それは千里2が作曲作業用に調達してあげたマンスリーマンションである。
 
「5月に信次さんは名古屋に転勤になって、千里も付いていったけど、信次さんは名駅近くのアパート、千里は熱田区のマンションに住んでいて、一緒には暮らしていないし、信次さんは向こうで知り合った女性と頻繁にデートしていたらしい」
と若葉。
 
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嘘!?
 
その話も青葉は初耳だったので驚く。信次さんに恋人が居た!??
 
(青葉が驚いている様子なのを冬子は不思議に思って見ていた。この付近の話が葬儀の場で出た時、そこに青葉も居たのにと思ったのである。しかし実際には青葉は日本代表の合宿でスペインに移動中で、すーちゃんが青葉の代理をしていた)
 

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「その恋人だった人ってどうしてるの?」
と美緒が尋ねる。
 
「信次さんが亡くなったショックで会社辞めて関東方面のどこかに引っ越したらしいよ。妊娠していたのではという噂もある」
と若葉。
 
妊娠〜〜〜!? マジ!?
 
信次さんの遺伝子を受け継ぐ子供は、今まさに出産されようとしている子供だけと思ったのに、それが事実ならもうひとりその恋人という人のお腹の中にいる可能性もある訳だ。
 
中絶あるいは流産していない場合であるが。
 
青葉はあまりにも衝撃的な話ばかりで、腕を組んで悩んだ。
 
しかし青葉は少し霊視してみて、その子はその女性の胎内に存在していることを確信した。男の子っぽい気がする。その女性の居場所は若葉が言っていたようにおそらく関東のどこかと思われたが、この時点では正確な場所は分からなかった。
 
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青葉はこの時点で川島信次の子供が既に2人(優子との娘・奏音、千里との娘・緩菜)存在していることを想像だにしていなかった。ずっと後に緩菜の父が実は信次だったことを知った千里1は緩菜を泣いて抱きしめたのである。
 
千里1は実際問題としてけっこう信次のことが好きだった。信次と千里が同居していないというのは完全な若葉の誤解で、ふたりは平日は同衾していたし、千里が男役・信次が女役という形でちゃんとセックスもしていた。信次はゲイの女役なのだが、優子と2回、波留と1回、千里と2回、信次が男役になるセックスをしていて、その数少ない男役をした時に各々の女性を妊娠させている。極めて“高打率”の男である。
 

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千里1が桃香・早月と一緒に仙台に向かっている時、千里2は同じ仙台で和実が入院している病院に詰めていた。青葉は一応千里2にもその旨メールしておいたが、千里2は「私は和実のそばを離れられないし、そちらは青葉がリモートで頼む」と言っていた。それで青葉は夜通し冬子たちと話しながら、代理母さんが出産のため入院した病院に小紫を向かわせ、彼女を通して様子をチェックしていた。小紫は和実のそばに付いていたのだが、千里2がいるなら大丈夫だろうという所である。サポートのため笹竹を新幹線で仙台に向かわせている。
 
夜12時頃、桃香から青葉に病院に到着したという連絡が入る。青葉は小紫を通じて向こうの様子を見ているのだが、大きな問題は無いようである。安産の雰囲気だが気は緩めない。
 
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この日、冬子のマンションで徹夜になったのは、こういうメンツである。
 
冬子、青葉、紙屋美緒、ゴールデンシックスの花野子・梨乃、ローズ+リリーのスタッフの七星・詩津紅・妃美貴、KARIONの美空・小風、XANFUSの光帆・音羽
 
どさくさ紛れに光帆からXANFUSに楽曲をもらえない?と頼まれ、ついOKしてしまったので、松本花子に作らせようなどと青葉は思っている。
 
さすがに明け方は眠くなってうとうととしていたのだが(冬子が毛布を掛けてくれていた)、8時頃千里から電話が掛かってきて、サポートを頼まれたので妊婦さんのヒーリングをした。そして8:58に赤ちゃんは生まれた。女の子で、生前の信次との話し合いで、名前は由美と決まっているということであった。
 
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千里1はそのまましばらく仙台にいるということだったので、結果的にはその間は千里1が和実のメンテも主としてすることになりそうである
 

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1月6日の午前中、部分日食があった。青葉は和実のメンテと、千里や由美たちの様子見で仙台に来ていたのだが、しっかりこの時間帯は病院の屋上で桃香と一緒に観測した。桃香は子供のようにはしゃいでいた。
 
青葉は日食を見ながら『そうか。“食の季節”(*4)が来ているんだな』と思った。
 
スマホで確認すると、半月後の1月21日には皆既月食があることが分かる。但し起きる時刻はこのようになっている(時刻は日本時間)。
 
12:33 部分食開始
13:41 皆既食開始
14:43 皆既食終了
15:51 部分食終了
 
日本では昼間なので見ることはできない!月食が起きている時間、月は地球の反対側にあるのである。
 
残念!と青葉は思った。
 

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(*4)「食の季節(eclipse season)」とは、太陽が黄道と白道の交点(昇交点・降交点:あわせて昇降点という。別名ドラゴンヘッド・ドラゴンテール)の近く(正確には昇降点から15°21′の範囲)にある時期で年に2回程度発生する。太陽と月の黄緯が近いので、この時期の新月(朔)は日食になる。
 
食の季節は約31日間で、1朔望月(29.2-29.8日)より長い。そのためこの間に必ず新月と満月はあるので、日食と月食が1回ずつ起きることが多いが、この期間に新月が2回来た時は2回日食が発生する。なお日食が起きる条件は太陽が昇降点から15°21′の範囲にあることだが、月食はもっと厳しく9°45′-11°40′以下の範囲でなければならない。その期間は最大でも23日である。朔望月より短いので、食の季節の間に月食が2回起きることはなく、1度も起きないこともある。
 
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食の季節は約173日ごとに来るので、食の季節が年に3回来ることもある。このため日食は年に最低2回・最大5回発生するが、月食は最大でも3回であり、1度も発生しない年もある。たとえば2002年、2020年は月食が1度も発生しない。月食が3回の年としては最近では1982年。次は2028年である。1982年は皆既月食が3回という月食の当たり年だった。
 
(日食が5回起きた年として最も最近なのは1935年である。次は2206年である)
 
このような事情があるので月食の発生頻度は実は日食の約半分程度である。ただし月食は発生すればその時間帯に月が見える地球上の全ての場所で観測できるが日食が見えるのはごく狭い地域である。そのため一般的な感覚では月食の方が回数が多いような気がしてしまう。
 
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