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■春葉(12)

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千里(千里1)は優子には告げないまま、火曜日の朝から新幹線で千葉に出て、川島家で康子に会った。
 
「千里ちゃん!由美ちゃんの方はどう?」
 
「出生届は昨日提出しましたが、いったん保留にされました。明日病院まで事情聴取に来るということだったので今日こちらに来たんですよ。場合によっては出生届けの受理自体について裁判所の審判をやります」
 
「なんか大変そう」
 
「でもこの出生届は受理せざるを得ないんですよ。現実に赤ちゃんがいるのに放置する訳にはいきませんからね。その後で養子縁組の審判になると思います。まあ1年以内には決着がつくと思うんですけどね」
 
「ほんとに大変そうね!」
 

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「それでお母さん、ここだけの話なんですけど」
「何だろう?」
 
「優子さんですけど、今毎月10万養育費をもらっているという話でしたけど、多分10万の養育費では足りないんじゃないかと思うんですよ」
「ああ、やはり厳しい?」
 
「桃香から聞いたのですが、優子さんのお父さんが4年前に保証かぶりして多額の債務を抱えておられるんですよ」
「あらぁ」
 
「少しずつ返していっておられるようなんですけど、どうもまだかなり残債があるみたいで。その中で優子さん親子を同居させているのは、結構な負担になっているんじゃないかと思うんですよね」
「うん」
 
「それで単刀直入に。私が資金提供しますから、優子さんへの送金額を倍にしてあげてもらえませんか?」
「でもあんたお金は大丈夫?あんたも由美を育てていかないといけないのに」
「私はお金の使い道がなくて困ってますから大丈夫ですよ」
 
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「困ってるの!?じゃ、私が10万、千里ちゃんが10万送る?」
 
「いえ。私が送金するのはさすがに優子さん不愉快だと思うので、あくまでお母さんが送金しているということにしておいてください。資金は毎月私が信次さんの口座に入金しておきますので」
 
「なるほど。分かった。だったら私は信次の通帳と判子と持って銀行に行って送金額の増額をすればいいかな?」
 
「それだと委任状がどうのと面倒な話になりますが、たぶんオンラインから手続きができるんじゃないでしょうか?」
 
「あ、そうかも!じゃ千里ちゃんその手続きしておいてくれない?」
「私は機械音痴、ソフト音痴なので無理です」
 
「あんたシステムエンジニアじゃないんだっけ?」
「こういうのは全然ダメで。関係無い人の所にお金を振り込んだ前科が数回ありますし」
「危ない人ね!」
 
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それで結局この作業は太一さんにしてもらうことにした。
 
また増額について優子に電話して話したら、凄く助かるけど大丈夫ですか?と心配していた。
 
「信次の保険金が出ているのよ。そのまま渡してもいいけど、一気に渡すと贈与税取られるし、それにまとめて渡すより毎月送金のほうがいいかなという気もして」
 
「絶対そっちがいいです!私まとめてもらったら多分半年で使い切ります!」
と優子は言っていた。
 

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信次が他の女性に子供を産ませていたという話を聞いても太一は驚かなかった。
 
「あんた知ってたの?」
と康子から訊かれる。
 
「千里さんに悪いから言ってなかったけど、子供を作ったみたいな話だけは聞いていた。でもどこの誰かまでは聞いてなかった。養育費とかどうなっているのか心配してたんだけど、自動送金が続いていたのならよかった」
 
と太一は言った。この件は亜矢芽にも伝えておいた方がいいだろうということで、太一から連絡しておくということだった。
 
それでID/PASSはたぶん信次のパソコンに入っているのではというので起動する。起動パスワードを要求されるが太一は
「きっと3286」
と言って入力するとちゃんと起動された。
 
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「何か意味のある数字ですか?」
「あいつの生まれた時の体重」
「へー!」
 
それで中を見てみると、My Document内に“P尻”というフォルダがある。
 
「尻はassでpassの意味でしょ」
と太一は言って開く。多数のファイルが並んでいる。縮小アイコンを見ていると可愛い男の子!の写真っぽい物が多数入っている。しかし、太一はその中にqbtt.jpgというプレビューが表示されないファイルがあるのに気付いた。
 
「“pass”の1文字ずらしですね」
 
と言ってダブルクリックしてみるが「このビットマップファイルは無効であるか現在サポートされていない形式です」と表示される。しかし太一は
 
「やはりね」
と言って、メモ帳で開いてみた。
 
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アルファベットや数字が並んでいるが、少なくとも読めるようなものではない。
 
太一は少し考えてからスタートメニューからプログラムの一覧を見た。彼は「使えそうなのが見当たらないなあ」とつぶやくと、ネットからsakura editorをダウンロードしてきてインストールした上で、このファイルを開いた。結局UTF-7などというあまり使われない文字コードで書かれたテキストファイルだった。そして多数の銀行・証券会社のid/passが入っていた。
 
「よく開けましたね!」
と千里は感心しているが
 
「このくらいは初歩的なギミックだよ」
と太一は言う。
 
「今時、パスワードを格納したファイルを分かりやすくpassword.txtとかの名前で保存しているような人なんてまさか居ないだろうしね」
と言われたので千里はギクッとした。
 
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太一がひとつずつログインしてみると、その中の###銀行の口座に自動送金が設定されているのが分かった。
 

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「千里ちゃんこの明細とか見たこと無かった?」
と太一が尋ねた。
「いいえ。私にはログイン自体が無理です」
 
「奏音ちゃんが産まれた翌月の2016年9月から毎月10万ずつフチュウ・カナデ宛てに定期送金されているね」
 
「その金額を増額できます」
「うん。OKOK」
 
それで太一は自動送金を設定してくれた。設定するのに携帯のメールアドレスが必要だったので、太一は千里の携帯に設定した。
 
「でも残高が残り25万円だね」
「だったら、気付かなかったら突然送金が途絶えて優子さん困る所でしたね」
「うん。危ない危ない」
 
千里はこの日の夕方の便で仙台に戻った。そして翌日には区役所の人が病院に来て、千里は色々事情を聴かれたものの、千里の話すことが全然要領を得ないので、結局桃香が大半の回答をしてくれた。
 
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「あ、凄い。この宝くじ、100円当たってる」
と宝くじの番号発表を見て気付いた水鳥波留は、夕飯の買物がてら、その券を宝くじ売場に持っていった。スクラッチを1枚買ってから、そのくじ券を出す。
 
「これ100円当たったみたいなんですけど」
 
「はいはい」
と言って、売場のおばちゃんはスキャナを当てる。
 
ギョッとしている。
 
「あのぉ、どうかしました?」
「あんた、これ300万円当たっているけど」
 
「うっそー!?」
 

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その日は男装のアクアと女装のアクアが出演する、時計のCFを撮影することになっていて、アクアは葉月および信濃町ガールズの上田雅水とともに都内のプールに来ていた。この日はこの撮影のため夕方以降貸切である。
 
撮影は男子水着のアクアと女子水着の葉月で撮影した上で、女子水着のアクアと男子水着の上田雅水とで撮影して、つなぎ合わせる。事前の打合せではアクアが女子水着になる時は葉月が男子水着と話していたのだが、電通の人が
 
「今井さんに男子水着を着させる訳にはいかないでしょう。アクアさんに身長の近い男性のタレントさんも連れてきてください」
 
と言うので、営業をしていた緑川志穂も「まあいいか」と思い、男子水着になる役として小学6年生の上田雅水を連れてきたのである。彼にとっては電波に乗るのは初めての体験になる。
 
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前半、男子水着のアクアと女子水着の葉月で撮影した後、アクアが葉月が着けていたのと同じ柄の女子水着を着けて出てきたのを見て、CFのディレクターは思わず言った。
 
「アクア君、性転換手術してたんだっけ?」
「偽装ですよぉ」
「でも、お股に何も無いように見えるんだけど?」
「隠しているだけです。だいたいさっき男子水着で胸も曝してたじゃないですか」
「いや、胸は大きくせずにとりあえず下だけ取ったとか?」
 
「ボク、女の子になるつもりはありませんよぉ」
とアクアFは言いながらも、やや後ろめたさを感じていた。むろん前半の撮影で胸を曝していたのはアクアMである。
 
その様子を見ながら上田雅水は
「よくあんなにうまく女の子の体型を偽装出来ますね」
と感心したように言っていたが、葉月は
 
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『やはりアクアさん、性転換手術しちゃったのでは?』
と内心思いながら、アクアを眺めていた。
 

慈眼芳子本人がちゃんと聞きたいというし、医師は彼女が精神的にかなりタフであるのをこれまでの経過で認識していたので、医師は本人も入れて娘夫婦の前で告げた。
 
「モルヒネを使いましょう」
「分かりました」
と慈眼芳子は静かに言った。
 

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桃香と千里は1月18日(金)にムラーノの後部座席に早月と由美を乗せて仙台から東京に戻った。それで金曜日の夜は経堂の桃香のアパート(2DKにひたすら近い1K)で、千里・桃香・優子に、早月・奏音・由美の6人が一緒に過ごすことになった。早月(1歳8月)と奏音(2歳5月)はすぐ仲良くなって・・・うるさかった!でも2人で由美のお世話をしてくれた。
 
早月は桃香と千里の子、
奏音は優子と信次の子、
由美は桃香と信次の子、
 
なので、由美は早月にとっても奏音にとっても妹なのである。しかし早月と奏音の間には血縁関係は無い。
 

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1月19日(土)。千葉の川島家で信次の二百ヶ日法要をしたが、これに出たのは下記である。
 
桃香(+早月)、千里1(+由美)、優子(+奏音)、康子、太一、青葉、小林成政(康子の実兄)と妻
 
亜矢芽(+翔和)は一周忌には出たいけど、今回は遠慮するということだった。離婚からあまりほとぼりが冷めてない時期なのであまり顔を見せたくなかったのだろうと桃香たちは判断した。
 
この日は千葉の自宅にお坊さんに来てもらってお経をあげてもらい、その後、予め頼んでいた仕出しでお昼を一緒に食べた。信次が他の女性に子供を産ませていたというのを聞いて、成政夫妻は驚いたものの、
 
「康子、孫がたくさんできてよかったじゃん」
と成政は言っていた。
 
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「そうなのよね。子供2人とも結婚には縁が無さそうと思っていたから」
 
「まあ結婚しなくても子供だけ作ればいいのかもね」
などと太一が言うので
 
「あんたまさか、どこかに隠し子がいるとか?」
と訊かれる。
 
「俺の子供は今の所翔和以外には居ないよぉ」
などと言っている。
 
「でもあんた、あちこちでタネ撒いてないの?」
 
「する時はちゃんと着けてるから。亜矢芽の時はやってる内にコンドーム切れちゃってさ。安全日だから生でもいいよと言うからしたら妊娠しちゃって。その晩はもう5回目だったから精液も薄かったと思うんだけど」
 
などと言っている。
 
「薄くても精子が1個でもあれば妊娠の可能性はあるよ」
と成政。
 
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「まあ本当は安全日なんてもの自体、無いんだけどね。セックスしたらその刺激で排卵することもあるし」
と康子は言う。
 
「あとあの時、俺二股になってたから、ライバルに勝って俺をゲットするには生でさせてあげてもいいかなと、あの子思った可能性はあると思う」
と太一。
「ああ、実は安全日ではなかったのかも知れないね」
と桃香も言った。
 
「ちなみにあんたが誰か男の人に種を植え付けられるとかは?」
と康子は訊く。
 
「俺は産めないよ!」
「最近は分からないらしいよ」
「それにする時はちゃんと着けてもらったし」
 
「・・・」
 
「あんた男の人ともするんだ?」
「まだ2度しか経験無いよ!」
 
「お母さん、やはり太一さんが赤ちゃん産む可能性もありそうですよ」
 
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千里2(選手登録名:キュー)は、19日20:00(日本時間20日4:00)にLFB第13節の試合をして5点差で接戦を制した。先週はキューのブザービーターのスリーで1点差逆転勝ちをしており、2週連続の薄氷の勝利だが、これでチームは4位に浮上した。
 
千里3は19日と20日、旭川で女王サンドベージュとの2連戦をしたが1勝1敗であった。19日にせっかくいい形で勝ったのに20日は奮起したサンドベージュの選手たちに逆に大差をつけられてしまった。湧見絵津子(サンドベージュ)と渡辺純子(レッドインパルス)のライバル同士がゴール近くでの乱戦で激しく接触し、両者エクサイトして2人ともアンスポーツマンライク・ファウルを取られる場面まであった。
 
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(2人はふだんは仲良しである)
 
試合が終わった後千里3は
「個人的な用事があるので別行動で帰っていいですか?」
とキャプテンの広川妙子に尋ねた。
 
「ああ、親戚とかに寄っていくの?」
「それもありますが、この後金沢に寄りたいので」
「そういえば新千歳から小松への飛行機があったね」
「はい。でも今回は自分の車を持ってきているから金沢まで走って行きますけどね」
 
「小樽から新潟までフェリー?」
「いえ、海の上を走って行きますよ」
 
妙子は一瞬考えてから
「まあいいや。沈没しないようにね」
と答えた。そして千里が駐車場に駐めた赤いアテンザに乗り込むのを見送った。
 

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夏野明宏は1月19-20日、センター試験を受けた。受験会場は金沢大学である。
 
角間の大地に広がる、まだけっこう新しい感じの建物群を眺めて、ああ、ここで勉強できたらいいなあと思った。
 
彼の第1志望は金沢大学人文学類心理学コース、第二志望は富山大学人文学部心理学コースであるが、正直どちらも自分には厳しいかもと思った。
 
届きそうに無い場合は、金沢市内の私立G大学に行くつもりである。ここは北陸の私立大学で唯一、心理学コースを設けているのである。私学で唯一というだけあり、G大の学科の中ではかなりレベルが高いし、県外からの受験者も多い。しかし彼の学力なら落ちることは無い。センター試験の成績で受験できるので願書を出すだけで試験も受ける必要が無い。ただ、ここは(文学部全体で)上位20位以内で合格すれば授業料免除または半免になるのだが、彼はその範囲に入る自信は無かった。
 
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彼が心理学を学びたいと思っているのは、自分自身の心の中にずっと矛盾を抱えているからである。心理学コースに来る生徒にはそういう人がわりと多い。
 
試験を終えた後“やや暗い気持ち”でバスで金沢駅前まで行き、駅構内に入ろうとしたところで何かパンフレットのようなものを配っている人がいた。目の前に差し出されるので、なにげなく受け取る。そして歩きながら見たら少しだけ気分がよくなった。
 
《女子学生の皆さんへ。安心出来るオーロック女性専用マンション特集》
 
というパンフレットだった。
 
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春葉(12)

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