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■春雷(14)

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8月4日(金)、青葉は千里と一緒にオーリスに乗って金沢のHH院まで行った。境内に車は駐めさせてもらう。
 
「私派手な色のアクア買っちゃったから、場所によっては乗り入れにくくて」
と青葉が言うと、千里は笑って言った。
 
「青葉、お金は余っているだろうから、そういうのに使える車をもう1台買えばいいのに。白とかグレイとかの目立たないの」
 
「あ、そうか!それ考えたことなかった」
 
ちなみに千里のオーリスはオレンジメタリックで、やや渋い赤に見える。赤い車は比較的目立ちやすいが、青葉のアクア(チェリーパールクリスタルシャイン)に比べると随分おとなしい色である。青葉のアクアは母や友人たちからは《ショッキング・ピンク》と言われている。
 
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「青葉は霊的な能力は凄いみたいだけど、やはり狭い世界で生きて来たせいか、発想が貧困な傾向があると思う。青葉は色々な世界を体験した方がいい」
と千里は言った。
 
「色々な世界を体験?」
「手塚治虫とか、若い頃、職業を何十個も変わっているよね。あれは彼の修行だったんだと思う。あれで色々な世界のことを知ることができた」
 
「たくさん色々な世界のバイトするとか?」
「様々な世界に入っていける仕事をすればいいんだよ。まあ青葉はバイトする時間は無いだろうけどね。青葉が目指しているアナウンサーという仕事も割と色々な世界に入っていける仕事」
 
「あ、そうかも」
 
「でも車はホントもう1台買っちゃえばいいよ」
「それ考えてみる。ちー姉はどう車を使い分けているの?」
「オーリスは私の専用車」
「へ?」
 
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「あれ?気付かなかった?私は千里の代理をしている眷属のひとり。名前は村山百里。ミラを使っているのが千里本人で、アテンザを使っている千里はまた別の眷属・村山万里だよ」
 
青葉はあらためて再度千里姉を観察し直した。
 
「私を引っかけようとしてる。ここに居るちー姉、どう見ても人間にしか見えないもん」
と青葉は言った。
 
千里(百里?)は笑っていた。青葉の後ろにいる《ゆう姫》まで笑っていた。
 

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金沢のHH院に到着したのは、9:00頃である。白田住職は千里を見ると
 
「凄い姉妹ですね!」
と言った。
 
「うちのお寺で処理しきれないような霊的な問題があったら、おふたりに頼りたいくらいだ」
と住職は言う。
 
「すみません。それで頻繁に呼び出されると、私、大学の勉強ができなくなるので」
と青葉は言っておいた。
 
神谷内さんとカメラマン、それに助手として皆山幸花がやってきたのは9:30頃である。青葉は神谷内さんに打診した。
 
「放送局さんのコネでですね、ラクシュ加賀の屋上に1時間くらい入れるようにしてもらえませんか?」
 
「できると思いますよ。希望の日時ありますか?」
「できたらこの放送の後、8月中がいいのですが。そしてこれが難しいかもしれませんが、できたら深夜がいいのですが」
「あぁ・・・ちょっと交渉してみます」
「お願いします。すみません」
 
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園芸業者さんは9:50くらいに来て、若い杉の苗を植え始めた。その作業自体は30分ほどで終わってしまう。白田住職が雷で焼けた杉の燃え残りから切出し、自ら銘を書いた《次郎杉》という札(防水加工済)をそのそばに立てる。そして新しい次郎杉の命名法要を執り行った。
 
白田住職以下、HH院の僧に加えて、住職の親族の僧も集めて20人ほどの僧による仰々しいほどの法要であった。
 
〒〒テレビのみでなく、他の局やNHKまで、この次郎杉の代替わり法要を取材に来ていた。青葉としてはひじょうに素敵な展開であった。実は護符をさりげなく次郎杉のそばに置いておいたのである。結果的に護符の映像は多数の放送局の電波に乗ることになる。但し夜にならないと効果は出ない。
 
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法要が終わると、いったん解散する。青葉と千里は金沢市内のホテルで夜を待つことにする。
 
「ちー姉、少しヒーリングしていい?」
「うん。お願い」
 
それで千里はベッドに寝たので、そのまま3時間くらいヒーリングをしていた。ヒーリングをしていて、随分千里姉の身体が痛んでいるのが分かった。さっきまで起きていた時は気付かなかったのに、やはりかなり無理して頑張っているのかなとも思う。
 
(実は横になった瞬間千里1と入れ替わっている)
 
卵巣と子宮が見えるのは気にしない!
 
とにかく身体中の器官ごとの気の流れが細かく寸断されている。これでは確かに霊的なパワーを行使することは無理だろう。青葉は気の流れのエンジン部分になる背中を中心にヒーリングしていく。腰の近く、ちょうど腰椎の付近から始めて少しずつ少しずつ隣同士の回路をつなぎ気の循環がより大きな範囲で回るようにしていった。
 
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しかし・・・。
 
青葉はすぐに、千里姉の身体を他にも治療している人がいるのに気付いた。数えてみると既に4人(*3)。つまり青葉は5人目の治療者ということになるようだ。
 
(*3)羽衣・千里2・美鳳・びゃくちゃんの4人である。
 
各々別の場所から治療しているので、当面は治療箇所はぶつからないだろうと思った。
 

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深夜の作業中に万が一にも眠る訳にはいかないので、青葉自身も夕方から仮眠を取った。千里の治療は自分が寝ている間もオートで続けた。
 
23時頃千里に起こされて目が覚める。
 
「ごめーん」
「私は何だかぐっすり寝てたよ。そろそろ行こう」
「うん」
 
今日の青葉は茶木蘭色の法衣を着て、瞬嶽師匠の遺品の袈裟をつける。千里が青葉のメイクをしてくれた。
 
「きれーい」
「青葉自分でお化粧は覚えなよ、女の子なんだし」
「うん。努力してみる」
 
千里自身は白の作務衣を着た上でしっかりメイクをした。
 
ふたりでオーリスに乗り、HH院に向かう。青葉達が到着してから少しして神谷内さんとカメラマン、皆山幸花の3人も来た。
 
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「川上さん、ラクシュ加賀の件ですが」
「はい」
「許可が取れました。向こうの警備員が同席してもいいですかね?」
「はい。それは問題ありませんが電子機器は全部落として欲しいんです」
「カメラは?」
「高価なカメラが壊れてはまずいと思うので」
「壊れるんですか?」
「電源が入っていたら携帯電話でも壊れると思います」
「ひゃー。仕方ないです。僕の目で見届けます」
「ありがとうございます」
 

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お寺の僧数人で観音像と、先代次郎杉の燃え残りの一部を運んで来て、白いプリウスに乗せた。護符を車の屋根にしっかりと貼り付けて運転席に千里、助手席に小型カメラを持った神谷内さん、後部座席の観音様の隣に青葉が乗って車は出発する。神谷内さんの持つカメラはあくまで予備で、メインは後部座席を撮すように設置した固定カメラである。
 
ここで観音様と燃え残りは運転席の後ろに置いた。そうしないと、神谷内さんが危ないからである。霊が勢いよく飛んできた時、観音様のすぐ隣にいる青葉と運転席の千里には何らかの影響が出る場合もある。青葉と(多分)千里は自分で防御できるが、神谷内さんまでは青葉もとっさに守れない場合もありえる。
 
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この出発の所までを神谷内さんが連れてきたカメラマンが撮影した。そちらの撮影班は、お寺の中で車が戻って来るまで仮眠しておくことになる。住職はその間観音堂でずっとお経を唱えているということであった。
 
車内では誰も声を発しない。サイドウィンドウは完全に閉じて、車内ではお経を録音したものをずっと流している。この状態で眠らずに運転できる人は、かなり限られるだろう。放送局の人にはまず無理だし、修行を積んだ僧でもきつい。実際これって自分と千里姉のコンビしか考えられなかったのではと青葉は思った。
 

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車は金沢東ICから北陸自動車道に乗り、福井県方面に走って、加賀ICで降りる。8号線を少し戻って加賀産業道路・山側環状道路で戻って来て、津幡バイパスから連絡通路を通って白尾IC方面に進み、のと里山海道を内灘方面に走って、海側環状道路を終点(北陸道白山IC付近)まで走る。その後、8号線を走って金沢東ICまで戻る。この前半2時間の走行でともかくも金沢市の外周をほぼ回ったのである。その後、市内の大通りを細かく走っていく。前半に外周を走ったのは、市内中心部の車が減るのを待っていたからである。
 
青葉は最初出発してから金沢東ICに乗るまでの間に20体ほどの霊が飛び込んできて次郎杉の燃え残りの中に吸収されたのを感知した。青葉は何も言わないが、飛び込む度に数珠を持って合掌するので、ビジュアル的にはそれで霊の《回収》を確認することができる。(この部分の映像が放送に使用された)
 
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高速道路上は2体ほど、交通事故死の霊かもと思うものが飛び込んで来て観音様の中に吸収された。加賀ICから産業道路・山環を戻ってくる間に50体ほどの霊を吸収する。ここでは観音様と次郎杉に半々くらい吸収された。
 
どうも元々次郎杉に入っていた霊が次郎杉に、それ以外の霊が観音様に入っていっているような気がした。
 
津幡バイパスから里山海道・海側環状では30体ほどの霊を回収し、8割くらいが次郎杉に飛び込んだ。そして8号線を戻る間にまた10体ほどの霊が回収される。そして後半、市内の大通りをずっと走っていくと、もう10秒単位で霊が飛び込んでくるので青葉も合掌が間に合わない感じである。このあたりでビジュアル的にもとても霊の数を数えられない状態になる。
 
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結局4時間ほどの巡回で回収した霊の数は恐らく300体ほどである。感覚的には平均すると次郎杉と観音様にほぼ半々くらいずつ飛び込んだ気がした。
 
4時半すぎにHH院に帰着した。
 
「お疲れ様でした」
「住職もお疲れ様でした」
 
「かなりの豊作ですね」
と車内を見て住職が言った。
 
「なんか凄い数の霊でした。次郎杉とは関係無い霊もたくさんいましたよ。観音様に同行していただいて助かりました」
 
「ああ。確かに観音様にもたくさん入っている」
 

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8月11日に放送された『いしかわ・いこかな』は結構な反響を呼び、再放送の要望も強かったので、HH院と青葉の承認も取って翌週8月18日に再放送が行われた。
 
青葉・千里・神谷内の3人で、8月11日、8月18日の夜、放送時間に合わせて、市内の循環をして霊の回収をした。放送自体に刺激され放送時間中にテレビ局の庭に駐めた(巡回に出発前の)HH院の車に集まった霊が11日に推定2000体、18日の再放送では7000-8000体と思われた(青葉と白田住職の推測)。
 
更に放送後、25:00-29:00におこなった市内巡回で、11日に1000体、18日には3000-4000体くらいの霊を回収する。
 
「なんか大掃除している感じです」
と神谷内さんが少々不謹慎な発言もしたが、たぶん次郎杉と無関係であった霊体が大半ではないかという気がした。
 
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なお、8月4日、11日、18日の3回の《回収作業》で集めた霊体は白田住職の手で、観音堂の御本尊と、このお堂に安置された次郎杉の燃え残りに毎回移動されている。時間を掛けて供養して少しずつ上げていくと住職は言っていた。
 

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