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■春雷(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-11-02
 
「それで昨年、金沢では大いに話題になった、女性が交通事故に遭った後、自宅で死亡して、死後出産した事件を解決したのが川上さんだと聞きまして」
 
青葉はそっちの話で良かったと思った。春に起きた水泳部長連続不審死事件はあまり突っ込まれたくない。あれは関係者の幸福のため、敢えて事実をねじまげてしまったところが多い。
 
「あの事件は、私、最初にお母さんの死後、生まれていた赤ちゃんを発見しただけです、と言いたい所なんですが、幸花さんが話してしまっているのなら、今更ですね」
 
「そのあたりはあまり突っ込みませんので」
「お願いします。あの事件はたまたま解決できましたけど、私にできることは限られています。あまり凄い人だと誤解されて依頼が殺到すると、私、学生生活が成り立たなくなってしまうので」
 
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「ああ、そうでしようね。何でしたら番組上仮名にして、顔も隠してもいいですよ」
 
「そのくらいしてもらうと助かるかも知れません」
 
「何かいい仮名ありますかね」
と神谷内さんが言った時、隣の席に座っていた星衣良が
 
「金沢コナン」
と突然言う。
 
「何それ〜〜!?」
「金沢市内の大学に通学しているし、金沢のテレビ局に出演するなら、苗字は金沢でいいと思う。青葉の誕生日5月22日はアーサー・コナン・ドイルの誕生日」
 
「私、探偵とかじゃないけど?」
「霊界探偵だよ」
 
「あ、その霊界探偵っていいですね!《霊界探偵・金沢コナン》というのはどうです?」
と神谷内さん。
 
青葉は頭を抱えた。うん。放送業界ってこういうノリなんだよ。
 
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青葉は東京方面でさんざんテレビ局関係者とも関わっているので、こういう流れも何度も経験している。
 
「コナンは例の番組のイメージが強すぎるので《金沢ドイル》くらいでは?」
「ああ、それでもいいですよ」
 
ということで青葉の番組上の仮名は《金沢ドイル》になってしまった。
 

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何だか仕事を受けたのか受けてないのか曖昧なままの状態で、ともかくも、事前調査に出かけてみることにする。
 
青葉はテレビ局側の調査で信頼できるという判断になった、3人のタクシー運転手さんに話を聞きに行くことにした。局から急遽カメラマンを呼び出し、助手の幸花と併せてテレビ局側3人に青葉で赴き、話を聞く所を撮影しておく。実際に使うかどうかは、あとで編集段階で判断することにするし、青葉がこれは出さないでくれと言ったものは基本出しません、と神谷内さんは言っていた。この人、霊的なものに理解があるようだなと青葉は思った。それにこの人自身若干の霊感があるようである。
 

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3人の話はだいたい似たようなものであった。
 
倉田さんという30代の男性運転手は、深夜2時過ぎに片町の近くで乗せ、森山方面と言われて走り、光覚寺の近くで居なくなっているのに気付いたということであった。飴買幽霊絡みの光覚寺が明確に出てきたので、青葉も腕を組んで考え込んだ。
 
真木さんという20代の男性運転手は、明け方4時頃に、金沢東警察署の近くで乗せ、津幡方面と言われて走っていたが、森本駅をすぎたあたりで居なくなっているのに気付いたという。
 
北塚さんという40代の女性運転手は、午前3時近くに森本付近で乗せ、香林坊方面にと言われて走っていたが、浅野川大橋を渡る時に、居ないことに気付いたという。
 
なお、この3台のタクシーは全てドライブレコーダーが付いていなかった。各々のタクシー会社では、やはりドライブレコーダーを付けた方がいいよということになり、倉田さんの会社ではその後全車に取り付けたし、他の2社でも現在取り付ける方向で準備中らしい。
 
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しかし、この3人は全員旧8号線の“城北大通り”を走っている。テレビ局側でまとめてもらった資料でも、だいたいその付近に集中している感じである。青葉はやはりこの通りに何かあるのではないかと考え、テレビ局の車で橋場交差点から、梅田ICまで、城北大通りを往復で走ってもらった。しかし青葉の琴線に引っかかるものは無かった。
 
青葉はこの後、大学の試験と、苗場ロックフェス、更にはその後、東京での音源制作があるので、続きはその後でもよいかと尋ねた。
 
「ロックフェスはもしかして出演なさるんですか?」
「はい。ローズ+リリーの演奏スタッフになっているので」
「それは凄い!」
「その後の音源制作もローズ+リリーのアルバムの制作なんですよ」
 
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テレビ局は8月中に放送できればいいのでと言っていた。お盆の期間はさすがに音源制作はお休みになると思うので、その時に再度調査したいと言って、了承を得たが、自分が戻ってこなかったら、ここまでの取材内容だけで番組にしてしまうのでは?という気がした。
 

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7月28-30日は苗場ロックフェスティバルが行われ、冬子からぜひ参加してもらえないかという打診があっていた。しかし困ったことに今年はちょうど大学の試験期間とぶつかってしまった。それで断るつもりだったのだが、世梨奈が
 
「青葉、今年も行くよね?」
と言ってきたので、土日でもあるし、まあいいかと思い、参戦することにした。
 
世梨奈は26日の新幹線で越後湯沢に入って27日の前夜祭から見ていたのだが、青葉は28日(金)の試験を受けた後、こういう連絡で越後湯沢に行った。
 
金沢18:09 (はくたか574) 20:25高崎20:31 (Maxたにがわ343) 20:56越後湯沢
 
青葉は17時半には金沢駅に着いたので17:55の《かがやき514》にも間に合ったのだが、最速達の《かがやき》は(全列車)高崎駅に停車しないので、長野で乗り換える必要があり大変である。その次の《はくたか》の方が楽なのである。《かがやき》に乗っても到着は20:42なので大差無い。
 
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青葉たちの1つ下の学年で富山のT大学に進学した久本照香も26日に越後湯沢入りして世梨奈と行動を共にしている。青葉は2日遅れで一行に参加することになった。彼女たちはこの後、そのまま東京に入り、ローズ+リリーのアルバム制作にも参加するということであった。青葉は試験があるのでいったん金沢に戻り、8月3日まで試験を受けてから、東京に向かい、そちらに参加することにする。
 
今年のローズ+リリーのアルバム制作は、参加者を一同に集めて短期決戦になったようである。スコアは全て完成しており、参加者には7月19日までには送られて来ていた。青葉も勉強その他の合間を縫って、練習に励んでいた。
 

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苗場は雨である。
 
「今日も1日雨だったけど、明日も明後日も雨の予報」
とトラベリングベルズの海香さんが言っている。
 
青葉は28日22:00からの、KARIONとローズ+リリーの合同打合せに出ていた。両方の演奏者に結構な重複があるので、まとめてやっちゃえということになったらしい。このあたりも冬子(ケイ=蘭子)のスケジュールが厳しいので、できるだけ彼女の負荷を小さくするための処置でもあったようだ。
 
「雨が凄かったのというと、2008年だか2009年の苗場は落雷まであったね」
と小風さんが言っていた。
 
「電源が落ちて真っ暗になったからね」
「まあその隙に、蘭子はダミー演奏者と入れ替わって、本当に演奏したんだけどね」
 
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「落雷は今年のカウントダウンライブでもありましたが、怪我人が出なくて良かった」
と風花さん。
 
「2009年だったかの雷雨でKARIONの演奏中に落雷して変電施設がやられた時も、怪我人は出なかったね」
 
「あれは結構な大事故だったみたいで、あれで怪我人が出なかったのは本当に奇跡的だったと思う」
 
「山に雨や落雷はつきものだからなあ」
「一応ここの会場には避雷針は設置しているらしいよ。2009年の落雷事故の時はたまたまそのエリアだけ避雷針の保護範囲の外だったらしい」
 
「ローズ+リリーのカウントダウンライブの場合は、会場全体がしっかり避雷針に守られていたんだよね。あの落雷した電柱だけギリギリ保護範囲の外だった」
「更にその電柱自体の避雷回路が壊れていた」
 
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「避雷針を45度で見上げる所までが保護範囲だっけ?」
「そうそう。苗場では、あの事故の後、ちゃんと変電施設を守る避雷針を設置して、他にも漏れている所がないか再調査したらしい」
 
「常陸ロックフェスティバルとかは、クレーン車に避雷針積んで対策したりしているらしいね」
「なぜ常設しない?」
「さあ。国有地だから色々難しいのかもね」
 
そんな会話を聞いていて、青葉は何か頭のどこかに引っかかったような気がしたのだが、その時は分からなかった。青葉がその問題に気付くのは数年後である。
 

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「そういえば、青葉ちゃんは正式に女の子になったらしいね」
と七星さんが言う。
 
ちょっと待て。どこから七星さんにその話は伝わったんだ!?
 
「正式に女の子になったって、性転換手術したの?」
「青葉は性転換手術は中学生の時に済ませている」
「小学生の時に性転換したケイよりは遅いな」
「青葉のお姉ちゃんの千里さんも小学生の時だっけ?」
「確か、ケイが小学2年生の時で、千里が小学4年生の時」
 
ケイはもう、苦笑している、
 
「そういえば今年は千里は来てないの?」
「姉は日本代表でインドに行っているんですよ」
「インドか!」
「それではさすがに苗場まで呼び出せないね」
「F-15でも往復できない?」
「あれ超音速で飛ぶと500kmほどで燃料使い果たしてしまうから」
「車も500kmくらい走ると燃料タンクが空になるな」
 
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と話はどんどんずれていく。
 
が花野子(ゴールデンシックス)が元に戻してしまう。なぜこの人までここに居るんだ?
 
「それで青葉ちゃんが正式に女の子になったというのは?」
と花野子。
「裁判所から法的な性別変更の認可が下りたらしい」
と七星さん。
 
「おぉ!」
「それはめでたい」
「今日は法的性別変更を祝して飲み明かそう」
という意見も出るが、
「本番前の飲酒は禁止」
とKARIONのマネージャー花恋が言っている。
 
この人も貫禄ができてきたなあ、と青葉は思う。最初KARIONのマネージャーになった頃は、おどおどしていた感じもあったが、今や年上の黒木さんやわがままな美空に対しても、キッチリ物を言うようになっている。好き嫌いの激しい小風も彼女のことは信頼しているようだ。
 
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今年の苗場の主なステージの出場者はこんな感じである。
 
Jステージ(1000人)
28 品川ありさ、高橋ひろか、西宮ネオン、姫路スピカ、白鳥リズムなど29 ムーン・サークル、ボニアート・アサド、川崎ゆりこ、など
30 遠上笑美子、鈴鹿美里、立山みるく、など
 
Hステージ(5000人野外)
28 三つ葉、オズマドリーム、XANFUSなど
29 ラビット4(さくら組)、南藤由梨奈、貝瀬日南、KARIONなど
30 山森水絵、丸山アイ、桜野みちる、ゴールデンシックス、AYAなど
 
Rステージ(5000人屋内)
28 Wooden Four、スカイロード、シュールロマンティックなど
29 ラビット4(いちご組)、スリファーズ、ローズクォーツなど
 
Fステージ(1万人)
28 バインディング・スクリュー、スイート・ヴァニラズ、など
29 スウィンギング・ナイツ、ナラシノ・エキスプレス・サービス、ラララグーンなど
30 ステラジオ、スカイヤーズ、サウザンズ
 
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そしてメインのGステージ(4万人)はこのようになっている。
 
29日
1100-1200 アクア(日本)
1300-1400 リダンダンシー・リダンジョッシー・スペシャル(日本)
1500-1600 ウォーター・ライフ(アメリカ)
1700-1800 レインボウ・フルート・バンズ(日本)
1859-1959 セカンド・ディメンション(スペイン)
2100-2200 シャングー(イギリス)
 
30日
1000-1100 金属女給(日本)
1200-1300 ブルーライト・トラフィック(ブラジル)
1400-1500 ハイライト・セブンスターズ
1600-1700 ザルツィッヒ・ザッハトルテ(ドイツ)
1800-1900 ローズ+リリー(日本)
2000-2100 Dream Waves(日本)
2200-2300 ジャムジャム・クーン(アメリカ)【Head Liner】
 
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