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■春雷(11)

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8月1日(火)は期末試験が3時間目までで、4時間目が無かったので、青葉はアクアに乗ると、1人だけで運転して8号線沿いのイオン金沢店まで行き、そこの駐車場に車を駐めた。
 
このアクアに積んできていた、折り畳み自転車(Ultra Light 7)を出すと、城北大通りの梅田ICまで行く。カメラを肩からクロスに掛け、地図などは背中に背負ったリュックに入れる。そして城北大通りを南下しはじめた。
 
頭は《受信モード》にしておく。色々雑多な念も飛び込んでくるものの、気にしない。
 
やがて奥村君と世梨奈の2人ともがマークした最初のポイントに来る。
 
「ああ、これは感じるだろうな」
と青葉は独りごとを言う。
 
どうも1〜2年ほど前に交通事故か何かが起きて人が亡くなっているように思われた。青葉は亡くなった人の冥福を祈り般若心経を唱えた。
 
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続いて少し行った所に奥村君だけが感じた場所がある。
 
「なるほどね〜」
 
そこは学校があり、奥村君がポイントした地点はその正門近くなのだが、ここは現在は共学であるものの、以前は女子校であった。きっと、女子校に入りたかったという意識があるんだろうなと思った。
 
ちなみに彼は高校3年の時は男子クラスに入れられて鬱屈とした1年間を送り、その反動で大学に入るとすぐ女の子の服を買ったなどと言っていた。
 

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青葉はその場に立ち止まって、じっとその大木の焼けた跡を見つめていた。
 
このポイントは奥村君と世梨奈の両方がマークしたポイントであるが、青葉はあらためて霊感のアンテナを広げるものの、何もキャッチできない。キャッチできないのも道理だ。ここは「今は何も無い」のである。
 
青葉は何か話が聞けないかと思い、その大木のそばにあるお寺の山門をくぐった。
 
「すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが」
と寺の庭を掃除していた若い僧に声を掛けた。
 
「はい?」
と最初無愛想に答えたそのお坊さんが、こちらが若い女子とみると、急に笑顔になった。
 
あ、こういう所はやはり女の子のお得な所だよなと青葉は思った。
 
「お寺の山門のそばに焼けた木の跡がありますよね?あれは落雷か何かですか?」
と青葉はこちらも笑顔で尋ねる。
 
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「そうなんですよ。お寺の屋根より高い、大きな木だったのですが、4月頃だったかなあ、凄い雷がありましてね」
 
「ああ、そんなに大きかったんですか」
「でもあの木に落ちてなかったら、本堂に落ちていたろうから、あの木に助けてもらったようなものかも知れません。次郎杉といって樹齢千年くらいの大木だったんですよ」
 
「そんなに大きい木だったんですか」
「ええ。けっこうあの木の前で記念写真を撮る観光客さんとかもいたんですけどね」
 

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そんなことをその若いお坊さんと話していたら、紫色の法衣をつけた70歳くらいの僧が驚いたような顔をしてこちらに寄ってきた。
 
「済みません。どちらのお寺の方ですか?」
 
青葉は微笑んで答えた。
「印可は頂いているんですが、僧籍には属してないんですよ」
 
結局寺務所にあげてもらい、お茶とお菓子まで頂く。
 
青葉は《心霊相談師・川上瞬葉》の名刺を出した。
住職も《HH院住職・白田叡照》の名刺を出す。
 
「御住職は**院さんのご系統ですか?」
「そうです。そちらで名前を頂きましたし、修行もそちらでしました。このお寺自体が**院の系列なんですよ。川上さんの、瞬葉というお名前は、もしや長谷川瞬嶽さんの?」
 
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「はい、その弟子です。たぶん最後から2番目の弟子になるのかもしれません」
 
最後の弟子は・・・たぶん千里姉だ。
 
青葉は、テレビ局から依頼されて、この春からこの界隈で多数発生していたタクシーただ乗り幽霊の事件を調べている内に、ここのお寺の前にあった落雷跡に気付いたことを説明した。
 
「やはりそうであったか・・・」
と住職は言った。
 
「御住職、あの燃えてしまった杉には何か言われがあるのですか?」
 
「あの杉は、最近は次郎杉(じろうすぎ)と呼ばれていたのですが、昔は女郎杉(じょろうすぎ)だったというんですよ」
「女郎ですか!」
 
「このHH院は今ここ卯辰山山麓にあるのですが、昔は浅野川大橋の近くの主計町というところにありましてね」
 
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それは例の飴屋さんの近くでもある。
 
「しかし加賀藩主3代目の前田利常公の命令でこの場所に移されて、その時、お寺の境内に立っていたあの杉も一緒に移転したというんですよ」
 
樹齢千年、単純計算しても当時樹齢600年の大木を本当に当時の技術で移転できたのか、青葉は若干の疑問を感じたが、何らかの形で霊的な移転が行われたのかも知れないという気もした。
 
「それで主計町ってところは遊郭の多い町で」
「ああ」
「それで亡くなった遊女の遺体をしばしばこの杉の根元に放り投げてあったらしいんです。それでその度にお寺では供養していたということで、それであの杉は女郎杉と呼ばれていたんですよ」
 
「でも杉はお寺の山門の外にありましたね」
「そうなんです。お寺が移転した時、ちゃんと境内に移植するはずが何かの手違いがあって、お寺の外になってしまったらしくて。でも日々あの杉の前にちゃんと供物も献げてお経をあげていたんですよ」
 
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「ひょっとしたら、そのタクシーただ乗り幽霊というのは、次郎杉に宿っていた遊女たちの霊が」
と住職は言った。
 
「実は私もそれを思いついたんです。落雷があって霊たちがびっくりして逃げ出した。でも元の場所に戻りたい。それでタクシーに乗ってこの杉のあった所に戻ってこようとしているのではないかと」
と青葉。
 
「でもその杉が焼けてしまっている」
と同席していた若い僧が言う。
 
住職はしばらく目を瞑って考えていた。
 
「あの場所に新しい杉を植えましょう。そして燃えてしまった杉の根は掘り起こして、お寺の中に小屋でも作ってそこで供養しましょう」
 
「それで行ける気がします」
と青葉。
 
若い僧が何か言いたそうにしているので青葉は
「何かアイデアがありますか?」
と尋ねる。
 
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「すみません。差し出がましいのは承知なのですが、燃えた杉の一部から立て札か何か作って新しい杉の傍に立てたらどうでしょうか?」
 
「ああ、それはいいと思います。遊女さんたちの帰ってくる目印になりますね」
と青葉は言う。
 
「でもこれやったら、タクシーただ乗り幽霊が大量に発生したりして」
「発生するかも知れないけど、じきに収まるだろうね」
 
「その辺りについては、私少し考えてみたいのですが、いいですか?」
「ええ。何かうまい手があったら、教えてください」
 
「それとこの件、放送局に話してもいいですか?」
と青葉は訊く。
 
「うん。いいよいいよ」
と住職は笑顔で言った。
 

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青葉はここまでの経緯を〒〒テレビの神谷内さんに連絡した。神谷内さんは思わぬ事態の進展に驚き、すぐカメラマンと一緒にこのHH院に飛んできた。そして許可を得て、焼けた杉の跡などを撮影した。更に住職にインタビューして、次郎杉のいわれなどをあらためて説明してもらった。
 
その後で、神谷内さんは昨夜の実験の再現ドラマが作れないかと青葉に打診した。青葉は吉田君、奥村君、明日香、世梨奈に連絡し、再現ドラマの作成に同意、今日の夕方18時に〒〒テレビに集まることにした。それで日が落ちたところで再現ドラマを撮影することにした。
 
昨日作成した異変を感じた場所(正確には時刻)の記録、そしてプロットした地図なども撮影していた。
 
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神谷内さんは住職に御礼を言って、テレビ局に戻る。青葉はそのついでに自転車ごと放送局の車でイオン金沢店に運んでもらった。そこで青葉はおやつなどを買ってから、アクアを運転して、まずは近くにある奥村君のアパートに行った。今日は彼はとっても可愛いワンピースを着ていた。
 
「凄く可愛いよ」
「お化粧しようかと思ったんだけど自信無いからやめた」
「それなら美由紀に頼むときれいにしてくれると思う」
「青葉ちゃんは?」
「私のお化粧は、勘違いしたオカマさん以下と言われている」
「ああ・・・」
 
その後、金沢まで戻りG大学で美由紀、H大学で明日香と世梨奈を拾う。これでアクアの定員いっぱいなので、吉田君にはバイクで直接放送局に行ってもらうことにした。
 
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こちらは約束の時刻までまだ時間があるので、奥村君のお化粧をしてあげることにして、結局イオン・もりの里店でお化粧品を買い、結局今日は美容部員さんに、きれいにお化粧をしてもらった。
 
「ハルちゃん、凄く可愛いよ!」
とみんなが言う。
 
「ボクも凄く可愛いと思った」
と本人も言っている。
 
「女の子になりたくならない?」
「実は今ちょっと女の子になってもいいかなと思ってる」
「ぜひ性転換手術を受けて女の子になろう」
「待って。それは少し考えさせて」
 
結局他の4人もついでに?美容部員さんにきれいにメイクしてもらう。
 
「青葉、女の子になりたくならない?」
「私、こんなに美人なんだっけ?と思った」
「ぜひ性転換手術を受けて女の子になろう」
「手術しちゃおうかなあ」
 
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それで5人でアクアに乗って放送局に行く。玄関の所にライダースーツに身を包んだ吉田君がいて、その傍には彼の愛車Ninja 1000がある。
 
「お前ら、なんでそんな美人になってるんだ!」
と吉田君は青葉たちを見て言った。
 
「だってテレビに映るというしさ」
などと美由紀は言った。
 
「あれ?吉田、バイク変えた?」
と明日香が言う。
 
「この春に買い換えたんだよ。5年ローンだよ」
「おお、すごい」
 
「なんかでかいね」
「うん。1000ccだから」
「時速200kmくらい出る?」
「出るけど、出したら捕まる」
「ああ、捕まるだろうね」
 

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少し待つ内に神谷内さんが出てきた。
 
それで再現ドラマの撮影が始まる。
 
部屋の中でのシーンは放送局内にあるセットの部屋で撮影した。車に乗って調査に行くシーンも、放送局が所有するヴィッツを使って撮影した。
 
「だけど青葉が顔を隠しても、私たちが映っていれば、容易に青葉にたどりつけるような」
 
「いいよ。今回はもう顔出しで」
と青葉は苦笑して言った。それで青葉もふつうに撮影されることになるが、今日はすごくきれいにお化粧しているから、普段の私とは認識されないかもという気もした。
 
撮影は2時間ほど掛けておこなわれ、終了後、
「これ薄謝です」
と言って、出演者全員に神谷内さんからポチ袋が配られた。
 
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「おお。飲みに行こう」
「結局そうなるのか」
 
結局、テレビ局ではここまでの映像で番組を編集する方向で行くようである。お寺に新しい杉が植えられた後のことは、後日、また番組にすると言っていた。神谷内さんは謝礼をと言ったが、青葉はその杉を植えた後の状況が見えてからその話はしたいと言った。
 

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