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■春秋(12)

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それでそこから少し歩いた所にあったホテルのラウンジでお茶を飲みながら検討した。千里のパソコンをネットにつなぎ、南部の丘陵地帯や富山湾開口部との位置関係なども地図を見ながら再確認する。
 
「さっき想像したように、こことここを結ぶ経路上にこの学校はあるね」
「うん。あのビルもね」
 
「その建設現場だけど、あそこには元々6階建ての雑居ビルがあったんだね。それを隣の敷地と合わせて18階建ての商業ビルに建て替えようとしているみたい」
 
と、千里のパソコンを借りて建築関係の情報を検索した青葉が言う。
 
「6階までを商業ビルにして、7-12階がオフィスビル、13-18階がホテルか」
「ありがちな構成だね」
「この周辺は最近再開発が盛んだからなあ」
 
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青葉と千里は他にも学校付近の風水的な環境を検討し、やはり事件の主たる原因はこのビルの工事なのではということで意見が一致した。ただふたりとも「それだけではない」気がすると言いあった。
 
1時間ほどカフェで話してからまた学校の方に戻ってみる。現在4時過ぎである。ふたりは学校の周囲をぐるりと一周してみた。道路工事があっていたので、いったん反対側の大通りまで回り込む。
 
「このお地蔵さんは何だろう?」
「けっこう新しいね」
 
学校側から来た道が大通りと交わった付近にお地蔵さんが置かれていたのである。千里が携帯で何か調べているよう。
 
「交通事故があったみたいね。3年前。富山市に大会で出てきていた中学のバスケット部員たちが乗ったマイクロバスが居眠り運転のワゴン車に正面衝突されて部員が2名亡くなっている」
 
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「ああ、そういえばそんな事故があった。この場所だったのか」
「ここの位置関係は?」
 
青葉が羅盤で確認する。
 
「体育館から見て北北西、というより壬(みずのえ)の方位かな」
 
これも地図にプロットする。
 
「今年の恵方(えほう/あけのかた)は丙(ひのえ)だよね?」
「うん」
「つまり、この事故現場から見て体育館は恵方にあるんだ」
「なるほど〜。ちょっと想像したことがある」
 

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壬とか丙というのは360度の方位を15度ずつ24分割した言い方である。壬は子(北)より15度西、丙は午(南)より15度東で、壬と丙は逆方向になる。
 
様々な方位の呼び方をまとめると下記のようになる。
 

 
(ffortune.netより許可を取って転載)
 

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学校の周囲を一周したところで16:40である。ハルは17時頃に部員が集まり始めるとは言っていたが、こちらは17時半くらいに行くと言っておいた。早く行きすぎると向こうが慌てるかも知れないし、時間は微妙なのだが、いったんどこかで休憩でもしようかと思ったら、校門の所で呼びかける声がある。
 
「川上さん、村山さん」
「ハルちゃん!」
と青葉は笑顔で返事をした。
 
「学校の周囲を見てまわっておられるみたいと気付いたので。もし体育館もご覧になるならご案内しますよ」
 
ハルはブレザーにスカートという女子高生の制服姿であった。校門の外側の校名が表示されたプレートの前に立っている。
 
「その制服、似合っているよ」
「えへへ。この服を着られて良かったです。私が通った中学は柔軟な対応をしてくれたのですが、高校受験の時は、事前接触して戸籍の性別通りでないと困ると言われた学校も結構あったんですよ」
と本人は言っている。
 
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「授業は終わったの?」
「ええ。こちらへどうぞ」
とハルが手で指し示しているので、青葉と千里は校門の中に入った。それで数歩歩いた時、ハルがまだ校門の外にいるのに気付く。
 
「あれ?こちらに来ないの?」
「ええ、行きます」
と言ってハルは校門の中に入った。そしてハルに案内されて体育館の方に行く。
 
その途中に何か石碑のようなものがあるので青葉は尋ねた。
 
「富山大空襲の慰霊碑なんですよ」
「ああ、ここも空襲にやられたのね」
「富山大空襲は終戦直前の8月1-2日に行われ、長崎・広島に次ぐ被災状況だったそうです」
「そんなに凄かったんだ! つまり通常兵器を使った空襲では最大規模ということじゃん!」
 
「富山市街地は完璧に焼け野原になりました。米軍は目標の99.5%を破壊したそうです。事前に空襲の予告ビラが投下され、避難体制もできてはいたのですが、それでも2600人程の死者が出ています」
「やはりかなりの死者が出てるね」
「被災者は11万人に及びます。当時の富山市の人口12万人のほとんどが被災しました」
「きゃー」
 
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「亡くなった方の氏名とかは分からないものも多いんですよ」
「一家まるごとやられたりしていたら、もう分からないよね」
「そうなんですよ」
 

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体育館に辿り着くが、ハルは入口の所で立ち止まる。
 
「ここのドアを開ける前にゴールが鳴る音が聞こえたこともあるんですよ」
とハルは言った。青葉はドアに近寄って耳を付けてみた。
 
「今は聞こえないね」
「ええ」
 
それで青葉がそのままドアを開けて中に入る。続いて千里、ハルと入った。体育館にはまだ人が居ない。ハルは
 
「このあたりで練習している時に教官室でドリブルの音を聞いたんですよ」
と言って説明する。
 
青葉は予めメールしてもらっていた体育館の図面(ケイのマンションでプリントしてきた)にその場所をチェックした。
 

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そして、その体育教官室に行き、挨拶する。今の時間帯はバスケ関係の先生は居なかったものの、体育の先生が3人居た。
 
「ああ、聞いてるよ。生徒の間で結構話題になっているから、何とかしないとまずいなあと思っていた」
と1人の先生がこちらに名刺を出しながら言った。名刺には宝田とある。青葉と千里も名刺を出す。青葉は《心霊相談師・川上瞬葉》、千里は《レッドインパルス・選手》の名刺である。苗字は違うが姉妹であることも説明する。
 
「おお、レッドインパルスですか!あそこ強いですね」
「なかなかサンドベージュに勝てませんけど」
「だけど昔はビューティーマジックが強い時代もあったしね」
「よくご存知ですね!」
「前の前の学校で女子バスケ部の顧問してたから、その時にだいぶ覚えた」
「そうでしたか!」
 
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「フロアで練習していて、この教官室でドリブルとかしてる音が聞こえるのもよくあるんですよね〜」
とハルは言っている。
 
「でも人が行ってみると、誰もいないんだよね?」
「そうなんですよ」
 
などと言っていたら
 
「きっとシャイな幽霊なのね」
と女性教官が言った。
 
「ああ、確かにシャイかも」
 
「でもコート上に出現したこともあったと言っていたな」
「そうなんです。野田さんが後ろに気配を感じたので、スティールを警戒してドリブル中止してしっかりボールを持ったら、誰も居なかったんですよ」
 
「野田かぁ、幽霊なんて見そうもない顔してるのに」
などと言っている教官も居る。顔で幽霊を見る訳ではないだろうが。
 
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「実際野田さんは、幽霊やオバケの類いを見たことなかったそうです」
 
それでしばらく体育教官たち、ハル、青葉と千里で話していたのだが、制服姿のハルが「ちょっと失礼します」と言って席を立った。青葉はきっとトイレにでも行くのだろうと思った。
 
それから2〜3分した時、体育館の入口にけっこうなざわめきがある。見るとハルを含めて10人くらいの体操服を着た生徒が入って来た。ひとり大人もいるので、顧問かコーチであろう。ハルが体操服を着ているので、今出て行ったのは着換えるためだったのかな?と青葉は思った。
 
そのハルはこちらに戻って来るかと思って見ていたのだが、戻って来ず、用具を出して来てバスケットのゴールを引き出している。そして3〜4人の部員とコーチらしき人と一緒に練習を始めた!?
 
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フロアでは他に卓球台を出して卓球の練習を始める子や、マットを出して体操の練習を始める子もあった。バスケ部はフロアの半分を使っている。インターハイに出るほどの実績があるのでフロア半分の独占権があるのだろう。
 
青葉と千里は体育教官室を出るとすぐ傍の螺旋階段を降りて直接下のフロアに行った。
 
するとハルがこちらに気付く。
 
「川上さん!村山さん!いらしてたんですか?」
と言って駆け寄ってくる。
 
「すみません。さっき教室の掃除が終わったもので。ご連絡頂いたらお迎えに出たのですが」
とハルは笑顔で言っている。
 
「え?でもハルちゃん、さっき私たちを案内してここに連れてきてくれて、色々先生達と一緒に話したじゃん」
と青葉は言った。
 
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「え?私はついさっきまで教室の方にいて、今着換えて練習に来たばかりですが」
とハルは戸惑ったように言う。
 
ハッとして青葉は千里を見た。千里はニヤニヤ笑っている。
 
「さっきのハルちゃんって、もしかして・・・」
と青葉が言うと
「さっきのは、ハルちゃんじゃなくてアキちゃんの方だよ」
と千里は言った。
 
「アキが来てたんですか?」
とハルが驚いたように訊く。
 
「ちー姉、最初から分かってた?」
「校門の所でも、体育館でも、私たちが先に入って、その後であの子が入ったでしょ?それであれ?と思ったよ」
「うっ・・・・」
 
「色々混乱の元だから、勝手に学校で出没するなと言ってたんですけどね〜」
などとハルは言っている。
 
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「ごめーん。私が入れてしまったみたい」
と青葉。
 
「でも彼女に色々状況を説明してもらいましたよ」
と千里は言う。
 
「私の感覚をあの子は共有しているみたいなんですよね。でも私はあの子の感覚を共有できないんですよ」
とハルは言っている。
 
「それはアキちゃんはハルちゃんの守り神だからだろうね」
と千里は優しく言った。
 

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青葉と千里は、ハルおよびコーチから話を聞いた後、コーチがまとめてくれた怪現象の報告書をふたりで通読した。その後、練習を最後まで見学させてもらうことにした。怪異が起きるのは夜間が圧倒的に多いらしい。
 
5時半頃、顧問の先生も来たので少しお話をした。
 
今の時期は3年生部員の半分くらいが受験や就職準備のため離脱し、全部で40人ほどになっているらしいが、実際に今日来ているのは25-26人であった。部員によって結構な温度差があり、さすがにレギュラー組やボーダー組は毎日練習に来るが、中には週に1度くらい来て練習していく子もいるし、各々に参加のスタンスは任せているらしい。むろんどんなに強くても、ある程度以上練習に顔を出している人しか大会のメンバーには選ばない。逆に毎日練習には来ているのに実力が足りない選手は、マネージャーやテーブル・オフィシャル要員として大会に同行する場合もあるという(この学校には元女子校だった伝統から、専任のマネージャー制度は無い。部員は全員がプレイヤーである)。
 
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やがて19時に正式の練習は終了し、その後は、帰りの電車の時刻を待つ子、親が迎えに来てくれるのを待つ子だけになり、それも少しずつ人数が少なくなっていく。ハルは母が放送局の仕事が終わってから迎えに来るので20時くらいになるという話だった。ただどっちみち今日は最後まで残りますよと言っていた。
 
19時半頃、“猫形態”のアキが開いていたドアの隙間から入って来て、青葉たちの傍に来ると「ニャー」と鳴いた。青葉は微笑んで、アキの背中を撫でてあげた。アキは気持ち良さそうな顔をする。ハルも気付いて、こちらに手を振っている。
 
この時点で残っているのは4人であった。1年生のハルと絵美、2年生の泰美部長と、3年生の凛子・元副部長である(この学校ではインターハイが終わると一応2年生から新しい部長・副部長が選ばれる)。
 
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その内、絵美のお母さんが迎えに来て帰っていき3人になる。
 
 
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