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■春秋(3)

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「そしたら、もし良かったら京平を連れてユニバーサル・スタジオに行ったりしてもらえないかしら?実は、今日ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで開かれる、妖怪ウォッチの『ブリー隊長と体操』というイベントに当選してたのよ」
 
「あらら」
「貴司に行ってもらう手はあるけど、昨日の今日の日に頼みたくないし」
「確かに確かに」
 
京平は悩むような顔をしている。阿倍子が体調が悪い時に自分だけ遊んでもいいのかなあと悩んでいるのかなと思った。京平は肉体的には1歳3ヶ月の幼児だが魂としては多分30年くらい生きている精霊の魂を持つ。千里が京平と知り合ってからも既に9年経っている。
 
「よし、それじゃ、京平、おばちゃんと一緒に行こうか?」
「でもママ、だいじょうぶ?」
と京平は心配している。
 
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「うん。ママは寝ていれば治るから、千里おばちゃんに遊んでもらって」
と阿倍子は笑顔で言った。
 
「うん。じゃそうする。おみやげなにがいい?」
阿倍子は苦笑した。
 
「だったらユニバーサル・スタジオ・サブレでも」
と阿倍子が言うと、
 
「ちさとおばちゃん、おぼえた?」
と京平が訊く。
 
千里は吹き出して
「うん。覚えたよ。じゃママにはUSJサブレを買って来ようね」
 

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千里は先に1度外出して、レトルトのおかゆ、蒸しパン、アクエリアスやお茶などを買ってきて、そのあと出かけることにする。
 
阿倍子から、チケットと交通費・食費に取り敢えず2万円受け取り、京平を連れてホテルを出た。ホテルの部屋には《びゃくちゃん》を残しておいて、何かあったら対処してもらうことにする。
 
京平は部屋を出ると
「えへへ」
などと言うので、千里はハグしてあげた。
 
『お母さん、ぼく少ししゃべりすぎかなあ。1歳3ヶ月の子供ってこんなにしゃべる?』
と京平はエレベータで下に降りている最中に千里に尋ねてくる。
 
京平は1歳に到達した段階で“封印”が解除され、中身は人間でいうと精神年齢12-13歳くらいの精霊になっている。ただし本来の能力が使えるようになるのは京平の身体が中学生か高校生くらいになってからだろう、と京平の上司(?)である泳次郎さんは言っていた。それまではただの大人びた子供である。ある意味“江戸川コナン”に似た状態だ。
 
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『うーん。まあいいんじゃない? 特に女の子は言葉の発達が早いんだよ』
『ぼく男の子だよ!』
『女の子になる気は?』
『それってちんちん取るの?』
『女の子にはちんちん付いてないからね』
『ちんちんは無くしたくないから、ぼく男の子のままがいい。じゃもう少し、言葉は控えめにした方がいいかなあ』
と京平は嫌そうな顔で言う。
 
『京平は、おちんちんで遊ぶの?』
『遊んじゃダメ?』
『あんまり遊んでたらお医者さんに切られちゃったりして』
『嫌だよぉ』
 
と言って京平は
『でも我慢できるかなあ』
などと悩んでいる。
 
身体は1歳の子供でも中身は思春期のキツネ(?)なので、悪戯したくてたまらないだろう。ただ京平の肉体はまだほとんど男性ホルモンを出してないので、普通の思春期の男の子よりは、性欲自体、かなり弱いはずである。
 
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『じゃママに見つからない程度にね』
『うん』
と言って、京平は少し恥ずかしがっている。
 
『でもまだ掴めないんだよねー』
『まだ1歳だもん。仕方ないよ』
 
掴めないということは、ひょっとして女の子みたいに指で押さえて遊んでいるのかなと思ったが、そんな話はあまり女親とはしたくないだろうし、深くは追及すまいと考える。
 
『それとおむつしてると、いじりにくいんだよね〜』
『じゃトイレの練習頑張ろう』
『でもいつ出るか分かりにくくて』
 
やはりそのあたりが1歳の身体で、多分神経のシステムも未熟なのであろう。
 
『そうそう。お母ちゃんと心の声で会話する分は普通にしゃべっていいよ』
『うん』
と京平は笑顔で答えた。
 
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電車でUSJまで行き、チケットを見せてパスポートを発行してもらい、まずは目的のブリー隊長のイベント会場に行く。既に列ができている!イベントは招待制だから、チケットを持っているのなら会場に入れないということはないだろうに。
 
と思ったのだが、やがて開場時刻になり、入場が始まると、先に入った人たちがみんな前の方に向かって小走りで行っている。なるほど、できるだけ前で見ようというので並んでいたのかと思い至る。千里と京平は15列目くらいになったのだが・・・・。
 
巡回していた女性から声を掛けられる。
 
「そちら何ヶ月ですか?」
「1歳3ヶ月です」
「だったら、前の席に案内しますよ」
 
と言って、ロープで囲ってリザーブしていたっぽい優先席に案内してくれた。結果的に3列目である。
 
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『お母ちゃん、小さいって得なんだね』
『そうだね。女の人のおっぱいにも、触り放題でしょ?』
『べ、べつに・・・・』
と言って京平は下を向いて目をそらしているので、どうも心当たりがあるようだ。
 

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千里の周囲には、やはり年齢の小さな子を連れたお母さんが何人も座った。大抵は京平より大きな子のようで、どうも2歳以下くらいをこのエリアに誘導したようである。まあ6〜7ヶ月とかでは、まだ妖怪ウォッチが分からないよなあ、と千里は思った。
 
やがてショーが始まるが、ブリー隊長やジバニャン、ウィスパーなどの着ぐるみを着た人たちが入ってくると、京平は
 
『大きい』
とやや、しかめ面をして言う。
 
『まあ大人が中に入っているんだから仕方ないよ』
 
どうも他の子たちの反応を見ても、特に小さい子供たちはこの巨大なジバニャンやブリー隊長たちに恐怖を覚えている感じだ。思っていたのと違う!という所だろう。
 
しかし『ダン・ダン・ドゥビ・ズバー!』の曲が流れ始めると、特に大きな子供たちが興奮して席の所で立ち上がって踊ったりし始める。大きい子たちが乗っているので、つられて小さな子供たちも、喜び始めた。
 
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京平も喜んで、立ち上がり、見よう見まねで踊っていた。やはり1歳くらいの子はみんな適当に踊っている感じだ。
 
やがて歌が終わった後は、ジバニャンとメラメライオンが、掛け合い漫才のような感じのトークをする。これは小学生たちには受けているものの、幼稚園以下の子たちは、さっぱり分からないようで、退屈しているっぽい。京平はむろん理解できるのだが、千里に『これ笑っていい?』と最初尋ねて来た。千里が『笑うのはOK』と言うと、安心して大きな声で笑っていた。
 
その後、妖怪ウォッチのミニ劇が行われる。これは幼稚園くらい以上の子は熱心に見ていたものの、それ未満の子にはよく分からないようだった。しかし分からないなりにも楽しんでいるようで、大きい子たちが笑うのに合わせて笑ったりして結構楽しんだようである。京平はむろん内容が分かるので、かなり盛り上がっていた。
 
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その後、ダン・ダン・ドゥビ・ズバー!の踊りの解説が行われる。これも京平は熱心に真似して身体を動かしていた。
 
その後、再度音楽を鳴らし、曲に合わせてステージ上の人たちも客席の子供たちも踊る。子供たちの記憶力が凄いので、1回教えただけなのに、みんなほぼ完璧に踊っていた。
 
これ、20歳くらいになっても覚えていたりしてね、と千里は思った。
 

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イベントは30分ほどで終わり、お土産の袋をもらって退場した。
 
お昼に京平の希望でハンバーガーを食べながら、1歳児が利用できるアトラクションを場内の地図上でチェックする。京平の希望を聞いて行く所をだいたい決め、そこを《たいちゃん》に案内してもらって見て回る。
 
プリキュアのアトラクションに来た時のことだった。
(京平は結構女の子っぽいものが好きである)
 
思わぬカップル(?)と遭遇する。
 
「変装してたのに、一発で見破られたみたい」
と丸山アイは言った。
 
「そりゃ私や大宮万葉には変装は無意味」
と千里は笑顔で言う。
 
「おはようございます、醍醐先生」
「おはようございます、早紀ちゃん、映月ちゃん」
 
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芸名は口にしないのが花だろう。
 
「そちらは親戚のお子さんか何か?」
と丸山アイが尋ねるので千里は微笑んで
 
「私の娘」
と答える。
 
「娘?女の子!?」
とアイが驚いたように言う。
 
「ぼくおとこのこだよ!」
と京平が抗議する。
 
「ごめんごめん、私の息子」
「へー。お子さんがいたのか。1歳半くらい?」
「まあ、そのくらい」
 

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ここは結構色々な音が流れているので、かえって話をするのにも良い環境だった。流れから少し離れた所にある休憩用?のベンチに座る。
 
「男装の早紀ちゃんって、本当に格好良いね」
と千里は言う。
 
アイはカジュアルな男性用スーツの上下を着ており、ネクタイも締めている。女装の時はセミロングの髪なのに、今はサラリーマンのような短い髪である。あるいは男性用のかつらを使っているのか。それにしても不可解なのが、胸だ。丸山アイの時はどう見てもCカップ以上の胸なのに、今は胸があるようにはとても見えない。ナベシャツを使っているのかも知れないが、ナベシャツであんなに大きな胸がごまかせるものなのだろうか。
 
「ありがとうございます。女の子とデートする時は男の子になって、男の子とデートする時は女の子になるんですよ」
とアイは言っている。
 
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「竜男君は、凄く男らしいです。結婚したいくらいだけど、真琴(フェイ)ちゃんに指輪贈ったから結婚できないって言われた」
と映月は言っている。
 
「早紀ちゃんが結婚しても真琴ちゃんは気にしないと思うよ」
「それは考えるけど、つい先日指輪贈ったばかりで節操無いから」
「確かにね〜」
 
京平はアイを見て不思議そうに言った。
 
「さきさん、おとこのひと?おんなのひと?」
 
「今は男の子だよ、京平君」
 
千里はあれ?と思った。京平の名前、私紹介したっけ??千里はこの手のことにだいたい自信が無い。今言ったことを忘れていることが多い。
 
「おんなのひとにもなるの?」
「うん」
 
「おちんちんとるの?」
「そうだよ。女の子になる時は、ちんちん取って、おっぱい大きくして、男の子になる時は、ちんちん付けて、おっぱい小さくするんだよ」
 
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「とっても、またつけられるの?」
「ぼくはできるよ。京平君のちんちんも取って、女の子にしてあげようか?」
「いい!」
と京平は焦ったように言った。
 
「でも、さきさん、きゅうしゅうのひと?」
「よく分かるね。ぼくは長崎生まれなんだよ。大きな造船所がある、香焼町という所なんだけど、今は長崎市に併合されちゃったんだよね」
 
「ながさきは20ねんくらいまえにいったかなあ・・・」
 
「ふふふ。1歳なのに20年前のこと覚えているんだ?」
「あ、えっと・・・」
と京平は焦る。
 
「京平君、何が好き?」
「バスケット! パパもおかあちゃんもバスケットせんしゅだから、ぼくもバスケットせんしゅになる」
 
「だったら、君にこれをあげよう」
と言ってアイはバッグから小さな指の先くらいのサイズのバスケットボールを取り出した。どうも真鍮製のようである。
 
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「こないだタイに行った時に見かけて買ったんだよ。京平君が立派なバスケット選手になれるようにね」
 
アイは・・・タイに行って、フェイに渡すダイヤの指輪を買ったのでは?と千里は思った。タイは宝飾品加工の大国である。例の指輪はどうしても目立ちやすいヒロシはアメリカで、あまりお金の無い雅希は韓国で買ったようである。なお、スポーツ用のボールはインド、ミャンマー、タイなどでの生産が多いようだ。(国内ではモルテンの広島工場が一部作っているかも??ミカサの工場も広島である)
 
「ありがとう」
と言って、京平はそのボールを受け取ると、千里に
「おかあちゃん、もっててくれる?」
と言った。それで千里は
「うん」
と言って、京平からそのボールを受け取ると、自分のバッグのポケットに“入れた”。
 
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ただこの時、実際に“入れた”と思ったのは千里だけであり、京平もアイもそのボールが“どうなったか”を見ていた。ふたりはそのことについては何も言わなかった。
 
ちなみに千里はこのアクセサリーのことをその後、きれいさっぱり忘れてしまった。
 

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