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■春秋(4)

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アイたちは「さっき寄ったアトラクションが多分1歳の子供にも楽しい」と言って、スヌーピー系のアトラクションに連れて行ってくれた。そこで4人で一緒に楽しんだ後、別れた。
 
京平は、すごく遠回しに、おっぱいが欲しいみたいなことを言ったのでファミリーサービスコーナーに連れて行き飲ませたら、凄く満足げであった。
 
千里たちは午後4時頃、USJを出た。
 
駅に向かっていた時、献血車が出ているのを見る。
 
「AB型の血液が不足しております。よろしかったらご協力下さい」
などとスタッフの人が声を出している。
 
「ありゃ、AB型が足りないって。協力しようかな」
と言って、千里は京平を連れたまま、献血車の所に行く。
 
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「RH(+)AB型なんですけど」
「はい、お願いします。こちらへ」
と言われて、取り敢えず血液型の確認をする。
 
「確かにRH(+)AB型ですね。400ccご協力頂けますか?」
「いいですよ〜」
 
「おかあちゃん、けつえきがたってなぁに?」
「A,B,AB,Oって、血液型はだいたいこの4つに分けられるんだよ」
「へー。ぼくはなにだろう?」
「京平はたしかA型だったはずだよ」
と千里が言うと、
 
「何でしたら、お子様の血液型、お調べしましょうか?」
とスタッフさんが言う。
 
「おもしろそうだから、しらべる」
と京平は言った。
 
「針を刺すから痛いよ」
「ぼく、へいきだよ」
「お、京平は偉いな」
 
それでスタッフさんが京平の血液検査をしてくれた。京平は本当に泣かなかった。
 
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「確かにA型ですね」
とスタッフさんが言う。検査シートを渡してくれた。
「ああ、RH(+)でしたか」
「はい、そうですね」
「私がRH(+)AB型で、この子の父親はRH(-)B型なんですよ。A型というのは確か生まれた時にそう言われた気がしていたのですが、RH型までは調べていなかったので。両親がRH(-)とRH(+)なら、子供はRH(-),RH(+)どちらもありえますからね」
 
「はい、そうですね。RH(-)同士の両親からはRH(-)しか生まれませんが」
 
RH型というのは正確にはCcDEeという5つの抗原の有無で検査するものであるが、通常はD抗原の有無を問題とする。D抗原を持たない状態を仮にdと書くと、Dd(dD)もDDもRH(+)で、ddのみがRH(-)となるため、両親がどちらもDdとDdであれば子供はddになる可能性があり、RH(+)の両親からRH(-)の子供が産まれることもある。しかし両親が共にddなら子供は必ずddになる。貴司がRH(-)つまりddであるということは、京平はRH(+)でもDDではなくDdであることが分かる。
 
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「この子がA型ということは、父親はBO型で、この子はAO型ということになりますよね」
「ご主人がB型ということであれば、それでないと辻褄が合いませんね」
とスタッフさんは笑顔で言う。
 

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千里は京平を阿倍子の入っているホテルに送り届けたが、阿倍子はかなり体力を回復していた。1日寝ていたので身体のバランスを取り戻したのだろう。欲しいものがあったら買ってくるよと言って、結局コンビニでサラダとポテチ、それに京平用にサンドイッチと唐揚げも買ってきてあげてから別れた。明日の朝また顔を見せるねと言ってホテルを出る。
 
そして千里は《びゃくちゃん》に後を任せて新幹線に乗り、東京に帰還した。明日の朝は《びゃくちゃん》に千里の振りをして阿倍子さんの部屋を訪問してもらうことにする。
 
自分のアパートに戻ると、《すーちゃん》が
「この2日間、何だか調子が悪いみたいだねと言われたよぉ」
と泣きそうな顔で言っていた。
 
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「でも刺激になったでしょ?」
「それはなったけどね〜」
 

9月23日(金)。千里は“例の問題”で青葉や天津子と何度も電話しながら、最終的な確認をしていた。3人が手分けして調べた内容が、ある驚愕の事実を指し示していた。
 
青葉は富山駅を17:06の《かがやき》に乗り、19:20に東京に着く。山手線とモノレールを乗り継ぎ、20時すぎに羽田空港に到着。ここで千里と合流して一緒に20:40のエアドゥ新千歳行きに乗った。飛行機の中ではふたりともぐっすり寝ていた。ふたりが関わっている問題は非常にデリケートなので、周囲に人がいる場所では絶対に話せない。むしろ身体を休めておいたほうがいい。
 
22:20に新千歳空港に着く。ここで予め千里が千歳市在住の友人に頼んで借りておいてもらっていたレンタカーを受け取る。青葉とふたりで乗って、網走を目指した。
 
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「青葉、寝ておいて」
「うん。途中で交代しよう」
「夜通し運転は慣れているから平気だよ」
「5時間連続運転して事故起こしたらやばいよ」
「うーん。じゃ、占冠(しむかっぷ)PAで交替。そこから足寄(あしょろ)ICまで運転してよ。その先の下道は、北海道の道に慣れている私でないと無理だから、青葉は寝てて」
 
「分かった。じゃ1時間後くらいに交替ね」
と言って青葉は後部座席で千里の友人に用意してもらっていた毛布をかぶって仮眠させてもらった。
 

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23:20くらいに
 
「青葉、交替よろしく〜」
という声で目を覚ます。
 
「じゃちょっとトイレに行ってきてから」
「うん。私も行って来てから寝る」
「連れションね」
 
「女の子同士でも連れションって言うの〜?」
「むしろ群れションだったりして」
「群れるよね!」
 
「女の子が集団でトイレに行くのは、男にも女自身にも謎みたいね〜」
 
それでトイレに行った後、青葉は缶コーヒーを2つ買って車に戻る。
 
「青葉、少し体操してから運転した方がいい」
「そうする」
 
それで腕を横に振る運動、縦に伸ばす運動、膝の屈伸運動やアキレス腱を伸ばす運動、首を回す運動などをしてから運転席に就いた。
 
「ちー姉は次起きてから飲んだ方がいいかも」
と言ってコーヒーを渡したが
 
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「ああ。私コーヒー飲むと安眠するんだよ」
と言って千里は一気に飲んでから後部座席で眠った。
 
青葉は車を出して深夜の道東自動車道を走った。
 

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『ちー姉、自分で運転してた?』
と青葉は自分が寝ている間、見ていてもらった《笹竹》に尋ねる。
 
『本人が運転しているように見えた』
と《笹竹》は言う。
 
『青葉、青葉が千里を眷属で監視させるだろうというのは、たぶん千里は予測済みだよ』
と《海坊主》が言う。
 
『そうかもね〜』
と青葉は首を振りながら言う。まあ、ちー姉もそう簡単にはしっぽを掴ませないよね〜。
 
千里が持参していたポータブル・カーナビに入っている音楽を聴きながら運転するが、流れるのはチェリーツインの曲ばかりである。蜻蛉にチェックしてもらったが、チェリーツインの過去のアルバムが丸ごと放り込んであり、それ以外は入っていないようである。今回はローズ+リリーの楽曲の制作ではあるが、明日(もう今日だが)はチェリーツインと一緒に制作をするので、彼女たちとシンクロしやすい精神状態にしておこうということかな、と思い、青葉は適度にスキップしながら曲を聴いていた。
 
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1時間ほど運転して池田の本線料金所を通過。そこから20分ほど走って本別JCTで支線に分岐する。15分ほど走った所で足寄ICを降り、そこから少し走った所にあったセイコーマートに車を駐めた。
 
1:00過ぎであった。
 
ここで休憩し、トイレを借りてからおにぎりと飲み物を買う。千里は缶コーヒーを3本とクールミントガムを買っていたが、青葉はお茶にして、後部座席でおにぎりを食べ、お茶を少し飲んで寝ることにする。
 

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思ったよりも疲れていたようで、完璧に熟睡していた。車がマウンテンフット牧場に到着したのは3時半頃である。
 
「鍵開けておきますから、勝手に入って休んでいてください」
という連絡を予め受けていたので、E棟の指定された部屋に入った。簡単な食事と飲み物(紅茶、牛乳、ワイン)も用意されていたので、牛乳を頂いてからベッドに入って寝た。
 
6時に起きて千里が春美にメールしてみると、もう食事ができますからA棟の食堂に来てくださいということだったので、着換えてからそちらに向かう。ここで織羽を連れた天津子、彼女たちと一緒に御飯を食べていた、しずかに出会う。
 
青葉は織羽を見たのは初めてであったが、見た瞬間「凄い」と思った。
 
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「才能のある子だね」
「うん。私みたいにひねくれた育ち方をしないように、まっとうな教育をしているよ」
と天津子は答える。
 
確かに天津子は幼い頃から恐らく『よからぬこと』に使われてきている。
 
天津子とは情報交換もしたかったのだが、さすがに子供たちのいる前ではできないので、この場では、織羽のしている『修行』のことで結構盛り上がった。
 
「滝行とかよくやるな〜。私はとてもできないや」
としずかが言っている。
 
「私や天津子ちゃんは、たぶん物心付く前からやらされてるね」
「うん。だから生活の一部になっていた」
 
「千里さんも滝行やってたの?」
としずかが訊く。
 
「私は中学の頃からだから、この子たちに比べたらずっと遅いね」
と千里。
 
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「私はしなくていいよね?」
としずかは不安そうに訊く。
 
「しずかは普通の女の子だから、普通に暮らしていけばいいと思うよ」
と天津子は言った。
 
「しずかちゃんは小学6年生くらい?」
と青葉は尋ねた。
 
「中学生になりました」
「セーラー服着て、学校行ってるもんね」
「えへへ。学生服着ろと言われたらどうしようと思ってたから嬉しかった」
 

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7時過ぎると、昨日の内にこちらに来ていた七星さんと風花さんが出てくる。千里たちの近くの席に座り、しばし音楽談義となる。
 
「青葉ちゃん、フルート少し練習した?」
と七星さんから訊かれる。
「まだまだです。あれ使いこなせるようになるのに半年くらいかかるかも」
「まあ白銅フルートからの移行なら、そのくらい掛かるだろうね」
 
しずかが横笛を練習しているということだったので、吹かせてみる。
 
「うまいね!」
と声が掛かるが、天津子は
 
「あまり褒めすぎないでください。天狗になるから」
と言っている。
 
「でも7月には、ローズ+リリーのアルバム曲(『やまとなでしこ恋する乙女』)のPVで篠笛吹いたからね」
と七星さんが言う。
 
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「凄い!」
「しずかちゃんと、中学生タレントで古都紘子ちゃんという子と、篠笛・三味線、ピアノとヴァイオリンの合奏をしている所を撮影したんですよ。紘子ちゃんの三味線は吹き替えだけど、しずかちゃんの篠笛はそのまま活かした。最初はどちらも吹き替えるつもりだったんだけど、篠笛が凄くいいんで、そちらは残したんだよ」
 
と七星さんは説明する。
 
「なるほどー」
 
「あれ?だったら、ピアノかヴァイオリンも弾くの?」
「PVでは、しずかちゃんがヴァイオリン弾いて、紘子ちゃんがピアノ。これはどちらも充分『中学生の演奏』として鑑賞に堪えるレベル」
 
「ヴァイオリンは音程の感覚を鍛えられるから勧めているんですよ」
と天津子が言う。
 
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「ヴァイオリンとか三味線とかは音感の悪い人には弾けない楽器だからね」
 
「それでも民謡大会とかに行くと、音感の悪い三味線って結構聞くね」
「プロだと名乗っているヴァイオリニストで音感の悪い人も結構見る」
「テレビから調子っ外れのヴァイオリンの音が聞こえてきたから何だ?何だ?と思ったら、番組専属の美人ヴァイオリニストとかいう話で唖然としたことがある」
「音痴の人がオーディションして顔だけで選んだのでは?」
 
「まあ、そういう話は置いといて」
 

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「練習しているのは、篠笛だけ?」
「龍笛や篳篥も練習しているんですけど、まだ人前で吹くお許しが出ません」
 
「でも、しずかちゃんの龍笛聴いてみたいな」
と青葉が言うと
 
「青葉のリクエストなら仕方ない。しずか、何か吹いてごらん」
「はい」
 
それでしずかが龍笛を取り出す。
 
「いい龍笛使ってるね!」
と七星さんが声をあげる。
 
「煤竹の龍笛。そんなに高いものではありません」
と天津子が言うが
 
「いや、私のフルートより高い」
と千里は言っている。
 
「千里さんこそ、もっといいフルート吹きません?」
と七星さん。
 
「そうですねぇ・・・」
 
千里が東京で青葉に見せてくれたフルートは50万円くらいの楽器である。確かに千里の経済力ならもっと良いフルートを簡単に買えるはずなのに。
 
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ともかくも、それでしずかが龍笛を吹き始めると、みんな、シーンとなってしまった。演奏が終わると物凄い拍手が来る。
 
「既にプロレベルじゃん。国内で上位100人くらいには入っている」
と青葉は言った。
 
「まだ魂の震えが足りない。この音では私の弟子を名乗らせられない」
と天津子は言う。
 
千里は言った。
「『洞爺湖の詩』あたりを吹きこなせたら、とりあえず仮免くらいは出してもよくない?」
 
「そうだなあ、吹きこなせたらね。しずか練習する?」
「はい。練習させてください」
「よし。じゃ、それまで吹きこなせたら、取り敢えず私の弟子を名乗らせよう」
と天津子は笑顔で言った。
 
 
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