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■春老(4)

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列の順番がはけて、美滝が名前と生年月日・住所・一言アピールを書いて番号札をもらった。青葉がそのまま美滝と一緒に待合所の方に行こうとすると
「あなたは?」
と係の人に訊かれる。
 
「私は付き添いです」
「ああ、お母さんですか。了解です」
 
青葉は物凄く不愉快な気分になった。美滝がまた吹き出していた。
 
もののついでで美滝と青葉は、やまとが登録するのも見ていたら雪丘八島/すすぎ・やまと/2001.8.10と書いている。
 
「それで『やまと』って読むの!?」
と美滝も青葉も驚いて言った。美滝たちが驚いた声をあげたので係の人も改めて見て、やはり驚いている雰囲気である。
 
「はい、八島って日本の古名らしいです。それでこういう漢字に。やまとという読みは、8月10日生まれだからなんですけどね」
 
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「へー!!」
 
「苗字も読めない」
「電話で伝えるとだいたい全国苗字No.1の鈴木さんと誤解されます」
「だろうね!スズキじゃなくてススギか」
「うちの親戚以外でこの苗字見たことないです」
「私も初めて見た!」
「すすいだら白くなる、雪も白いということらしいですよ」
「クイズみたいな苗字だ」
 
彼女はひとことアピールは『歌が大好きです。ローズ+リリーのケイさんみたいな歌のうまい歌手になりたいです』と書いていた。
 
「ケイみたいな歌のうまい歌手か」
「確かにケイは今売れてる歌手の中では一二を争う上手さかもね」
と美滝が言う。
 
「やまとちゃん、男の娘ではないよね?」
「あ、男の娘だったらいいなと思うことはありますけど、生まれた時からちんちん付いてなかったみたいです」
 
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「男の子じゃなくて男の娘がいいの?」
「だって男と女の両方生きられるって楽しそう。本人の都合の良い時は男、本人の都合の良い時は女になって」
「いや、それはむしろ周囲の都合の良い時は男とみなされ、周囲の都合の良い時は女とみなされている」
「だいたい男の苦労と女の苦労の両方をしているみたいね」
 
「あ、そういうものなのかなあ」
 

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金沢会場の参加者は200-300人くらいいるのではという感じであった。美滝の番号が56, 八島(やまと)の番号が57なのだが、会場では200番台の番号を付けている人も見た。
 
ビデオを撮影する機械は5台あり、それを3分交代で使う。録画は3分でピタリとスイッチが切れる仕様になっているらしいので、時間内できちんとパフォーマンスを終えなければならない。
 
やがて美滝たちの順番が来て、美滝は1番左のボックス、八島はその隣のボックスに消える。青葉は外で待っていたので、結果的に双方のパフォーマンスを見聞きすることになった。
 
美滝は歌の上手さをアピールしようと、ローズ+リリーの『門出』をカラオケを原曲キーに変更して歌った。この曲を歌えるということは物凄い声域を持つということである。4オクターブの声を持つ美滝の歌唱力をアピールするには十分だろう。
 
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ただ・・・・青葉は今回のオーディションは多分こういう実力派の歌手を求めるオーディションではないのではと思った。こういう歌でアピールできるのは1月に内々に行われた『鴨乃清見の歌を歌う歌手募集』のようなオーディションである。
 
八島はAYAの『停まらない!』を歌っていた。中学生にしては音程が安定していて、なかなか上手い歌い手だと思った。高音がうまく出なくてやや苦労しているようだが、アイドル歌手ならこの程度歌えたら十分である。この子、結構いい点数を取るのでは青葉は思った。
 

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翌日、11日月曜日。この日は法学類のオリエンテーションが行われた。これは朝10時と金曜日よりは少し遅い時間に始まったものの、また夕方までたっぷりと時間を使って行われた。他の学類はみな12時とか遅いところでも14時には終わっているのに法学類と薬学類だけ夕方まで掛かったようである。
 
この日のオリエンテーションで、やっと学生証が配られた。ICカードになっていて、お金をチャージすることにより、プリペイドカードとして学食などでも使えるということであった。
 
「これって性別は入ってないんだね〜」
と受け取った学生証を見ながら星衣良が言っていたが、隣に座っていた蒼生恵が
 
「それ表面には印刷されてないけど、ICカードの中には性別も書き込まれているらしいよ」
と言っていた。
 
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「なるほどー」
「運転免許証などと同様か」
 

「吉田、性別問題は相談してみた?」
と星衣良は近くの席に座っている吉田君に尋ねる。
 
「オリエンテーション始まる前に学生課に行って相談した。確かに女で登録されていた」
「やはり。だったら性転換手術を受けて、登録に合わせよう」
 
「勘弁してよぉ。受験生のデータベースまでチェックしてちゃんと入試の書類は男で出ていることを確認して、学生データベースは変更してくれた」
 
「なんだ。つまらん」
「でも学生証はもう作ってしまっているから、変更が間に合わないんで、来週までに新しい学生証を作って交換してくれるって」
 
「ああ、やはり中に性別が書き込まれているのね?」
「それまでは女と書き込まれた学生証を使わないといけないみたい」
 
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「女子更衣室に入れたりして」
「それ絶対痴漢として警察に突き出される!」
「まあ吉田がもっと美少年だったら、女の子と間違えられる可能性もあったろうけどな」
 
「少なくとも女と間違われたことは1度も無いな」
「でも合唱の時のセーラー服姿はけっこう様になっていたのに」
「あれは黒歴史で」
 

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「ところで青葉ちゃん、水泳部に入ったの?」
「週1回だけ顔を出すということにした。でも今月いっぱいくらいで辞めようかなと」
「やはり、例の噂で?」
「え?何か噂があるの?」
 
「ちょっと変な噂を聞いたもんだから。私も高校時代は受験勉強が忙しくてしてなかったけど、中学時代水泳していたから、入ろうかなとも思ったんだけど、その噂聞いてやめたのよね」
 
「どういう噂?」
「あ、いや。問題なければいいんだけどね」
 
と蒼生恵はその時は具体的な話はしなかった。
 

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昼休み。
 
青葉は杏梨から
「午後からまたオリエンテーションあるにしても、昼休みちょっと水泳部に来ない?」
 
と言われて、筒石さんの様子も自分の目で確認しておきたかったので行ってみた。
 
今日は水着を持って来ているので、着替えて取り敢えず800mを泳いでみせると
 
「凄いスタミナだね。全くスピードが落ちなかった」
「君なら間違いなくインカレに出られる」
「これ国体も行けるんじゃない?」
 
などと先輩たちが言っている。
 
「うちの部も国体で優勝するとか、オリンピックに出るような選手が出てくると、もっと予算も取れるんだろうけど」
 
「部員があまり居着かないんだよなあ」
「部長も3代続けて亡くなっているし」
 
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青葉はピクっとした。
 
「何ですか?その亡くなっているって?」
 
「あ。私もそれ聞いた。年末に新しく部長になったばかりの溝潟さんって人が3月に亡くなったんだけど、その前の部長もその前の人も在学中に亡くなっているらしい」
と杏梨が言う。
 
「だから次は俺の番じゃないかって、恐怖でさ」
と現在部長をしている筒石さんが言うが、本人はむしろジョーク的に捉えている雰囲気だ。全然恐怖を感じてないふうである。
 
「それどういう経緯で亡くなられたんですか?」
 
「死因は全部別なんだよね。だから偶然なんだろうけど。こないだ亡くなった溝潟は高電圧の線が露出している所に触ってしまって感電死」
 
「ああ、あの事故ですか!」
 
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それはニュースでも報道され、そこの施設の管理者の責任が追及されるかもといった話になっていたようである。
 
「その前の多縞さんは一酸化炭素中毒で。アパートで使っていたカセットコンロが不完全燃焼起こしていたらしい」
 
「それ、自動停止機能とかは付いてなかったんですか?」
「そんな上等なコンロじゃないよ。それに先輩から譲ってもらった古いコンロで、その譲った先輩も別の先輩から譲ってもらったのでってことで20年近く使われていたのではと」
 
「よくもってましたね!」
 
「その前の木倒さんは夜中に工事現場で鉄骨の下敷きになっていた。事件か事故かってんで警察もだいぶ調べたみたいだったけど、結局不明。曖昧なまま決着したから、補償をどうするかというので、まだ揉めてるみたい」
 
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「うーん・・・」
 

青葉はこの話を聞いた瞬間、背中がゾクゾクっとする感覚を覚えた。この感覚は間違い無く心霊絡みである。そして筒石さんを誘惑している怪しげな女のことも連想した。そして蒼生恵が言っていた噂というのはもしかしてこれかな、というのにも思い至った。
 
前の3人の部長というのは、あの女に殺されたのだろうか? だとすると筒石さんもこのままにしておいたら、確実に殺(や)られる。
 
青葉はどう対処すべきか悩んだ。
 
事情を話して筒石さんにあの女と会わないように説得する?しかし筒石さんって見た雰囲気、全然心霊的なことを信じてないタイプのようである。こういう人に呪いとか幽霊とかいう話をしても笑われるだけという気がする。
 
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また説得に応じてくれても、無理に別れようとすると、女が怒って過激なことをする可能性もある。自分の知らない所で急襲され、《笹竹》の力だけで守りきれなかったらどうする? 戦闘力のある《海坊主》も付けるべきか?しかし2人も眷属を飛ばせば自分自身のエネルギーが足りなくなる。特に《海坊主》を使うと、こちらは走るのも辛いほどパワーを取られる。《笹竹》を使っているのは、彼女が省エネ・タイプで、自分の5%程度のパワーで動かせるからである。
 
青葉はふと千里姉のことを思った。千里は実態が見えないが間違い無く眷属を使っている。しかもかなり多数の眷属を自在に動き回らせている気がする。そのエネルギーは一体どこから来ているのだろう??
 
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午後からまたオリエンテーションがある。青葉は身体を軽く拭いただけで服を着て教室に戻った。終わったのはまた17時であった。
 
「30分仮眠する!」
と宣言して青葉はアクアの車内で横になって眠った。その後、星衣良を乗せて待ち合わせ場所のイオンまで行く。
 
食料品売場で買ってきた安い缶ジュースを開けて、フードコートの座席でおしゃべりしている内に、まず美由紀が来て、そのうち明日香と世梨奈も来たので、帰ることにする。
 
この日青葉が自宅に戻ったのは20時近くである。
 
「お疲れ様。ご飯作ってたよ」
という朋子の声に
 
「ありがとう。お腹空いた〜」
と言ってテーブルに就く。
「でもごめんねー。ご飯作るの手伝えなくて」
 
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「あんた高校時代は半分くらい作ってくれてたからね。でも大学は遠いから帰りがどうしても遅くなるし、当面は私が作るよ」
 
「ありがとう」
 
そんな会話をしながら、小型の手提げからスマホを取り出してテーブルに置いたら、着信が入っているのに気づいた。
 
発信元は080で始まっているので携帯電話のようだ。この番号は登録が無いものの、青葉はそれが★★レコードの氷川さんが使っている携帯の番号に近いことに気づいた。★★レコードのスタッフの誰かかなと思い、こちらから掛けてみた。
 

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「はい。★★レコード八雲です」
という《女声》の応答がある。
 
ああ、八雲礼朗さんだったのかと思い、
 
「おはようございます。大宮万葉ですが、何でしたでしょう?」
と青葉は答える。
 
「大宮先生、今お時間取れます?」
「いいですよ」
「じゃ、こちらから掛け直しますから」
「はい」
と言って、いったん電話を切る。
 
母には「先に食べてて」と青葉は言った。
 
すぐに八雲さんから電話が掛かってくる。
 
「こないだちょっと小耳に挟んだんですが、大宮先生って凄い霊能者さんなんだそうですね」
 
「うーん。あまり大したことはないのですが。それで口コミで頼まれた案件で私にも何とかなりそうな話だけお聞きしている状況で」
 
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すると八雲さんは言った。
 
「実はあるユニットのマネージャーが3代続けて急死していまして」
 
今日は何て日だ?と青葉は思った。こちらも3代続けてか!?
 
「どういう亡くなられかたなんですか?」
 
「最初ユニットを結成した頃から担当していた長浜さんという人がもうデビューも決まって、いよいよこれからだねと言っていた時に突然死しまして。お医者さんの診断は睡眠時無呼吸症候群ということで。確かにかなり太った人だったんですよ。私ひとりであんたたちふたりの体重と同じかもなんて、ユニットの子たちに言ってたんですよね」
 
「はあ」
 
「その次の舞鶴さんという人がデビューの直前から昨年の1月まで4年ほど担当していたのですが、実際問題としてそのユニットの方向性というのは私と彼女の2人で作り上げたようなものなんですよ」
 
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「ああ。八雲さんが担当なさっているんですか」
「今は外れてるんですけどね」
「なるほど」
 
「それで彼女はその時、インフルエンザに掛かりましてね。ただ本人はインフルエンザと思っていなくてふつうの風邪だろうと思っていたらしいです。それでマスク付けて仕事をしていたのが、あまり熱が出るからごめん今日は帰るねと言って帰ったものの翌日出てこないし、電話にも出ないので様子を見に行ったらもう冷たくなっていたんですよ」
 
「うーん」
 
 
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