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■春老(2)

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それで食事の後、車で香林坊に移動することにする。
 
「優子はタクシーか何かで来たの?」
「母ちゃんの車借りてきた」
 
「でもお母さんも大変だったのでは?」
「うん。それまで乗ってたベルタを売って、代わりにこのソリオを2万円で買ったんだよ」
「2万円!?」
「すごーい」
「40万km走っているからね」
「凄い走行距離だね」
「地球を10周走っているのか」
 

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桃香が「優子の車に若い女の子は乗せられん」と言うので、優子の車には朋子が乗って、アクアの方に千里・桃香・青葉・星衣良と乗った。
 
裏側にある駐車場のひとつに駐め、香林坊109、アトリオなどを見て回り、そのあと片町方面に流れていく。
 
「えー?こんな可愛いお店に入るの?」
「何を女装初心者みたいなこと言ってる?」
 
と、青葉が心理的な抵抗を示すような店に入っていき、主として優子と星衣良で「かぁいい」服を選んでは青葉に試着させる。
 
「青葉ちゃん、あんたスタイルはいいから、サイズでは苦労しないね」
と優子が言う。
 
「支払いは私に任せて。青葉に払わせると『こんなに高いの?』とか言い出すから今日の買物は全部私のプレゼントで」
と千里。
 
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「お姉さんもそう言っておられる。値段気にせず可愛いのを選ぼう」
 
傘も青葉が使っている傘は高校生らしいが色気が無さ過ぎるということになり、女子大生らしい少しおしゃれな傘を買った。
 
「星衣良ちゃんにも買ってあげるよ。付き合ってくれた御礼」
「ありがとうございまーす」
 

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ある程度見て回った後で
 
「フォーラスに行こうよ」
と言って、また車2台で金沢駅前に移動する。
 
西口時計駐車場に駐めてフォーラスに入る。ここでも可愛い服のあるお店をいくつも回る。
 
「なんか荷物が随分増えてきた」
「私の車でも運んであげるから大丈夫」
 
「でも結構買ったね。いくらくらい使った?」
「うーん。ここまで6万くらいだと思うけど」
「ひー」
と悲鳴をあげたのは青葉である。
 
「でもお姉さん、大丈夫?」
と星衣良がさすがに心配するが
 
「来月頭には大きな入金の予定があるから大丈夫」
と千里は答える。
 
「じゃ、あと2〜3軒行こう」
と優子が言い、結局この日は香林坊で2時間、フォーラスに移動してからも1時間以上掛けて、大量の洋服を購入した。本当に荷物がアクアだけでは乗り切れないので、優子のソリオにもだいぶ積んでもらった。
 
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「じゃ、晩ご飯食べてから帰ろう」
「入学祝いも兼用かな」
 
などと言って、金沢駅構内に移動して、加賀屋で会席料理を食べてこの日の打ち上げ(?)とした。
 
桃香は、今日はこのあと運転する必要は無さそうだというので農口酒造の山廃純米吟醸を頼んで開けている。
 
この「山廃(やまはい)」というのは近年一般的に使われている製法より熟成に数倍時間が掛かる代りに濃厚な日本酒が得られる方法だが、技術を要するし手間も掛かる製法である。
 
元々日本酒は山卸(やまおろし)という手法で作られていたのを明治時代に開発された新しい酵母でこの過程を省けるようになったので「山卸廃止」で山廃と言う。しかしその後もっと簡単な方法が開発されたため、山廃はいったん消滅した。それを1983年に鶴来町(現白山市)の菊姫が復活させた。農口酒造はその菊姫の杜氏・農口尚彦さんが2013-2014年度の2年間杜氏をした酒蔵で、今桃香が飲んでいるのは農口氏作の2014年物である。
 
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「それ美味しそう。一口下さい」
と星衣良が言う。
 
「ん?君、年齢は?」
「はたちでーす」
「はたちなら、飲んでもいいな」
と言って桃香は星衣良の杯にもお酒を注いでいた。
 
「わあ、これ美味しい!」
「若い内にこういうまともなお酒をよく飲んでおくといい。安い酒ばかり飲んでいたら、舌も悪くなるから」
などと桃香は言っている。
 
「安物大好きの桃香とは思えん言葉だ」
などと千里から言われている。
 
「私も飲みたいけど、妊娠中だからやめとこう」
などと優子は言っていた。
 

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「でも優子さんにも本当にお世話になって」
と朋子が言う。
 
「まあ桃香のファッションセンスも改良したいんだけど、まずは若い子を教育しないとね」
と優子。
「いいけど、誘惑はするなよ」
と桃香。
「大丈夫。さすがに出産までは変なことしない」
と優子は言っている。
 
「優子さんにレスビアンの話も聞きたいけど、聞いていたらいつの間にか自分がベッドの上で手ほどき受けている気がするからやめときます」
 
などと星衣良は言っている。若干酔って大胆になっている雰囲気もある。
 
「うん。こいつは物凄く手が早いから気をつけろよ」
と桃香も注意していた。
 
「私、高校時代は桃香と《北のモモ・南のユウ》と並び称されていたから」
「まあ私たちに誘惑されて道を踏み外した女子が10人は居るよな」
 
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「何か怖い話を聞いた気がした」
 

食事の後はまた2台に分乗して高岡に戻った。帰りは優子のソリオは朋子が運転し、アクアの方は青葉が運転した。最初に星衣良を自宅に送り届けた後、青葉たちの自宅に行って荷物を下ろし、取り敢えず自宅でお茶を飲んで一息つく。
 
「桃香たちはいつ帰るの?」
と優子が尋ねる。
 
「今日の最終新幹線は何時だっけ?」
「富山を21:19, 新高岡なら20:39」
「だったら今出れば間に合うね」
 
「よし。私が新高岡駅まで送っていくよ」
と優子が言うので、遠慮無く彼女に送ってもらった。
 

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「あ、そうだ。聞いた?燐子、結婚するって」
と運転しながら優子が言った。
 
「ほんと?良かった」
と桃香。
「例の去年レイプされた子か」
と千里。
 
「相手の人はレイプで妊娠して中絶したのはノーカウントだって言ってくれたらしい」
と優子。
「それは良い人に巡り会えた」
と千里。
 
「あの件では千里にも面倒掛けたね」
と桃香。
「私は何もしてないよ。冬子と政子のおかげで助かった」
と千里。
「ああ、何かお金持ちの友達から中絶代とか引越し代を借りたって言ってたね」
と優子。
 
「ところで結婚するって、相手は男?女?」
と桃香が訊く。
「あ、それは聞いてなかった。あの子バイだっけ?」
と優子。
「基本はレズだけど、女性的な面のある男なら平気みたいだよ」
と桃香。
「ほほお」
 
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「相手はオカマさんだったりして」
「そして向こうは結婚後性転換して結果的にレスビアンになったりして」
 
「まあそれは冗談だ(と思う)けど、子作りした後で夫が性転換するケースって、結構聞く気がしない?」
 
「結構そのパターンある気がする」
「稀に性転換した後で子作りするケースも」
「それ、原理がよく分からない」
 
「でもあの子、中学時代に言い寄ってきた美形のボーイフレンドに女装を唆したことあると言っていたよ。花火大会に夜だから分からないよと言って女物の浴衣着せてビアンデートしたりしてたって」
「その子、たぶん人生変わったな」
 
「うーん。さっきのは冗談のつもりだったが、冗談ではなかったりして」
「ふたりともウェディングドレスで結婚式とか」
「あ、そのパターンの結婚式はわりと聞く」
 
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「あんたたちも結婚式あげたの?」
と優子が訊く。
「あげた。ふたりともウェディングドレス着て三三九度して記念写真撮った。提出はできないけど婚姻届けも書いた」
と桃香が言う。千里は照れている。
 
「普通の婚姻届けを若干改造して、妻になる人の欄を2つにした婚姻届けね」
「あ、それいいな」
「両親との続柄の欄も、夫になる人の所は○男となっているから、そこも○女と改造」
「ほほお」
「婚姻届けには性別欄って無いけど、代わりに続柄欄があるんだよね」
「うーん。まあ長男で性別女とかは、あまり無いから」
 
「でも結婚式の半月後に桃香が浮気して破談」
と千里は言う。
 
「ああ、桃香らしい」
と優子。
 
「だから私と桃香は現時点では元夫婦」
「というのが千里の見解だが、私の見解では現在でも夫婦。指輪はそのまま持ってるし」
「あの指輪、返そうか?」
「いや、持っててくれ」
 
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「まあいいや。私は出産するまでは恋人作る気無いし」
 
「でも、どういう形のカップルでも愛し合って行ければいいんじゃない?」
「だねー。カップルの形って、カップルの数だけあるしね」
 
新高岡駅で
「赤ちゃん、お大事にね〜」
と優子に言って別れた。
 
千里と桃香はそれで最終の新幹線で東京に帰還した。
 

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青葉は入学式の翌日、4月8日は今度は本学キャンパスで、法学類の新入生向け履修ガイダンスに出席した。他の学類は午前中だけで終わるが、法学類だけは特別に朝から夕方まで、みっちり行われる。
 
6:40に家を出て伏木駅に行く。
 
青葉が各家を回って全員を乗せるのは負担が大きすぎるよと美由紀のお母さんが言い、それで伏木駅に6:45に集合して、それを拾って金沢に向かおうということになったのである。もっとも明日香は
 
「このシステムが成功するかどうかは美由紀が寝坊しないかどうかに掛かっている」
などと言っていた。
 
この日伏木駅前に車を駐めると既に集まっていた3人が乗ってきたが、この日助手席に座った世梨奈が
 
「あ、青葉が若くなっている」
と言った。
 
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「え?」
と言って、いったん後部座席に座った美由紀と明日香も降りてきて運転席の青葉の服装を見ている。
 
「おお、これならちゃんと女子大生に見える」
「なんか昨日の入学式では、父兄と間違われたと聞いたし」
 
なぜその情報がもうこの子たちに伝わってるんだ!?
 
「桃姉のお友達が『若い子がこんな服を着てはいけない。もっとちゃらちゃらした服を着るべき』と言ってさ。大量に若い子向けの服を買ったんだよ」
 
「青葉はこれまでのファッションセンスなら、社会人入学の方ですか?とか4年生から言われそうだったよね」
 
「あはは」
「これなら十分22-23歳くらいに見える」
「まだそのくらい〜〜?」
 

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服装の件は大学に行ってから教室でも言われた。
 
「今日は川上さん、若い服装してきましたね」
と珠洲市から出てきて金沢市内にアパートを借りて住んでいる蒼生恵(たみえ)ちゃんが言う。
 
「ああ、ちなみにこの子、これでも18歳だから」
と星衣良が言うと
 
「うっそ〜〜!てっきり法曹資格を取るために入って来た社会人の人だとばかり昨日は思ってました」
などと彼女は言っていた。
 

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彼女とはこの件で仲良くなってしまい、お昼休みには星衣良も入れて3人で一緒にご飯を食べ、それでおしゃべりしていた。その時、高校時代の水泳部の同輩で数物科学類に入った杏梨が学食にやってくる。
 
「青葉〜。もうガイダンス終わったでしょ? 水泳部行こう」
などと誘う。
 
「法学類は夕方までみっちりあるんだよ」
「え〜?そうなの?」
「それに私、水泳部には入らないよ。何か忙しすぎる感じでさ」
 
「そう言わずにさあ。何ならちょっと顔出して、ちょっとインカレに出て、ちょっと優勝してくれるのでもいいから」
 
「それ無茶すぎる!」
「でもインターハイに出たじゃん」
「あれはまぐれ」
「インターハイで全国入賞したんだから、インカレくらい簡単に出られるって」
「そう簡単にはいかないよ。大学生はレベル高いもん」
 
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「午後のガイダンスは何時から始まるの?」
「1時半から」
「だったら、それまで少し時間あるじゃん。とにかくちょっと顔出してよぉ。新入生は最低3人勧誘して来いという話でさあ」
「何、そのネズミ講的なノルマは?」
と星衣良が呆れる。
 
「うーん。それならちょっと顔出してそのまま辞める。顔出せば一応勧誘はしたことになるよね?」
「うん。取り敢えず、それでもいいから来て来て」
 

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それで青葉は杏梨と一緒に水泳部に顔を出したのだが、この日はすぐ午後からガイダンスに出るし、水着も持って来ていないので顔合わせだけである。
 
「先輩〜、こちら高校時代の同輩で、インターハイ800m全国7位の川上青葉です」
と杏梨が紹介すると
 
「おお、すばらしい!」
「歓迎、歓迎」
「インターハイで入賞したって、凄い実力者じゃん」
 
と何だか浮かれているようである。
 
「どこかスイミングクラブとか入ってる?」
「いいえ」
「そんな優秀な人ならちょっと物足りないかも知れないなあ。今うちは週4回1日2時間くらいしか練習してないんだけどね」
 
と部長の筒石と名乗ったガッチリした体格の4年生男子に言われるので
 
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「済みません。そんなに出られないので辞めさせて頂きます」
と言って青葉は帰ろうとする。
 
「待って待って。じゃ週2回でもいいから」
「無理です。私、バイトもしてるし、週1回アナウンススクールにも行くから時間が取れないです」
「じゃ週1回」
と筒石さん。
 
「うーん・・・・それも休むかも知れないですけど」
 
と青葉も少し妥協して、取り敢えず週1回、授業が終わったから18時までということで青葉は水泳部に顔を出すことにした。
 

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履修ガイダンスは17時近くにやっと終わった。
 
「疲れたね〜」
「星衣良は今日はどうやって帰るの?」
「バスで金沢駅まで行って電車で津幡まで行って、津幡駅から自転車」
「頑張るなあ」
「なんなら、金沢駅まで乗せていってくれたりすると嬉しい」
「津幡駅まで乗せて行こうか?」
「それはもっと嬉しい」
 
それでいったん待ち合わせ場所のショッピングセンターまで移動して店内を見てようかと言っていたのだが、星衣良が図書館に行ってきたいと言うので18時に学食で再度落ち合ってから帰ることにした。
 
青葉はその間、生協でものぞいてようかなと思っていたのだが、春休みが慌ただしかったので、ノートやシャープペンシルの芯などをまだ買っていなかったことを思い出した。それに生理用ナプキンも切れかかっていたことに思い至る。
 
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「ノートとかは生協より100円ショップとかの方が多分安いかな?」
と独り言のように言い、車は校内に置いたまま歩いて校門を出、坂を下っていった。
 

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