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■春順(7)

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「価格は?」
「一応2,534,482円でございますが・・・キャンセル品ですのでお値引きしますよ。端数も外して、税込み245万円ではいかがでしょう?」
 
「現金で払いますからジャスト200万円になりません?」
と青葉は言った。
 
「現金ですか?」
「今からATMで降ろしてきてお渡しします。保険もこちらで契約していいですよ」
「保険もですか?ちょっとお待ち下さい」
 
係の人が奥に行って、どうも店長さんらしき人と話している。店長さんが首を振っている。しばし話しているが、やがて店長さん自身が係の人と一緒にこちらに来た。
 
「保険をこちらで契約して頂いた上で、現金で今頂けるということですか?」
「ええ。ATMに行ってきて30分以内にはお渡しします」
「でしたらさすがに200万円という訳にはいきませんが、230万円ではいかがでしょうか?」
 
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「210万円とかでは?」
「うーん・・・・225万円では?」
「212万円」
「うーん。。。224万円」
「213万円」
「そのあたりが実に微妙な線なので・・・」
「店長さん、いっそゾロ目で222万円にしません?」
 
店長さんは少し考えていたが言った。
 
「女子大生さんの若さに負けました。222万円に致します」
「ではそれで」
と青葉は笑顔で言った。
 
結局30万円ちょっと値引きしてもらったことになる。
 
「あんた、桃香みたい」
と朋子が呆れて言った。
 

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それで母に書類を書いてもらっている間に青葉が母のキャッシュカードを預かり、若葉マークを貼り付けたヴィッツを運転して近くの銀行支店まで行ってお金を下ろしてきた。
 
「確かに222万円頂きました」
と言って領収証を渡してくれる。朋子はケーキと紅茶をもらって食べている。青葉も出してもらって頂いた。何だか色々アメニティももらったようで紙袋に詰まっている。
 
「あ、これ美味しい。どこのお店のですか?」
と言うと、ケーキの製造元のシールを渡してくれた。
 
「今度買ってみよう」
 
「では2月8日にお届けに参ります」
「はい、お願いします」
 

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青葉が面接を受け、即合格と言われた1月30日、千里を含む40 minutesのメンバーはさいたま市Vアリーナに来ていた。関東クラブバスケットボール選手権があるのである。40 minutesは12月の東京都大会では優勝している。今回の大会には東京都大会で2位だった江戸っ娘、千葉県大会で優勝して出てきたローキューツも参加している。
 
この日はローキューツのオーナーである冬子も、近くだしということで顔を見せていた。江戸娘のオーナーの上島雷太さんから、諸経費や打ち上げ費用などの概算として20万円預かってきたなどと言っていた。さすがに上島さんはこういう所に顔を出す余裕は無いだろう。
 
初日は1回戦と2回戦が行われる、40 minutesの初戦の相手は茨城2位のチームだったが、主力が出ることもなく快勝した。午後からの2回戦では主力が出たものの埼玉県1位のチームにこれも快勝した。
 
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江戸娘は初戦は突破したものの、2回戦で茨城1位のサンロード・スタンダーズに敗れて初日で消えることとなった。昨年の関東クラブ選手権で4位になったチームである。
 
ローキューツは神奈川県2位・埼玉県2位を連破して明日に勝ち残った。
 
この日はまた例によって3チーム合同の食事会をした。今日敗れた江戸娘も明日の5〜8位決定戦で6位以上になれば全日本クラブ選手権に行けるので40 minutes, ローキューツ双方のメンバーから「頑張ってね」と言われていた。
 
なお、今回は会場がさいたま市なので、どのチームも宿泊はしておらず、全員食事会が終わった後、電車で自宅まで戻った。一部は車の相乗りで来ていたメンバーもいたようである。千里・冬子は車で来ているメンバーに「食事会のあと最低1時間は仮眠してから出発するように」と注意しておいた。
 
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「そうそう。やっとローキューツの運営会社・社長が決まったよ」
と冬子は千里とふたりだけの時に言った。
 
「誰になったの?」
「千里も知っているよね? 細川さんのいるチームの元部長、高倉昭徳さん」
「あぁ・・・」
 
「監督の西原さんからのつながりで頼んだ」
 
ローキューツの監督・西原敏秀さんは、MM化学の元監督船越涼太さんの友人である。船越さんは高倉さんにヘッドハンティングされてMM化学の監督に就任した経緯があった。高倉さんは元はテニス選手であったが長年MM化学のバスケチームに関わったので今では充分バスケに理解がある。昨年春に退職して、今は地元の千葉に戻り塾の先生をバイト的にしながらスポーツ少年団のコーチをしていたと冬子は説明した。
 
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「どうもあそこのチーム、急速に崩壊しつつあるみたいね。船越監督も辞めたんでしょ?」
と冬子は言う。
 
「そうなんだよ。予算がかなり削られているみたい。スポーツ手当がかなり減額されているみたいでさ」
と千里も答える。
 
「細川さん、他の実業団なり、あるいはBリーグに行かないの?」
「私もそれ勧めているんだけどねー。会社に恩があるからと言って」
「でもスポーツ選手の旬は短いよ。できる時に挑戦しなきゃ」
「だよね〜」
 
「それ千里もだけどさ」
 
千里はドキっとした。そうなんだよな。自分はいつも逃げてばかりいる、と千里は冬子の言葉を聞いて思った。
 
「だから私は千里がレッドインパルスに移籍すると聞いて、よし頑張れと思ったよ。千里は、いつ休んでもいいというポリシーののんびりしたチームに居たら才能の持ち腐れになってしまう。楽しむスポーツも悪くないけどさ。千里はもっと厳しい環境に身を置いた方がいいと思っていた。プロは競争が大変だろうけど、千里ならきっと生き延びていけるよ」
 
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「ありがとう」
と千里は笑顔で答えた。
 

「あとさあ」
と冬子は言った。
 
「ソフト会社に勤務してます、なんて嘘はいい加減やめよう」
「それ嘘ってことになってんだ!?」
 
「だって、千里が会社に行っているの見たことないし、そもそも行く時間があるとはとても思えない。千里の友だちに聞くとみんな千里にプログラムが書ける訳無いと言うし、千里って凄い機械音痴だし、結論としては千里はソフトハウスなんかに勤務してない」
 
「うむむむ」
 
「それにさ、千里、今持っている名刺の種類、見せてよ」
「うーん・・・」
と言って取り出した名刺入れから名刺を出しみる。
 
40 minutesの代表の名刺、レッドインパルスの選手の名刺、作曲家・醍醐春海および作曲家・鴨乃清見の名刺、越谷市のF神社の副巫女長の名刺と出てきた。
 
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「そのレッドインパルスの名刺は初めて見た。ちょうだい」
「OKOK」
と言って渡す。
 
「で、そのソフト会社の名刺が無い」
「あ、しまった。今手元に無いや」
 
実は10月に一度営業に出た時に相手に渡して切れてしまった後補充するのを忘れていたのである。
 
「やはり勤務実態無いのでは?」
「うーん・・・」
 
「千里が男子中学生・男子高校生してましたというのと同じくらいの大嘘だね。千里の中学高校時代の写真が女子制服を着たのしかない以上、千里はたぶん女子中学生・女子高校生をしてた」
 
「その言葉、そのまま冬に返すね」
 

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翌日。1月31日。この日は準決勝、決勝、および順位決定戦が行われる。なおこの大会は6位以上が3月下旬の全日本クラブ選手権(愛媛県今治市)に行けるので、昨日勝ち残った4チームは全て、今治に行けることは確定している。
 
試合はまず午前中に40 minutesが群馬県のチームを、ローキューツがサンロード・スタンダーズを倒して決勝戦に勝ち上がる。それで午後からは、ローキューツと40 minutesでの決勝戦ということになった。
 
両者の対決はちょうど1年前の関東クラブ選手権・準決勝以来である。この1年江戸娘とはたくさんぶつかっているのに、隣の都県というだけでここまで対戦が少ないというのも不思議だ。
 
昨年は82-92で40 minutesが勝ったので、今年ローキューツ側はリベンジに燃えている感じだった。しかし今日は途中で向こうは戦意喪失する選手まで出てくる事態となる。この1年の間に両者には圧倒的な実力差ができていた。
 
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結局34-67のほぼダブルスコアで40 minutesが勝った。
 
夕子と薫、揚羽と千里で握手した後で、薫が
「負けた。もう引退しよう」
と言ったのに対して、揚羽が
「この状態での引退は許さない。また鍛え直そうよ。クロスリーグ始まる4月までに。でないと、リーグ戦で一勝もできないという悲惨なことになるよ」
と言い、薫も
 
「そうだなあ。気を取り直して頑張るか」
と言っていた。
 
お互い個人的には知り合いばかりなので、そのあとはあちこちでハグしあった。
 

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別会場で行われた5−8決定戦・5−6位決定戦で江戸娘は2連勝して江戸娘はこの大会5位となり、江戸娘も全日本クラブ選手権に行けることとなった。
 
大会後は、またまた40 minutes, ローキューツ、江戸娘の3チーム合同の打ち上げをして、お互いに親睦を深めた。
 
「しかしローキューツと江戸娘の姥捨て山だったはずの40 minutesが結果的にいちばん強くなってしまうとは」
という声も元ローキューツで現在40 minutesに居るメンバーから出る。
 
「女子はどうしてもいったん結婚とかで現役引退するタイミングあるからね」
「そういう選手が復帰して集まったのが40 minutesだから」
「それ以外に元のチームから諸事情で放り出された選手もいる」
 
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「既婚選手多いし、子連れ選手も多いし」
「練習場はしばしば託児所と化している」
 
「ね、ね、ローキューツさん」
と江戸娘の青山玲香主将が、ローキューツの原口揚羽に声を掛ける。
 
「クロスリーグは火曜・水曜の夕方なんでしょ? もし良かったら木曜の夕方とかにうちとそちらで練習試合やらない?入場料は無しで。うちは資金も組織も無いからクロスリーグには参加できないけど、適度な練習相手が欲しいなと思ってさ」
 
「あ、それは歓迎。うちも今のままだとクロスリーグのお荷物になりかねんと思ってた。少し鍛えなきゃ」
と揚羽は言ってから
「ね、キャプテン、いいよね?」
と薫に訊く。
「あ、うんうん」
 
「あれ〜?ローキューツって揚羽ちゃんがキャプテンじゃなかったんだっけ?」
「いや、薫がキャプテン」
「ごめーん。勘違いしてた」
「ああ、影が薄いんだな」
と水嶋ソフィアが言っていた。
 
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「私こそ高校時代はベンチを温めてるキャプテンとか言われたのに」
と揚羽は言う。
 
「揚羽は人をまとめるのがうまいからキャプテンにしたんだよ」
と暢子が言うと
「じゃ、私、やはりキャプテンは揚羽に譲ろうかな」
と薫が言い出す。
「薫はカリスマで頂点に君臨するんだよ」
と千里がフォローした。
 
「君臨すれども統治せず?」
などと薫は自虐的に言っていた。
 

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