広告:メイプル戦記 (第1巻) (白泉社文庫)
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■春暁(8)

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両親が弁護士も頼んでくれたので、あらためて病院で完全に女であるという診断書を書いてもらい、親も一筆書いた申立書とともに家庭裁判所に提出。12月には性別の訂正をすることができた。これで星良は三男から長女になった。
 
名前も変更できるということではあったが、“あきら”は女性でも時々ある名前だから問題ないと本人がいうので変更しない(*2)ことにした。
 
(*2)物凄く微妙な話なのだが、半陰陽のケースでは性別は“変更”ではなく“訂正”される。しかし半陰陽であったとしても、名前は“訂正”てはなく“変更”しなければならない。
 
それは性別に関しては出生届の時に性別を誤って届けていたためと判断されるのだが、名前については親が男児であると思って男名前を付けたのであれば、名前に関しては“届け出の誤り”があったとは認められないので、訂正ではなく変更によらなければならないのである。
 
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ただし、例えば出生直後に男児と思って男名前で届けたものの、生後数日中に染色体検査などにより実は女児だったと判明したようなケースでは、性別・名前ともに“訂正”が認められる場合もある(半陰陽ではないが、鈴子の子供の弓生のケースはこれに近い)。
 
一般に出生後ある程度の期間が経ってしまうと、その名前で生きて来た実績があるため、単純な訂正は認められず、変更の手続きが必要である。
 

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戸籍の性別が訂正された時点で、父は勤務先に届けて性別が女に訂正された保険証を発行してもらい星良に郵送した。また良に掛けている生命保険は向こうで性別を訂正しておくと言っていた(掛け金は変わらないらしかった)。
 
星良は訂正された戸籍謄本を提示して、まずは運転免許証の性別変更をおこなった。性別変更届けはふつうに免許センターの受付に何枚も用紙が置かれていたのでびっくりした。同時に下の名前も変更できるようになっていた。
 
旧性別 男
新性別 女
旧名前 良
新名前 同上
 
ということで戸籍謄本を添えて申請したら、書類を確認しただけですぐ手続きは終わった。性別は元々免許証の表面には記載されていないので、内部のICのデータと警察のデータベースだけ書き換えたようであった。
 
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大学の学生課でもちゃんと性別変更届け(氏名変更届と共用)の用紙があったので、それに記載して提出した。過去に20人ほど性別を変更した人がいると学生課の人は言っていたが、未成年では初めてと言われた。住所変更などは学内ネットでもできるのだが、性別変更はさすがにネットにはそういう機能が無かったので、学生課で処理してもらった(結婚などによる苗字変更も窓口対応らしい)。
 
しかしこれで星良は来春からは健康診断も女子学生として受けられることになった。
 
そういうわけで2020年1月中には、星良は全ての書類を女に訂正することができた。むろんバイト先では最初から女ということになっているし、様々な会員登録も女で登録しているので、変更しなければならない所はそう多くは無かった。
 
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銀行口座も大学に入ってからこちらの銀行に口座を作る時、性別女にして、運転免許証を提示したらそのまま作れたので、今回修正の必要は無かった。運転免許証には性別の記載が無いのが、便利な所だった。
 

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マリナは先日も名前の変更であちこち手続きをしたばかりだったのだが、また同様の手続きをするハメになった。まずは運転免許証の書き換えに行き、パスポートも再度更新の手続きをする。結局11月に取ったパスポートは1度使っただけで、また新しいものに切り替わることになった。
 
保険会社からは「毎月の保険料が少し高くなりますが」と言われたが、それを了承したら、すぐ変更してもらえた。過去に支払った保険料の男女差額については、支払う必要はないと言われたが、このあたりは保険会社によっても違うかも知れない気がした。
 
(一般に死亡保険は男性の方が保険料は高く、医療保険は女性の方が保険料は高いところが多い。同額の所もある)
 
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国民健康保険・マイナンバーカードもあらためて変更の手続きをしたが、結局11月に受けとったマイナンバーカードは1度もどこにも提示しないまま新しいものに切り替わった。
 
「短期間に2度こういう手続きするって、本当に面倒」
とマリナは思ったのだが、近い内に3度目の手続きをするハメになることをマリナはまだ認識していない。
 
クレカや銀行口座は放置でもいいかなと思ったのだが、水崎学名義のままになっている口座はこの際、全部マリナ名義に変更することにし、各銀行に書類を送って手続きをした。たいてい郵送で済んだが、2行だけ店頭に行くことになった。
 

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マリナは徳島でのできごとを思い出していた。
 
あの時、温泉で醍醐春海さんを見て“霊的な力”が暴走していることにはわりとすぐ気がついた。ただ、どういう作用があるかまでは深く考えなかった。
 
お風呂の中で彼女と10分くらい話していたが、あの時、ケイナ・マリナ・醍醐さんと並んでいた。これは女湯に戸惑っているケイナを女性からできるだけ遠くするために自分が醍醐さんの近くになるようにしたからである。
 
それで入浴中にマリナは1回醍醐さんと身体が“接触”していた。
(醍醐さんの向こう側の湯船に入ってきた女性に譲るようにして、彼女がこちらに寄ったため)
 
そして別れ際に、ケイナもマリナも醍醐さんと握手をした。
 
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つまり、ケイナは1回、マリナは2回、彼女と接触していたのである。
 
ホテルに戻ってシャワーを浴びようとしたら、自分の身体が男になっていたのでびっくりした。とりあえずシャワーする前にトイレしようと思い、久しぶりに立っておしっこしようと思ったのだが、便器の前に立ったら違和感を感じた。それで結局マリナは座っておしっこをした。
 

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しかし男性器のある状態でおしっこしていると、何か余計なものを経由しておしっこが出ている気がした。女の身体ならもっとストレートに出ていたのに。
 
マリナは34年間生きて来て、特に女の子になりたいと思ったことは無かった。ずっと女装で生活していても、あくまでそれはただのパフォーマンスのつもりだった。ところが10日前の定山渓温泉で、突然女の身体に変わってしまった後、その後の10日間でマリナは“女の身体”に味をしめてしまった。
 
これいいじゃん!ずっとこのままでもいいな。
 
などと思っていた。
 
でも男に戻ったんだから、自分はやはり男として生きていかなきゃ。
 
と考えながらバスルームに移動して湯船の中でシャワーを浴び始める。ここしばらく女の身体になっていたけど、私男だし。
 
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それで最初に久しぶりに見た、ちんちんの皮を剥いて洗っていたら、これ、なんか邪魔だなと思った。これが無いほうがスッキリしてて、いい気がした。割れ目ちゃんの中を洗うの悪くなかったな、などと思うし、洗っていた時の感触が脳内で蘇る。でもああいう体験はもうできない。
 
そんな微妙な気持ちでシャワーを浴びていたら、その洗っていたちんちんが少し小さくなった気がした。性的な興奮が落ち着いて小さくなるのではなく、それ以上に小さくなる。まるで寒い冬に縮こまってしまうような感じのサイズになる。まだ秋なのに?
 
そしてあまりにも小さくなって、皮を剥けなくなってしまった。あれ〜?と思っていたら、ちんちんは更に小さくなり、まるで小指の先くらいのサイズまで縮んでしまった。
 
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なんか変だ、とここに至って、やっとマリナは“異変”に気づく。
 
ちんちんはどんどん小さくなり、皮膚の中に埋もれてしまった。そして埋もれたあとの穴が少しずつ縦に広がっていく。
 

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これまるで女の子の割れ目ちゃんみたいと思ったが、睾丸も体内に入り込み、陰嚢も縮んでそれが中央に凹みができて、ちんちんが埋没してできた割れ目とつながってしまった。
 
その時マリナは自分の胸が膨らみかけているのに気づいた。定山渓に行くまでは平らだった胸が、定山渓で突然女の子みたいに豊かなバストができていた。しかしさっきこのバスルームに来た時は男のように平らになっていた。
 
それが再び膨らみ始めたのである。乳輪もいったん小さくなっていたのが大きくなり始めている、
 
お股の方は、割れ目の内部が、最初は単なる凹みだったのが、奥の方に穴ができてどんどん深くなっていく様子だ。体内に吸収された睾丸は体内で移動しているのを感じる。下腹部に手を当ててその移動を感じ取っていたら、やがて、どうも通常卵巣のある位置まで移動したようである。
 
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そしてマリナは体内に女性ホルモンが分泌され始めたのを感じた。
 
マリナは自分が再び女になったことを認識した。
 
自分の身体がほんの10分ほどで男から女に変わるのを目撃する人なんて、きっとそうそう居ないだろう、とマリナは思った。むしろよく自分が冷静でいられると自分に感心した。
 

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そして考えていて、性別の変化はおそらく、定山渓での丸山アイとの接触、そして今日の醍醐春海との接触によって起きたのではと想像した(後に大宮万葉と会話していて、そのことを確信した。大宮は特に明言はしなかったが)。
 
そしてあらためて考えてみると、自分は浴槽の中で1度醍醐と接触していて、あがり際に握手したから、2回接触している。だからいったん男に変わって、また女に変わったのではと思った。
 
しかしケイナは1度握手しただけである。だからたぶんケイナは男に戻っているだろうと思った。
 
それでマリナはお風呂を出てケイナと交替した。お風呂に入ったケイナは男に戻っていることに気づき歓声をあげて裸のまま出て来て、わざわざ自分の男性器をマリナに見せた。
 
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「お前も男に戻った?」
「うん。まあ」
 
確かに自分も男に戻ったもんね。でも再度女になっちゃったけど。
 
「良かったなぁ。男に戻れなかったら死にたい気分だったよ」
と言って、ケイナはわざわざマリナの目の前でオナニーして射精した後でまたバスルームに戻っていった。
 
よほど嬉しかったんだろうなと思った。
 

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さて自分はどうするかなと考えたが眠いので取り敢えず寝た。
 
そして翌朝起きて、トイレに行き、昨日の夕方までと同様に女子の方式でおしっこをしていて「このままでもいいかな」という気になった。多分、丸山アイか醍醐春海の所に行けば、再度性転換して男に戻してもらえる気はした。でも女の身体も悪くない気もした。
 
それでマリナは女の身体のままでいることにしたのであった。
 
正確にはその後、数日迷っていたのだが、母が勝手に自分の名前を「学」から「マリナ」に改名してしまったので、名前が女になったら、身体も女でいいような気がした。
 
一方ケイナは徳島の朝、立っておしっこをして「立ち小便できる喜び」をマリナに熱く語っていた。
 
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ただふたりとも声は女の声のままだった。それはやはり醍醐さんは暴走状態で無意識に霊的な力を行使しているから、性転換が不完全だったのかもという気もした。
 
 
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