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■春宵(14)

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雨宮先生は唐突に言った。
 
「そうだ。タカ、ローズクォーツで10年くらい前にリリースした『Rose Quarts Plays Sex Change』をこの子たちにも歌わせない?」
 
「10年前ってことはないです。あれは2014年だから、5年前ですよ」
とタカは答える。
 
(現在は2019年11月15日である)
 
「せっかくタカが性転換するものと思ってタカに歌わせたのに、一向に性転換しないんだもん。実際に性転換したばかりのこの子たちに歌わせたら、反響があると思うよ」
 
と雨宮先生は言う。
 
ケイナはまだ酔い潰れて寝ているが、マリナは嫌な顔をする。
 
「ついでにさ」
と雨宮先生は言った。
 
「当時、さすがにこの歌詞はまずいのではと氷川が言って歌詞を改変した所があったじゃん。あれをオリジナルに戻そうよ」
 
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「賛成!あれ不満だったのよ」
とマリが言っている。
 
「それとタイトルも元に戻す」
「それも大賛成」
 
マリは大喜びしているが、ケイは頭を抱えている。マリナは後でケイナにどう説明しようかと悩んだ。
 

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そういう訳で急遽『Rose Quarts Plays Sex Change −性転換しちゃいました』の制作が決定したのであった。曲目ラインナップは↓である。全曲、作詞作曲はマリ&ケイである。
 
『女子力向上委員会』
『ペティコート・パニッシュメント』
『お化粧しようね』
『去勢しちゃうぞ』(『After 1』収録時は『虚勢しちゃうぞ』)
『胸を膨らませる君』
『美少女製造計画』
『男子絶滅計画』
『女の子にしてあげる』
『邪魔な物は取っチャオ』(前作では『取っチャオ』)
『もうおちんちんは要らない』(前作では『もう要らない』)
『お股は軽やかに』(前作では『軽やかに』)
『ハサミでチョキン☆』(前作では『改造貯金計画』)
 
「だけど、完全に同じ曲のラインナップではゲイが無いわね。何か追加するような曲無いかしら?」
と雨宮先生が言うと
 
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「ぜひこれを加えて」
とマリが言って、テーブルの中から1枚の紙を出してくる。
 
「『珠と鉾の歌』というの。アクアに歌わせようとしたら拒否されたのよ」
とマリは言っている。
 
「それ私たちもお断りしたはずですが」
とマリナは嫌な顔をして言う(2015年秋のことである)が、歌詞を見た雨宮先生は
「これ凄くいい。是非入れよう」
と言った。
 
ケイもマリナも頭を抱えた(ケイナはまだ寝ている)。
 
珠(たま)と鉾(ほこ)の歌(伏字解除版)
 
珍鉾、切って女になろう。
珍鉾、珍鉾、ばーいばい。
禁珠、取って男をやめよう。
禁珠、禁珠、いーらない。
乙杯、育てて女になろう。
乙杯、乙杯、ほーしい。
満幸、掘ってお嫁さんになろう。
満幸、満幸、作りたい。
 
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雨宮先生は「他の言葉はまだいいけど」と言い「満幸」だけ『脇菜』に変えようと提案し、マリも了承した。更に「禁珠」も「玉珠」または「紅顔」の方がいいと言ったが、これは再度検討することになった。
 

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なおこの歌詞を載せる曲は、ケイが制作を拒否したので、雨宮先生がマリナに「あんたが書きなさい」と言った。マリナは一週間がかりでラテンっぽい曲をつけた。それでこのアルバムの中でこの曲だけがマリ&ケイではなく、マリ&マリナとクレジットされた。
 
それで前代未聞の曲がメジャーレーベルから発売されることになったのである。発売後、全国のほとんどの中学・高校で校内放送禁止になった。テレビやラジオでも全局で放送禁止曲に指定された。
 
でもカラオケで物凄い数歌われて(かなり酔ってきた所で歌われる歌になった模様)、マリナは目をこすりたくなるような金額の印税収入を得ることになる(最初JASRACから通知があった時、2桁も桁を読み間違えた)。
 
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「でも私、ケイナにどう説明すればいいのか」
とマリナが悩むように言うと
 
「寝ているのが悪いのよ。罰として、折角取り付けたちんちん、もう一度切ってもらって再度女になってもらおうか」
などと雨宮先生は言っている。
 
もしケイナが再度男性器を失ったら、今度こそ発狂するだろうなとマリナは思った。
 
「何なら匿名で歌う?」
とマリが言う。
 
「バレバレだと思いますが」
「例えば“無いさ+ありん”とか」
「どこから、そんな名前が?」
 
「だって、ケイナちゃんは、ちんちんがあって、マリナちゃんはちんちんが無いから、“無いさ+ありん”。最初“ありさ+無いん”というのも考えたけど“ありさ”という名前は実際にそういう名前の女の子が結構いるから悪いかなと思って」
とマリは説明する。
 
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マリとケイの音源制作やライブなどで音響の管理をしている彼女たちの親友も有咲さんである。
 
「今年のローズクォーツのボーカルは私たちだから、ローザ+リリンのままでいいと思いますよ」
 
「うん、それでいい」
と雨宮先生も追認した。
 

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雨宮先生は言った。
 
「だけど、女の格好して暮らしているメリットはドラッグストアとかで生理用品を買っても変に思われないことだよね。60歳くらいになって買ってたらさすがに変に思われるかもしれないけど」
 
「何を唐突に」
 
「あんたたちも生理用品買ってるでしょ?」
と雨宮先生はマリナやケイを見ながら訊く。
 
「私はナプキン使いますよ。実際生理あるから」
とケイ。
 
「私もナプキン普通に買ってますよ。生理の処理に必要だから」
とマリナ。
 
「あんたたち、実は本当の女なのでは?」
 
「さあ、どうでしょう」
とマリナは曖昧な言葉を言っておく。
 
「ケイナにも生理あるの?」
「事務所からは若い女に生理があるのは当然だから、50歳になるまでは毎月生理の処理をするように言われていますが、あの子適当だから、思い出したらナプキンつけてるみたいですね。だけど夏は蒸れるから、夏の間は生理止めてるみたいですが」
 
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「私も夏の間は生理がこないことにしてる」
と雨宮先生が言うので
 
「なんか都合のいい身体ですね」
とタカが言っていた。
 
「あんたも生理用品買うでしょ?」
「私は買いませんよぉ。私は男だから生理無いし」
とタカ。
 
「やはり、本当に生理があるらしい、ケイやマリナは本物の女確定だな」
と雨宮先生は言っていた。
 
ケイは不思議そうな顔でマリナを見ていた。
 

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なお、今年ローズクォーツは夏に『Brass Quarts』をリリースし、年明けくらいに『Rose Quarts Plays Pops』をリリースする予定だったが、これは3月くらいまで延期することになった。それでローザ+リリンのスケジュールもかなり詰まってきた。
 
『Rose Quarts Plays Pops』の収録候補曲:
 
The 5th Dimension "Aquarius" from the musical "Hair"
Starship "Sara" (セーラ)
Sylvie Vartan "La plus belle pour aller danser" from the movie " Cherchez l'idole" (アイドルを探せ)
Wilma Goich, "In un fiore" (「花のささやき」マインブロイのCM)
Michel Polnareff "Tout, tout pour ma cherie" (シェリーに口付け)
Mireille Mathieu "Corsica"
The Carpenters "Top of the world"
Olivia Newton-John "Xanadu"(ザナドゥ)
The Drifters "Save the Last Dance for Me"(ラストダンスは私と)
The Nolans "I'm In the Mood for Dancing"(邦題:ダンシング・シスター)
Arabesque "Parties In A Penthouse" (邦題:恋のペントハウス)
B. J. Thomas "Raindrops Keep Fallin' on My Head" (雨だれこぞうさん)from the movie "明日に向かって撃て(Butch Cassidy and the Sundance Kid)"
The Shocking Blue "Venus"
Gazebo "I Like Chopin"
Dolly Parton "9 to 5"
Elaine Paige "Memory" from the musical "CATS"
Barbra Streisand "Woman in Love"
The Supremes "Stop In The Name Of Love"
Leon Russell "This Masquerade"
t.A.T.u. "All the things she said"
Stevie Wonder "I just called to say I love you"
Taylor Swift "Love Story"
Avril Lavigne "Girlfriend"
Adele "Skyfall"
Carly Rae Jepsen "Good Time"
 
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雨宮先生はその日の夕方には、★★レコードを訪れ、町添社長と直談判してこのアルバム『Rose Quarts Plays Sex Change "Reboot" 性転換しちゃいました』の発売を認めさせてしまった。氷川さんが頭を抱えていたが、町添社長だからこそ通った企画だろう。村上さんなら絶対に拒否していた。
 
「よくOK取れましたね」
とまだケイのマンションに居残りしていたタカが呆れたように言った。
 
「バーターでローズクォーツのベスト盤を出すことになったから」
「何です、それ?」
 
「ローズクォーツも随分長く活動してきているのに、まだベスト盤を出したことなかったからね。出してもいいのではないかと」
 
「それいつ録音するんです?」
 
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マリナも困惑している。『Rose Quarts Plays Sex Change』の制作が割り込んだことで、スケジュールにはほとんど空きが無くなっている。
 
「ボーカルは歴代の代理ボーカルに歌わせる。ローズ+リリー、鈴鹿美里、覆面の魔女、Ozma Dream、ミルクチョコレート、アンミル、メグとノン、透明姉妹、ローザ+リリン。おっ、来年は10代目じゃん」
と雨宮先生。
 
「よく全部言えますね」
とマリナは感心して言ったが
 
「ローズ+リリーも代理ボーカルなんですか?」
とワーキングデスクで卒論を書いていた大町ライトが質問する。
 
「世間ではそう思っているよ」
と雨宮先生は言った。
 
「実際、ローズ+リリーがローズクォーツのボーカルを務めたのは、2010年の夏から2011年夏までですからね。その後は、ローズ+リリー自体の活動が再開されたから、ローズクォーツの方にはあまり参加しなくなっていますし」
とマリナまで言っている。
 
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「そうそう。ローズ+リリーがローズクォーツのボーカルを務めたのは、2010年8月の『萌える想い』から2011年7月の『夢見るクリスタル』まで。ローズ+リリーはその直後の『夏の日の想い出』で復活して独自の活動を再開している。2012年以降は2人はローズクォーツの活動からは離れたからローズクォーツの番組にも出なくなったし、音源制作も全て別録りになったはず」
と雨宮先生。
 
「うーん。私の見解とは違うのだけど」
とケイは言っているが、タカの方は
 
「先生の御認識でよいと思います」
と言っている。
 

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ここで、夜間のお留守番役の左倉アキが来たので、大町ライトは帰宅する。もっともアキにはケイが「ここは大丈夫」と言ったので、アキは奥の部屋で休んだようである。
 
「結局、既存音源で構成ですか?」
とタカは尋ねた。
 
「まあそういうことになるね。9組しか居ないから、ローザ+リリンの声で3曲くらい新規に録音して補充すればよい」
 
「まあ3曲くらいなら頑張りますよ」
とマリナも言った。
 
「だけど本当にローザ+リリンは頑張っているね。凄く精力的に活動しているみたい。ローズクォーツも今年は活動が普段の2〜3割増しになっているみたいだし、それに加えて、よくバラエティに出ているし。君たちが頑張っているから、私とマリも負けずに頑張らなきゃという気持ちになるよ」
 
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とケイが言う。
 
「それは恐れ多いです」
とマリナが言ったが、
 
「下手すると、doces flocos と doces flores みたいな関係になっちゃったりしてね」
と雨宮先生。
 
「ああならないように頑張りますよ」
とケイ。
 
「なんでしたっけ?」
とタカは尋ねる。
 
「元々は doces flores という女の子2人のデュオがいたんだけど、それのそっくりさんで doces flocos という男の子のペアを別のプロダクションが売り出した」
 
「男の子なんですか?」
 
「そうそう。でもあまり男っぽくなると、そっくりさんとして売れなくなるからといわれて、速攻で去勢されちゃったけどね」
と雨宮先生が言うと、やっと起きてきていたケイナか「ひぇー」と言って、お股を押さえている。
 
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「まあブラジルは過激ですね」
とケイ。
 
「ところが、このそっくりさんのdoces flocosの方が大きく売れてしまったんだよ」
「ああ」
 
「それで最近は両者はいつも組んでライブをする。あくまで、そっくりさんのdoces flocos が前座で、doces flores が真打ちという建前。でも演奏時間は、doces flocos が2時間歌ったあと、doces flores が15分歌うとか。ギャラもそっくりさんの doces flocos のほうが 本家の doces flores の10倍くらいもらう」
 
「完全に逆転してますね」
 
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