広告:まりあ†ほりっく 第6巻 [DVD]
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■春宵(3)

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「それで番組のスタッフで話し合ったんだけど、この番組でふたりの結婚式をしてやろうよということになったのよ」
とケンネル。
 
「そんなの別に要りません」
とマリナ。
「遠慮しないでいいって。だってマリナちゃん女の子になったんだから、普通の男女の結婚じゃん。何も問題無いよ」
とケンネルが言うと
「男同士の結婚、女同士の結婚も今時(いまどき)珍しくないけどね」
と相棒のチャンネルが突っ込む。
 
「じゃお支度するから、マリナちゃんこちらへ」
とアシスタントの内野音子(うちのねこ)がマリナの手を引いて退場する。マリナの手を握った内野は
「マリナちゃんの手って、女の子みたいな手だね」
と言った。
「それわりと昔から言われてた」
とマリナも認める。
 
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「やはり10代の頃から女性ホルモン飲んでたの?」
「そんなの飲んだことないけど」
「いや隠さなくてもいいよ」
「隠してないけど」
 
それでマリナたちは退場し、しばらくネルネルの2人とケイナ・タカ子とでトークをしていた。7-8分経って、もう番組の放送時間もあと少しという時間になった所で花嫁姿の“マリナ”を内野音子が連れてくる。
 
純白のウェディングドレスを着て、白い手袋をし、顔にはヴェールも掛けている。
 
「さあ、ケイナちゃんこちらへ」
とチャンネルが促し、2人は並んだ。
 
「じゃ俺が牧師役してやるよ」
とケンネルが言い、2人の前に立つ。ちなみにケイナは普通のブラウスとスカートという格好である。
 
「ケイナちゃん、契約上男の格好ができないからタキシード着せられないし、そのままの格好で御免ね」
「その男の服が着られないというので色々困ることもあるんですけどねー」
と言いつつ、マリナと並んで立った。
 
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バージンロードを並んで歩いて、聖書らしき本(実は国語辞典)を持ち、黒い牧師っぽい服を着たケンネルの前まで行く。
 
「新郎ケイナ、あなたはここにいるマリナを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」
とケンネル。
 
「まあいいよ。はい」
 
「新婦マリナ、あなたはここにいるケイナを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」
 
“マリナ”は小さな声で「はい」と言って頷いた。
 
「それでは誓いのキスを」
 
「そんなことするの?」
とケイナが言うが、
「あんたたち、いつもキスしてるじゃん」
と内野が言う。
 
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ローズ+リリーのケイとマリがライブの時にしばしばクライマックスでキスするので、その真似でケイナとマリナもだいたい自分たちの芸ではキスする。たぶんケイナとマリナは、ケイとマリよりよほどたくさんキスしている。
 
「そうだけどね。じぉキスするか」
と言ってケイナはキスするためにマリナのヴェールを揚げた。
 
仰天して飛び退く!
 
カメラはウェディングドレスを着て、お化粧までしている、芸人クラウドの顔、そして世にも恐ろしいものを見たような顔をしているケイナの表情を映して番組は終了した。ちなみにテレビの左隅のコーナーにはワイプ表示で普段の表情のマリナの顔が映り
「私たち本当に結婚とかしてないから、お祝いとかも不要だからね」
と語って放送は終了した。
 
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ちなみにネットでは「お化粧した芸人クラウド自体が放送事故だ」という声が多かった。
「あれ自分で化粧してるよな?」
「うん。女性がメイクしてあげたのなら、あそこまで不気味にはなってない」
 
翌日までにネットには花嫁姿の芸人クラウド、お化粧した芸人クラウドのスクリーンショットが“閲覧注意”の注意書き付きで大量に転載されることになる。
 
「でも芸人クラウドって意外に背が低いんだな」
「いや、マリナちゃん172cmだったはず」
「あれ?そんなにある?」
「ケイナが176cmくらいあるから、小さく見えるよな」
「なるほどー」
 
「ところであれ、ケイナと芸人クラウドが結婚したことにならない?」
「そんな気はする。ケイナは重婚だな」
「そういう問題か?」
 
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「芸人クラウドも性転換して女になったりして」
「あいつは性転換はやめたほうがいい」
「女では裸になれないしね」
「そういう問題か?」
 
「でもモリマンは女だけど脱いでた」
「モリマンはトークもちゃんとできてたもん」
「うん。モリマンは面白かったけど、芸人クラウドはトークが詰まらん」
 
「そういえば最近、芸人クラウドは番組であまり裸にならないね」
「8月の“痴漢”の放送でBPOからクレームが入ったらしいよ。それで当面裸芸は禁止になっちゃったらしい」
「しかし裸になる以外芸が無いのでは?」
「まあ消えるのは時間の問題と思ったけどな」
 
多くの人が芸人クラウドは一発屋ですぐ消えると考えている。本当に全裸になる以外のネタを持っていなかった。
 
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鈴鹿美里のツアーは初日横浜のみなとみらいフューチャーホールに始まって、どこも満員の中、2人は熱唱していた。
 
9/14-16 は新幹線移動で横浜→高崎→金沢
9/21-23 も新幹線移動で浜松→神戸→福岡
9/28-29の札幌・仙台は前日に札幌に入り、翌日午前中に仙台に移動したので札幌に2泊している。10/5-6の那覇・熊本も前日に沖縄に飛び、翌日午前中に熊本に移動して沖縄に2泊しているが、どちらも天候不順で飛行機が飛ばなかった場合に備えての日程である。万一の場合は仙台・熊本は中止・払い戻しにするつもりだった。
 
そして10/12-14は大阪・高松・広島という日程である。12日の朝から大阪に入り、夕方ライブしてその日は大阪市内のホテルに泊まる。12日は高松なので朝から四国に移動した。
 
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「ライブは夕方からだし、トークのネタ作りに善通寺か金比羅さんでも見てくる?」
「金比羅さんは階段で疲れてライブする体力が無くなるかも」
「それは困る。じゃ善通寺にでも行って来ようか」
 
それで鈴鹿と美里は付き人の男の娘・クララちゃんと一緒に“女の子3人”で善通寺に行ってくることにした。
 
「外見的には女の子3人なのに戸籍上は女の子は1人だけって凄いね」
などと鈴鹿は言っている。
 
新幹線と特急うずしお13号(徳島行)で瀬戸大橋を渡り、12時すぎに高松駅に到着した。駅構内で讃岐うどんを食べてからレンタカーを借り、クララの運転で善通寺まで行く(鈴鹿と美里もドラマなどで運転するシーンを撮ることがあるかもということで免許を取っているが通常は運転禁止)。マネージャーの前鹿川さんはバンドの人やスタッフと一緒にすぐ高松市内の会場入りして準備を進めるということだった。
 
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善通寺に到着したのは14時頃である。ガイドさんを頼んで境内を案内してもらう。それで一通り見て、境内で少し休み、15時半くらいになるので、そろそろ高松に戻ろうと行っていた時、近くに人だかりができている。
 
「何だろう?」
と思って見ていると、お遍路姿の女性が多数の参拝客と握手している。
 
「あれは作曲家の醍醐春海先生じゃん」
と美里が言う。
 
直接曲を頂いたことはないが、知らずに歌っているかもという気はする。醍醐先生は他人名義でのゴーストライトが異様に多いのである。その筋では“ゴーストライターの達人”と呼ばれていて、本人より本人っぽい曲を書いてしまうらしい。
 
クララが近づいて行って様子を見てきた。
 
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「醍醐先生、歩いてここまでお遍路してきたらしいです。徳島の霊山寺を先月中旬に出発して、高知・愛媛と歩き続けてここまで来て、あと少しで四国一周完了らしいですよ。そんな凄いことしてきた人とは握手したら御利益(ごりやく)があるかもといって、みんな握手しているらしいです」
 
「へー凄い!」
「歩いてか」
「やはり歩くと1ヶ月くらいかかるのね」
「でも忙しそうなのに、よくそんな時間が取れるなあ」
 
などと言っていたが、やがて人が減ってくる。醍醐先生はこちらに歩いてきたので、鈴鹿と美里は近寄り挨拶した。
 
「おはようございます、醍醐春海先生」
「おはようございます。鈴鹿ちゃん、美里ちゃん」
 
醍醐先生が美里を見ながら「鈴鹿ちゃん」、鈴鹿を見ながら「美里ちゃん」と言ったのは気にしないことにする!
 
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(2人をちゃんと見分けられる人は少ない。実は母でさえよく間違う)
 
「歩いてお遍路なさっているんですか?凄いですね」
「まあ色々あってね。鈴鹿美里は好調だね。『モスバーガーの歌』が売れてるし」
「あれ、私たちもびっくりしたんですけどね」
 
昔女性双子歌手が怪獣映画『モスラ』の中で歌った『モスラの歌』をベースにラジオ番組で美里が
「モスバーガー、美味しいね。でも持ち帰ってから食べた方がいい」
と即興の歌詞で歌ったら、面白いからそれでCD出してという声が多数寄せられたので作ってみたら馬鹿売れしたのである。
 
『モスバーガーの歌』(鈴鹿美里作詞)
『モスガバーの歌』(HAL研:『星のカービィ』より)
『モスラの歌』(オリジナル・由起こうじ作詞)
 
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という3曲セットにしたCDである。『モスガバーの歌』は「懐かしい!」といって30-40代の人たちに大いに、うけたようであった。ちなみにこの曲の作曲者はなんと古関裕而大先生である!
 

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「今日は営業か何か?」
「ツアーの最中なんですよ。今日はこの後、夕方から高松なんですが」
「ああ。お遍路中じゃなかったら楽屋に顔でも出したい所だけど。お花でも届けておくよ」
「すみません」
 
それで美里は花束でも届けてくれるのかと思ったのだが、巨大なスタンド花が届き、鈴鹿も美里もびっくりすることになる(会場の入口に立てて、観客にも見て楽しんでもらった)。
 
「じゃ君たちも頑張ってね」
と言われ、先生と鈴鹿・美里は握手して別れた。2人のついでに付き人のクララまで握手してもらった。
 

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醍醐先生と話していたので、高松に戻ってきたのが17時すぎである。
 
「遅かったね」
「ごめんなさい。善通寺で作曲家の醍醐春海先生と遭遇して話し込んでしまったので」
「ああ、それなら問題無い。さあ衣装に着替えようか」
 
それでライブの準備をしていたら、クララが具合が悪そうである。
 
「どうしたの?」
「なんか分からないのですが、お腹が痛くて」
「あら。なんか変なものでも食べてないよね?鈴鹿と美里は平気?」
「私たちは快調ですよ」
「だったら良かった。クララは少し寝てなさい」
「すみません」
 
それでクララは楽屋の隅に置かれた簡易ベッドで休んでいたが、15分くらいで体調回復したようで、その後は元気にライブのサポートをした。
 
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ライブは21時頃に終了し、ホテルに戻って打ち上げをしてから各自の部屋に戻る。
 
23時を過ぎて、そろそろ寝ようかなどと言っていた時、クララから美里に電話がある。
 
「どうかしたの?」
「こんなことってあるんでしょうか。私、女の子になっちゃったんです」
「クララは元々女の子じゃん」
「でも女の子としては不完全で。おっぱいは頑張って大きくしたけど、あそこにあんなものが付いてたし」
「そんなの誰も気にしないって」
「それが無くなって、普通の女の子みたいな形になっているんですよ」
「性転換手術したんだっけ?」
「そんなのしてません。その内、手術したかったけど。それに善通寺の境内でトイレに行った時はたしかに、あれ付いてたんですよ」
 
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「そちらに行く」
 

それで美里は鈴鹿は(男の子なので)置いて、ひとりでクララの部屋に行った。
 
クララは裸を見せてくれたが、あそこには何もついておらず割れ目ちゃんがある。
 
「中を確認してみたんですけど、クリちゃんも、おしっこ出てくる所もヴァギナもあるんですよ」
 
「おっぱいも前より大きくなってない?」
 
「そうなんですよ。18歳の時から女性ホルモン飲んで育ててきたけどBカップしかなかったのに、これどう見てもCカップくらいあるんですよね」
 
「Dあるかもね」
と美里は言った。
 
「でも女の子になって何か不都合ある?」
と尋ねる。
 
クララは考えていた。
 
「何も不都合ないです」
「だったら問題無いね。性転換手術代、もうけたね」
「そうかも!」
「あれ高いんでしょ?」
「渡航費とかも含めると150万くらいかかるらしいです」
「貧乏人は女の子になれないじゃん」
「そうなんですよねー。何とかしてほしいです」
 
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クララとは30分くらい話したが、それでクララも随分落ち着いたようだった。クララはツアーが終わってから、病院で診断書もらって、性別変更の申し立てをしたいと言っていた。
 

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自分の部屋に戻る。
 
「鈴鹿、もう寝た?」
などと言いながら、部屋に入るが、鈴鹿が床に座り込んだまま、ボーっとしている。
 
「何かあったの?」
と声を掛ける。
 
「美里、どうしよう?ボク女の子になっちゃった」
と鈴鹿は言った。
 
美里は腕を組んで溜息をついた。
 
(ついでに自分のお股に触って、ちんちんが生えてないか確認した)
 

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