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■春宵(4)

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その日、アクアのマンションにコスモス社長が来ていた。普通は事務所で打ち合わせをするのだが、この日は中間試験があって仕事を休ませてもらっていたので、その試験最終日に社長がアクアのマンションまで来ていたのである。
 
“アクアたち”は慌てて、Fが応対に出てMとNは隣の部屋に隠れたのだが「3人と話したいから」と言って、コスモスは他の2人にも出てくるように言った。コスモスがケーキを“4つ”買ってきてくれていたのでNが紅茶を入れて出す。
 
現在、アクアはミニアルバムの制作をしているし、また§§ミュージックのタレント・研修生など総出演の長時間ドラマ『源平記』の撮影もしている。来月上旬にはドイツに渡航し、写真集の撮影もする。また年明けには恒例のドームツアーをする予定であった。
 
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その多忙な中で、コスモスも“3人のアクア”の様子を見て、体調などを確認しておきたかったようである。
 
「結局、Nちゃんは性転換手術は受けるの?」
とコスモスは確認した。
 
「悩んでいるんですけどねー」
とNは正直に言う。
 
コスモスとしてはNがもし手術を受けるのなら、しばらくFとMの2人だけで稼働させることになるので仕事量の調整が必要だという認識がある。
 
「手術してから一週間くらいはボクたち2人で何とかするから、ちょっとタイに行ってちょっと手術してくればいいのに」
とFが煽る。
 
「お休み一週間しかもらえないの!?」
とNが言うと
 
「半月くらいは休ませてあげるよ」
とコスモスは言った。Nは悩んでいる。
 
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コスモスはふと3人が全員左手の小指に絆創膏をつけていることに気づいた。
 
「その絆創膏どうしたの?」
「ああ、さっきNが買物行ってて、お店の出入り口の所の打放しのコンクリートの壁にぶつけてすりむいちゃったんですよ」
とFが説明する。
 
「向こうからよろけそうなお婆ちゃんが来たから、それを避けようとして自分がぶつかっちゃったんですよね」
とN。
 
「怪我したのはN?」
 
「ボクたちひとりが怪我すると全員同じ所に傷ができるんです」
とM。
「以前、先輩のタレントさんに『高校生ならいいでしょ』と言われてお酒を飲まされたら、飲んだのはMだけだったのに、全員酔ったんです」
とF。
 
「生理があるのはFだけだけど、その時は3人とも生理痛になるし」
とN。
 
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「まあそもそも誰か1人が覚えたことは全員覚えてるんですけどね」
「おかげで台本とか3人で分担して読んで素早く覚えられるし」
「ああ、それは便利だ」
「たまに混線しますけどね」
「うん。ロミオが出会って即ジュリエットに刺し殺された気がしたり」
「それは速すぎる」
「ふだんでも誰か1人が電車を降りると、他の2人もつられて降りちゃったりするんですよ」
「ああ、ややこしそう」
 
「ボクはブラジャーしないけど、FとNがいつもブラジャーしてるからボクもブラ跡が取れないんですよね」
とMが言う。
 
「あんたたち結構大変なんだね!」
とコスモスは言った。
 
そしてしばらく何か考えているようだったが、やがて言った。
 
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「だったら、Nが性転換手術受けたら、Mのおちんちんも無くなっちゃったりしてね。怪我でさえ連動するんだもん」
 
3人のアクアはギョッとした顔をしてお互いの顔を見合わせた。
 
ほんとうにそうなりそうな気がした。
 
Fは、そういえば醍醐先生は、Fがもし妊娠したら、きっとNとMのおっぱいも妊婦のように膨らむだろうと言っていたことを思い出していた(このことはNやMには言ってない)。
 
そしてMが言った。
 
「Nが性転換手術受けるの、絶対反対!」
 

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千里1は、お遍路で9月17日から20日まで芳野早百合と一緒に歩き、9月21日には生見の民宿で高浜アリスと遭遇、9月24日には香南市で古庄モニカと遭遇。9月28日には土佐清水市の高園家に泊めてもらって、ちょうど来訪していた武石満彦・紗希夫婦(満彦は桃香の従姉の息子)と会って高園家から金剛福寺までを一緒に歩いた。そして10月4日には歯長峠越えの道でワルキューレに乗った浜川渚と遭遇。10月7日には道後温泉では窮地に陥っていた男の娘・星良を助けた。そして10月12日には観音寺市の銭形で米子から来た新婚夫婦と遭遇。翌13日には善通寺で多数の人と握手。この時、鈴鹿美里とも遭遇。そして10月16日に霊山寺に戻って満願となったが、その日の夜には徳島市の温泉旅館で多数の女性と握手。この時、ローザ+リリンの2人とも女湯の中で会って握手している。
 
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そして千里1は10月17日四国を出ると、夕方、姫路の貴司の家を訪問した。貴司は仕事で留守。美映はバスケット部のメンバーを連れて練習に行っており、家には1歳になって間もない緩菜がひとり取り残されていた。
 
しかし緩菜は既に覚醒していて、自分で起き上がって
『お母ちゃん、満願おめでとう』
と言った。
 
実は千里1が霊山寺まで行って四国を完全に一周した瞬間、千里の守護神として覚醒したのである。むろん“小春”時代や、その前世の女たらしの男だった時代の記憶も全て蘇った。
 
緩菜は「あんたは霊媒能力が高いから、現在千里が暫定的に管理している、瞬嶽が遺した多数の術の記録媒体になって」と自分の上司である○○大神から言われてはいるものの、千里は1000年くらい生きそうな気がするので、自分が受け継ぐ必要あるのか?という疑問を感じている。自分の方が先にこの肉体の寿命を迎えそうだ。
 
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しかし緩菜はそういう役目を課されているため、実は瞬嶽の術を納めた“倉庫”の“鍵”を所有していた。だから実は暴走している千里1を停めることができるのは本来は直接人間に干渉できない大神様か、緩菜しか居なかったのである。
 
緩菜の覚醒にはお遍路が必要だったので、結果的に「あの子お遍路に行かせなよ」と言った丸山アイの予言は当たっていたのである。
 
緩菜は千里に
『お母ちゃん、瞬嶽さんから預かった“倉庫”の鍵が開いてるよ』
と指摘し
『私が閉めてあげるね』
と言って“扉”を閉め、かんぬきを下ろして、“鍵”まで掛けてしまった。
 
それで昨年の秋頃から始まった千里1の暴走はやっと停まることになった。
 

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千里は緩菜にお遍路の間持ち歩いていた五鈷鈴をプレゼントしてから細川家を後にする。そしてその日は市川ラボに泊まり、翌朝京平に会って、彼には金剛杖を渡した。実はこの杖は千里が小学生の時に2度、そしてこの春にも一度“この世の封印”を掛けるのに使った特別な杖である。千里はこの封印掛けを3回もしたので“あがり”となった。多分次回は青葉か夏野明恵(後の沢口秋峰)がすることになるだろう。
 
その日、美映は21時頃練習を終えて戻って来たが、自分はバスケ部員たちと一緒に夕食を取って来たので、緩菜が寝ているのを見ると、そのままシャワーを浴びて寝てしまった!
 
「もう」
と《てんちゃん》は文句を言うように声を出すと緩菜に晩御飯を作ってあげた。こういう作業は緩菜担当眷属の日常業務になっている。
 
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深夜になって貴司が帰宅する。この日も遅くまで仕事をしていたが、終電に間に合う時間で仕事が運良く終わったのでこちらに帰ってきたのである。
 
寝ている緩菜を見て額に“キス”した。
 
そしてシャワーを浴びてから寝た。シャワーを浴びている時は、大きくなっている胸を洗い(結構汗が溜まりやすい)、お股は割れ目の中まで丁寧に洗うが、千里のご機嫌のいい時にバストだけでも何とかして欲しいと思っている。貴司は8/19 9/16 10/14 と3回生理が来て、今日10/17は、何とか生理の出血も収まってきたところである。この生理の処理も大変だよなあと貴司は思っていた。
 

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翌朝、貴司は6時頃目が覚めた。会社に定刻までに行くには姫路駅を7時の新快速に乗ればいいので、だいたい30分以内に家を出ればいい。慌ただしく朝御飯を食べ着替えて、まだ寝ている美映に「行ってくるね」と声を掛けて出ようとしたが、緩菜が
『パパ、トイレに行ってから出かけなよ』
と言ったような気がした。
 
そういえばそうだと思い貴司はトイレに行き、いつものように便器に座るが、おしっこの出方が変だ。なんかとても回りくどい出方をしているのである。いつもはもっとストレートに身体から出ていくのに。
 
え?
 
と思ってお股を見た貴司は、感動のあまり涙が出て来た。
 
「千里ありがとう。もう絶対浮気はしないから」
と貴司はマジで誓った。
 
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緩菜はそんな“パパ”の様子を伺いながら小声で呟いた。
 
「お母ちゃんの“**の術”を1回分だけ、パパのためにキープしておいたのよね。それでベースは男の人に戻ったから、おっぱいは消えたし、ちんちんも戻ったけど、たまたまは浮気防止で私がしばらく預かるからごめんね。だってパパってすぐ浮気するんだもん」
 
貴司も昼くらいに睾丸が無い(だから勃起もしない)ことに気づいたものの、その程度はよいことにした。ペニスが無い状態での1年半、バストまであり生理もある状態での3ヶ月はほんとに大変だった。
 

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芸人クラウドは悩んでいた。
 
なんか臨時工場紀行?とかいうところからクレームが入ったというので裸芸が禁止された。それでテレビとかにお呼びが掛かる機会が減り、収入も激減した。
 
「皿洗い頑張らなきゃなあ」
 
などと思う。彼は都内のラーメン店の皿洗いをして生活費を得ている。裸芸で有名になるまでは月間のギャラが1万円行かないことが多かったので、ここでの収入で暮らしていた。一時売れていた時期も、月間のギャラは月10万くらいだったので、仕事で多忙ではあったものの、仕事とあまりぶつからない日中などにここでバイトをして生活費の足しにしていた。そして裸芸禁止を言われた後は、またこちらの方が本業のようになっている。
 
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しかし裸芸禁止を言われた直後に芸人クラウドは仰天する事態が起きて、裸芸禁止されていて良かったと思うハメになった。
 
「今の身体では脱げないし」
とも思う。
 

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それは11月下旬の夜のことだった。彼は夢を見ていた。ケイナとマリナが居る。医者のような白衣を着た人物が立っていた。
 
「マリナ君がちんちんを無くしてしまったので、ケイナ君のちんちんをマリナ君に移植したのだけど、今度はケイナ君がちんちん無いのは困ると言っている。それでどうしようかと思うのだが」
と医者(?)が言った。
 
「誰かのちんちんを移植して欲しい」
とケイナが訴える。
 
「だったら、芸人クラウド君のちんちんを移植しよう」
と医者は言った。
 
待って、そんなことされたら俺が困る、と芸人クラウドは思ったものの、ベッドに寝かせられ、身体も拘束された。
 
「元々私、彼からちんちん取られちゃったんだし、彼はこないだは花嫁さんになってたし、花嫁さんにはちんちんは要らないよね」
などとマリナが言っている。
 
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え?俺のせいなの?でも番組ではマリナのチンコを奪ったことにしたけど、実際にはマリナのチンコを掴んだだけだぞ?と芸人クラウドは思った。
 
「じゃ手術を始めます」
 
やめて〜!
 
「今、芸人クラウド君のちんちんを切り取りました」
 
うっそー!?
 
「これをケイナ君に・・・今接合しました」
 
「良かったぁ。ちんちん戻ったよ」
と言ってケイナとマリナが喜んでいる。
 
「これでケイナ、私のお婿さんになれるね」
とウェディングドレスを着たマリナが言い
「うん。俺もどうなることかと思ったよ。これでマリナを嫁さんにできる」
とタキシード姿のケイナが言った。
 
ふたりは指輪を交換してキスをした。
 
芸人クラウドは放置されている。
 
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ちょっとぉ、俺はどうなるんだ?
 

と思った所で目が覚めた。
 
「夢か。全く変な夢だったなあ」
とつぶやき、とりあえずトイレに行く。
 
「しかしケイナとはこないだ模擬結婚式やったし、なんかあいつらとは関わりができてるよなあ。あいつらが売れたら、俺もあいつらの番組に呼んでもらったりしないかなあ」
などと考えたりする。
 
それでトイレの中で便器の前に立ち、パジャマの前の開きに指を入れ、トランクスの前開きにも指を入れ、チンコを引き出そうとする。
 
ところがチンコが見つからない!?
 
なんで?
 
と思った芸人クラウドはパジャマのズボンとトランクスを脱いでみた。
 
そしてショックのあまり座り込んでしまった。
 
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「チンコが無かったらどこから小便すればいいんだよ!?」
と彼は思わず呟いた。
 
 
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