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■春宵(10)

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(2019年)10月25日、青葉は短水路日本選手権(10/26-27)のために東京に出て来ていたのだが、思わぬ人物から連絡があった。
 
「実はローズ+リリーのケイさんにお聞きしたら、ちょうど東京に出て来ておられるということでしたので」
とマリナが言うと
 
「どういうご用件でしょう?私、明日から大会なので、あまり精神力を使いたくないのですが」
と青葉は不快さを隠さずに答える。本当に大会前は困るのである。
 
「1時間で済みますので」
とマリナが言うので会うことにした。2人は青葉が泊まり込んでいる、江東区の深川アリーナの牛丼屋さんで会った。
 
「体育館に牛丼屋さんって珍しいですね」
「ここでライブとかしたことありませんでした?」
「ここはまだ無かったですね。ローズクォーツでは縁の無い規模の会場だし」
 
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ケイナとマリナは昨年のカウントダウンなど、ローズ+リリーのライブにも何度か出ているのだが、ここではやったことが無かったようである。
 

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「ところで大宮先生は、女化神社の痴漢騒動はご存じですか?」
「いえ」
 
「実は今年の6月頃から7月頃まで、棒那市の女化神社という所の前の通りに痴漢が出るという噂があったんです」
 
「はい」
 
「その痴漢が変わっていてですね。女の子からは脅してブラジャーやパンティを奪うのですが、男性からはペニスを奪ってしまうという話で」
 
「はぁ!?」
 
そんな話は初耳だった。
 
「それで私とケイナが『ミッドナイトはネルネル』という深夜番組で、この痴漢の再現ドラマの撮影に借りだされまして」
 
「すみません。あの番組、結構話題になっているようですが、北陸では放送していないので」
 
「そうでしたか。それで私とケイナが襲われる女子中学生役、芸人クラウドさんが痴漢役で、再現ドラマを撮影したんです」
 
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「ああ、裸芸で話題になっている人ですね」
「ええ。でもこの番組の後、BPOからクレームが入って、彼は今裸芸が禁止になっちゃったんですよ」
「それは可哀想に。それがあの人の売りなのに」
「あの人、それ以外に芸が無いてすからね」
「トークは苦手っぽいですよね」
 
とわりと2人とも無茶苦茶言っている。
 

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「それでその番組が放送された晩、私とケイナは変な夢を見まして」
と言ってマリナはその内容を語った。
 
青葉は腕を組んでその話を聞いていた。
 
「それで起きたら、実際無くなっていたと?」
 
「ケイナは男性器が無くなって女のような形状になっていました。私にはペニスがありましたが、明らかに自分のものではありませんでした」
 
「つまり夢に見たままのことが実際行われたと?」
「ケイナには悪くて、自分の身体に付いていたペニスが本来は彼のものかもということは話していません」
 
「話せませんよね!」
「ですよね」
 
大宮万葉に追認してもらって、マリナは少し肩の荷が下りた。
 

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「それでしばらく、私には自分のものではない男性器が付いてて、ケイナは女の形のままで過ごしていたんです」
「ケイナさんのバストは?」
「男のように平らなままです」
「それは中途半端な」
「これでは男湯にも女湯にも入れないと嘆いていました」
「それは大変だ」
 
「ところが今月ローズクォーツのツアーが始まって、初日の札幌公演の後、定山渓温泉に泊まったのですが」
「何か起きました?」
「突然2人とも女の身体になってしまったんですよ。お股は完全に女の形だし、バストも結構大きくて」
「それで女湯に入ることができたと?」
「まあ私はお風呂に入れて助かったと思ったのですが、ケイナは女湯なんて入るのは初めてなもんで、凄く恥ずかしがっていました」
 
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(実際には2人は男の身体だった時代にも数回女湯に入っているがマリナはしれっと嘘を言っている。でも青葉は気づかない)
 
「まあ心が男性なら、女湯になんて恥ずかしくて入れないでしょうね」
「ええ。心が男なのに女湯に入ったら痴漢ですよ」
とマリナが言う。
 
それで青葉はマリナは心は女なのだろうかと感じた。
 

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「それで私とケイナは女の身体のままツアーを続けたんですが、女の身体になってしまったので、男声が出なくて困っちゃって」
 
「ああ、ローザ+リリンって、人前では男声で歌うポリシーでしたね」
「そうなんです。観客の居ない音源制作の時は女声で歌っていますが」
 
それで今年のローズクォーツは、CDでは女声ボーカルなのにライブでは男声ボーカルとなっていて、多くの人がローザ+リリンの声を電気的に処理して女声のように変えて音源制作しているのだろうと思っているようだ。実際には2人は男声・女声の両方が出ていた。
 
「取り敢えず仕方ないので、事務所の社長、そしてローズクォーツのタカさんの許可を取って、翌日からは女声で歌唱させてもらいました」
 
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「男声が出ないのでは、おふたりにとっては商売あがったりですね」
「全くですよ」
とマリナは言う。
 
「それで今度は徳島で公演をした日なのですが」
「はい」
 
「この日、また性別が変わって男に戻っちゃったんですよ」
「ああ」
 
「でも2人とも声は戻らないんです」
「ありゃ」
 
「2人とも女声のままで。このままだとローザ+リリンはこの後、女声デュオとして、やっていくしかないかも」
 
「別にいいんじゃないですか?何か困ります?」
と青葉は言った。
 
「やはりそう思われます?実は私も女声だけで全然困らない気がしたんです」
「どっちみち、おふたりも脱ぐの禁止なんでしょ?」
「裸芸を随分やって警察に睨まれたので、絶対に裸にはならないという誓約書を出さないと興行許可をもらえないんです」
 
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「でも裸芸なんて40歳や50歳までできる芸ではないですよ」
「そんな気はしていました。私たちも30代になっちゃったし」
 
「これからは本格歌手で売っていけばいいんです。せっかくローズクォーツの代理ボーカルやって、歌唱力があることを多くの人に知ってもらったんだから。何なら、代理ボーカルが終わった後、楽曲を提供しましょうか?」
 
「本当ですか!?嬉しいです。ぜひお願いします」
 
青葉は余計なこと言っちゃったかなあとは思ったものの『松本花子』に作らせればいいやと思った。
 

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「でも夢に出て来たお医者さんみたいな人は何だったんだろう?というのと、私たちが温泉で性転換したのは何故だろうと思って」
 
「お医者さんのような格好で出て来たのは夢魔の一種だと思います」
「その系統ですか!」
「女化神社に出ていた痴漢は多分妖怪の類いだと思いますが、妖怪と実質的にコンタクトしたことで、魔に付け入れられやすい状態になっていたんですよ。そこをやられたんですね。変な跡が付いてますよ。これを今・・・除霊しました」
 
「ありがとうございます!」
「後日ケイナさんも連れてきてください。除霊しますから」
「よろしくお願いします。あと、ツアー中の突然の性転換の原因は?私、また突発的に性転換しないか不安で。定山渓ではお風呂に入る前、徳島では入った後だったから良かったんですが、もし女湯に入っている最中に性転換しちゃったら、痴漢で捕まっちゃうし」
 
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とマリナ。
 
青葉は考えた。
 
「ツアー中に関係者以外で誰か知っている人に会いませんでした?」
 
「知っている人ですか?」
と言ってマリナは考えていたが
 
「そういえば定山渓温泉では丸山アイさんに会いましたよ。あの人は男だという説と、女だという説が飛び交ってましたけど、本当は女だったんですね」
 
ああ。。。と青葉は犯人のひとりが分かった。あの人の悪戯だろう。何かで虫の居所が悪かったのかな?
 
「名古屋公演の後では、アクアちゃんと会いましたよ」
「へー」
 
「あの子、ちんちん付いてるくせに堂々と女湯に入りますね。人のこと言えんけど」
 
「まああの子は仕方ないですね。男湯に入ろうとしても追い出されるから」
「あの晩もそんなこと言ってました。でもアクアちゃんには私たちが実は女だったと思われちゃいました」
 
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「まあそれでもいいんじゃないですか?」
と青葉が言ってみると、マリナは頷いているので、青葉はマリナはやはり性別に違和感を抱えているんだなと確信した。
 
「それから徳島の公演前には。お姉さんの醍醐春海先生にお会いしましたよ」
「ああ」
 
それで青葉には“もうひとりの犯人”も分かってしまった。ただし千里1の暴走が既に停止していることは、千里3から教えてもらっている。
 
「まあだいたい事情は分かりましたが、ひとつだけ確かなことがあります」
「はい」
 
「もうおふたりの性別が変わることはないです。安心してください」
「そうですか。良かった!」
とマリナは嬉しそうだった。
 
なお、マリナはご無理を言って相談に乗ってもらったしと言って、見料に100万円も置いていった。
 
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青葉はさすがに多すぎると言っただが、マリナはここ数ヶ月悩んでいた問題が解決して物凄く心が楽になったと言って、日本銀行の封印の掛かった札束を青葉に押しつけて行った。
 
「こんなにもらっちゃったら、マジであの人たちに楽曲あげないといけないなあ」
と青葉は少し悩んだ。
 

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マリナが青葉と会う数日前、マリナはケイナに尋ねてみた。
 
「マリちゃんの赤ちゃん、あやめちゃんの父親は誰だと思う?」
 
「否定していたけど、上島雷太じゃないの?それ以外考えられん」
とケイナは答えた。
 
ふたりはマリと大林亮平の関係を知らない。
 
「私はたぶんケイだと思う」
とマリナは言った。
 
「ケイはもうとっくの昔に性転換してるじゃん」
「恐らく性転換前に精液を冷凍していたんだよ」
「嘘?」
「あやめちゃんの写真見た?」
「雑誌に写真が載ってたから見た」
「私は目元とかがケイに似ていると思った」
 
「まさか」
「だからきっとマリとケイはそのうち結婚する」
「ケイは戸籍を修正したから女同士じゃん」
「パートナーシップ宣言という手もあるよ」
「ああ」
 
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「ローズ+リリーの2人は2014年春以来渋谷区に住んでいるけど、渋谷区では2015年11月以降、パートナーシップ宣言を受け付けるようになっているんだよ。だからその制度を使うんだと思う、そもそもふたりがあそこに引っ越したのは、渋谷区がそういう制度を導入する予定とかいう情報をキャッチしていたからかも知れないと私は思ってる」
とマリナは言った。
 
「マリとケイが結婚してもファンは誰も驚かないだろうな」
「実際、ほとんど結婚してるのも同然だし。マリちゃんは楽しそうにケイとのセックスの話をラジオとかでしているし」
「してるしてる。鞭とか蝋燭とかも言ってる。あれマリちゃんが男役なんやね」
 
「マリちゃんにしばしば男性との交際報道が流れるのは、きっとレコード会社がレスビアン婚されてはイメージが下がると思って、わざと流してるんだよ」
 
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「それってありそう。今更、それでがっかりする人なんて居ないのに。そもそもローズ+リリーは初期の頃、和製t.A.T.u.とか言われてた。ステージ上でキスするのもタトゥーの真似」
 
「うん。だけど★★レコードもマリとケイの理解者の町添さんが社長になったから、堂々と2人に結婚式挙げさせて、あやめの父親も実はケイでしたと発表するかも知れない」
 
「その時は俺たちはどうなるのかな?」
とケイナは急に不安そうな顔をして言った。
 
「きっとケイナと私で結婚させられるね」
とマリナ。
 
「やめてくれー!」
とケイナは叫んだ。
 

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そんな話をしたのが、ローズクォーツのツアーが終わって東京に戻った10/23のことであった。
 
(ケイナと芸人クラウドの“結婚式”はこの直後の10月29日に収録され、その様子が11/01夜に放送されて2人への結婚祝いが増加することになる)
 
7.30 女化神社前でのマリナ・ケイナ・芸人クラウドの撮影。
8.02 その様子が放送される。その夜、マリナとケイナは男性器を取られる夢を見る。
8.07 千里と京平が女化神社前の痴漢を退治する。
8.29 週刊誌がマリナの性転換、ケイナとマリナの結婚、美里の性転換を報道する。
8.30 UTPからローズクォーツのツアーの連絡がある。
10.8 ローズクォーツ札幌公演の後、定山渓温泉でケイナとマリナが丸山アイに会う。
10.13 ケイナとマリナが名古屋公演の後、女湯の中でアクアと遭遇。
10.16 ローズクォーツ徳島公演の前に、ケイナとマリナが温泉で醍醐春海に会う。
10.23 マリナがケイナに自分たちが結婚させられる可能性について話す(↑)
10.24 マリナが母から「改名が終わった」と告げられる。マリナその日の内に運転免許証を書き換え、マイナンバーカードの改名申請、パスポートの再発行手続き。
10.28 『ミッドナイトはネルネネ』でケイナ(と芸人クラウド?)の結婚式撮影。
11.01 マリナ、新しいパスポートを受けとる。
11.01 ケイナの結婚式が放送される。
11.02 板付社長、左蔵Pから新婚旅行について打診され即OKする。マリナが左蔵に条件を出す。
11.07 Marina Mizusaki 名義のVISA Goldカードを受けとる。
11.10 新婚旅行に出発。
10.カメハメハ・マノアの滝 11.ワイキキ・フラ・ハワイ島 12.ショッピング、ダイヤモンドヘッド・結婚式
 
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新婚旅行の話は、ケイナの結婚式に対する反響が物凄かったことから、左蔵プロデューサーがローザ+リリンの事務所社長・板付に直接電話して打診された。板付社長は即OKした。そして左蔵は社長に、ローザ+リリンはとてもセンスがいいので、レギュラーに昇格させたいがと言って、これも即OKされる。ただしこのことは本人たちにはまだ言わないでくれと左蔵は依頼した。
 
新婚旅行の話を社長から聞いたケイナとマリナは猛烈に反発したものの、社長から「どうせジョークだからいいじゃん」と言われ、渋々承諾する。しかしマリナは左蔵プロデューサーに直接電話して、自分たちの本名が開示されることのないよう、チケットはこちらで購入したいと申し出て承諾される。
 
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それで11月10日の午後、4人は成田空港の玄関前で落ち合って、航空会社のカウンターに行こうとしていた。その時、向こうの方に人だかりができていた。
 
「あ、アクアちゃんだ」
 
近くに事務所社長の秋風コスモス、それに姫路スピカと今井葉月、桜木ワルツも居る。
 
「どこか海外に行ってきたのかな?」
「お迎えにあんなに人が集まるんだ?」
「スケジュールとかは非公開だろうけど、きっと機内で気づいたファンがSNSか何かに書いて、それが広まっているんだよ」
 
「人気者は辛いね」
「あのくらい人気になってみたいね」
などとケイナはマリナが言っていたら
 
「いや、ローザ+リリンのおふたりも、かなり羨ましがられていると思いますよ」
と内野音子が言う。彼女はタレントと認識されず局アナと思い込まれていたりする。
 
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「まあ私たちは、ローズ+リリー人気のおこぼれにあずかっているだけだけどね」
とマリナは言った。
 

「あれ?こちらに来る?」
 
アクアやコスモスたちがこちらに近づいてくるのである。
 
「おはようございます、ローザ+リリンさん」
とアクアが丁寧に挨拶した。
 
「おはようございます、アクアさん、秋風コスモスさん、姫路スピカさん、今井葉月さん、桜木ワルツさん」
とマリナが挨拶し、ケイナもそれに唱和するように一緒に挨拶した。
 
こういう時、名前を呼ぶ順序はわりと難しい。実はマリナも、葉月とスピカのどちらを先に呼ぶべきか一瞬悩んだ。
 
しかし彼女たちは全く順序など気にしていないようで、コスモス以下全員
 
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「おはようございます、ローザ+リリンさん」
 
と言った。
 

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