広告:まりあ†ほりっく 第5巻 [DVD]
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■春宵(7)

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それで、就職先も決まったので、大学に入って以来続けていたロイヤルホストのバイト(4年近く勤めたので、早百合は現在、副店長の肩書きになっている)は来年3月いっぱいで辞めさせてもらうことにした。もっとも今もらっている給料の方が春から就職する先の企業の予告されている初任給より大きい!(特に民間企業では女性の給料が安い所が多い)
 
「早百合ちゃん、辞めちゃうのかぁ。僕のお嫁さんにしたかったなあ」
などと店長の有木さんは言っていたが。
 
(プロポーズではなく、ただの社交辞令だと思う、たぶん。ちなみに店長は早百合がバイト採用された時「ヨシノじゃなくてヨシナガだったら良かったのに」と言った人で多分40代だと思う。年齢のよく分からない人だが。独身ではあるようだが、さすがに恋愛対象外だよなあと早百合は思った)
 
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「え〜。芳野さん、辞めちゃうんですか?まだたくさん習いたかったのに」
と言ったのは、2年前からこのお店に勤めているバイトの高橋君で、26歳らしい。
 
根は真面目なのだが、ミスが多く、しばしば早百合や他のシニアスタッフがフォローにまわっている。お客さんに叱られるのは日常茶飯事で、この子、あまり客商売に向いてないのではという気もする。
 
彼は福岡市内の私立大学を卒業した後、観光会社に就職したものの、そこが倒産して失業したらしい。なかなか次の就職先が見つからず、取り敢えずの生活費稼ぎにここのフロア係になったのだという。取り敢えずのハズが既に2年ほど経過している。
 

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早百合の生理だが、お遍路から帰った後の10/4に最初の生理があり、最初は驚いたものの、物凄く嬉しかった。生理が来たことで早百合は自分が完全な女になっているという確信を持ち、性別訂正の作業を始めたのである。
 
その後、11/01 11/29 12/27 と生理は28日おきに規則的に来ている。ナプキンはまだ男の身体だった頃から時々買って“生理ごっこ”をしていたのだが、本当に生理が来始めてからは、生理用品を買うのがとても楽しくなった。
 
「生理って辛いけど、女であるという喜びを感じるんだよなあ」
と早百合は独り言を言った。
 

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「生理用品買うのも、何も感じ無くなっちゃったよなあ」
 
と思いながら、水崎マリナは、ドラッグストアで生理用品が並んでいる棚から、elisの“素肌感”を取って買物籠に入れた。初期の頃は色々試行錯誤したが、ここ5年くらいはこの“素肌感”が肌に優しくて気に入っている。
 
2008年にローザ+リリンとして契約した時「あいつどこどこで男の格好をしてた」などとネットに投稿されたりしないように、完全に女性の振りをして24時間過ごすこと、という契約を結んでいる。その条項に従い、下着とか服装も全部女物にして、どこに行くのにも女の格好で出歩くようになり、運転免許証やパスボートの写真も女の格好で写っている。
 
(ローズ+リリーはアジアでの海外公演は台湾でしかしていないが、ローザ+リリンは釜山・上海・ハノイ・バンコク・メダンでも公演をしていて1000人以上の観客を集め、まさか本物と間違ってないよね?と不安になったこともある)。
 
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生理についても「若い女に生理があるのは当然」と言われて、“生理日”を自分で決めて、その時期はナプキンかタンポンを付けているように言われている。マリナはちゃんと28日おきに手帳に赤いシールを貼って管理していて毎月ナプキンを3日間つけているが、ケイナはわりと適当に“生理になっている”ようである。(“適度に生理すべし”? (*2))
 
ついでにケイナは興味本位でタンポンを入れて、抜けなくなってしまい死ぬ目に遭ったことがある。そのことは彼の名誉のため他人には言わないことにしている(ステージのネタにもしない)。実はマリナも興味を持ったことはあるが、自分はしてみなくて良かったと思った。
 
(*2)ホステスさんがお客さんとの会話のネタに困った時に思い出せという言葉。
 
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テ:テレビ、キ:気候、ド:道楽、ニ:ニュース、セ:生活、イ;田舎、リ:旅行、ス:スター、ベ:勉強、シ:仕事
 
営業マン用の「裏木戸に立てかけさせし衣食住」のホステス版である。
 
裏:裏話、キ:季節、ド:道楽、ニ:ニュース、タ:旅、テ:天気、カ:家庭、ケ:景気、サ:酒、セ:セックス、シ:趣味、衣食住はそのまま。
 

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11月12日に4度目の生理が来た時、理都はとうとうそれを母親に知られてしまった。
 
「なんか気になってたのよね。あんた、おっぱいも大きいでしょ?」
「うん」
「ちんちんは?」
「無くなっちゃった」
「無くなるもんなの?」
「たまにそういうことあるらしいよ」
 
「いつ無くなったの?」
「夏頃、チン取り痴漢って話題になってたでしょ。私もその痴漢に会ったら、ちんちん取ってもらえないかなあと思って、行ってみたのよね」
「それで取られたんだ?」
「うん」
 
正確にはちょっと違うのだが、話が面倒なので、そういうことにしておいた。
 

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母親はただちに理都を病院に連れて行った。母親もどこに行けばいいか悩んだようだが、連れて行かれたのは婦人科である。理都は内診台!に乗せられて、身体の“内部”までしっかり調べられた(さすがに中に器具を入れられた時は悲鳴をあげたい気分だった)。
 
その結果、理都は完全な女性であるという診断が出たのである。
 
理都は、両親および姉の月紗で話し合った。月紗は
「こういうケースは性別の変更ができたはず」
と言った。
 
「それって20歳以上じゃなかったんだっけ?」
と母が言う。
 
「性転換手術を受けて性別を変更する場合は20歳以上だけど、自然に変わってしまった場合は、本来は女だったのが、たまたま男みたいな外見で生まれただけで、自然に本来の姿に戻ったものと推定されるのよ。そういう場合は、男として出した出生届けが誤りだったということになるから、20歳前でも変更は可能なはず。でもこれは弁護士さんに頼まないと無理」
と姉は言った。
 
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それで父親は理都に
「お前、女として生きていきたいのか?」
と再度意思の確認をし、
「うん。私は女の子」
と理都が言うので、性別訂正の手続きを進めることにした。
 

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両親と一緒に弁護士さんの所に行き、先日の診断書も見せて相談する。それで弁護士さんが書類を作ってくれて、家庭裁判所に性別訂正の審判を申し立てた。
 
結果が出るまで少し時間が掛かったようだが、理都は2020年1月には晴れて長男から次女に戸籍が訂正されたのであった。
 
「これで堂々と来年は女子選手としてプレイできる」
と理都は言った。
 
「あんた実は今年も堂々と女子選手してたでしょ?」
と姉が指摘する。
 
「まあね。私が男子選手のわけがない」
「選手登録は?」
「最初から女子として登録してるよ」
「よくバレなかったね!」
「だって私、女の子だもん」
 

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H君は最近両親がとても仲よさそうにしているのを見て、微笑ましく思っていた(翌年妹が生まれるとはまではこの時点では思っていない。姉はもしかしたらと予想していたようだが)。
 
もっとも最近は、父が家の中ではたいていスカートを穿いていて、休日には父が女装したまま、母と2人で、まるで女の友だち同士みたいな感じで出かけるので、少し戸惑っている。時にはそれに姉が付いていくこともある。すると女2人とその片方の娘という感じになるらしい。
 
「ついでにあんたも女装しない?そしたら双方自分の娘を連れて一緒に行動している女友達に見えるし」
などと母から言われたものの、H君は拒否した
 
「俺は男だよ」
「あら、男の子だから女装できるのに。女の子だと女装にならないじゃん」
 
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と言われて、H君の身体に合う女物の(ボタンの付き方が左右逆の)ポロシャツ、スカート、可愛い女の子シャツ、そして女の子パンティ数枚まで買ってきた。
 
しかしH君が女の子の服を着るのは嫌だと言うので、結局H君は留守番することにして、両親は姉と一緒に3人で出かけた。その日は“女性のみ”のレストランで食事をするのだということだった。
 

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ひとりで留守番をすることになったH君は残された女の子の服を見てドキドキした。
 
「ちょっと着てみようかな」
と思うと、彼は服を全部脱いで裸になり、まずは女の子パンティを穿いてみる。ドキドキして、チンコが大きくなってしまった。それでチンコはパンティから大きくはみ出すが、それがまたH君を興奮させた。
 
「こんなにはみ出すのどうすればいいんだろう?」
と思うが、処理の仕方を知らない。特に後ろ向きにすればいいなんてのは思いつかない。
 
女の子シャツは、飾りのレースのようなのがついている他は男のシャツとそう変わりがない。
 
スカートを穿いてみる。
 
なんか凄く頼りない感じがした。女の子はこんなのを普段穿いていて、不安じゃないのかな、などと思った。
 
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そしてポロシャツを着てみるが、H君はボタンを留めることができなかったので、はめないままでいいやと思った。
 
お母さんが使っているドレッサーの鏡に自分を映してみた。
 

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そこには可愛い女の子が映っている。
 
俺ってもしかして可愛い?
 
と彼はかなり危ないことを考えたのだが、それが危険な思考だということにH君は気づいていない。
 
かなりドキドキしている。
 
その時、ピンポンと鳴った。ギョッとする。
 

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取り敢えず玄関に出てみると、
「ヤマト運輸でーす」
と言う。
 
H君は、女の子の服を着ていることは気になったが、宅急便屋さんくらい、このまま出てもいいよねと思った。
 
それで玄関のドアを開け、
「ハンコお願いしまーす」
と言われたので、玄関の所にいつも置いている印鑑を取り、示された場所に押印して荷物を受けとった。
 
「お嬢ちゃん、ひとりで留守番?偉いね」
と宅急便のお兄さんは言って帰った。
 
「お嬢ちゃん」と言われたその言葉が、H君の脳裏に何度もこだましていた。
 

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そろそろ脱ごうかな、と思ったものの、再度自分の姿をドレッサーの鏡に映してみた。本当に可愛い気がする。もし自分がチンチンが無いのならいっそ女の子にならないかと言われた時、それに同意していたら、自分はこんな格好して暮らすことになっていたのかな、などと考えた。
 
そんなことを考えている内に、お母さんの化粧道具が気になる。
 
女の人って、お化粧するんだよなと思い、引出しを開けてみる。口紅が目に入った。ふたを開けてみる。どうすれば使えるのか最初分からなかったが、回せばいいということに気づいた。それで出して自分の唇に塗ってみた。
 
まるで大人の女の人みたい!
 
ドキドキする。
 
マニキュアが気になる。
 
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これは簡単にふたが開いたが、揮発性の臭いがする。嫌な臭いだなあと思いながらも、これが大人の香りなのかもと思うとまたドキドキする。
 
指の爪に塗ってみた。結構はみ出して、きれいに塗るのが難しい。なんかあまりきれいに塗れない。でも何とか左手の指5本の爪に塗った。左手に持ち替えて、右手の指の爪に塗る。
 
もっとうまく塗れない。これ難しいよおと思った。それで何とか右手の指5本にも塗った。
 

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