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ボクはクラブ活動が終わったあと、マットを体育館の用具室にしまいに行った。
いつもの場所に丸めておいて、出ようとした時、それに目が留まった。
こんな鏡ってあっただろうか。
まるで、そう。白雪姫のお母さんが持っていたようなクラシックな鏡だ。
ボクはそこに引きつけられるように行って、のぞき込んでみた。
そこに鏡をじっと見つめる自分の姿があった。
なぜ自分はこんな姿なんだろう。いつも思っていたことだが、また
改めて悲しくなった。
その時ふと鏡の向こうが暗くなって消えてしまった。
驚いたボクは鏡にさわってみた。すると、手が鏡をすり抜けてしまった。
ボクはおそるおそる鏡の向こうに手をやった。通り抜けれそう。
ボクはそう思って、鏡の向こうの世界に足を踏み入れた。
最初そこは暗かったがやがて明るくなってきた。
やはりそこは体育用具室だった。
ボクは戻ろうと思って後ろを見て息をのんだ。
鏡が無い。
途方に暮れてじらく考えている内に、これは夢か何かではないかと思った。体育用具室にマットを置きに来た。だからボクは今も体育用具室にいる。
全然不思議でないことだ。
ボクは用具室を出ようとして、異変に気づいた。
あれ、裾がひっかかるような感じがするのはこれは何?
ボクはいつの間にかスカートを履いていた。え?なぜ?
はっと思って胸をさわってみる。
触り慣れない感触がそこにあった。
まさか。
ボクはあそこにも触ってみた。
自分が女の子になっていることに気づくのに、そんなに時間は
必要なかった。
(2000.03.03)