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郵便屋さんから受け取った荷物を開いて、由美子は愕然とした。
送られて来たのは“あの時”の枕だった。
小さい頃の思い出だ。
−−ベッドは寝にくいんだもん。
−−じゃ、ふとんを敷いてあげるから。そうだ、この枕を使ってごらん。
そんなことを言って、この枕をくれたのは、家によく来ていたおじさんだった。当時、私はそのおじさんが何者なのかは理解できなかったが、そのおじさんのことを、お父さんには言ってはいけない、ということ
だけは母の懇願するような目から認識していた。
その送った主が母と一緒に失踪したのは小学校6年の時だった。
(おそらく1980年代の作品)