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■△・瀬を早み(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-07-22
 
2017年12月23日、貴司と千里(千里3)のデート。
 
体育館での“バスケットデート”が終わった後、千里と貴司はホテルに戻り、部屋に入ってシャワーで汗を流す。そして裸のままベッドに一緒に入るが、ここで5cmほど間を開けるのがルールである。タッチ禁止である。
 
「ねぇ、クリスマスだし、記念日だしセックスしちゃダメ?」
「結婚中の男性とはセックスできません」
「何度かしてくれたじゃん」
「じゃ日本代表に復帰できたらしてもいいよ」
「それ厳しいなあ」
「貴司の実力なら、まともな練習相手と日々やっていれば復帰できると思うけどなあ」
 
結局いつものように貴司が自分でするのを見ていてあげる。特別サービスで出た後を拭いてあげたら感動していた。
 
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その後はふたりとも運動をした後の疲れで眠ってしまう。
 
起きてからは(服を着て)おやつなどを食べながらお話をする。今年は非結婚五周年・木婚式ということで、木製品を贈り合った。貴司から千里へは輪島塗の可愛い赤い箸、千里から貴司へはバスケット選手模様のコルク・コースターである。
 
「阿倍子さんとは8月に皮婚式だったんでしょ?何か贈りあった?」
「阿倍子はそういうのには全く関心が無いみたいで、結婚記念日を祝った記憶が無い」
「まあ気にしない人もいるかもね」
「誕生日のプレゼントももらったことないし」
と貴司が不満そうに言うと、千里はおかしそうに笑った。
 
最後は千里がまた加賀友禅の訪問着を着て、貴司もラルフローレンのスーツを着て、下に降りてレストランで夕食を一緒に食べてから別れた。
 
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この日貴司は天国の気分であった。それが翌日、美映からの「妊娠した」という連絡で地獄に叩き落とされる気分になる。
 

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年末年始、千里3は全日本バスケット(皇后杯)に向けて1軍チームの練習に熱が入っていた。
 
千里1は12月29日が2軍の年内最終練習で
 
「よいお年を〜」
と言って別れたものの、作曲依頼が大量に来ていて悲鳴を上げる。
 
結局12月30-31日の2日間で3曲書き上げて、12/31 23:59に送信すると、残っていた最後の力で布団に潜り込み、ひたすら寝た。
 
そして起きたらもう1月2日の朝だった。
 
それで近くの神社で初詣をして家に帰ってきた所で朱音から
「産まれそう」
という連絡があり、駆けつける。
 
朱音の夫は沖縄に出張中らしい。桃香も11月に高岡に帰省したまま、向こうに根を生やしている。それで朱音が頼れそうなのは千里くらいだったのである。
 
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千里は朱音をミラに乗せて病院に運び込み、結局赤ちゃんが生まれるまで面倒を見ることになる。赤ちゃんが生まれたのは1月4日の朝であった。
 
1月5日、千里1はミラを運転して高岡まで行った。10月に信次を高岡に連れていった時「来月結納するから、その後で婚約指輪を見せに来るね」と朋子に言っていたものの、なかなか高岡に行く機会が無かったのである。
 
「ごめんねー。全然来られなくて」
と千里1は言ったが
 
「千里、君は11月25日にもこちらに来たではないか」
と桃香から言われる。
 
「え?嘘!?だったら、私、もう指輪見せた?」
「その時は持ってくるのを忘れてきたと言っていた」
「そんな指輪を忘れる訳ない。ずっといつも持っているのに」
 
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「いや、高岡に来たこと自体を忘れている君がそういう発言しても」
「あれ〜〜!?」
 
「やはりちー姉は春の落雷以来おかしい」
と青葉が言っていた。
 

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今回の千里1の高岡滞在中に、千里1のiPhoneが故障していることが発覚する。
 
「これは恐らく何か高電圧の物に曝されている」
と桃香。
「その高電圧の物ってちー姉のことだと思う」
と青葉。
 
それで新しいスマホ買う?と言われたものの、ガラケーにしたいと千里1は言った。
 
「だってスマホ買ったら、またすぐ壊しちゃう気がする」
というので、1月7日、青葉の成人式が終わった所で、千里1は桃香・早月と一緒にミラに乗って東京に戻った。
 
ミラの助手席をめいっぱい前に出して、後部座席左側にベビーシートをセットして早月を乗せる。その隣に桃香が乗る。そして運転席は千里である。
 
早月を乗せる以上、絶対に桃香には運転させられない!ので、千里がずっと運転して東京に戻った。
 
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一方千里2はLFBの試合が12月17日の後、1月7日まで無いので、ローズ+リリーのカウントダウンライブ(今年は福岡市の博多ドーム)に参加した。
 
フランスのチームでの練習は12月29日(金)で終了し、30日から1月1日(月)までお休みである。千里は29日18時(日本時間30日2時)で練習を終えると、取り敢えず葛西のマンションに入って少し寝た。30日朝から新幹線で博多に移動し、シーホーク・ホテルに行き、ローズ+リリーの新マネージャー鱒渕さんから部屋の鍵をもらった。結局またひたすら眠って疲れを取った。
 
31日は午前中にリハーサルを行ったが、ケイは夕方福岡に来ることになっているし、マリは《リハーサルをすると疲れてしまい本番で歌えない》という問題があるので、マリとケイの役を姫路スピカと西宮ネオンが代行してくれた。この2人がマリとケイの身長に比較的近いのである。
 
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「え〜?僕スカート穿くんですか?」
とネオンが抵抗していたが
「お仕事・お仕事」
と言ってケイの衣裳を着せていた。
 

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夕方から1月1日の0:20までカウントダウンライブはおこなわれ、その後は耶馬溪のホテルに移動して休んだ。1日のお昼に打ち上げをおこなう。多くの出演者はそのまま1日も泊まって2日に帰るのだが、千里・冬子は忙しいので1日の内に帰ることにする。
 
その途中で千里(千里2)は自分が3人に分裂していること、琴沢幸穂の正体が実は分裂した自分であることを冬子に打ち明けた。冬子は驚きはしたものの、結構素直にその話を受け入れてくれた。ほんとに物に動じない人である。
 
また3人の中の1番が川島信次と結婚しようとしていることも話したので、冬子はお花でも送るよと言っていた。
 
ふたりは1日の18時過ぎに羽田に到着して別れた。
 
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千里はその日は葛西でぐっすり寝て2日の練習(9-18時=日本時間17-26時)からフランスのMBFチームに合流した。
 

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※お正月付近の3人の千里の動き
 
12.29 1=練習最終日 2=練習最終日 3=全日本に向けて練習中
12.30 1=必死作曲中 2=博多へ移動 3=練習最終日
12.31 1=同上 2=カウントダウンに出演 3=休みだが常総で玲央美と練習
1.1 1=睡眠中 2=冬子と一緒に耶馬溪→東京 3=同上
1.2 1=朱音を入院させる 2=MBF練習再開 3=同上
1.3 1=朱音に付いている 2=MBFで練習 3=1軍練習再開
1.4 1=朱音が出産 2=同上 3=1軍練習
1.5 1=ミラで高岡へ 2=同上 3=全日本QF
1.6 1=高岡滞在中 2=同上 3=全日本SF
1.7 1=夕方東京へ 2=試合 3=全日本決勝を観戦
1.8 1=新しい携帯を買う 2=休養日 3=休養日
1.9 1=2軍練習再開 2=MBFで練習 3=1軍練習再開
 

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1月6日(土).
 
この日、千里1は高岡滞在中であった。千里2はフランスで練習(日本時間で17:00-26:00)に出る。そして千里3は全日本バスケット選手権(旧オールジャパン)の準決勝が14:00から行われ、これはBS-1で全国に生中継された。
 
旭川の浅谷家では、
「千里おばちゃんが出るよ〜」
と賢二が言って、テレビを点けて試合を観戦しようとしていた。
 
この当時浅谷家の子供は由紀恵(6)、絵令奈(4)、奈緒美(2)の3人である。ところが美輪子はプイと席を立つと台所に行ってしまう。
 
「ミワリン、千里ちゃんの試合見ないの?」
と賢二が声を掛ける。
 
「私、あの子見損なった」
「結婚のこと?」
「貴司君一筋と思っていたのに」
「だけど不倫を続けるのはよくないよ。普通に結婚してくれる男性が現れたんだから、いいじゃん」
「あの子は一途なのを気に入って不倫であろうとも応援していたのに」
 
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そんなことを言っていた時、スクーターのような軽いエンジン音が聞こえ、家の前で停まる。ピンポーンとドアチャイムが鳴る。
 
「郵便屋さんかな?」
 
「はーい」
と美輪子が大きく返事して玄関に行く。
 
「千里!?」
「おばちゃん、明けましておめでとう」
 
「おめでとう・・・・」
「あがっていい?」
「うん、まあいいけど」
 
それで千里は
「お邪魔しまーす」
と言って上にあがる。
 
「これ、由紀恵ちゃんと絵令奈ちゃんと奈緒美にお年玉」
と言って3人にポチ袋を配った。お金の価値が分かっている由紀恵が凄く喜んでいる。
 
賢二がびっくりする。
「千里ちゃん、試合は?」
「ああ、そろそろ始まるんじゃないかな」
 
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それで実際テレビを見ると、レッドインパルスのスターターが紹介される所である。
 
「背番号1、広川妙子」
と呼ばれて、妙子が全員とハイタッチしてからコートに出て行く。
 
「背番号30、三輪容子」
と呼ばれて、容子が残る全員とハイタッチしてからコートに出て行く。
 
「背番号16、入野朋美」
と呼ばれて、朋美が残る2人のスターターと控え選手全員にハイタッチしてからコートに出て行く。
 
「背番号24、鞠原江美子」
と呼ばれて、朋美が残るメンバーたちとハイタッチしてコートに出て行く。
 
「背番号33、村山千里」
と呼ばれて、千里がベンチ全員とハイタッチしてからコートに出て行く。
 
続けて、エレクトロウィッカの選手が1人ずつ名前を呼ばれる。
 
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武藤博美/馬田恵子/河原恭子/加藤絵理/永岡水穂
 

「これって録画中継?」
と賢二が尋ねる。
 
「生中継ですよ」
と千里は答える。
 
「じゃ、あそこに居るのは?」
「千里ですね」
「じゃ、ここに居るのは?」
「私も千里ですね」
 
「千里ちゃんって2人居るの〜〜〜!?」
と美輪子と賢二は驚いたように言った。
 

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千里が何とか事情を説明して、美輪子たちに納得してもらった翌日。
1月7日は青葉の成人式であったが、このようにこの日は進行した。
 
成人式は10:30-11:30に行われる。青葉は前日に美容室に行っていたのだが、朝から千里1が振袖(金沢の工房で買ったもの)を着付けしてあげた。青葉は9時半頃自宅を出て会場に向かった。
 
千里3は前日の準決勝でチームが敗退したものの、この日は決勝戦を観戦する予定である。しかし試合は11時からなので、成人式の前なら動くことが可能であった。それで千里に擬態した《きーちゃん》と入れ替わりで高岡に来て(千里が高岡にいる間は、きーちゃんが代理をする)、成人式が始まる前の青葉に会い、ご祝儀を渡し、明日香に記念写真を撮ってもらった。千里3は式が始まると東京に戻った。
 
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千里2はこの日試合があるのだが、試合時間は15:30(日本時間23:30)からなのでこの時間帯は問題無く動ける。それで成人式が終わった後の会場前に《きーちゃん》と入れ替わりで行き、またご祝儀を渡した。今度は美由紀が記念写真を撮ってくれた。千里2は「寄って行く所があるから」と言って青葉たちと別れ、フランスに戻った。
 
そういう訳で青葉は成人式のお祝いを3人の千里から各々もらったのである。(全員1万円入れてくれていたので3万円ゲット)
 

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