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さて春に千里が依頼していた上島先生に関する調査であるが、7月に一通りの調査結果があがってきた。白金弁護士は元からの千里の電話番号に連絡してきたので、千里2がその内容を聞くことになった。千里2は弁護士事務所まで行って詳しい話を聞いた。
1.上島雷太の経済状態はここ数年急激に悪化している。
−上島がプロデュースしていた歌手の多くが2013年までに引退してしまい、その後、それに代わるほどの稼ぎ手が出ていない。
−AYAは2014年は実質休業、2015以降は自主プロデュースに移行。
−ローズ+リリーも2014以降、上島の手を離れている。
−あちこちに持っていた不動産を次々に手放している。軽井沢・六甲・湯布院に所有していた別荘も売却済み。
2.相変わらず女性問題のトラブルが多い。
−少なくとも4人の子供を認知しており、各々に毎月かなりの養育費を送金していて、これも経済情勢を圧迫している。
−毎年のように愛人が発覚しては、手切れ金を渡して別れるということをしている。奥さんとの離婚は時間の問題と予想している友人も多い。
3.怪しい交友がある。
−都議会議員Tとかなり頻繁に会っているが、Tは様々な黒い噂があり、新宿某所で、東京地検特捜部が内偵しているのではという情報を掴んだ(但しこの情報は情報源が特定できなかったのでガセの可能性もある。
千里2は調査内容を聞き、腕を組んで悩んだ
「白金さん、ここからはオフレコで。上島さんは社会的な制裁を受けるに至ると思いますか?」
白金弁護士は言葉を選ぶように言った。
「昨今の不倫に対する世間的な風当たりはかなり強いです。何人ものタレントさんが不倫をきっかけに激しい批判にさらされ、活動停止に追い込まれた人たちもかなりあります。上島さんはやばいですよ」
そういえば雨宮先生も女性関係は乱れているけど、既婚者と未成年には手を出してないよな、と千里は思った。
「怪しい関係の方は?」
「都議Tと、その親分のS衆議院議員には疑惑のデパートと言ってもいいくらい怪しい話が色々あります。一部の週刊誌がかなり追及していますが、決定打に欠く状態です。今はS議員が属している派閥の長であるP元大臣がいるのでSもTも無事ですが・・・」
「Pさん、もう長くないですよね?」
「それは何とも言えませんが」
とさすがに白金弁護士も言葉を濁して苦笑した。
千里2は《きーちゃん》と話し合った。
「これ絶対やばいよね」
「私にも先のことは分からないけど、絶対いつかは破綻する」
「上島さんが破綻したらさ」
「日本のポップス業界が大激震になるね」
「上島さんは儲からなくてもいいから、多数のアーティストに楽曲を提供している。その上島さんが居なくなると、新曲を発売できなくなる歌手が大量に出る。過去の楽曲まで歌えなくなってしまう。結果的には多数のプロダクションやひょっとするとレコード会社まで倒産する可能性もある。多数の歌手、バンド、音楽関係の事業に従事している人が路頭に迷う」
「多分、上島さんが書いていた楽曲を多数の作曲家でカバーせざるを得なくなる」
「上島さんって年間何曲くらい書いているんだろう?」
「多分300-400曲」
「多くの作曲家は年間20曲くらいしか書けない」
「千里は30曲くらい書いているね。凄く多作だと思う」
「私が3つに分裂したのは、ひょっとするとこれに対応するためなのかも。1人30曲なら3人でなら少し頑張ると100曲くらい書けるかも」
「だったら今頃冬子は10人くらいに分裂しているかも」
と《きーちゃん》が言う。
「冬子って、そもそも10人くらい居たりしない?」
「そのあたりは私にも良く分からないなあ」
ともかくも、千里はその“破綻”が起きた時に供えて、新島さんやコスモスから依頼される楽曲も前倒し・前倒しで書き、それ以外にも楽曲のストックを作っておくことにした。それで千里2と《きーちゃん》は、これ以降、3人の千里に毎月割り当てる楽曲を増やすことにしたのである。
幸いにも、千里1が“事故”の後遺症で、創造的な作曲はできないものの《埋め曲》的な曲ならどんどん書ける状態になっていた。千里1はこれから2018年7月3日まで約1年の間に物凄い数の《埋め曲》をまるでコンピュータが作曲しているかのように書いてくれることになる。
さて、その千里1は一度死んだことから、様々なものを喪失していた。一時的には貴司のことさえ忘れていたし、京平のことも忘れていた。また眷属たちとのコネクションが切れてしまっていたが、眷属たちは千里の回復を3年間は待つことにして、その間、陰から千里を守ることにした。
眷属たちは千里のリハビリのため、Jソフトでの営業的な作業にも積極的に参加させた。ところがそこで千里1は川島信次という男性と知り合い、彼からプロポーズされてしまった。
プロポーズされたのが千里2や千里3であったら、きっちりお断りする所だが、千里1は気が弱く流されやすい性格である。それで自分でも戸惑っている内にいつの間にか婚約してしまい、信次の母にも認められて、彼と結婚することになってしまった。
困った、どうしよう?と悩む千里1だったが、千里1が実質的恋愛関係にあった桃香からは「1年後に離婚して私の所に戻ってくるなら結婚しても良い」というおかしな約束をさせられた上で結婚を認めてもらった。そして千里1はやっとその存在を思い出していた貴司に、自分は結婚することになったのでふたりの関係を解消したいという手紙を書いた。
※3人の千里の状況(2017年冬〜2018年夏頃):千里2的見解
■千里1 桃香が好き。川島信次と結婚。緩菜を妊娠。レッドインパルス2軍。
桃香からもらった婚約指輪(プラチナ)も所有している(結婚指輪は2014.7返却済)。
信次からもらった婚約指輪・結婚指輪(ジルコニウム製)をつける。
用賀のアパート→千葉の川島宅→名古屋のアパートに住む。
全ての眷属が付いている(但し、こうちゃん・すーちゃんは不在がち)。
iPhone→故障→2018.1からGratina2 KYY10 pink(ヤマゴのストラップ付)
ミラを使用(アテンザとオーリスを知らない)
■千里2 貴司らぶ。全てを知っている。霊的能力・音楽能力が高い。MBF/PSFに参加。
貴司からもらった婚約指輪・結婚指輪(18金)をつける。
主として葛西のマンションに居ることが多いが千里3が葛西を使っている時はだいたい常総ラボに泊まり込んでいる。
《きーちゃん》《こうちゃん》の他《えっちゃん》と《つーちゃん》を使う。
ガラケーT008。主としてオーリスを使用。
■千里3 琴沢幸穂の主体。卵巣・子宮無し。レッドインパルス1軍・日本代表。
恋愛には興味が無い。バスケット一筋。川崎のマンションに住む。
《きーちゃん》《こうちゃん》が接触している。
Aquos Serie
主としてアテンザを使用(ミラも知っている。オーリスは知らない)
千里2・千里3の存在を知っている眷属は《きーちゃん》《こうちゃん》の他《すーちゃん》と《くうちゃん》である。他の眷属は千里の分裂に気付いていない。《こうちゃん》が知ったのは2018年4月、《すーちゃん》が“確信”したのは5月。
※千里の代理
■千里B(きーちゃん・天野貴子・天徳帰蝶)
千里の究極の守護神として大神様より特命を受けている。小春の事を知っていた。 千里に代わって大学に通い、巫女を代行して龍笛を吹き、卒業後はJソフトに 勤める。Java/C++/UNIX系担当。
Arrows NX F-02G whiteは自身の専用。他に千里1〜3全員のクローン携帯を持つ。 ホンダ・シャトルを専用車として使用
■千里C(せいちゃん)
Jソフトに勤める。BASIC/Perl/PHP/HTML/JavaScriptなど担当。
ハッカーとしての才能が高く、貴司関係の工作で電子メール改竄もしていた。 住宅などの電子ロックやセキュリティを突破できる。本当は女装が嫌でたまらない。 Arrows NX F-01J white
宮田雅希のクローン免許証を所持
■千里D(てんちゃん)
《すーちゃん》と2人でファミレスに勤めてくれていた。2人でやっていたのは、深夜勤務は(普通の女子には)ハードなため。
■千里E(すーちゃん・南野鈴子)
バスケットの能力が高い。実はバレーも上手い。しばしば千里の代理で練習に参加。 Xperia X Performance SOV33 Lime Gold
須賀秀美名義の運転免許証を所持(佐藤玲央美だけが知っている)
玲央美とお互いに協力関係にある。
■千里F(こうちゃん・四谷勾美(山村勾美)・紹嵐光龍)
眷属たちの中で別格の《くうちゃん》を除き最強のパワーを持つが悪い事が大好き。 女装も大好きで女子高生の制服を着ていたりするが、女子高生には見えないのが問題。 アクアのマネージャーをしている。昔、虚空の眷属であった。現在も協力関係にある。 Galaxy S7 edge SCV33 Black Onyx(アクアのマネージャーの携帯)
BMW X4 xDrive35i M Sports (右H) DBA-XW35 2979cc 8AT Fulltime-4WD 5名 Alpine White III (アクア絡みで使用することが多い)
※千里1の眷属(美鳳から貸与)
騰蛇・朱雀・六合・勾陳・青竜・天一貴人・天后・大陰・玄武・大裳・白虎・天空
★この他ヤマゴを羽衣から貸与されている。
※千里2の直接の眷属
帰蝶(=貴人)・光龍(=勾陳)・絵姫(工藤映玲南)・月夜(祐川紡貴)
★小春はむしろ千里1の直接眷属である。
※千里3の日常サポート(千里2が貸与)
花星(2017秋に絵姫と交替して2番の所に戻る)
※出羽の八乙女
恵姫・美鳳・磯子・佳穂・浜路・藻江・奈美・府音
※青葉の眷属
雪娘、紅娘、小紫、笹竹、玉鬘、海坊主
★「ゆう姫(姫様・玉依姫神)」は青葉の眷属ではなく単に居候しているだけである。
※虚空(丸山アイ・高倉竜・久保早紀)の眷属の一部
ふーちゃん:風生(芙貴子)、しーちゃん:四不象(詩浮子)
※女装ビーツのメンバー
戸田(騰蛇)、栗山(六合)、黒石(玄武)、水流(勾陳)、白鳥(白虎)
※市川ドラゴンズのメンバー
南田兄弟♂♂、前橋♀、七瀬♀、九重♂、清川♂、万奈♂、青池? (勾陳の“悪い仲間”たち)
2017年のローズ+リリーは★★レコードの村上社長から強引に《郷愁》というアルバムタイトルを押しつけられ、しかもそれを11月にリリースしてくれと言われて、ケイ(冬子)は本当に困ってしまった。それで短期決戦で音源製作をすべく、7月中旬までに必死に収録する曲のスコアを作成、8月にミュージシャンを“郷愁村”に集めて、集中して制作をしようとした。
短期決戦でやるのでいつものようにひとりが多数の楽器を演奏して多重録音するという手法が使えず、楽器の数だけミュージシャンを揃える必要がある。ここで冬子は龍笛の演奏者に困った。
龍笛は最初青葉に頼んでいたのだが、青葉がシビアな霊的相談事を処理していてどうにも時間が取れなくなってしまった。千里自身は7月の事故の後遺症でまだとてもまともに演奏できない状態だと聞いた。千里の後輩の林田さんは運転免許を取るために合宿に入っているという。
音源制作は龍笛が絡まない曲から始めたのだが、冬子が困っていたら千里(千里2)が連絡してきた。
「去年の春のツアーに参加した“謎の男の娘”(オクト)さんが平日の午前中、6時から12時くらいまでなら稼働できると思うんだけど、彼女じゃダメ?土日は朝から晩までOK」
「助かる!でも6時では誰も起きてないから、8時から12時か13時くらいとか頼める?」
「13時までならいい。彼女は実はバスケット関係者なんだよ。午後からは練習があるから出られないんだ」
「あぁ。でも13時までこちらに出ていて間に合う?」
「13時に音源制作から上がれば、K駅までバイクで走ると距離7kmだから10分程度で到達できる。13:33の新幹線に間に合うから、それで練習場に行けば間に合う」
「申し訳無い!交通費・ガソリン代は全部出すから」
「OKOK」