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■△・瀬を早み(6)

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一行は住吉神社にお参りした後、3台のタクシーに分乗して東京駅に向かう。この時の組み合わせはこのようになった。
 
紅川・雨宮・松浦
緑川・三田原・アクア
矢鳴・千里・蓮菜
 
“危険人物”の雨宮と松浦は紅川会長が接待する方向のようである。雨宮は油断するとアクアをホテルに連れ込みベッドの上で弄びそうだし、松浦は目を離すとアクアを拉致して病院に連れ込み女の子に改造してしまいそうだ。
 
千里(醍醐春海)・蓮菜(葵照子)と一緒になった2人の専任ドライバー矢鳴が
 
「葵先生、新婚旅行からは、いつお戻りになったんですか?」
と尋ねた。
 
「仕事の都合上あまり休んでいられないのよね。だから23日に結婚式を挙げて24日から10月1日まで1週間ハワイに行ってきた。まあハワイなんてわりとどうでも良かったんだけど、新婚旅行やっておかないと周囲がうるさいし」
 
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「でも1週間おふたりだけで過ごすのがいいんじゃないんですか?」
「私たちとっくの昔に枯れちゃってるから」
「あらら」
 
ところがそんな会話を聞いて千里1はびっくりした。
 
「蓮菜、結婚したの!?」
と訊くので、蓮菜の方が戸惑う。
 
「何を言ってる?千里、私の結婚式に出て、友人代表で挨拶してくれたし、余興でバスケット・パフォーマンスしてくれたじゃん」
 
「え?そうだっけ!?」
「やはり千里はこの春の落雷以来おかしい」
と蓮菜は言っている。
 
「でも醍醐先生とお話ししていて話が通じないのはいつものことですし」
と矢鳴が言うと
 
「うん。千里は10人くらい居るとしか思えん時がよくある」
と蓮菜も言っていた。
 
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「あははは。自分が10人欲しいかも」
と千里。
 
「ところで誰と結婚したんだっけ?」
「田代とだけど」
「田代君と結婚したんだ!おめでとう!後でご祝儀渡すね」
「いや、既にもらっている」
「ほんとに?」
 
「葵先生も黙っていれば二重取りできたのに」
「あ、そうすればよかった」
 

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実際には9月23日、千里1は用賀のアパートに居て、ひたすら作曲をしていた。
 
そして千里2は蓮菜の結婚式に出席して、祝賀会では矢鳴も言ったように友人代表としてスピーチをし、余興でバスケット・パフォーマンスをした他、ピアノの伴奏も何件かこなしている。式にはゴールデンシックスのメンバーなど、旭川N高校時代の友人たちも出ている。矢鳴もこの祝賀会に出席した。
 
一方千里3は実は都内の別の場所で女子日本代表・アジアカップ優勝祝賀会に出席していた!
 
一応蓮菜の結婚祝賀会と、日本代表の優勝祝賀会は時間帯がずれているので、1人の人物が両方に出席することは可能ではあった。
 
そして翌24日に千里2は大阪のマンションで保志絵と会うのである。
 
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東京駅からの新幹線は目立たないように複数の車両に分散して座ったが、寝ている人が多かったようである。
 
新大阪駅で、近くの駐車場に駐めていたキャラバン・ワゴン10人乗りを持ってくる。これは9日に借りて9-10日は田代夫妻やエレメントガードの子たちを乗せて走り回った車で、今日明日も使ってから明日夕方返却する予定である。それで昨日から駐車場に駐めてあった。
 
今日の参加者が全員乗り、矢鳴が運転して住吉大社まで行き、お参りした。アクアはバスガイドのコスチュームのまま、旗!まで持って一行を案内した。
 
「イザナギの神とイザナミの神は一緒にたくさんの神様を産みますが、最後に火の神である迦具土神を産んだ時に大火傷をして亡くなってしまいます。妻を失って悲しみに沈んだイザナギの神は、黄泉の国までイザナミの神を連れ戻しに行くのですが、失敗してしまいます。それでイザナギの神は筑紫の日向の橘小門のアワギ原という所で禊ぎ(みそぎ)をするのです」
とバスガイドに扮したアクアが解説する。
 
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「この時、川の底の方で身体を洗っている時に底津綿上津見神と底筒之男命、中程で洗っている時に中津綿上津見神と中筒之男命、川の水面近くで洗っている時に上津綿上津見神と上筒之男命が生まれました」
 
「この底津綿上津見神・中津綿上津見神・上津綿上津見神の三神を綿津見神(わだつみのかみ)と言い、海の神様として福岡県志賀島(しかのしま)の海神社(うみじんじゃ)に祭られています。そこが全国のわだつみ神社の総本社です。この志賀島というのは《漢委奴國王》の金印が発見された所で古代にはとても栄えた所と思われます。このわだつみ神を信奉していたのが古代の海洋の民、安曇一族で、長野県の安曇野にもその名前を遺しています」
 
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「そしてもうひとつ底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命の三神を住吉大神(すみよしのおおかみ)と言い、綿津見神と並ぶ海の神様、海運の神様として、全国の住吉神社に祭られています。特に大阪の住吉大社、下関の住吉神社、博多の住吉神社が重要で、三大住吉と呼ばれます。この内、大阪の住吉大社には住吉大神の和魂(にぎみたま)、下関の住吉神社には荒魂(あらみたま)が祭られています。また博多の住吉神社が最初に創られた住吉神社とされます」
 
とアクアはよどみなく説明する。
 
「アクアちゃん、凄く詳しいね」
と松浦紗雪がマジで感心している。
 
「実は私の芸名の“アクア”というのは、このイザナギ命の禊ぎに由来するんです。人の心を洗い清めることのできるようなタレントになれたらいいね、ということで名付けられたんです」
 
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「そうだったのか!」
 

「だけど、綿津見神も住吉神も3人セットなんだね」
 
という声があがるが、そこで千里が
 
「3つセットの神様というのは多いですね。日本では弁天様と習合しているもうひとつの海の神様である宗像神(むなかたのかみ)も3人の女神のセットですし、正月毎に来訪する年神(としがみ)は、大年神・御年神・若年神の三神とされます。宗像三女神は姉妹ですが、年神は親・子・孫ですね。また宇宙の始原の時に生まれた造化三神(ぞうかさんじん)、天御中主神・高皇産霊神・神皇産霊神もあります」
 
「また、イザナギ命が最後に生んだのが、天照大神(あまてらすおおみかみ)、月読命(つきよみのみこと)、須佐之男神(すさのおのかみ)の“三貴子”(さんきし)ですし、天孫降臨した邇邇芸命(ににぎのみこと)と富士山の神・木花咲耶姫(このはなさくやひめ)の間に生まれたのが、火照命・火須勢理命・彦火火出見尊の3人ですし」
 
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と補足説明する。
 
「お、さすがは本職巫女」
 

住吉大社にお参りした後で、近くの料理店でお昼を食べる。アクアはバスガイドの衣裳がタイトスカートなので、お姉さん座りをしている。
 
「そういう座り方、きつくない?」
と紗雪が心配する。
「慣れてるから大丈夫ですよ。昔は女の子座りもしてたんですけど、骨盤が変形して赤ちゃん産むのに良くないからと言われて、この座り方に変えました」
 
「赤ちゃん産むのにね・・・」
と紗雪が少し悩んでいた。
 
午後は多賀大社まで行くが、千里が
 
「私が運転しますね」
と言ったので、矢鳴は助手席に乗って千里が運転した。もっとも実際に運転したのは《こうちゃん》で、矢鳴から
 
「今日の醍醐先生の運転は上手いんだけどワイルドだ」
と言われていた。むろんアクアを乗せているので、万が一にも警察に捕まったりすることがないように、制限速度を厳守しているのだが、けっこう早く進行していた。バスの中で三田原さんが言い出した。
 
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「朝行った住吉神社は大阪の田蓑神社の御祭神の分霊を祭ったものということでしたが、神様の勧請(かんじょう)とか、分霊を祭るとかいうのはよく行われますよね。あれって、神様が分裂しているんですかね?」
と質問がある。
 
分裂という言葉を聞いてアクアはドキッとした。
 
「コピーを取っているんじゃないの?」
「コピーというよりクローンかな」
などという意見も出るが、蓮菜がこのように答えた。
 
「色々な解釈があっていいと思うのですが、私が聞いた所では、端末を増設しているのだそうです」
 
「ほぉ!」
 
「神様ってそもそも遍在してるんですよ。遍在って分かりますか?」
「かたよっていること?」
 
「偏っているのはニンベンの偏在で、ボーキサイトとか石油とかは偏在していますが、水とか空気はあまねくどこにでもありますよね。シンニョウの遍在は《あまねく存在する》ということで、神様ってそういうものなんです。実はどこにでもいらっしゃるんですね。これはゾロアスター教の教典などにも、水の女神であるアナーヒータが遍在していると書かれていて、古くからある概念のようなのですが、多くの神はこの遍在という性質を持つと考えられます」
 
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「まあ水なら確かにどこにでもあるね」
 
「だから実はどこにいても神様とコンタクトを取ることは可能なのですが、神社は端末になっていて、特定の神様とコンタクトが取りやすい環境が作ってあるんですよ」
 
「ほほお」
 
「BS/CS放送電波はどこにでも漂っているのですが、テレビのチューナーにはその電波の内容を解読するための鍵が設定されていて、その鍵に適合する放送を拾いますよね。神社はテレビのチューナーみたいなものなんです」
 
「その考え方は面白い」
 
「だから全国に○○神社というのがある場合、そこの御祭神にアクセスする暗号鍵がその神社には設定されているし、勧請する場合は、その鍵をコピーして持っていっている訳ですね」
 
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「じゃ御祭神がやたらと多い神社は多数の鍵をインストールしている訳か」
「そんなことだと思います」
 

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「でも神様の中には勧請できない神もあるんですよ。天照大神などはその代表で、天照大神を祭る神社というのは、実は伊勢の神宮の遙拝所なんです」
 
「ほほお」
 
「だからどこの神社からも実は伊勢の神宮を拝んでいるわけですね」
 
「まあ太陽ってそんなものかもね」
「ええ。太陽はいくつもありませんから」
 
「太陽が3つあったら大変だ」
 
3つという言葉を聞いてアクアはギクッとする。
 
「お稲荷さんの場合はまた別で、あれはどんどん増殖しているのではと、私にこのあたりのことを解説してくれた人は言っていました」
と蓮菜。
 
「あれは伏見がベースキャンプになっているだけで、そこからたくさんの神が生まれて全国に行っているんだろうね」
と雨宮先生が言っている。
 
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「ええ。だから伏見には、これからどこかに赴任なさる予定の神様たちが大勢いらっしゃるんですよ。任務を終えて戻ってこられた方たちもおられますが」
 
「ああ、あそこの一の峰・二の峰・三の峰とか見ると、そんな気がする」
 

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「逆に合流してしまう場合もあるんですよ」
と更に蓮菜は言う。
 
「へー!」
「今、天神(てんじん)と言ったら菅原道真公、白山(はくさん)と言ったら菊理姫(くくりひめ)ですけど、元々は天の神様はみんな天神で、白い山、つまり雪を冠する山は白山だったんです」
「ほぉ!」
 
「それが菅原道真公の天神社、菊理姫の白山神社が有名になってしまったので元々関係無かった天神社・白山神社も御祭神は菅原道真公だろう、菊理姫だろうということになったのではないかという意見もあります」
 
「それはありそうという気がする」
 
「分かれてまた合体したような所もありますね」
と蓮菜が言うとアクアが興味深そうにこちらを見る。
 
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「霧島神宮は元々はひとつだったのが、噴火の被害に遭う度に移転している内に6つに分かれてしまったんです。霧島神宮、霧島東神社、東霧島神社、夷守神社、霧島岑神社、狭野神社。ところが後に霧島岑神社が夷守神社の所に同居したので、今は5箇所になっちゃったんですよね」
 
「会社なんかも分かれたりくっついたりというのがあるよね」
「似たようなものだと思います。実は神社会社説というのもあるんですよ」
 
「へー!」
 

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「つまりですね。勧請して分社を作るというのは、企業が支社や営業所を作っているようなものだというんです」
 
「それは凄く分かりやすいかも」
「分霊をどこかに持っていくというのは、その会社のベテラン社員に支店長の辞令を出して赴いてもらうようなもの、と」
「神様の世界も大変そうだ」
 
「だから○○神社というのはブランドであって、トヨタの販売店の支店長として赴任してきた人が、元はホンダの販売社員だったかも知れない」
「ありそう、ありそう」
 
「デザイナーなんかも様々なブランドを渡り歩きますよね。だから神様も以前は○○神社の神様だったのが、転勤なり転籍して、△△神社の神様になり、といったこともあるのではと」
 
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「いや、その話は結構面白い気がします」
「むしろ日本人的宗教観に近い気がしますよ」
 
「戦前の日本製鐵が戦後GHQの指令で解体されて、八幡製鉄所と富士製鉄に分割されましたけど、後に合体して新日本製鐵(新日鉄)に戻りましたよね。企業でもそういうことがある訳だし、神様のブランドの分割・合体もあるのかも知れませんよ」
と蓮菜は言う。千里が何か2系統の神社が合流してしまった例を挙げていたけどなと思うが思い出せない。
 
しかしその分かれたものがまた合体するという話を、アクアが本当に真剣に聞いていた。
 

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“千里”のワイルドな運転のお陰で、多賀大社には予定より少し早く到着した。お参りした後、多賀大社から伊勢までは、前半を矢鳴、土山SAから先を千里(中身:こうちゃん)が運転した。
 
翌10月12日、神宮に参拝するが、千里1は体内にあった様々な「壊れた物」が洗い流されてしまい、そこから新しいものが再建され始めたような感覚を覚えた。
 
あ・・・私このまま行けば再生できるかも、と千里1は思った。
 

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しかし千里1は昨日・今日とアクアを見ていて、どうにも疑問を感じていた。
 
『この子、どう見ても女の子にしか見えないんだけど!?』
 
アクアの持っている雰囲気がどうにも女の子の雰囲気だし、妙な色気もあるし、気のせいか体臭も女の子の体臭のような気がするのである。まさか性転換しちゃったんじゃないよね?と裸に剥いて性別を確認したい気分であったが、さすがにそんなことをする訳にはいかない。。。。
 
と思っていたら、松浦紗雪が
 
「私、アクアちゃんを拉致して裸にして3〜4日、可愛がりたい」
 
などと真顔で言っていたので、今日のお参りツアーの組には自分も含めて危険人物が多いなと思った。
 

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△・瀬を早み(6)

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