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■△・瀬を早み(8)

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一方、桃香の家に入った千里だが。。。
 
津気子が単純に千里の結婚を喜んでくれたのに対して、桃香の家で、朋子は千里にこの結婚に関する“説明”を求めた。すると、千里は最初は事実関係を説明していたものの、しばしば朋子の質問に答えられない事態となる。
 
「千里ちゃん、ほんとにその状態で彼と結婚してもいいの?」
と朋子が尋ねると
「でも熱心にプロポーズされたし」
と他人事のような言い方をする。
 
それで朋子から
 
「千里ちゃん、もう一度この結婚について、よくよく考えた方がいい」
と言われる始末であった。
 

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翌日は千里が朋子のヴィッツを借りて信次を高岡駅前まで迎えに行った。信次は昨日と同じスーツを着ている(むろん女装はしていない!)。それで千里の運転する車の助手席に乗り込んだ。
 
「昨夜はよく眠れた?」
「うん。札幌まで行って来たからかな。ぐっすり寝てたよ」
「ごめんねー。大旅行させちゃって」
「いや、平気平気」
 
実際は昨夜久しぶりにセックスをしたので、ぐっすり眠れたのである。
 

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信次はさわやかな笑顔で朋子に礼儀正しく挨拶した。
それで朋子も笑顔で信次に応対した。
 
こちらは札幌での会食と違って、
「自分のうちだと思ってくつろいでくださいね」
と朋子が言い、桃香が
「背広なんて堅苦しいし、脱いじゃうといいですよ」
などと言うので、信次は背広も脱ぎ、ネクタイも外して、主として桃香と!歓談をしていた。
 
お料理は氷見の鰤の刺身、甘エビの刺身、富山湾の紅ズワイガニの塩茹で、ノドグロの塩焼き、富山名物・鱒寿司、フグの卵巣の粕漬け、能登産牡蠣のフライ、と海の幸尽くしであった。昨日青葉が買い付けておいたのを今朝から千里が一部調理している。
 
「お魚をさばいたり、甘エビの皮を剥いたりは、千里ちゃんがしたんですよ」
と笑顔で朋子が言う。
「へー、千里ちゃん、お魚さばけるの?」
「漁師の娘は魚くらいさばけなきゃと言われて小さい頃から仕込まれたから」
「なるほど〜。“娘”だったんだ?」
と言われると、千里は照れているが、青葉はニヤニヤしている。
 
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また桃香から
「車じゃないから、いいでしょ?」
と言われて、ビール、更に水割りまで勧められて結構飲む。
 
今日のビールはヱビスビールの琥珀、ウィスキーは《響ジャパニーズハーモニー》である。
 
「ちょっと、桃香、あんたまで飲んでるの?」
と朋子から言われる始末である。
「今日はママ業はお休みだし」
「いいけど、あんた東京に戻ってからも2〜3日授乳禁止」
 
早月は朱音に預かってもらい、東京に置いて来たのである。もしこの日桃香が早月を連れてきていたら、信次は死後自分の娘ということになる早月に、生前に会うことができていた所だった。
 
「ああ、赤ちゃんがいるんですか?」
と信次が訊く。
 
「ええ。でもまだ生まれて半年だから富山との往復はきついかなと思って、友だちに預けてきたんですよ」
「なるほど」
 
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10月24日(火)。《ビットコイン》からの“ハードフォーク”で《ビットコインゴールド》が誕生した。冬子は意味が理解できなかったが、その日郷愁村の食堂に若葉が来たので尋ねてみた。
 
「意見が分かれたから分裂しただけだね」
「私たちが持っていたビットコインはどちらになるの?」
「両方になる」
「へ?」
「冬は3万BTCくらい持ってたよね?だからビットコイン側は3万BTCになるし、ビットコインゴールド側も3万BTGになる」
「じゃ、両方の記録が連動して、例えばBTC側で1万BTC使えばBTG側も1万BTG減るの?」
 
「違う。この先はもうBTCとBTGは別の世界になる。だからBTCもBTGも独立して使うことができる」
 
「だったら、まさか20億円が倍になる訳?」
「各々がいくらで取引されるかによるけどね」
「それあまりにも美味しすぎる話なんだけど」
 
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「だからハードフォークが予告されている時は、ハードフォークで資産が倍増することを期待してみんな買うから、元の仮想通貨の相場がどんどん上がる。ビットコインの相場は9月頃は40万円くらいだったのがハードフォーク直前には69万円まで上がっている」
 
「あれ?いったん40万円まで下がってたんだっけ?」
と冬子が言うので若葉は注意した。
 
「冬、桁を勘違いしてない?冬が買った時には6万円だったのが今年の夏には40万円くらいまで上がっていた。それが今は60万円まで上がっている」
 
「へ?」
「だから今冬が所有しているビットコイン3万BTCは日本円に戻したら200億円だよ」
 
「10倍になってるの〜〜!?」
と言って冬子は絶句した。
 
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「それがハードフォークしたからBTCとは別にBTGも同額もらえる訳ね。この同額付与するかどうかは実は取引所次第。私たちが使っている取引所は同額付与をすると言っているから3万BTGもらえるはず。ただ出来たばかりの仮想通貨は最初は無価値だよ。これから実際にいくらくらいで取引されるかが決まっていく」
 
(実際にはハードフォークの少し前から先物市場で値が付いている)
 
「へー!」
 
「場合によっては元の仮想通貨が放棄されて、新しい仮想通貨が元の仮想通貨の地位に取って代わるかも知れない。マイナー(採掘者)次第」
 
「それは怖いね」
「うん。仮想通貨の世界は大量の富豪を生み出すと同時に、大量の破産者も生み出すはず」
 
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「最終的にはゼロサムゲームだよね?」
と冬子は訊く。
 
「当然。仮想通貨は何も付加価値を生み出さないからね。今はみんながまだ上がると思って買っている。でもその内、価格上昇も限界点に到達する。行き詰まれば、その時持っていた人がババを引く」
と若葉は言う。
 
「壮大なババ抜きゲームか」
 

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冬子は千里もこのことを知らないかも知れないから教えた方がいい、と言って、彼女を郷愁村に呼び出した。
 
千里(千里2)は巨大なバイクに乗ってやってきた。若葉が
「すごーい!隼だ!」
と言って、興奮している。
 
「どういうバイク?」
と冬子が訊くと
「世界最高速のバイクだよ。サーキットで時速333kmを出したんだよ」
と若葉が答える。
「新幹線より速い!?」
「そうそう。N700が時速300kmだから、それより速い」
「凄っ!」
 
「千里前からそんな巨大なバイクに乗ってたっけ?」
「私、バイクの国内ライセンスも持ってるよ」
「凄い!いつの間に」
「リッターバイクではもうひとつ1400ccの忍者もある」
「千里にそういう趣味があるとは知らなかった。車は得意みたいだけど」
 
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「まあバイクも車も大半は、雨宮先生が飽きたのを『勝手に使っていいよ』と言われて駐車場に放置されていたものばかりなんだけどね」
「やはり」
「あの人は車も女も飽きるのが早い」
「ああ・・・」
 

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郷愁村の食堂(若葉が経営するトレーラーレストラン)でビーフシチューを食べながら、再度若葉の説明を聞いた。
 
「通貨が分裂するというのは面白いね。日本がひょっとして西日本国と東日本国と北日本国に分裂したら、円が北円・東円・西円に分裂したりして」
 
「その分裂はどこかで聞いた名前だ」
「その場合元々1億円持っていた人は、1億北円+1億東円+1億西円になるんだろうか?」
「銀行ごとに丸ごとどれかに切り替わるという説に1票。三井住友は西円、東京三菱は東円、とか」
 
「リアル通貨の場合は分裂しても国が統一されると通貨も合流すると思うけど、仮想通貨の合流というのはあるんだろうか?」
 
「そういう仕組みは無いかも」
「まあ新しい仮想通貨に時価で等価交換という形で統合するんだと思うよ」
「ああ、それならあり得るか」
「システムにはなくても運用でできることはあるよね」
 
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「でも最初に買った時から10倍になっているなというのは思ってた。8月にも一度分裂したよね?」
「そうそう。ビットコインキャッシュ。まだしばらくハードフォークが続くと思うけど、すぐ消えてしまうものもあると思う。でもハードフォークが続くから、相場は上がっている。ビットコインキャッシュも上がっている。それでそちらは取り敢えず放置していた」
 
「ということは若葉は今、20万BTCだけでなく、20万BCH, 20万BTGも所有している訳か」
「仮想通貨間で転がしていたから今25万BTC, 30万BCH, 25万BTGくらい」
「それリアル通貨からの追加購入は?」
「してない。元手は最初に注ぎ込んだ100億円だけ」
「凄いね」
「冬たちは運用してないの?」
 
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「私は何もしてない。放置してた」
と冬子は言うが、千里は
「去年は全く動かさなかったんだけど、今年の春から夏に掛けて結構動かした」
と言う。
 
「実は上島さんのJER4出資額12億円を4月に肩代わりした時に、こちらも日本円の現金が4億円しか無くて、いったん銀行から8億円借りたんだよ」
「わっ、ごめん」
と冬子。
 
「それで最初はビットコイン少し売却しようかとも思ったんだけど、売り時が分からなくて、相場見ている内に、これ仮想通貨間の移動で利益出るぞと思って結構売買した。それで3万BTCをいったん3.6万BTCくらいまで増やしてから8月に8億円分の2000BTCだけ売却して、銀行に返済したんだよ。だから結果的に今、冬と同じくらいになっていると思う。その後も少し動かしていたけど、そんなに大きくは変わってないかも」
 
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「運用益で8億円出るって凄いね」
「当時の相場で3万BTCは120億円相当だったから、120億円の運用で8億儲けるのはそんなに難しくない」
「そんなに増えてるんだっけ?」
「今は1BTCが70万円くらいになってるから、3万BTCは210億くらい」
 
「何かもうお金を扱っている感覚じゃないね」
と冬子が言っている。
 
「まあ、それでさ」
と若葉は言った。
 
「私が仮想通貨やってるの、お母ちゃんにバレちゃって」
「もしかして禁止令が出た?」
 
「そうなのよ。だから、1月までに全部撤退することにした」
「若葉が撤退するなら私も撤退しようかな。今は少し利益が出ているけど、いつまでもこれが続くとは思えないし」
と千里が言っている。
 
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「そうなんだよね〜。私も『やったぁ』と思った時もあったけど一瞬で200億円無くして、2日くらい御飯食べる気にもならないこともあった」
と若葉。
 
「じゃ私も撤退しようかな。実際放置してたし。この後も放置になりそうだし」
と冬子が言っている。
 
「今年は『郷愁』の制作で死んでたもんね」
 

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それで若葉、千里、冬子の3人は仮想通貨の取引から順次撤退することにしたのである。
 
3人は分離したばかりのビットコインゴールドの行く末に不安を感じたので、まずはこれを売却することにした。売るタイミングは若葉が使用しているプログラムに任せることにしたら、プログラムは11月11日に1BTG=1.5ETHになった時に売ってくれた。それで若葉は25万BTGが37.5万ETH, 冬子は3.33万BTGが5万ETH、千里は3.5万BTGが5.25万ETHになった。
 
仮想通貨同士の取引なので感覚が掴みにくいのだが、若葉の売却額は約130億円、冬子と千里の売却額は18-19億円に相当する。
 
なお、ビットコインゴールドは日本国内の取引所の多くが様々な理由で付与を行わなかったのだが、若葉たちはそもそも手数料の安い、海外の取引所ベースで運用していたので、すぐに付与が行われた。
 
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「しかし何も無い所から18億円出現するというのは、ほとんど錬金術だ」
と千里が言う。
 
「こんな取引やってたら、もう金銭感覚がおかしくなるよ」
と冬子は言った。
「うん。実際、精神的におかしくなっている人も多いと思う」
と若葉も言っていた。
 
 
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