広告:まりあ†ほりっく 第2巻 [DVD]
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■△・瀬を早み(4)

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千里が冬子と電話で話した日、8月3日(木)に、青葉は高野山から戻って東京に行こうとして、梅田の地下街で迷子になり!阿倍子・京平の親子と偶然遭遇した。
 
阿倍子は青葉が千里の妹とは知らず、京平が生まれた時に助けてもらった霊能者とだけ思っている。青葉はなりゆきで京平に食事をおごってあげた。
 
「今日はキュロット穿いているんだね」
「うん。このズボン、スカートみたいで好き」
「へー。じゃスカート穿くのも好き?」
「好きだよ」
「女の子になりたい?」
「女の子になるには、おちんちん取らないといけないらしいから、なりたくない」
 
やはり、ちー姉の遺伝で女の子の服が好きなのかなあ、などとも思いながら京平と、たわいもない会話をしていた時、青葉はその京平から、手掛けていた事件に関する重大なヒントをもらうことになる。
 
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青葉はそれで東京行きを中止して金沢に戻って放送局の人と、その計画について話し合うことにする(この連絡を受けて冬子は龍笛の代わりの演奏者を探すハメになった)。その計画には霊的な防御力の高いドライバーが必要であった。おりしも千里がちょうど北陸に来る途中であることを聞き、青葉は千里にそのドライバー役を頼んだ。
 
千里(千里2)は3日23時に高岡に到着した。それで青葉が詳しい状況を話すとそのドライバーをするのは全然問題無いと答えた。ほんの半月前にあれだけの重大な事故にあった千里が、物凄く回復している様子に内心驚きながら青葉は《霊回収車》の運転を頼んだ。
 
千里はそれをあらためて快諾した上で言った。
 
「そうだ、最近青葉、ヤマハの250ccバイク使ってる?」
「それが最近、なかなか乗れなくて。少し時間が取れたらFJR1300ASの方の練習ばかりしてるし」
「だったら、しばらくYZF-R25は私が借りてていい?」
「うん。いいけど」
 
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「じゃちょっと借りるね」
「もしかして今から使うの〜?」
 
それで千里はYZF-R25に乗って、真夜中出かけて行った。朝までには戻ると言っていた。
 

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実際には千里2は《きーちゃん》を通して《くうちゃん》に依頼し、YZF-R25を東京に転送してもらった。そして翌朝8時に《きーちゃん》に覆面をしてそのバイクに乗り、冬子たちが音源製作をしている郷愁村に乗り入れてもらったのである。そして13時であがると、そのバイクに乗って新幹線K駅まで移動してもらった。バイクは駅近くにわざわざ駐車場を借りてそこに駐めている(この駐車場代は冬子からもらった:制作費用として処理)。
 
千里が郷愁村への“通勤”用に青葉の250ccバイクを借りたのは、千里が所有するバイクはカワサキのNinja ZXR600R, ZZR-1400, スズキのGSX1300R"隼"と大きなバイクばかりで「渋滞と無関係に通行する」用途には微妙であったことと、実際に使用する《きーちゃん》が大きなバイクは自信が無いと言ったためである。《きーちゃん》は
 
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「250ccかせめて400ccくらいまでなら何とかなると思うけど600以上は怖い」
と言った。
 
そういう訳で8月4-7日の『青い浴衣の日々』の音源製作で“謎の男の娘”として龍笛を入れたのは実は《きーちゃん》だったのである。彼女は自分が所有する室町時代に製作された古い煤竹の龍笛を使ってこの曲を吹いたので、ひじょうに趣きのある音を入れることができた(彼女がライブで使用しているのは明治初期に制作された花梨製の龍笛−但し野外で吹く時は同じ花梨製でも現代の作品あるいはプラスチック製を使用)。
 
制作の期間、《きーちゃん》は覆面をしたまま、朝8時に郷愁村に入り、13時には郷愁村を出るというパターンを続ける。村に居る間はずっと覆面をしたままである。YZF-R25も覆面をしたまま運転していた。但し8月5-6日は1日中、音源製作をしていた。
 
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一方千里2自身は8月5日の朝まで青葉と一緒に飛散した霊の回収作業をし、5日の朝4時半頃にミッション完了。午前中の新幹線で東京に戻った。実際にはこの日の午後いっぱい仮眠して、夕方、アメリカのPSFチームに合流。日本時間6日0時(セントルイス時刻5日10時)からの試合に参加した。
 

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千里2は8月6日14:00(日本時間7日8:00)の決勝戦を見ると、セントルイス市内で一泊した後、フランスのマルセイユに直行して、LFBのMBFチームに合流した。これがフランス時間の8月8日12時(日本時間8日19時)頃である。移動には3つの飛行機を乗り継ぎ、乗り継ぎ時間も入れて18時間ほど掛かっている(純粋な飛行時間は11時間ほど)。
 
そしてこの後は、フランス時間の9-18時(日本時間16-25時)に練習をするサイクルになる。但し試合は多くの場合土日の20:00-21:30または14:00-15:30(日本時間3:00-4:30, 21:00-22:30)に行われることが多い。これがフランスが冬時間に切り替わる10月29日以降は1時間遅くなるので、練習は日本時間の17-26時、試合は4:00-5:30, 22:00-23:30くらいの時間帯になる。
 
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LFBのシーズンは9月29日に開幕したので、それまでの期間はローズ+リリーの音源製作にはだいたい千里自身が覆面をして《謎の男の娘》として参加し、シーズン開始以降、土日は《きーちゃん》、平日は千里2自身が参加していることが多い。ローズ+リリーの制作は2017年10月以降は《平日組》と《休日組》に分離して進行したので、《平日組》の制作の多くは千里、《休日組》の多くは《きーちゃん》が参加している。
 
千里の龍笛は中学1年の時に貴司のお母さんからもらった天然煤竹の龍笛、きーちゃんの龍笛は前述、室町時代の作品である。どちらも煤竹で過度な装飾はされていない実用品なので、民謡楽器の専門家ではあっても雅楽器に必ずしも詳しくない冬子は違いに気付かなかったようである。
 
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なお、YZF-R25は『郷愁』の制作が終わったら青葉に返却するつもりだったのだが、例によって千里は物忘れが多く、借りたものを借りっぱなしにしやすい性格であること、青葉も忙しくてそもそもあまりバイクに乗っていなかったこと、そして何と言っても250ccバイクには車検がないことから、忘れられて、その後、ずっと千里が手元に置き(常総ラボの車庫に保管)、主として《きーちゃん》と《すーちゃん》が使用していた。
 

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千里2は自分が3人に分裂してしまっていることを、ごく親しい数人にだけ打ち明けることにした。そうすることに決めたのは何と言っても千里1が川島信次と結婚することになってしまい、その話に困惑したり激怒した人たちがいたからである。
 
千里1が信次と婚約したのは9月16日(土)であるが、この日千里2は金沢に来ていて、青葉と一緒に「飛散した霊」の最終的な処理をしていた。
 
千里2は17日の深夜0時頃に、自分の車オーリスに乗って東京に戻っていった。そして同日朝7:00、千里1が青葉と朋子に、婚約したことを電話で伝えた。これに青葉は困惑し、その結婚には賛成できないと言った。ところがその直後、千里2から電話があり、免許証を忘れてきたことに気付いたので持って来て欲しいという。聞くと千里2はまだ東部湯の丸SAに居るという。
 
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何か不可解な事態が起きていることを認識した青葉はとにかく千里が忘れていった免許証の入ったバッグ(高額現金やパスポートも入っている)を持ち、自分のアクアに乗って東部湯の丸まで行った。
 
青葉は千里と会うとその姿をよくよく観察した。
 
・これは間違い無く千里本人だ。眷属の擬態ではない。
・凄まじいオーラを持っていて、霊的能力の高さを感じる。
 
青葉は千里に「ちょっと電話していい?」と断って、用賀のアパートの家電に掛けた。するとそちらも千里が電話を取った。目の前にも千里がいるのに!青葉は電話の先の千里も観察する。
 
・向こうもやはり千里本人である。
・物凄く弱々しいオーラであり、霊感のかけらも感じない。
 
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青葉は電話の向こうの千里に言った。
 
「変なこと言ってごめんね。結婚おめでとう。披露宴の司会をさせてよ」
 
そして電話を切ってから目の前の千里に言った。
 
「ちー姉。この春から、どうも納得の行かないことが多かったんだけど、やっと原因が分かったよ」
 
「青葉にしては気付くのに時間が掛かったね」
と千里は笑顔で言った。
 
その左手薬指にはいつの間にか金色の結婚指輪も輝いていた。
 

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千里はそのまま青葉と一緒に東京に行き、葛西のマンションに連れて行った。このマンションを他の人に教えるのは初めてである。
 
(ここに千里が住んでいることを知っているのは他には佐藤玲央美と虚空、あとは龍虎だけ)
 
そして実は千里は3人に分裂していることを青葉に教えたのである。青葉は千里3にも会ってきて、そちらが千里2には劣るもののかなりの霊的な能力を持ち、プロバスケット選手として活動していること、そしてその千里は自分の分裂には気付いていないことを認識した。
 
更に青葉には、千里が3人に分裂した時、同時にアクアも3人に分裂してしまったことも語った。
 

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1週間後の9月24日(日)、千里の結婚という話を貴司から聞いて困惑した保志絵は詳しい話を聞こうと大阪に出てきたものの、貴司は不在で阿倍子も出かけてしまい、京平と2人でお留守番することになった。そこに千里(千里2)が来訪する。
 
それで保志絵が千里2と話していた時に、千里1からの電話が掛かってくる。
 
へ?
 
保志絵は目をゴシゴシして、目の前の千里を再度見た。目の前の千里は微笑んでいる。そして電話の向こうの千里はしきりに謝って、言い訳めいた事情説明を長々とした。それで保志絵はその千里に伝えた。
 
「こちらこそ貴司が曖昧な態度を取り続けて御免ね。幸せになってね」
 

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電話を切ってから保志絵は目の前にいる千里(千里2)に訊いた。
 
「あんた、千里ちゃんだよね?」
 
「私は間違い無く千里です。私は貴司さんの妻です」
 
と言って、千里2は落ち着いた表情、しかし燃えるような熱い目で、貴司との婚約指輪と結婚指輪を薬指に付けた左手を見せた。
 
「電話の向こうに居たのは?」
「あれも千里です。あの子は川島さんと結婚します」
 
「千里ちゃんって2人いるの〜〜〜!?」
 
「それが3人いるんですよね」
 
「うっそー!?」
 

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千里2は春に落雷に遭った時、なぜか自分が3人に分裂してしまったこと、その内の千里1が7月に事故に遭いいったん死亡し、蘇生したものの霊的な能力と多くの記憶を失っていることを語った。
 
「それで結局、1番はバスケットの能力も落ちているので“村山十里”の名前でレッドインパルスの2軍でリハビリしているんですよ。3番が“村山千里”の名前で1軍登録され、日本代表としても活動しています。ふたりがかち合わないようにするのは、私の眷属が調整してくれています」
 
と千里2は説明した。
 
千里の眷属のことは、実は保志絵と留萌Q神社の宮司だけが全容を知っている。千里が12人の眷属たちを使いこなせるように訓練してくれたのがQ神社の宮司なのである。
 
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「じゃ、あなた・・・2番さんはどうしてるの?」
「3人も日本に居たら調整不能なので、私は海外に居るんですよ」
「それでマルセイユに居るのか!」
「アメリカのWBCBLとフランスのLFBに参戦しています。WBCBLは5月から7月、LFBは9月から5月がシーズンなので、重ならないんですよね」
「へー!」
「WBCBLはセミプロリーグですが、LFBはプロリーグで、だから私も一応、女子プロバスケットボール選手なんですよ」
「凄い」
「実は私がもらっているお給料の方が、3番がもらっているお給料より高い」
「おぉ」
 
「東京五輪までには1つに戻れるといいなと思っているんです。そしたら日本代表として鍛えられている3番と、アメリカ・フランスで修行している私とが合体して、超強力な選手になれると思うから」
 
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「そうなるといいね」
と保志絵は笑顔で答えた。
 
 
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