広告:大奥<男女逆転>豪華版Blu-Ray 【初回限定生産】
[携帯Top] [文字サイズ]

■女子中学生のビギニング(15)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

小春が言う。
「しばしば日本の仏教文化では、観音様・お不動さん・お地蔵さんをキリスト教の三位一体に準じた感じで捉えたり、聖家族みたいな言い方をするけど、ここで多くの人が、不動=父、観音=母、地蔵=子、と捉えている。でも霊的なことに関わる人の中では、観音=父、地蔵=母、不動=子と捉える人が多い」
 
「お地蔵さんは間違いなく母だと思う」
と蓮菜は言う。
 
「お地蔵さんがお母さんの役をするような民話も多いもんね」
と美那が言っている。
 
「でもキリスト教の三位一体も日本ではわりと誤解されている」
と蓮菜が言う。
 
「そうだっけ?」
「キリスト教の三位一体は何だと思う?恵香」
「え?父なる神、母なるマリア様、幼子イエスじゃないの?」
と恵香は答える。
 
↓ ↑ Bottom Top

「美那は分かるかな?」
「それはリサから聞いてたから分かる。神・キリスト・聖霊」
「正解」
 
「聖霊って何〜〜?」
と恵香は言っているが
 
「それをキリスト教信者以外に説明するのはわりと難しい」
と蓮菜は言った。
 

↓ ↑ Bottom Top

11月19日(水).
 
3年間アメリカの大リーグでプレイした新庄剛志が、来年度から北海道に移転する日本ハムファイターズに入団することが、本人の口から漏れた。本当は明日発表する予定だったのだが、この日映画『バッドボーイズ2バッド』の日本公開特別試写会に出席した本人が、来年からの所属球団について尋ねられ、本当は明日発表なのですがといって言及したのである。
 
この報道は驚きをもって受け止められ、北海道民は大いに沸くことになった。そして翌日の仮契約は、テレビ局が中継する騒ぎになった。
 

↓ ↑ Bottom Top

11月21日(金).
 
弾児叔父に異動の辞令が出た。行き先は札幌市内の小さな局だったが、今回はとうとう局長である。夕方、父が帰宅したくらいの時刻を狙って、弾児叔父が直接父に電話してきて「津気子さん・千里ちゃんも入れて話し合いたい」と言うので、千里たちは24日(月・振替休日)に、天子さんの処遇問題で弾児さん・光江さんと話し合うことになった(父の船は今週は25日(火)に出港する)。
 
玲羅には留守番しててと言ったのだが
「私も旭川行きたい」
と言うので、一応連れて行くが、美輪子に預かってもらうことになった。美輪子は「玲羅ちゃん、歓迎歓迎」と言っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

千里は、きーちゃんに連絡した。
 
「ごめーん。日食の件なんだけど」
と言われて、きーちゃんは焦る。実はここしばらく忙しかったので何も準備していなかったのである。
 
「私が24日用事が出来ちゃって、朝の時間帯に抜けられないから申し訳無いけど今回は休ませて」
 
千里はこの時点で24日早朝に旭川に出るなら、日食の時間帯と移動がぶつかると思ったのである。
 
「うん、いいよ」
と、きーちゃんはホッとして答える。
 
「次はいつだったけ?」
「え、えーっと、確か再来年の4月」
「あ、来年は無いんだ」
「そうなんだよ。来年は部分食ばかりで」
「へー。じゃ再来年よろしくね」
「了解、了解」
と言って電話を切ってから、きーちゃんは慌てて今回の日食の状況を確認した。
 
↓ ↑ Bottom Top

「南極だけで見られるのか!キャンセルになって良かったぁ!!」
 
南極で日食見てたら、遭難者か何かと思われて面倒なことになりかねない。
 

↓ ↑ Bottom Top

天子さんの処遇問題で、弾児の引越を今聞いた武矢は、弾児一家が旭川のアパートを退去した後、天子さんさえよければ留萌に来て欲しいと言った。
 
「札幌みたいに車の多い街に行って、はねられたら恐いからな」
 
いや、旭川だって充分車は多いけどね。
 
「親の面倒を子供が見るのは当然だよ」
などと武矢は言っているが、今まで何もしてこなかった癖にと津気子は思う。
 
それに天子が留萌に来た場合、武矢は平日はずっと船が出ているし、土日はひたすら寝ていて全く役に立たない。天子さんの世話を主としてするのは自分になるだろうが、自分は日中は仕事に出ている(仕事に行かないと家計がもたない)。目の見えない人を日中1人にして大丈夫だろうかという不安はあった。
 
↓ ↑ Bottom Top

「でもさすがに引っ越さないと無理かなあ。この市住に入る?」
「二段ベッドを買って、千里と玲羅にはそこに寝てもらえば何とかなる」
と津気子は千里からの提案を言う。
 
「ああ、そういう手があったか。それで行こう」
と武矢は明るく言った。
 

↓ ↑ Bottom Top

11月22日(土)は、英検の二次試験(口頭試問)を受けた。会場はS高校であった。
 
指定時刻に会場に行き、ひとりずつ呼ばれるので、部屋の中に入って英語で会話をする。問題カードを渡され、それに関して質疑応答かある。向こうは千里の発音がきれいなので感心していたようだった。最後のほうの質問に千里が答えた内容に、試験官が首を傾げた。
 
あっそうだ。形容詞じゃなくて副詞を使わなきゃ。
 
と思って、形容詞に ly を付けて言い直したら、試験官は笑顔で頷いていた。
 
それで色々会話してから「You can go out」と言われるので「Thank you」と言って礼をして退出した。
 

↓ ↑ Bottom Top

千里たちは結局23日(日・祝)に旭川に行き、ホテルに泊まって24日朝から話しあうことになった。なんだ、これなら私、日食見に行けたのにと思うが、既に断っているから仕方ない。ホテルの朝御飯を食べた後、美輪子と待ち合わせして玲羅を預けてから弾児のアパートに行った。
 
顕士郎と斗季彦は、光江さんの妹に預かってもらったということだった。
 
それで、弾児・光江・武矢・津気子、それに天子と千里の6人で話し合うことになった。
 
「おじさん、局長昇任おめでとうございます」
「ありがとう。まあ局長と言っても小さな局だけどな」
と弾児は言っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

司会役になった弾児が言った。
 
「俺と光江、そして武矢兄と津気子さん、各々話し合って、どちらの家でもお袋と同居できるということになった。札幌では、俺も給料あがるから3DKのアパートを借りられるから、それでお袋には1部屋使ってもらえる。留萌の武矢兄の市営住宅は狭いけど、なんとか布団は敷けるらしい。だからお袋には、札幌か留萌か、どちらかに来て欲しい」
 
しかし天子は言った。
「私は旭川から動かないよ。ここは私の第二の故郷だもん。ここで骨を埋めるつもりでいる」
 
「でも年寄りをひとり置いとく訳にはいかないよ」
「私はひとりでも平気だよ」
 

↓ ↑ Bottom Top

押し問答で話し合いが膠着してきた頃合いで、千里は昨日電機屋さんでもらってきたパンフレットを出した。
 
「こういう製品があるんだけど使ってみない?」
と言う。
 
「何これ?」
「象印の電気ポットで i-Pot (アイポット)と言うんだけどね。このポットを使ったら、それを使ったという通知が遠隔地に住んでいる子供に届く」
 
「ほぉ!」
「だから、この通知が届いている限り、お祖母ちゃんは元気」
「面白いね」
 
「わざわざ電話掛けたりして安否を確認するのは大変じゃん。恋人とかなら別だけど、普通の家族で毎日電話で話す内容もないし。そんなことしてたらお互いに疲れてきて電話すること自体がストレスになると思うんだよ。でもポットって必ず使うでしょ?それを使えば無事であることが報される」
 
↓ ↑ Bottom Top

「ポットというのがいいね!」
「絶対使うもんね〜」
 
(象印のi-Potは2001年3月に発売された。似た名前のアップルの音楽プレイヤーiPod(アイポッド)は同年11月の発売であり、象印の方が早く発売されている)
 
「取り敢えずそれ詳しい話を電機屋さんで確認するよ」
と弾児が言った。
 

↓ ↑ Bottom Top

光江が言う、
 
「どうしてもお母さんが1人で旭川に残ると言ったら、ヘルパーさん雇って毎日訪問してもらうことも考えていたんだけどね。買物とか頼めるし」
 
この話はできるだけ後になるまで出さないことにしていたのだが、天子の意志は硬いとみて、このタイミングで光江は言った。
 
「要らないよ。買物とかひとりで出来るし。それに出歩くのが健康にもいいんだよ」
「でもATMでお金下ろすのとかも目が不自由だと大変でしょう?」
「ボタンの位置で暗証番号は押せるし」
「最近はタッチパネルが多いから」
「タッチパネルでも端からの距離でボタンの位置は分かるよ」
「それが最近、盗み見で暗証番号を知られないよう“安全のために”ボタンの位置がランダムに変わるATMも出てきてるんですよ。たぶん今後はそれが多くなる」
 
↓ ↑ Bottom Top

「なんて不便な」
 
「なんかハンディキャップのある人には暮らしにくい世界にどんどん変化している気がするね」
 
「んじゃ週に1回くらいはヘルパーさん来てもいいよ」
と天子さんは妥協した。
 
そういう訳で、基本的に天子は旭川で1人で暮らし続けるという方向になったのである。
 

↓ ↑ Bottom Top

「だけど千里ちゃん、面白いもの知ってたね」
「実は昨日、偶然、友だちから聞いたんですよ」
 
実は、きーちゃんが教えてくれたのである。
 
「何かの時は札幌か留萌から駆け付けるということで」
 
結局この問題の話し合いは2時間ほどで終わった。夕方くらいまでかかるのを覚悟で居たのだが、文明の利器のおかげでかなり救われることになった。
 
「その内、お手伝いさんロボットとかも出るんだろうね」
「高そう」
「いや、たぶん人間を1人雇うよりは安い」
「そうかも!」
「ロボットだと食事も要らないし、給料やボーナスも要らないし」
「ロボットが待遇改善を求めてストライキしたりして」
「いや、そういうのがジョークでない時代が多分あと50年もしたら来ると思うよ」
 
↓ ↑ Bottom Top


「だけど郵便局も大変ですよね。国の方針で色々激震が来そうだし」
と津気子は言った。
 
「今年の4月から体制が変わりましたよね」
と千里。
 
「うん。これまで郵政事業庁だったのが、日本郵政公社という公社組織になったから、公務員から一応民間社員になった」
 
「けっこう大きな変化だったりして」
「借金する時は信用度が落ちたかもしれん」
「でも郵便局が倒産することはないでしょう?」
 
「いや、郵便局内では、国鉄の二の舞にならないようにしようって、志気は高いよ。国鉄は事実上倒産したようなものだもん。だから郵便局では民営化に賛成の奴も多い。縛りが少なくなって利益重視の経営ができるから」
 
「今までは国の事業だからというので政治に歪められていた部分あるでしょうね」
 
↓ ↑ Bottom Top

「でも小泉首相が徹底的な郵政民営化論者だからなあ。多分この日本郵政公社が恐らく更に日本郵政株式会社か何かに改組されるんだと思う」
「身分がコロコロ変わりますね」
 
「うん。めまぐるしい。ひょっとしたら、NTTみたいに“東日本郵便”と“西日本郵便”とかに分割されるかも」
「ありそうだ」
 
「貯金はきっと別会社」
「ああ、純粋に郵便事業だけになるんでしょうね」
 
「郵便物出すのと、貯金するのと別の所になるのかなあ」
 
「同じ建物を共用するかも知れないですね。JR博多駅とかで、JR西日本・博多駅の駅長と、JR九州博多駅の駅長がいるみたいに、同じ郵便局の建物の中で、日本郵政の局長と日本貯金の局長がいるなんてことになるかも」
 
↓ ↑ Bottom Top

「それは、ありえそうだよ」
 
「民営化が進むと郵便局はコンビニになるかも。ポストマートとかいって。郵便局でおにぎりとか肉まんとか売ってる」
 
「それもあるかも知れないよ」
と弾児さんは言っていた。
 

↓ ↑ Bottom Top

弾児さんは12月1日付けで、札幌市内の郵便局の局長になる辞令が出ているということで、一家の引越は今週末11/29-30に行うということだった。
 
千里たちが行った24日は、お昼は気分転換に外で食べようということで旭川市内の中華料理店を予約していたので、そこに出掛けた。これは話し合いが難航した時に、水入りにして気分転換するために、敢えて外食することにしていたのである。
 
バスで移動したが、天子は「ここどうぞ」と高校生女子から席を譲ってもらって「ありがとう」と言って、そこに座った。天子はその高校生の“制服を見て”
「あら、あなたN高校の生徒さん?」
と言う。
「はい、そうです」
と女子高生。
 
「私は実はN高校のルーツのNタイピスト学校の出身なんだよ」
「わあ大先輩なんですね」
「この学校もだいぶ名前が変わった。女子高等商業学校時代が長かったね」
「ええ。当時はちょっと面白い学校でしたよね。道内各地から生徒が集まっていたから、ユニークな生徒も多かったみたいで。OGに結構有名人がいるし」
 
↓ ↑ Bottom Top

中村晃湖さんもその“ユニークな生徒”のひとりだろうなと千里は思った。
 
天子は女子高生と楽しく会話していた。
 

↓ ↑ Bottom Top

お店のあるビルに入るが、天子はエレベータのボタンの前に立ち
「何階だっけ?」
と訊く。
「5階ですよ」
と言われると、天子はちゃんと5のボタンを押す。
 
この天子の行動を見て、目が見えないと思う人はまず居ないだろう。
 
中華料理店に入ると、円卓のある個室に案内される。天子は誰にも手伝われずに自分で椅子を引いて座った。武矢が言う。
 
「母ちゃん、やはり目が見えてるよね?」
「私は見えてるみたいに分かるんだけど、お医者さんは見えないはずと言うのよ」
「そりゃ藪医者だな」
「**大学の教授なんだけど」
「大学なんてお勉強ばかりしてて患者のことが分かってないんだよ」
などと武矢は言っている。
 
頼んでいたコース料理が円卓に置かれる。天子は好きなものを回して取っている。これだけ分かる人が老人ホームなどに入ったら、ほんとに「目が見えないのに危ない」とか言われて、何もさせてもらえないだろう。この人は1人で暮らす方がよい。ただやはり何かの時に助けになる人は必要ではないかと千里は考えていた。
 
↓ ↑ Bottom Top

「女性のお客様にサービスです」
と言って、スタッフさんが杏仁豆腐を運んで来て、天子、光江、津気子、千里の4人の前に置いた。
 
ここで弾児などは「千里ちゃんは女の子扱いだから」と思って、千里の前にデザートが置かれたことは気にしなかった。武矢は「女性のお客様にサービス」というのを聞いていなかった!ので何も考えなかった。
 
食事の後は、全員で電機屋さんに行き、i-Potを見せてもらい、そのシステムについても詳しい話を聞いた。それで「これは確かに使える」という話になった。
 
その後、天子・弾児・光江だけアパートに戻り、千里たち3人は別行動になる。父が「旭川のパチンコ屋に行きたい」というので、父を大型パチンコ店に置いて、千里と母で、平和通りをのんびりと見て回った。
 
↓ ↑ Bottom Top

夕方玲羅を美輪子から受け取り、留萌に車で帰還した。玲羅と美輪子はポスフール永山店(前の氷山サティ・後のイオン氷山店)でウィンドウ・ショッピング?していたらしい。
 

↓ ↑ Bottom Top

↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 
女子中学生のビギニング(15)

広告:リバーシブル-2-特装版-わぁい-コミックス