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(C) Eriko Kawaguchi 2022-02-13
10月25-26日(土日)には、P神社で秋祭りが行われた。
昨年は姫奉燈の周囲を歩く巫女は、純代、守恵、広海、千里の4人で務め、先頭を純代が歩いた。今年は同じメンツだが、広海が先頭を務めた。守恵はこのお祭りのために、旭川から留萌に来てくれている。守恵は蓮菜の従姉の3姉妹の末娘だが、今年H教育大旭川校に進学している。
お祭りの間、神殿には特別な火が3基の燈台で燃やされている。
この火は千里が幼い頃に小春と2人で某所から取って来たもので、普段は社務所の囲炉裏で維持されている。もう9年間燃えているが、この秋祭りの期間中だけ神殿に灯される。
その他、拝殿、境内、そして町内の姫奉燈運行経路にランタン型のLEDライトが合計2000個ほど灯る。秋祭りは光の祭典である。とても美しい風景なので、ここ数年はテレビ局も取材してくれている。留萌出身の写真家・桜美鳴子さんがこの祭りの写真集を出したこともある。
一昨年までは豆電球や蛍光灯を使っていたのだが(中断以前の昭和20年代は蝋燭だった)、昨年P神社奉賛会の積立金を30万円ほど使ってLEDに更新した。姫奉燈内部の灯りもLEDになっている。
LEDについては大神様も「明るくて良いな」と気に入っていたようである。
拝殿では夕方から夜に掛けて4回(2日で8回)、姫奉燈の先導役の巫女4人による巫女舞が奉納される。昨年までは7回だったが、7回もしなくてもいいのではないか?という意見が出て、占いを立てた所4回でよいということになったので今年から18:00 19:00 20:00 21:00 の4回になった。実際大神様も7回もしても疲れるだけだよと言っていた(舞の奉納では大神様もそれを見てないといけない!)。
千里が巫女舞を舞っているので、恵香が龍笛を吹き、美那が太鼓を叩いた。
神殿で燃えている火を、祭り期間中、3人の見守り役が不寝番(ねずのばん)をする。今年この番をしたのは、伊勢の皇學館で神職の勉強をしている和弥、和弥の姉で札幌に住んでいる花絵、そして今年の春ここで結婚式を挙げた市職員の杉本さん(巫女OGの浅美さんの夫)の3人である。万一強風などで燈台の灯りが1つか2つ消えた場合、すぐに他のから移して復旧させる必要があり、ほとんどの時間待機しているにもかかわらず、責任の重い仕事なので、基本的に身内で構成している。昨年は和弥の父・民弥がしたのだが、拝殿でエロ本を読みながら自慰していたので首になった!一応3人が交替で休むようにしている。
「花絵さんは今度の3月で大学卒業ですよね?就職先はもう決まってるんですか?」
「うん。札幌市内の建設会社に内定をもらってる」
「へー!建設会社って男の世界っぽい」
「そうそう。だから男がよりどりみどり」
「なるほどー!」
「札幌の大学に入った時は、お祖父ちゃん(常弥)が、留萌に来る気無い?いい婿を紹介するよとか言ってたけど、和弥が神職を目指すことを決めてからはあまり言われなくなったし」
「高校時代までは巫女さんしてましたからね〜」
「なんかここの神様にも気に入られてるよと言われてたけど」
などと言うと、大神様が頷いている。確かに花絵さんは大神様に愛されているようである。
2日目も姫奉燈の運行と巫女舞の奉納が行われる。このお祭りはとても静かなお祭りである。勇壮な夏祭りとは対照的だ。
2日目の21時に最後の巫女舞が終わった後、本殿の燈台はこれ以上燃料を追加せずにそのまま燃え尽きさせる。3つの燈台の灯りが全て燃え尽きたところで宮司は締めの祝詞を上げて、祭りを終了。境内の灯りも落とす
これに付き合ったのは、神職の他には和弥・小町、巫女長(に、いつの間にか任命されていた!)の梨花さんだけである。
(沿道のランタンは氏子さんが運転する軽トラを使って21時以降に回収される)
例年のように、秋祭りが終わった後、P神社の大神様は一週間ほど(10/27-11/3), 伊勢外宮で行われる神様会議に行ってくる。それでその間は、昼間は小町、夜間は千里(千里Y)が神様の代理を務めた。この一週間千里は昼間は学校などに行っており、平日は全く眠れないが、眠らなくても疲れないようにしてもらっている。
2003年11月1-3日(土日祝).
この三連休に全道中学バスケット新人ワークスなる大会があり、千里たちのS中も男女ともこれに参加した。
(P神社で神様代理をしているのは千里Yでこの大会に参加したのは千里B)
新人の大会なので1−2年生が出場する。ノックアウト方式ではなく、抽選で組み合わせを決めて各チーム6試合おこない、勝敗数と得失点差で成績を決めるという大会である。
これにS中は男子は15人、女子は下記の人を登録して一緒に保護者が運転する大型バスで札幌に向かった。
女子チーム登録者
・久子(2年・主将)
・友子(2年)
・数子(1年)
・留実子(1年)
・千里(1年)
・伊都(バレー部からの助っ人)
・鞠古君!
鞠古君を女子チームに登録したのは、こういう事情である。
鞠古君はまだバスケットをできる状態にはないが、来年度以降は中心的な戦力の1人になると思われるので、強いチームが多数出るこの大会を見学させておきたい。しかし選手ではない生徒を連れて行った場合、万一事故などで怪我をしたような場合に保険が出ない。そこで人数に余裕のある女子チームに登録してもらい、万一の場合はそれで保健を使う。むろん彼は男子なので女子の試合には出場できない。
千里も男子としてバスケット協会に登録されているので女子の試合には出られない。だから女子チームは7人登録されているものの、実は5人しか出られない。つまり交代要員が居ない!(本当は伊都もバスケ協会の籍が無いから出場できないが、登録証を確認はされないだろうという所)
それで札幌に行ってから大会前のキャプテン会議に久子が出ようとしたら、名簿が違う。運営さんの所に提出されているのは男子のメンバー表である。
「あれ?そういえば皆さん、男子みたいな名前ですね」
一方男子のキャプテン会議に出ようとした2年生の新部長・佐々木君は
「あれ?そういえば皆さん、女子みたいな名前ですね」
と言われていた。
つまり、男子のメンバー表と女子のメンバー表を誤って逆に提出してしまっていたのである。
伊藤先生が青くなって主催者側と交渉した。その結果、このようなことになった。
・今日になってからのメンバー変更は認められない。
・男子大会に登録されている女子部員はそのまま男子大会に出場してよい。
・女子大会に登録されている男子部員が女子大会に出ることは認められない。
・わざわざ札幌まで来たのに試合ができないのは気の毒なので、大会成績とは関係無い練習試合を適当な数設定する。
実際には男子チームは強豪校の二軍などとの練習試合を組んでもらい、結構良い経験ができたようである。
しかし“女子チーム”は急遽、男子の大会に出ることになった。そして男子大会なので、千里と鞠古君も出場できるのである。
鞠古君は身体が全然万全で無いのだが、短時間ならプレイできると思うと言うので、そういう使い方をすることにした。試合相手には「女子チームですが男子が2人混じっています」と伝えて対戦したのだが、対戦相手は2人というのは、鞠古君と留実子だと思ったようである(普通そう思う)。
第1試合ではほどほどに強いチームだったが、女子相手だからというので最初は控え組を出してきた。ところがあっという間にS中女子がリードするので、向こうは慌ててスタメンを出してくる。しかし最初のリードの貯金もあって何とか逃げ切った。
2チーム目は5人ぎりぎりで、しかも本当にバスケをしているのは2人だけというチームだったので、無理できない鞠古君を休ませて6人だけでやったが楽勝であった。
2日目に当たったチームはどちらも強い所だったし、S中女子をなめたりせず本気で来たので、2試合とも大敗した。
3日目は第1試合は大敗したものの、第2試合ではずっと競り合い、最後に千里のブザービーターとなるスリーポイントが決まって逆転勝ちした。
結局6試合を3勝3敗で乗り切り、男子118校の中の70位だった。ほぼ女子というメンツでこういう成績を残せたことは、女子バスケ部員たちに自信を与えた。
なお今回の事件で、その名簿を誤って逆に提出してしまった佐々木君は責任を取って部長を辞任し、貴司が「俺はそういう柄じゃない」と言って辞退したので、男子の新部長は田臥君になった。
11月3日、大会は17時で終了した、S中の一行はそのまま保護者が運転するバスで留萌に戻る。S中の校庭まで戻って来たのは19時頃で、そのまま解散する。S中で解散するのは、多くの保護者が車で迎えに来てくれているからである。駅前とかでは車を駐めて待つことができない。
留実子は鞠古君のお母さんが迎えに来ていた車に同乗していた。留実子は多分そのまま今夜は鞠古君の家に泊まるつもりなのだろう。鞠古君はまだセックスはできないだろうけど、きっと一緒に休むだけでもお互い安心できる。
「千里」
という声がするので振り向くと、27-28歳くらいかなと思う女性が立っている。
「ちょっと来て」
と言われるので付いて行ったが、これ誰だっけ?などと考えていた(←簡単に誘拐される性格)。
千里はいつの間にか、見たことの無い建物の中を歩いていた。回廊のようだが、壁・床・天井が塗装されていない白木でできている。窓のようなものは無いが数メートルおきに燈籠が掛かっていてわりと明るい。途中3つに別れている所があり、女性はその右手に行ったので、千里もそちらに付いていった。
回廊のいちばん奥に小さな部屋があった。
「ちょっと会議に行ってくるから、ここで一週間くらいお留守番しててくれない?」
「はい!?」
「じゃよろしくね」
と言って、Q姫神は富士山で行われる神様会議に出掛けていった。
千里がお腹空いたなあと思っていたら、若い女性が食事を運んで来た。
「大会、お疲れ様でした。ご飯は好きなだけお代わりして下さいね。これで足りないようでしたらお呼び下さい」
と言って、おひつを置く。
「お飲み物は取り敢えずこちらに緑茶を用意しましたが、日本酒とかビールがよければお持ちしますが」
「アルコールは飲みません!」
「ではゆっくり、おくつろぎ下さい。こちらに着替えを用意しましたから、お食事が終わったらお風呂に入って着替えて下さいね」
「ありがとう、ヒツジ子さん」
「なぜ私の名前が分かるの〜!?」
「え?だって見れば分かるでしょ」
ヒツジ子は首をひねりながら礼をして下がった。
ということで、千里(千里B)はQ神社の左神殿奥部で一週間、神様会議に行ったQ姫神のお留守番をしたのであった。
(右殿・左殿というのは神様側から見て右左なので、神殿に向かって立った場合は右側が左殿、左側が右殿である:稀に逆の神社もある。この神社の中殿と右殿は出張所なので、時々巡回してこられるだけで神様は非常駐である。留萌のQ姫神は旭川のQ姫神の妹である:稚内のQ姫神と三姉妹)
なお千里がお留守番するのは夜間であり、日中は眷属筆頭のネズ夫さんが留守番をしていたので、千里Bは一週間ここから学校に行っている(近くていいかも知れない)。
10/27-11/03 千里YがP神社でお留守番
11/04-11/10 千里BがQ神社でお留守番
なおこの時期、いつもここの留守番を頼まれている、摂社・少彦名神社の神様は、出雲での神様会議に出掛けていた。出雲の神様会議は旧暦の10月11日〜17日で、今年は新暦で11月4日〜10日にあたり、富士山での定例会議(毎年新暦11月上旬)に出るQ姫神と時期が重なってしまったのであった。
11月10日(月).
英検2級一次試験の結果が通知された。千里は合格していた。それで今月下旬の二次試験(口頭試問)を受けることになった。
2学期に入ってからも、基本的に千里Y (Yellow) は学校が終わったらP神社に行って蓮菜や恵香たちと一緒に勉強会をしていた。勉強会のコアメンバーは千里・蓮菜・恵香・美那の4人で、玖美子は剣道部が終わってから18時頃こちらに来る。
玖美子は学校で千里(実は千里R)と一緒に剣道部の練習をして、練習後に買物して帰ると言う千里と別れP神社に来てみると、そこにも千里(実は千里Y)がいても気にしない(慣れてしまった!)。
そして勉強会の合間に神社のお仕事がある場合は、巫女衣装を着て誰かが務めるということをする。もっとも平日の夕方以降には祈祷の依頼などもまず無い。お守りなどを求める客が時々ある程度である。
昇殿祈祷の依頼があるのは土日であるが、土日は梨花(26.巫女長) 純代(高1) 広海(中2) も来ていることが多い(昨年までの常連・乃愛は大学に進学して現在は札幌に住んでいる)。
千里たちは(土日は1日中勉強会をしている)手が足りない時に手伝う。もっとも昇殿祈祷の際は、恵香が笛を吹くことが多い。巫女舞を入れる場合は、千里と美那が対応することが多い。但し続く場合は千里が笛を吹いて恵香が舞を舞ったりもする。
千里B (Blue)は1学期の間はなぜかバスケ部の練習に行けなかったのだが、2学期になると顔を出せるようになった。それでサブ体育館で他のメンバーと一緒に汗を流している。また昼休みは、新設した合唱同好会の練習に出ていた。
そして土日にはQ神社に行って巫女を務め、特に昇殿祈祷の笛を主に担当した。
千里R (Red) は毎日剣道部の練習に出ている。17時くらいに練習が終わったら、町のスーパーで夕飯の買物をして帰るのがだいたい日課になっている。
千里は放送部員なのでだいたい半月に1度くらい昼休みの放送の担当をしている。これをしてるのは千里Yが多い。
3人の千里は手塩竹笛工房製の龍笛を所有している。2003年秋の時点で各々が所有しているシリアルナンバーは下記である。
Y 222
B 224, 200(織姫)
R 228
千里Rはヤマハの総銀製フルート YFL-714 を持っている。また千里Yは上記の手塩工房作品以外に、小春が使用していた花梨製の龍笛も所有している。
千里Rは月に1回くらい旭川に出て、きーちゃんから龍笛とフルートの指導を受けるととともに、越智さんという剣道六段の人から、剣道の指導も一緒に受けている。土曜日に行き、一泊して日曜に帰ることが多い。
ところで千里の男性型W(white)であるが、4月の頭の時点では W/R(P:Pink), W/B(A:Aqua), W/Y(L:Lemon) の3種類が確認されていたのが、1学期の終わり頃はW/R は滅多に見られることがなくなり、Wであれば大抵 W/B で、たまにW/Y であることを小春とミミ子は認識していた。
しかし2学期中にW/Y も出現頻度が低くなり、Wはほとんど W/B であるようになる。小春たちは、やがてWはもう出現しなくなるのではと思っていたのだが、意外にしぶとく、Wがほとんど見られなくなるのは、高校2年生の夏である(それ以降の出現は“時間の組み替え”によるもの)。
小春とミミ子は千里Gや千里V(他にもいるかも)の存在には気付いていない。
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女子中学生のビギニング(5)