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■女子中学生のビギニング(4)

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9月20日(土).
 
千里・数子・留実子および、男子バスケ部の1年生12名がバスケットのルール講習会に参加するため旭川に出た。バスケットのルールをあらためてきちんと学ぶのと、審判やT/O(テーブルオフィシャル)の勉強をするのである。テーブルオフィシヤルというのは次の4つの役割である。
 
スコアラー:試合のスコアをつける。
アシスタント・スコアラー:得点や反則をした選手を確認しスコアラーに伝える。
タイムキーパー:計時を管理する。
24秒計オペレータ:ショットクロックを管理する(*2)
 
この中で何と言っても大変なのが24秒計オペレータであり、24秒計オペレータの感覚(ショットクロックが鳴ったのとシュートされたのと。どちらが速かったかを判断する)は、試合の行方を左右する。一瞬たりとも気を抜けない重労働である。スコアラーも物凄く大量の記事をひたすら記録し続けなければならない。
 
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(*2)ショットクロックは日本では1956年に30秒ルールとして導入され、2001年に30秒から24秒に改訂された。このルールが導入される前は、ボールを持ったチームの選手がひたすらドリブルを続けて、時間を浪費するなどという酷い試合があった。
 

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講習会の会場はE女子高であった。
 
午前中にルールの解説があるが、細かいルールは話だけ聞いてもさっぱり分からない!と千里は思った。お昼を食べてから午後は実技ということだったのだが、お昼に散歩していたら、ばったりと晋治と遭遇し、少し話した。
 
彼は(T中学の)同級生女子たちがE女子高を見学するののお守り役?で来ていたらしい。T中学高校は中等部は共学だが、高等部は男子のみなので、中等部の女子は他の高校に行く必要がある。成績が優秀な子はE女子高に行く子が多い。それにしても男子である晋治が女子高の見学に付き添う必要は無い気もするのだが、晋治という人は、女子に異様に親切なのである。ストイックな貴司とは対照的である(でもどちらも浮気する!)。
 
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その女子同級生たちに、千里(B)は晋治の恋人かと思われて誤解を解くのに苦労した。また、晋治と話している所を留実子に見られ、留実子は千里が信司と貴司の二股しているように思い込んでしまったようでこれもまた困った。
 
「細川君には言わないから大丈夫だよ」
などと留実子は言っていた。
 

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午後からは参加者で交替で主審・副審・T/Oをした。参加者は男子200人、女子100人くらいで、男子はメイン体育館2コート、女子はサブ体育館1コートで、実際に試合(10分間)をしながら、審判・T/Oの練習をする。タイムキーパーと24秒計オペレーターは1組しか入れないが、スコアラーとアシスタント・スコアラーはテーブルを8つも並べて、8組がスコアをつけ、またその各テーブルの後で各テーブル4人くらいずつ見学した。しかし試合が終わってから見比べると、かなり違う!点数まで違うので、どこで間違ったかをお互いに検討した。
 
(チームが青か白かの勘違い、無効になったシュートを有効だったように誤解したケース、3ポイントを2ポイントと思ったケースなどで点数がずれていた)
 
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千里は最初アシスタント・スコアラーをして、間違いの検討をした後、選手役をしてから24秒オペレータをしたが、これは大変な仕事だぞと思った。最後はスコアラーをしたが「忙しい!」と思った。全く休む間が無いのである。今日は10分単位だが、40分の試合でスコアラーとか24秒オペレーターをしたらその後2〜3時間放心状態になりそうと思った。
 

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2003年9月26日(金).
 
早朝4:50 千里は突然の揺れで目を覚ました。
 
「玲羅大丈夫?」
と同じ部屋で寝ている玲羅に声を掛ける。
 
「大丈夫。びっくりしたぁ」
 
襖を開けて母にも声を掛けるが、母も大丈夫だった。(父は出港中)
 

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十勝沖を震源とするM8.0の地震があったのである(2003十勝沖地震)。
 
(1時間後の6:08にはM7.1の余震があった:地震の後片付けをしていた人が再度片付けるはめになった:千里は学校から帰ってから片付けようと思って放置していたので片付け作業は1度だけで済んだ!)。
 
留萌は(主震でも)震度3だったので、ほとんど被害は出ていない。ただし元々物を不安定に積み上げている千里の家では茶碗が落ちて割れたりしたものもあった。
 
この地震では震源に近い釧路で震度6弱、帯広が震度5、旭川が震度4だった。旭川の美輪子や、きーちゃんの所は結構震度を感じたらしい。この地震による死者行方不明者は合計2名である。十勝川の河口付近で釣りをしていた男性2名が津波にさらわれ、1人は2年後に遺体が見つかったが、1人は行方不明のままとなっている。
 
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この地震の際、体外受精のためにシャーレの中で育成中だった、桃川春美の子供の受精卵が地震のショックで分裂し、後に織羽と多津美になった(と推定される:年齢が違う一卵性双生児)のだが、そういうことが起きた(であろう)ことを千里が知るのはずっと後のことである。
 

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S中では9月26日当日は通常通り授業があったものの、翌日・翌々日に予定されていた文化祭は延期となった。日程はこの時点では未定だったが、火曜日になって一週間遅れの10月4-5日(土日)に行うことが発表された。
 
千里は文化部には入っていないので(*3)、体育館で様々な演目を眺めてるかなと思ったら、クラスで模擬店をやるから調理係をしてと言われた。
 
(*3) 千里はパソコン部の部員のはずたが、入学以来2回くらいしか顔を出していない。吹奏楽部は部員だけで演奏した。合唱同好会の活動はこの文化祭の後から。
 

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「調理って何するの?」
「ケーキは黄金屋で100個買ってくる」
「そんなに売れる?」
「余ったらみんなでシェアする」
「それが目的だな」
「クッキーをドラッグストアで買ってくる。紅茶はティーバッグ、コーヒーはレギュラーコーヒーをペーパーフィルターで入れる」
「本格的だね!」
「エスプレッソ作ろうという意見もあったけど、難しいんじゃないかということになった」
 
「コーヒー好きな人はむしろペーパーフィルターを好む気がする」
「そういう意見もあった。エスプレッソの機械が壊れたらお手上げだし」
「ペーパーフィルターだと、壊れることはまずないだろうね」
「象が踏みつけたりしない限りは大丈夫だと思う」
 
どういうシチュエーション?
 
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「あと、ハンバーガーをホットプレートで作るからさ、それ千里できないかなあと思って」
「ハンバーガーは何度か作ったことあるよ」
「じゃ任せた」
 
しかし当日になってエスプレッソどころか、レギュラーコーヒーというもの自体を初めて見た!という子も結構いて、コーヒーがドリップしていくのを面白そうに眺めていた。
 

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千里は唖然とした。
 
「これよく先生の許可が出たね」
「菅田先生は笑ってたよ」
 
ということで、模擬店の厨房でコーヒーを入れたり皿にケーキを載せたりしているのは全員女子なのだが、ロングスカートのウェイトレスさん衣裳を着けて給仕しているのは全員男子!なのである。
 
「スカートって何か凄く頼りない。下半身に何もつけてないみたい」
などと祐川君が言っている。
 
「でも祐川君はいつもスカート穿いてるという噂があるのに」
「どこからそんな根も葉もない噂が」
「でもスカート穿きたかったでしょ?」
「別に!」
「正直になればいいのに」
 
この日、この教室近くの男子トイレにはスカートを穿いた子が多数出入りしていて、思わず飛び出してトイレの性別表示を見直す人が続出したらしい。
 
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千里や沙苗はもちろん女子として厨房で作業しているが、セナも厨房に入れて主としてコーヒーを入れる作業をしてもらった。セナの場合、ウェイトレスさんの衣裳を着せると女の子にしか見えないので、この模擬店の“ポリシー”にそぐわないのである!
 
セナに給仕させたら
「何だ。男の子ばかりじゃなくて、女の子も入っているのか」
と言われるのは間違い無い。
 
しっかし、こんな色物企画、客が逃げてくだろうと思ったのに、かなり繁盛して用意していたケーキは全部売り切れてしまった!千里が作っていたハンバーガーも、恵香と優美絵が作っていたスパゲティも14時過ぎには材料が無くなり、Sold Out の張り紙を出した。
 
「面白かった。来年もやりたいな」
と女子たちは言っていたが
 
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「恥ずかしかった。来年は他のクラスに行きたい」
などと男子たちは言っていた!
 
「スカート初体験の感想は?」
「なんかスースーして寒いくらい」
「でもタイツも履いてるのに」
「タイツでは涼しさを防ぎきれない感じ」
 
「男性がみんなスカート穿けば夏は冷房の温度を3度上げられると思うけどなあ」
「あまり想像したくない」
「でも中世ヨーロッパだと男性もスカート穿いてたはず」
「そうだっけ?」
「女性はロングスカート、男性はショートスカート」
「へー」
 

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文化祭の後、月火が代休になり、水曜から授業は始まる。この10月8日(水)に鞠古君がやっと出て来た。
 
鞠古君は今年実は出席日数がかなりやばいのだが、先生たちが鞠古君の自宅に行って出張授業をしてあげたり、またレポートで出席に代えるなど、かなり配慮してもらったので、この後ほとんど休まずに学校に出てくれば何とか進級に必要な出席日数はギリギリで確保できるらしい。
 
しかし出て来て早々に男子たちにからかわれている。
 
「マリコちゃん、ちんちん切ったんだって?おめでとう!」
「あれ?どうしてセーラー服じゃないの?」
「ちんちん切った子は女子制服着なきゃ」
「ちゃんと性別変更届け出した?」
 
「お前ら、病人を少しは、いたわってくれてもいいだろ?」
と鞠古君は文句を言っていた。
 
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またこの日は合唱同好会の第1回の練習をした。
 
10月9-10日(木金)には、2年生が宿泊体験に行った。
 
文化祭後の代休明けすぐで慌ただしいが、本来は文化祭は1週間前にあるはずだったのである。
 

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10月11日(土).
 
先日漢検を受けたばかりだが、10月11日には、S中を会場にして(希望者だけ)英語検定を受けた。学校会場で行われたのは2〜4級(2〜3級はその1次試験)である。勉強会メンツは全員どれかの級を受けたが、千里は英語の鶴野先生から「村山さんは3級は受ける必要が無い」と言われたので2級を受けた。
 
この時、玖美子から注意された。
「千里の英語って、結構 broken English なんだよ。それで意味は通じるし、むしろ会話ではそのように言われることが多いけど、文法的に間違ってる言い方を多用している。英検ではそれをちゃんと文法通りに表現しないと落とされる。特に2級以上は、それが厳しい。学校の英語の試験や高校受験でもそうだけどね」
 
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「例えば?」
と恵香が訊く。
 
「千里って形容詞を副詞的に使うのが物凄く多い。早く来てって何て言う?」
「Come on quick!」
 
「Come on quickly が正解。quickは形容詞。ここは文法的に副詞が必要だからquickly にしないといけない」
「Come on quickly と言うのは、本当に早く来てと求めている感情が伝わらない。言ってる側に余裕を感じる」
 
「そうなんだけど、文法的には間違っている」
「うーん・・・」
 

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「だいたい試験ってのはゲームなんだよ。出題者がどういう回答を期待しているかを考えて、それに沿った回答を書くゲーム。国語でよくある、作者はここでどう考えたか?なんてのは絶対作者はそんなこと考えてないから」
 
「ああ、それはよく思う。そこまで考えてる訳無いって」
 
「北杜夫さんの娘さんがさあ、授業でお父さんの書いた小説が教材になってて、ここで作者はどう思ったか?という問題があったらしいのよ。それでお父さんに訊いてみたら『何も考えてなかった。締め切りがきつくて考える余裕が無かった』と言ったんだって。でもそれを書いたら不正解にされたと」
 
「あはは」
「いやそれは不正解にされる」
 
「でもテストというものが何を書かなければならないかというのをよく示すエピソードだよね」
 
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「少し納得した」
 
そういう訳で、この英検2級(恵香は3級を受けた)の試験で千里は、玖美子の助言に従って“普通に使う表現”ではなく、文法的に正しそうな表現で書くように気を付けたのである。
 

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さて、北海道では七五三は10月15日に行う人が多い(11月15日は寒すぎる)ので今年は10月11-13日(土日祝)が参拝の集中日であった。
 
それで千里YはP神社、千里BはQ神社に各々出掛けて行き、昇殿祈祷する親子連れの祈祷の笛を吹いた。Q神社は参拝客が多いので、千里と京子さんで交替で吹いている。
 
そういうわけで、11日に英検の試験を受けたのは千里Rだったのである。(P神社でよく笛を吹いている恵香は英検を受けている)
 
小春とミミ子は、千里たちってどうしてこんなにきれいに作業を分担できるのだろうかと疑問を感じた。
 

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10月13日(月)には先月受けた漢検の結果が届いていた。千里は4級・5級ともに合格していた。5級も落ちた気がしていたのでマジでびっくりした。
 
「いや、千里は漢字に強いと思うよ。これちょっと読んでみて」
と蓮菜が見せた文章を千里はこう読んだ。
 
「ハンファン・チョンスー・チーチンコー、ユーユートーニェン・チョープートゥォ、ヤンチャーユーニー・チューツャンチャン、ヤンツァイシェンクイ・レンウェイシー、ティェンション・リーツィー・ナンツィーチー、イーツァオシェンツァイ・チンワンツー、・・・」
 
(漢皇重色思傾国 御宇多年求不得 楊家有女初長成 養在深閨人未識 天生麗質難自棄 一朝選在君王側)
 
聞き取れたのは蓮菜と小春だけである。蓮菜は
「渡す文書を誤った」
と言って、手を額に当てていた(*4)
 
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なお恵香は4級は落としたものの5級は通っていた。
 

(*4) 蓮菜的読み方:漢の皇、色を重んじて傾国(けいこく)を思う。御宇(ぎょう=御代)多年求むれども得ず。楊家に女あり、初めて長成す。養われて深閨にあり、人いまだ知らず。天生の麗質自ら棄てがたく、一朝、選ばれて君王の側にあり。
 
むろん、楊貴妃の悲劇を白楽天が歌った『長恨歌』の冒頭である。
 

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10月14日(火)には2学期の中間試験が行われた。これは5教科だけなので1日で終了した。
 
10月22-24日は3年生が修学旅行に行った。
 
S中では1年生の市外研修、2年生の宿泊学習、3年生の修学旅行は分散した日程でおこなう。これを同時にやってしまう学校もあるようだが、S中のような小さな学校ではまとめてやると教員が足りないのである。
 
 
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女子中学生のビギニング(4)

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