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■女子中学生のビギニング(6)

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11月14日(金).
 
父・武矢の母方の伯父(天子の兄)、十四八(としはち)が亡くなった。大正14年8月生まれで十四八という名前で、78歳であった。天子の夫(武矢の母)が大正14年3月の春生まれで十四春であり、同類の名前ということで仲は良かったらしい。2000年に十四春が亡くなった時は葬儀に出たいと言っていたが、卒中で身体の自由が利かず泣く泣く断念したという。あの時はUSBメモリで音声の追悼メッセージを寄せていた。
 
葬儀は同居していた三男(?←疑問符の意味は後述)川夫の家のある釧路市で行われる。
 
連絡があったのが14日の午後だった。16日(日)が友引で葬儀ができない。それで16日(日・友引)に通夜をして、17日(月・先負)に葬儀をするということになった。
 
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妹である天子は当然葬儀に行く。それで天子と同居している弾児一家は一緒に行く(天子は目が見えないので必ず付き添いが必要)。
 
となると、立場上、弾児の兄である武矢は行かざるを得ない。夕方帰港してきた武矢は「俺は月曜の朝には船を出さないといけないぞ」と文句は言ったものの行くしかない。それで、このような計画を立てたのである。
 
15(土)朝から車で4人で釧路に行ってお別れをする。
16(日)昼過ぎ、車で津気子と武矢だけ帰る(通夜に出ない)
17(月)葬儀後、千里と玲羅はJRで留萌に戻る
 
最終連絡 釧路13:25(スーパーおおぞら8号)17:17札幌17:22(スーパー宗谷3号)18:25深川19:10-20:09留萌
 
16日の帰途では武矢は津気子が運転する車の後部座席で寝ていると言った。
 
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それで15日の朝から釧路に向かう予定だったのだが、14日(金)の夕方18時頃になって、Q神社の細川さんから連絡が入ったのである。
 
「千里ちゃん、明日・明後日はお休みさせてという連絡が入ってたみたいだけど」
 
千里が電話した時は香取巫女長も細川さんも居なくて循子さんに伝言しておいた。
 
「はい。大伯父が亡くなって葬儀に行くんですよ」
「そちらも葬儀かぁ!」
と天を仰ぐように細川さんの声。
 
「どうしたんですか?」
「実はお葬式が入ったんだけど、その通夜・葬儀で笛を吹く人がいなくて」
「えーっと・・・」
「京子さんの所も親戚のお葬式で、札幌だか稚内だかに行くということで」
「あっちもこっちも、お葬式ですね!」
 
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しっかし、札幌と稚内では全く方角が違うぞと思う。でもそういう状況なら京子さんと一緒に龍笛を練習してもらっていた映子も一緒に行ったのだろう。映子にも覚えてもらったのは、京子さんが使えない時の予備の意味があったのだが、こういう場合はどちらもダメになる。
 
「千里ちゃんはいつ移動するの?」
「明日の朝の予定です」
「だったら、取り敢えず前夜祭の笛を吹きに来てくれない?」
「分かりました」
 

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それで千里はタクシーを呼んでQ神社に駆け付けた。そして神職および細川さん、循子さんと一緒に葬儀場に向かい、通夜祭(前夜祭)の儀式の笛を吹いたのである。
 
千里は葬儀用の鈍色(にぶいろ)の巫女衣装を着て、祭主の祭文奏上や、玉串拝礼で笛を吹いた。
 
(神式の前夜祭(通夜)の大まかな流れ)
お祓い→お辞儀→遷霊の祭文奏上→遷霊の儀→献饌→霊魂安定の祭文奏上→前夜祭の祭文→玉串拝礼→撤饌→お辞儀
 
遷霊の儀というのは、死者の御霊を霊璽(仏式でいうと位牌)に移す儀式である。P神社やQ神社では通夜祭本体に先行して行うが(千里はP神社の翻田宮司に付き従って神葬祭をしたこともある)、神社によっては通夜祭に続けて行う所もある。
 
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照明を落とした真っ暗闇の中で神職の「おーーーーー」という声で御霊が先導される。厳粛な儀式である。
 

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「明日は何時からお葬式なの?」
と通夜祭が終わってから細川さんに訊かれる。
 
「16日が友引なので、16日お通夜で17日葬儀なんですよ」
「だったらもしかして明日は動ける?」
「それが父が船に乗っているので、17日月曜の朝には出港しないといけないんです。場所は釧路なんですけど、それで明日向こうに行って、故人にお別れの挨拶をして、通夜に出ずに16日の午後にはこちらに戻ります。父は車の運転ができないので、母が父をこちらに連れ帰る必要があるんですよ。それに車だと同乗者は寝て行けるし。私と妹が両親の代理で通夜・葬儀に出席します」
 
細川さんは紙に千里たちの動きを書いていた。
 
両親 (15日) 留萌8:00→14:00釧路 お別れ (16日) 再度お別れ 釧路13:00→19:00留萌
娘達 (15日) 留萌8:00→14:00釧路 (16日) 18-20h 通夜 (17日) 葬儀 釧路13:00-20:00留萌
 
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「ということは、明日は千里ちゃんは動けるよね?」
「えっと・・・」
 
「15日にこちらのお葬式で笛を吹いてもらって、その後釧路に私が送って行くよ。そしたら15日の夜に釧路に着くから16日の通夜には余裕で出られる。帰りも17日に向こうの葬儀が終わってから玲羅ちゃんも一緒にこちらに連れ帰るよ」
 
と細川さんが言った。
 
「あはは、可能ではありますね」
 
実際細川さんが千里の母に電話して、話を付けてしまった。それで千里は行き帰りとも、両親とは別行動になることになった。
 
「でも京子さんが動けない時に、細川さんまで遠出して大丈夫ですか?」
「京子ちゃんとこは、今日お通夜で明日15日葬儀なのよ。やはり友引を避けるというので」
 
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「友引とか大安なんて全く意味が無いのに」
と千里が言うと
「ね」
と細川さんも準備作業で来ていた香取さんも同意している。
 
仏教や神道の関係者も、東洋占術や暦の専門家もみな六曜は全く無意味であると言う。
 
「まあそれで、京子ちゃんは明日15日の夕方には戻ってくるから、私が明日留守にしても大丈夫と思う」
 
「その間に祈祷の依頼があったら?」
「循子ちゃんが居るじゃない」
「え〜〜〜!?」
と本人が困っていた。
 

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千里が帰宅して、明日の午前中の葬儀でも笛を吹く人が居ないので、午前中神社で笛を吹き、その後、細川さんに釧路まで車で送ってもらうことになったと言うと、玲羅も
「じゃ、私もお姉ちゃんと一緒に行く」
と言う。
 
父の乗る車に同乗したくないのだろう。父と会話するのは面倒だ。
 
しかし
「お姉ちゃん!?」
と父が訊くので
 
「お兄ちゃんと私言ったけど」
と玲羅は言い直す。
 
「千里、髪長くしてるから、お姉ちゃんとか言われるんじゃないのか?」
と父は言うが
「聞き間違いじゃない?私、お兄ちゃんと聞こえたよ」
と千里は言っておいた。
 
それで千里(B)は家電から細川さんの携帯に掛け、玲羅も自分と一緒に釧路に移動したいと言っているので、乗せてもらっていいかと頼み、了承を得た。
 
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千里("G")は、きーちゃんに電話してみた。
 
「ちょっと釧路まで往復して来たいんだけど、足が無いのよ。私と妹を運んでくれないかなと思って」
「日程は?」
 
「明日15日土曜日の午後に留萌を出て夜までに釧路に行き、17日月曜日のお昼に向こうを出て、夜までに留萌に連れてきて欲しいの。報酬は実費+1日2万円くらいでどうかなぁ」
 
「ああ、全然問題無い。費用の件はまた話すことにしよう。じゃ15日に迎えに行くね。どこに行けばいい?」
「午後3時・15時頃に留萌市内のFF市民斎場って分かる?」
「ちょっと待って」
と言って、きーちゃんは地図を確認しているようである。
 
「留萌市F町2丁目?」
「そうそう。そこ」
「OK。じゃ迎えに行くね」
「ありがとう」
 
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それで千里(G)は、細川さんに電話して、折角申し出てくださったのに申し訳ないが、親戚の女性が運んでくれることになったから、送迎は不要であると伝えた。
 
細川さんは言った。
「だったらさ、千里ちゃん、午前中だけであがりなよ」
「いいんですか?」
「出棺した後は、それが帰るのをひたすら待ってて、お骨が戻って来てから短い帰家祭をするだけだからさ。その笛は私が吹くから、千里ちゃんは出棺であがればいいよ。一般の参列者と同じタイミングで退出」
 
「そうですね。そうさせてもらおうかな」
「うん」
 
それで千里(G)は再度、きーちゃんに電話し、15時のつもりだったが、もっと早く開放されることになったので、11時半くらいに頼めないかと言った。
 
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「うん。全然問題無い。じゃ11時半くらいに斎場に迎えに行くね」
「ありがとう」
 

翌日(11月15日・土)朝5時、、母は父をスバル・ヴィヴィオに乗せて釧路に向け出発していった。母の運転だとたぶん9時間くらい掛かるだろう。道中喧嘩とかしなきゃいいけど、と思いながらそれを見送った。
 
また千里はこの車のタイヤが気になっていた。この時期はもちろんスタッドレスに交換しているものの、そのスタッドレスはこの車を買った2000年2月に当時新品(1999年製)を付けてもらっている。スタッドレスは夏用タイヤと違ってゴムの時間経過による劣化が激しいので、たとえ使用頻度が少なくても3シーズン使ったら新しい物に交換すべきである。今年は5年目。どう考えても限度を超えている。大丈夫かなぁと心配した。
 
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両親を見送ってから7時頃、玲羅を起こし、一緒に朝御飯を食べる。持ち物を確認してセーラー服に着替え、玲羅と一緒に家を出る。
 
「でも、お姉ちゃんが堂々と毎日セーラー服で通学してても、お父ちゃんは全く気付かないよね」
などと玲羅は言う。
 
「月曜日はお父ちゃんが出港した後で学校に登校する。金曜日は下校した後でお父ちゃんが帰ってくるから、お父ちゃんは私の登下校を全く見ない」
「おもしろーい」
と玲羅は本当に面白がっているようだった。
 
それで2人はバスに乗ってJ町まで行く。J町のバス停から少し歩いてQ神社に入った。
 

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挨拶して玲羅を紹介した上で、葬儀の準備をし、宮司さん、細川さん、千里と循子さん、それに玲羅の5人で斎場に向かった。
 
「神職さんの衣裳も、巫女さんの衣装も色が違うんだね」
と玲羅が言う。
「そうそう。これ鈍色(にぶいろ)と言うんだよ。葬儀専用」
「へー」
 
玲羅は斎場の事務室で待たせておき、4人で斎場の人と打ち合わせて儀式の流れなどを確認した。
 
(神式の葬場祭(仏式でいうと告別式)の大まかな流れ)
お祓い→お辞儀→献饌→葬場祭の祭文奏上→弔辞の奏上→斎場スタッフによる弔電の紹介→喪主玉串奉奠→参列者玉串奉奠→発柩祭の祭文奏上→喪主玉串奉奠→撤饌→お辞儀
 
発柩祭というのは出棺前の儀式である。その後、神職は火葬場まで一緒に行き、火葬前に祭文を奏上する。そして火葬場から斎場に戻って来たら帰家祭を行う。これがだいたい14時すぎである。(この千里は)それまで付き合ってから、細川さんの車で釧路に向かうつもりでいる。
 
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女子中学生のビギニング(6)

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