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さて、玲羅や輝耶とパフェ(更にパンケーキやアップルパイも追加している)を食べていた千里(紺色のコートを着ている)は
「私少し眠くなったから旅館に戻って1時間くらい寝てるね。玲羅たちはまだ休んでて」
と言って、伝票を手に取ってから玲羅に3000円渡し、
「そうだ。これも持ってて」
と言って、父の黒い携帯を渡してから席を立った。そして会計をして旅館に戻る。
そして旅館の玄関の自販機で買った伊右衛門を飲むと寝てしまった
さて、朝8時半頃に、きーちゃんの車に乗った千里(千里R)は、20分ほど走って、山間部にある砂防ダムのような所に来た。22-23歳の女性と30歳前後の女性が居る。
「おお、パワーのありそうな子が来た」
と30歳前後の女性が嬉しそうに言う。
きーちゃんは、
「こちらは、ちさとちゃん、こちらはおとめちゃん、こちらはまりもさん」
と全員を簡単に紹介した。
22-23歳くらいの“おとめ”と呼ばれた女性が説明する。
「こないだの地震で、ここの砂防ダムがかなり傷んだのよ。これこのままだと2-3ヶ月程度以内には崩壊すると思う。それは別にいいし土建屋さんの仕事だけど、このダムはちょっとやばいのよ。ちさとちゃんと言った?分かる?」
「私分かりませーん」
「まだあんた小さいから分からないかもね。でもあんた少しはパワーありそうだからできると思う。このダムの下にある封印まで地震で壊れて、今はダムで押さえられているけど、ダムが壊れると魑魅魍魎が出て来そうだからさ、4人でその封印をしようという訳。さるお方から頼まれた」
と小登愛は説明する。
「猿というとチンパンジー?」
と毬毛が突っ込む(お約束)。
「ニホンザルかもね」
と小登愛は言っておく。
「この手の封印は四隅から締めるから4人必要なのよね〜」
「でも予定していた1人が腹痛で、のたうち回ってるのよ」
「危ない仕事だから守護霊に停められたのだと思う」
「まあ失敗したら私たち全員死ぬかもね」
え〜〜〜!?
「でもまあ何とかなるでしょ」
「ということで四隅に散ろう」
それで千里は小登愛にお清めをして雑霊を祓ってもらった上で、きーちゃんに連れられて、千里の就くべき位置に連れて行ってもらった。
そして
「それで小登愛ちゃんが右手を挙げて合図したら、この真言を唱えて欲しいんだけど」
と言って、千里に何だか訳の分からない文字?で書かれたメモを見せる。
「**********」
と千里が発音してみせると
「うん。それで読み方は間違ってない。でもさすがだね。千里はサンスクリットくらいは読めると思ったよ」
と、きーちゃんは言っている。
サンス何とかって何!??
それで、きーちゃんも自分のポジションに戻る。お互いに顔を見合わせて気持ちを統一する。小登愛が右手を高く上げる。千里は真言を読んだ。
カチャッ
という音がした気がした。
「掛かったね」
「良かった」
「これでダムが壊れても封印は大丈夫」
「できたらダムも壊れて欲しくないけど」
「それは依頼主から市長に圧力を掛けてもらう」
「お疲れ様〜」
「誰も死ななくて良かった」
「誰も性転換しなかったし」
性転換することもあるのか!?
しかし“封印の掛け方”にも色々あるんだなと千里は思った。
「これ、御礼〜」
と言って、小登愛が、毬毛、きーちゃん、千里に札束を配る。
「なんか札束が厚いんですけど」
と千里は言うが
「やはり御札(おさつ)の御礼(おれい)はいいね。ちょっと少ないけど、長い付き合いだし今回はこれでもいいよ」
などと毬毛は言っている。
「ごめんね〜。今回は緊急事態で予算が無くて」
と小登愛。
予算が無くてこれなのか!?
「じゃお疲れ様。ありがと。送るね」
と言って、きーちゃんは千里を車に乗せて旅館に向かった。
きーちゃんは考えていた。
千里はあそこに行く前に極端にオーラを小さくした。更に雑霊が寄ってくるのを放置した。それで、小登愛は千里のパワーに気付かなかったようだが、桃源さんは気付いたようだった。あのあたりは多分経験の差だろう。桃源さんはこれまで多くの修羅場をくぐってきている。それで“物凄い相手”を勘で見分けるのだろう。
でも小登愛は千里のパワーに気付かなかった。
まだまだ彼女が未熟であることを示している。何とかして、そのあたりをちゃんと教育していかないと、ほんとにとんでもない相手と対峙した時に命を落とすぞ、ときーちゃんは危惧した。
「千里あと少しで着くよ」
「ありがとう」
などと会話していたら、旅館の近くにタクシーが3台も停まって、運転手さんたちが何か揉めてる様子だった。事故か何かかな?と、きーちゃんは思った。
「あ、コンビニでお昼買って帰るから、そこのコンビニの所で降ろして」
「OKOK」
それできーちゃんは、ウィンカーを点け、後方目視確認して車を横断させ、コンビニの駐車場に入れた。
「ありがとう!」
と言って千里はローソンに入る。玲羅は食べるだろうからなあと思い、大盛りトンカツ弁当を買い、父には大盛り唐揚げ弁当、自分と母用におにぎりを4個、サラダを買う。念のためパンも何個か買った。他に肉まんを4個買った。
それで代金を払ってお弁当を温めてもらった上で、ローソンを出て旅館に戻った。
誰も居ないので、みんなどこに行ったんだろうと思った。
千里は“お〜いお茶”のペットボトルを開けて飲んでいたのだが、目の端で誰か動いたのを認識する。
「北山紫さん」
と千里は彼女の“真名”(まことのな)をいきなり呼んだ。
「はい!」
と、紫(ミミ子)はびっくりするとともに返事をした。千里が笑顔でそちらに向き直る。
「なんで私の真名を知ってるの〜?」
「考えてたら分かった。この春からずっと私の周囲に居たよね。それでこの人の名前はなんだろうと考えてる内に気付いた」
え〜!?そもそも傍に居ることを気付かれないようにしてたのにぃ。
「普通はミドリさんと呼べばいいのかなあ。それともミミ子さん?小春はミミ子さんって呼んでたみたいだけど」
うーん。小春ちゃんとのやりとりも聞かれていたのか。しかし“本名”のミドリもバレてるとは。でも真名が分かるくらいだから、バレるだろうなあ。
「“ミミ子”は、さる御方にお仕えしている時の名前なので、みーちゃんくらいで」
「OKOK。それで、みーちゃんに頼みたいことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
と、ミミ子は大神様に叱られる〜と思いながら尋ねた。しかし真名(まことのな)を呼ばれてしまった以上(大神様の利益に反しない限り)千里には逆らうことができない。
川夫さんの家で、津気子と武矢は、物凄いアルコール臭の中で、一応酒盛りは終了して、お昼?にラーメンを食べている男性陣に挨拶をした。
飲んべえ連中は
「武矢さん、また後で飲もう」
などと言っているが、武矢はさすがに
「済みません。帰らないといけないから」
と謝っていた。
それで津気子と武矢は小足さんに御礼を言って、待たせていたタクシーに乗り、旅館に向かった。
武矢と津気子が旅館の部屋に戻ったのは、11:50くらいである。部屋には千里だけがいた。
「お帰り。取り敢えずおやつ」
と言って2人に肉まんを渡し
「お弁当も買ってるよ」
と言う。
「私そんな大きなお弁当入らない」
と津気子が言うが
「だと思って、私とお母ちゃんには、おにぎり買っておいた」
と言って、千里はおにぎり4個の内、好きなのを2個取るように言う。
母はシーチキンおにぎりを1個取り
「私は肉まんとこれ1個で充分」
と言った。
「玲羅は?」
と母が訊く。
「さあ。私も今戻ったんだけど居なかった。誰かの部屋にでも行ってるのかな」
と千里は言う。
母の携帯に着信がある。
「あら、玲羅がこの携帯持ってたの?」
「うん。お姉ちゃんから預かった。もうすぐ旅館に戻るけど、何か買ってかなくていい?」
「千里がお弁当買ってきてるよ」
「あ、そうなんだ。じゃおやつでも買って帰るね」
「うん」
玲羅はそれで戻って来るようだ。
しかし母は時間が気になるようだ。
「そろそろ車を取りに行かなきゃ」
と言う。
「どこかに置いて来たのか?」
と父が訊く。
「来る時にタイヤがパンクしたから、帰りは転換タイヤ(*7)のままでは走れないし、オートバックスで交換してもらったのよ」
(*7)性転換したタイヤではなく(タイヤに性別があるのか?)、きっと、テンパータイヤ(テンポラリータイヤ)のこと。
父は
「ああ、そうなんだ。あのスペアタイヤ(*8)、そのまま付けとく訳にはいかないんだ」
と言ったが、千里まで
「ああ、タイヤ新しいの買ったのね。あのタイヤ古いからやばいと思ってたよ」
などと言うので、あんたが新しいの買えって言って、お金まで出してくれたじゃん!と津気子は思う。
(*8)昔の車にはスペアタイヤが載っていたから、それと交換すれば済む場合もあった(但しパンクしたタイヤは修理するか買い直さなければならないし、どっちみちスタッドレスの場合はテンポラリータイヤと同じ対処になる)。最近でもSUVなどでは、スペアタイヤをリアに貼り付けるようにしている車がある(万一追突された場合はクッション代わりにもなる)。
しかしスペアタイヤは場所を食うし重いので、その内、車にはスペアタイヤではなく軽量のテンポラリータイヤが積載されるようになった(英語では Temporary use とか space saver と言う)。この場合は一時的にそのタイヤに交換し、1〜2日中に新しいタイヤを買って再交換になる。
武矢は車の知識が無いので、スペアタイヤとテンポラリータイヤの違いが分からない。
しかし最近はテンポラリータイヤさえも載ってない車が売られている。こういう車でパンクしてしまった場合は、レッカー移動になってしまう場合もあるので、オプションでテンポラリーと小型ジャッキを買って載せておくのを推奨。
母は父に説明した。
「シーズンだからタイヤ交換の順番待ちが長くて。だから車は預けてタクシーで斎場まで行ってきたのよね」
「ああ。今の時期交換する人多いだろうな」
「それで取りに行くから千里付いてきて」
「うん」
「取って来てから留萌に出発しよう。お父ちゃんはお弁当食べて休んでて」
「分かった」
「玲羅が帰って来たらお弁当食べさせてて」
「うん」
(千里Yはお参りした後父母で食事を取ってから車を取りに行き、そのまま帰ればいいと言ったのだが、武矢があまりにも酒臭いので、レストランなどでは入店拒否されると津気子は思い旅館に連れてきた。更に津気子は千里だけと話したかった)
それで津気子は千里を連れて出掛けた。これが12:30くらいである。
玲羅は結局12:20くらいにカフェを出てコンビニで輝耶と一緒におやつを物色し(カフェに入る前にも買ったはずだが)、それで旅館に戻った。輝耶と手を振って別れて部屋に戻ったのは12:35くらいである。
「ただいま。あれ?お父ちゃんだけ?」
「ああ、母さんと千里はタイヤ交換してもらった車を受け取るとか言ってオートハットだかに行ったぞ。肉まんと弁当あるから食え」
などと言っている。
しまったぁ!と玲羅は思った。
あと少し早く帰って来て、私もお姉ちゃんに付いていくんだった!
※Timeline
▼Y■B●R※玲羅£津気子
800 ■※£津気子・千里B・玲羅で食事に行く
830 ■※千里Bと玲羅が部屋に戻る。
831 ●帰蝶からの電話でRに切り替わる。
835 ●R(白い服)が帰蝶に迎えに来てもらい出ていく
840 ※玲羅がコンビニに出掛ける
848 ※玲羅がコンビニで輝耶と遭遇
850 ▼£津気子、朝食から戻り喪服に着替える。部屋に居た千里Yもセーラー服を着る
855 ●Rと帰蝶がダムに到着
855 ■※玲羅と輝耶、コンビニの前で千里B(紺色コート)と遭遇。一緒にカフェに行く。
858 ■※3人でカフェに入りパフェを注文する
900 ▼£千里Yと津気子が光江と一緒に富士子の部屋に行く
902 輝耶が富士子にメールし、玲羅が輝耶と一緒にいることをYと津気子も知る。
905 ▼£富士子も喪服を着る
910 ▼£ 910初子の部屋→920浩子の部屋→930玉緒の部屋
940 ▼£津気子と千里Yが部屋に戻る。
945 ▼£Yと津気子がタイヤを買いに行くことにする、セーラー服の上にグレイのコートを着る
1010 ▼£Yと津気子がカー用品店でタイヤを見る
1030 ▼£Yと津気子がタイヤを買い交換を依頼する。
1035 £津気子が小足の携帯に電話。
1040 小足が川夫を自宅に呼び出す
1045 小足が武矢を連れてタクシーで斎場へ。
1050-1100 川夫が浩子と一緒に自宅でアルコール回収。宴会終了。
1050 ▼£Yと津気子が斎場に到着。
1055 父と小足が斎場に到着 1055-1105 ▼£Yと両親、斎場で十四八とお別れ
1110 £両親が川夫宅へ
1112 ▼Yが父母と別れタクシーで旅館へ 1115 ●封印作業が終わり、帰蝶がRを連れて旅館に向かう
1118 ▼カフェの30m手前でタクシー乗車中のYが消滅
1120 £川夫宅で津気子が男性陣に挨拶。
1125 ■Bが玲羅たちをカフェに置いて旅館に戻り仮眠
1134 ●Rと帰蝶がタクシーが集まっているのを見る。
1135 ●Rがコンビニで下ろしてもらう。
1140 £両親が川夫宅を出る。
1145 ●Rが4人分のお昼を買って旅館に向かう。途中で寝ているBが消滅(*9).
1150 £両親が旅館着。
1215 ※玲羅と輝耶がカフェを出る
1220 ※玲羅と輝耶がコンビニでおやつを物色
1230 ●£津気子と千里Rが車を取りにカー用品店に向かう(実際にはイオンで相談)
1235 ※玲羅と輝耶が旅館に戻る
1320 ●£津気子が車を受け取る
1325 £津気子が瑞江をピックアップする。
1330 £旅館に戻り、武矢を乗せて留萌に向けて出発。
(*9) 30mルールでは、基本的には前から居る側が“強く”、そこに接近して行く側(双方動いている場合は速度の速い方)が消えることが“多い”が、寝ていると寝ている側が“負けて”消える。
消滅した個体(というよりエイリアスに近い)は他の誰かに相乗りし、相乗りしているエイリアスの言動と経験を夢を見るような感じで認識している(そのまま眠ってしまって、覚えてないことも多い)。それで3人とも十四八の死去と葬式のため釧路に移動したことは把握していた。
この日の午前中の動きの結果、このようなことになった。
11/15の夕方はBがお参りし、この日の昼にはYがお参りした。この後Rが通夜に出るのでRはその時にお参りする。3人全員に十四八さんとのお別れをさせるというのが、全体を管理している??千里Gの計画だったのである。
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女子中学生のビギニング(11)