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■女の子たちのインターハイ・高2編(15)

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みんな大きく息をしている。
 
オーバータイム(延長戦)である。
 
バスケットではサッカーのように決着が付かなかったらPK戦のようなルールは無く(地方の団体の大会などでローカルルールとしてフリースロー合戦をするケースはある)、基本的には決着が付くまで延長戦をやる。過去にはNBAで6回目まで延長戦をやったことがある (1951.1.6 Indianapolis Olympians vs Rochester Royals).
 

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「ごめんなさい! あそこで私がボールを取られてなければ」
と揚羽が物凄く悔しがっている。
 
「ああいう場では修羅場の数をたくさんかいくぐって来た側が強いよ」
と久井奈さんは言う。
 
「うん、ドンマイ、ドンマイ」
「次に取り返せばいい」
 
「きっとF女子高とか札幌P高校とかと、これまで何度もそういう死闘を経験してるんだろうね」
と千里は言う。
 
「揚羽も経験を積み重ねていけば負けなくなる」
と穂礼さん。
 
「頑張ります」
「よし、行くぞ」
 

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休憩時間の後コートに戻る。ポイントガードは雪子、センターは留実子に交替する。スモールフォワードの位置に透子が入る。向こうもかなりメンバー交替しているが、花園さんと日吉さんはそのまま入っている。こちらも千里と暢子はそのままである。5分間のオーバータイムが始まる。
 
みんな40分を全力で戦った後とは思えないほど激しいプレイの応酬が続く。日吉さんも暢子も、貪欲にゴールを奪う。千里も花園さんもどんどんスリーを放り込む。さすがにここまで来ると、お互い相手のブロックまでする余裕がないので、ほんとにスリーポイント合戦をしている感じであった。
 
残り1分を切った所で延長戦になって初めて投入されたJ学園で15番を付けている佐古さんが巧みなステップでこちらの守備陣の間を抜きシュート。108対104とJ学園4点のリードとなる。
 
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N高校が攻め上がる。久井奈さんがドリブルしていったそのままの勢いで敵陣に侵入するかのように見せる。入野さんが妨害に来る。が久井奈さんは後ろから走り込んで来た千里に、ドリブルのボールをそのまま後ろへバウンドして渡す。久井奈さんを壁にして千里が撃ち3点! 108対107と1点差。
 
J学園が攻めて来る。残りは35秒くらい。入野さんではなくスモールフォワードの大秋さんがボールをロングスローインで受け取って攻め上がってきたのだが、こちらは透子さんが行く手を阻み、簡単には抜かせなかったので、速攻はならなかった。全員急いで戻って来て守備態勢を整える。
 
いったん入野さんにボールを返し、そこからすぐに花園さんにボールが渡る。そして撃つ! が千里のブロックが決まる。 ルーズボールは透子さんと佐古さんで争って佐古さんが取る。花園さんにパスしようとしたが、久井奈さんが途中で叩き落とす。しかしそのボールを大秋さんが確保して強引に中に飛び込む。
 
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華麗なステップでレイアップシュート。
 
留実子がジャンプしたものの停められず、入って110対107.
 
残りは14秒。
 

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久井奈さんが攻め上がる。向こうは急いで戻っている。千里にパスするが、千里の所に佐古さんが行って強烈なプレスを掛ける。花園さんはあからさまに邪魔だなあという顔をしていた! きっと千里のシュートが見たいんだ!!
 
しかしマッチアップということであれば佐古さんは千里の敵では無かった。相手の気持ちが左側に行った瞬間に、バックロールターンで簡単に右側を抜き、佐古さんの裏側に回る。目の前に花園さんが居る。花園さんは敢えて離れて守っている。シュート撃てよ、という顔をしている。
 
でもここはスリーポイントラインの内側なのである。ここで撃てばシュートが入っても1点差で負けてしまう。しかし千里はボールを持ったままジャンプした。ジャンプシュート!?
 
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と見せて千里は空中で体勢を変えて透子さんにパスした。
 
透子さんはスリーポイントラインの外側でこのボールを受け取る。そしてすぐにシュートする。
 
緊張感が走る。
 
ボールはリングに当たったものの、ぐるぐる回って落ちてくる。
 
そのボールを米野さんと留実子で争い、留実子が強引にボールを米野さんの手の中から奪うと、誰もいないスペースに放り投げる。
 
そこに千里が走り込んでボールに飛びつくようにして取る。
 
振り向くと同時に左足1本で身体を支えながら撃つ!
 
ここはスリーポイントラインぎりぎりの場所である。
 
千里が撃つのと同時にピリオド終了のブザーが鳴る。
 
ボールは美しい軌跡を描いて、直接ネットに飛び込む!
 
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110対110.
 
再度延長戦である。みんな、膝に手をついたまま、大きく息をしていた。
 

2分間のインターバルの間暢子は横になって寝ている。千里はスポーツドリンクを2本飲んだ後、目を瞑ってじっとしている。審判が選手をコートに呼び戻す。千里が目を開けた時、向こう側の観客席に貴司が居た。
 
千里がニコっと微笑むと、貴司もドキっとした感じでこちらを見た。ふたりの視線が絡みあう。千里は新たな活力が出てくる気がした。
 
「ん?千里どうしたの?」
と寿絵が訊くと、留実子が
「彼氏と目が合ったのでは?」
と言う。
 
「なるほどそういうことか」
「試合が終わったらデートするの?」
「まさか!インハイ中は会わないよ」
「まあ、たくさん電話してるよね」
「えへへ」
 
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「サーヤは彼氏は来てないの?」
「見に来たかったらしいけど、お金がないから無理って。でも同系列の福岡B高校の人が準々決勝以降は男女とも実況を専用掲示板に流してくれるらしくて、それ見てるって」
「ふむふむ」
「気持ちがつながっていれば大丈夫だよ」
「結局ノロケか」
 

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セカンド・オーバータイムが始まる。
 
こちらは千里・暢子は当然出たまま。この2人はもうここまで来たら変える訳にはいかない。ポイントガードは雪子、センターは揚羽で、スモールフォワードの位置に夏恋を入れる。向こうも花園さんと日吉さんはそのままだ。向こうもこの2人はもう変えられないだろう。
 
再度激しい攻防が続く。
 
千里も花園さんもスリーを入れる。ふたり合わせて今日は凄い数のスリーポイントシュートが入っているはずだ。一方で暢子と日吉さんも得点を重ねていく。どちらのチームも守備はやや手抜き気味で自分の攻撃機会に確実に点を取ることを重視しているので、5分間なのに点数はどんどん増えていく。
 
しかしここまで来ると、やはり日々の鍛錬の度合いと選手層の厚さが効いて来る。向こうはやはり体力がある。また控え選手のレベルが、N高校はどうしてもレベルが落ちるのに、向こうはほとんど落ちない。それで向こうは適宜選手交代させているものの、こちらはあまり交替ができない。マークをJ学園の選手に振り切られるケースが多くなる。
 
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残り1分の段階で125対120と、J学園が5点のリードになっていた。
 
こちらも攻めて行く。千里は正直このピリオドで決着がつかないと体力負けになるのではと思っていた。雪子から千里にボールが来る。道下さんが千里をチェックに来ようとしたら、花園さんがそれを停めた!?
 
遠慮無くスリーを撃たせてもらう。
 
きれいに決まって125対123。残り40秒。
 

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J学園が攻めて来る。控えポイントガードの白子さんがドリブルしてきた所に雪子がスティールに行く。が、向こうも簡単にはボールを渡さない。反射的にドリブルを反対側の手に移す。
 
が、そこに死角から音も無く千里が忍び寄っていた。
 
「後ろ!」という声が花園さんから掛かった時は、既に千里がボールを奪い、ドリブルで走り出している。スリーポイントエリアの手前でピタッと立ち止まる。即撃つ。
 
バックボードにも当たらずに入って125対126。逆転!残り28秒。
 
J学園が攻めてくる。今度はパスで繋いで花園さんにボールが渡る。千里は正直もう足が動かない感じだった。しかし向こうも大きく息をしている。さすがの花園さんもそろそろ体力限界なのだろう。
 
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花園さんが撃つ。
 
千里がジャンプする。
 
指が当たって軌道は変えた。
 
しかしボールはバックボードに当たり、リングを回った上で入ってしまった。
 
128対126。またJ学園2点のリード。残り9秒。
 

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雪子がドリブルで攻め上がる。
 
ここでN高校が3点欲しいのは、こちらも向こうも分かっている。千里に視線が行く。が、そのせいもあってか、暢子がフリーになったのを見た雪子はそちらにパスする。
 
暢子はスリーポイントラインの外側からそのままシュートした。
 
が外れる。
 
しかしそのリバウンドを揚羽が確保する。
 
がディフェンスが凄くて自分ではシュートできない。
 
時間が無い。揚羽はいったんは自分で強引にシュートしようかとも思ったようであるが、そこに夏恋がカットインしてきた。バウンドパスでボールを渡す。夏恋がその位置からシュートを撃つ。J学園の道下さんがブロックする。
 
笛が鳴る。
 
一瞬試合終了のブザーのような気がしたのだが、ファウルの笛だった。今のプレイで道下さんが夏恋の腕に触れてしまっていた。
 
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フリースローとなる。残りは0.4秒と時計が表示されている。
 

点差は2点である。
 
静かに選手が並ぶ。左側にはゴール側から日吉さん・揚羽・道下さん、右側には中丸さん、暢子と並んでいる。台風が近づいていて窓が激しく音を立てている。雨の音も凄まじい。しかし観客席は静まりかえっている。
 
1投目。審判がボールを夏恋に渡す。
 
ボールを床に撞いたりもせずに静かにゴールを見詰める。
 
撃つ!
 
入る。
 
これで128対127で1点差。観客が一瞬どよめき、そしてまた静かになる。
 
2投目。夏恋が審判からボールを受け取る。
 
撃つ!
 
同時に全員動き出す。
 
ボールはリングの端に当たったが、そのまま高く跳ね上がった。
 
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ゴールそばでジャンプした全員がボールに触ることができないままそのまま着地する。そしてボールはゴールに入っちゃった!
 

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審判がゴールを認めるジェスチャーをしている。
 
同点!!
 
J学園がタイムを取る。
 

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女の子たちのインターハイ・高2編(15)

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