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■女の子たちのインターハイ・高2編(11)

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第4ピリオド。旭川N高校は暢子を戻す。雪子・千里・暢子・揚羽・麻樹というラインナップである。ここに至って秋田N高校側は中折さんが積極的にスリーを撃つ戦略で来た。
 
前半だけで5回のスリーを撃ち、2本入れる。一方の千里は前半4回撃って3本入れる。倉野さんも暢子も貪欲にゴールを奪うし、揚羽もこのピリオドは積極的に攻撃に参加して前半だけで2ゴールである。
 
それまでのロースコアゲームが一転して、両軍とも守備を軽めにして点数を取り合うゲームに変化した。
 
それで5分過ぎた所で点数は75対78と3点旭川N高校のリードになっていたが、そこまで何度もお互いに逆転が続いていてシーソーゲームである。ここで旭川N高校は麻樹さんを下げて《ラッキーガール》夏恋を入れた。
 
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夏恋は一応スモールフォワードとしてメンバー表には登録しているのだが、ボールの扱いがうまく器用で、ガードも兼ねられるタイプである。コートインして最初の攻撃で雪子からパスされたボールをドリブルしながら敵陣に進入。当然行く手を阻まれるが、それまで右手でドリブルしていたのを左手にボールを移して、ワンハンドシュート! これがきれいに入って2点。
 
「凄いね」
と声を掛けられた夏恋は
 
「いや、揚羽ちゃんが飛び込んで行くのを見たからリバウンドを取ってくれるだろうと思って投げたんだけど、入っちゃった」
などと言っている。
 
このあたりの運の強さが夏恋だ。
 

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千里と中折さんのスリーの応酬も続くし、暢子と倉野さんの中に飛び込んでのシュートもお互い決まっていく。荒川さんや揚羽もチャンスがあれば得点していく。相変わらずシーソーゲームが続く。そして残り1分となった所で96対93と秋田N高校3点のリードになっていた。
 
旭川N高校が攻めて行く。相手は中折さんが千里をマークし、倉野さんが暢子をマークしている。ボールは雪子が持っているのだが、千里と中折さんの戦いは既に始まっている。一瞬の隙に千里が目の前から消えるというのを何度か体験して、中折さんも絶対に千里から目を離さない。しかし千里は細かく動き回る。中折さんはそれに付いていく。
 
右に走り、左に走り、というのを数回繰り返した所で千里が右に走ってステップを停めると向こうもそこで停まり、反対側に動き出す。が千里は更に右に走った。「あっ」と向こうが言った瞬間既に雪子からボールが飛んできている。それを掴んでシュート!
 
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中折さんが必死でジャンプして指がボールに当たる。
 
しかしボールはそのままゴールに飛んでいき、1度バックボードに当たってからネットに飛び込んだ。96対96の同点!
 
千里が大きく息をしている。中折さんも大きく息をしている。すぐにふたりとも走り出す。荒川さんがスローインして横山さんがドリブルでボールを運んで行く。
 
横山さんから中折さんにボールが飛んでくる。千里が身体を割り込ませてカットを試みたが、中折さんはその千里を再度押しのけてボールを取る。マッチアップ。中折さんはドリブルしながら突破の機会を狙う。
 
荒川さんが夏恋を振り切ってこちらに走り込み、千里をスクリーンする。その瞬間中折さんはシュートする。が千里もブロックにジャンプする。中折さんはブロックを避けるように高めの軌道で撃ったのだが、千里が最初からジャンプの体勢だったので指がちょっとだけ触る。
 
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ボールはそれで横スピンが掛かり、軌道がずれてゴール近く誰も居ない所に落下した。ルーズボール!
 
両軍の選手が必死で追いかける。しかしその中で夏恋がまるで飛び込むようにしてボールを確保する。完璧に身体のバランスを崩して倒れ込みながら近くに居る揚羽にパス。揚羽から雪子にボールが渡り速攻!
 
しかし行く手を横山さんが阻む。一瞬のマッチアップ。巧みなフェイントで雪子が横山さんを抜く。しかしその間に荒川さんが戻って来ている。更にマッチアップ。ここで対峙している僅かな時間に他のディフェンダーも戻ってくる。
 
そこで雪子はそこからスリーを撃った。
 
ボールはリングに当たったものの跳ね返って落ちてくる。揚羽がリバウンドを確保する。撃つ。しかボールはリングを2周ほどしてから外側に落ちてくる。再度揚羽がリバウンドを取り、低い体勢から床すれすれの高さで外側に居る暢子にパス。しかしすぐに倉野さんが暢子のそばに寄る。
 
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残り時間は既に6秒である。
 
暢子がボールを持ったまま大きくジャンプする。そして空中でシュート!
 
と思いきや、ボールは千里の所に飛んできた。中折さんと少し小競り合いの末、千里がボールを確保する。残り時間は3秒。このまま両軍得点が無ければ延長戦になる。
 
非常に複雑なフェイントを入れて千里はボールをシュートする。中折さんもブロックにジャンプする。彼女の指はボールに届いたか届かないか微妙な感じだったが、千里は僅かに触れたと思った。そしてボールはリングの手前側に当たって跳ね返る。が、そこに暢子がジャンプしてタップでボールをネットに放り込んだ。
 
審判がゴールを認めるジェスチャーをしている。96対98で旭川N高校のリード!!
 
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みんな時計を見る。
 
時計は僅かに0.9秒残っている。
 

秋田N高校がタイムを取った。千里たちも相手がやろうとしていることは想像がつくので、配置を確認する。
 
留実子が唐突に言う。
「千里、こういう時、やりたくならない?」
「なんで〜? サーヤしたいの?」
「取り敢えず我慢しよう」
「まあ、それがいいね」
 
60秒のタイムアウトが終わり審判が選手をコートに呼び戻す。スローインする倉野さん以外、全員反対側のゴール近くに集まっている。左側に居る中折さんには千里と揚羽のふたりでつく。
 
右側には沼口さんが居て、そのそばに暢子が居る。荒川さんに留実子、横山さんに穂礼さんが付いている。
 
中折さんが「行こう!」と言って大きな声を挙げ、片手を挙げている。千里たちも「気を引き締めて!」と声を掛け合う。
 
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倉野さんが超ロングスローインをする。
 
全員の顔に緊張が走る。
 
中折さんがジャンプし、揚羽も同時にジャンプする。
 
が千里はダッシュしてゴールのそばに駆け寄った。
 
ボールは中折さんの所ではなく、ゴールの反対側に飛んできたのである。
 
この場面ではシュートに信頼性がある中折さんを使い逆転勝ちできるスリーを狙うのが最も妥当な考え方と思われる。しかしそれ故に中折さんを敢えておとりに使ったトリックプレイだった。不確実なスリーより確率の高い2点ゴールで延長戦にしようという作戦である。
 
沼口さんと暢子の間で激しいキャッチ争い。ふたりともジャンプして、沼口さんがボールを掴んだ。
 
そして着地する間もなく即シュート。
 
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しかし次の瞬間、沼口さんに対して斜め正面、ゴールの反対側から走り込んでジャンプした千里が空中で左手を伸ばしてボールをエンドライン方面に弾いた。
 
ボールは結局バックボードの端に当たって、床に落ちる。
 
が、そのボールがもう床に付く前にブザーが鳴った。
 

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このプレイでの鍵は、コートの反対側から飛んできたボールをキャッチしてすみやかにシュートすることである。後で考えてみるとこんなプレイができるのは実は体格の良い沼口さんしか居なかったのだが、この時、そこまで千里たちは考えが及ばず、シュートなら中折さんだろうし相手は逆転狙いで来るのだろうと単純に思い込んでいた。
 
また中折さんは「行くぞ!」などと声を挙げ手を高く挙げてていたが、沼口さんは黙って中折さんの方を見ていた。このあたりの演出にも美事だまされた。
 
なお、この時の3人の位置関係はエンドラインに近い側から暢子・沼口さん・千里という状態である。千里はむろん沼口さんにぶつからないように飛んでいる。
 
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ここで、真正面から飛ぶなど、ぶつかる可能性のある飛び方をすれぱ実際にぶつからなくても危険なプレイとしてファウルを取られる可能性がある。また叩き落とすのもボールが沼口さんの頭に当たる可能性があり危険なので、つかんだり跳ね返せないなら横に飛ばすのが唯一の道。
 
なお2007年の時点では曖昧だったが、2010年のルール改定でスローイン後のボールキャッチは、それだけで0.3秒消費したとみなされることになった。この場合は元々0.9秒あったから良いが、2010年以降のルールの場合、もし時計が0.3秒以下からスタートしていたら、つかんでシュートというのは認められず空中でのタップなどによるシュートのみが認められていた。ただしコートの反対側の端から飛んできたボールをタップでゴールするのは事実上不可能だ。
 
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ミュンヘン五輪決勝でのアメリカ対ソ連の大逆転も残り3秒だったからできたプレイである。
 

試合終了!
 
みんな大きく息をついていた。沼口さんも、暢子も千里も膝を付いた状態である。千里が立ち上がって暢子を起こす。そのままお互いにハグする。
 
「大丈夫?」
「平気平気。今のびっくりしたから、ちょっと力使い果たした」
 
一種のショック症状であろう。一方の沼口さんはそのまま座り込んでしまっが、中折さんが寄って来て手を握り起こしてあげた。
 
暢子と沼口さん、中折さんと千里がハグする。
 
沼口さんが泣いていた。中折さんは千里と握手しながら自らも泣きたそうな表情で千里を見詰めていた。その悔しそうな顔は、負けた悔しさなのか、それとも最後のプレイに自分が参加できなかった悔しさなのか。
 
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両軍整列する。
 
「98対96で旭川N高校の勝ち」
 
「ありがとうございました!」
 
両者握手をする。あちこちでハグする姿もある。
 
中折さんが千里に声を掛けた。
「またやろうよ」
「うん。またやろう」
 
それで再度笑顔で握手をしてコートから退いた。
 
得点経過
 
19 20 20 39 | 98
18 14 24 40 | 96

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「前半は39対32でうちがリードしていたけど、後半だけ見ると64対59で向こうがリード」
と睦子がスコアシートを見ながら言う。
 
「やはり強豪は底力が凄いんだよ」
「うん。後半は強豪が絶対有利」
「前半にリードを保っておかない限り、強豪相手に勝ち目は無いね」
 
「それは明日の試合にも言えることだな」
 
と言って暢子は唇を噛み締めた。
 

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フロアから出た所にM高校の橘花・伶子・宮子・輝子の4人が居る。
 
「BEST4おめでとう!」
「橘花、帰ったんじゃなかったの!?」
 
と千里は驚いて言う。
 
「試合があまりにも凄すぎて、とても途中で帰れなかったよ」
「でも飛行機は?」
「試合が終わった所で予約センターに電話して、予約を取り消した。便の出発前だから、手数料は要らないって」
「良かったね! 正規運賃で買ってたんだ?」
「うん。私たちだけ旭川空港じゃなくて新千歳空港行きの便で帰るつもりだったから」
「どっちみち今日の宿泊代が余分に要るけどね」
「取り敢えず昨日まで泊まってたホテルに電話したら、部屋は空いてるっていうから、そこに泊まる」
「それは空いてるだろうね!」
「宿代も昨日までのと同じでいいって」
「良かったね!」
 
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「他のメンバーは第2試合の前半まで見てから福岡に移動した」
「いや、飛行機の取消手数料をたとえ払ったとしても、この試合は見る価値のある試合だったよ。ほんとに凄かった」
 
「最後の方の空中戦、凄まじかったね」
 

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この日、千里たちと同じ時刻に四回戦を戦っていた貴司たちの留萌S高校は強豪の秋田R工業に善戦はしたものの、92対83で敗れてしまった。S高校は結局、BEST8停まりとなった。
 
「どうだった?《王者》R工業」
と千里は電話口で訊いた。
 
「強ぇ〜〜〜!と思った」
「私も対戦してみたかったなあ」
「まあ、千里は男をやめちゃったんだから仕方無い。まあ《女王》とたくさん遊びなよ」
 
千里たちの明日の相手は昨年も優勝している愛知J学園である。
 
「うん。明日が楽しみ。貴司もおちんちん取っちゃうと《女王様》と遊べるよ」
 
「遠慮しとく。でももし千里たち愛知J学園に勝てたら、決勝戦は多分岐阜F女子高になるんだろうな」
 
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「たぶんね。でも東京T高校のメンバーも明日もし岐阜F女子高に勝てたら、決勝戦は間違いなく愛知J学園だ、なんて話してるよ」
「あはは、そうだろうね」
 
「まあ、正直向こうの主力が全員風邪でも引いたりしない限りはまず勝てないと思う」
 
と言ったら後ろで《こうちゃん》が指を折るので『変なことはしないように』と釘を刺しておく。
 
「安い漫画にありがちな新進の学校が奇跡の優勝ってのは有り得ないよ。だけど女王様にも簡単には勝たせないつもりだよ。散々苦しませてやるよ」
 
「うん。逆にそのくらい開き直った方がいいと思う。変に気負うより全力出せると思うよ」
 
「貴司たちは今夜はまだ帰らないよね?」
「うん。帰る便が無いから、明日まで居る」
「私たちの試合見る?」
「もちろん。観客席から応援するから、思いっきりプレイしろよ」
「うん。頑張る」
 
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電話の向こうで貴司が自分の手の甲にキスして、その音で「遠隔キス」ということにした。
 

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女の子たちのインターハイ・高2編(11)

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