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■女の子たちのインターハイ・高2編(13)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-08-30
 
夜のミーティングが終わった後で部屋でおしゃべりをしていたら、雨宮先生から電話が掛かってくる。
 
「例の曲、今朝受け取った。ありがとね」
「いえ。倒れたりした時はお互い様ですよ」
「それで今日は海野博晃が自宅で倒れている所を見つかって救急車で運ばれたんだよね」
 
海野博晃はムードポップス・バンド、ナラシノ・エキスプレス・サービスのリーダーでソングライターだ。自分のバンドの曲の7−8割を書いているし、(残りは過去の名曲カバーが多い)他の歌手への楽曲提供もよくやっている。電子音や打ち込みを使用しないし、16ビートもあまり使わない、ちょっと昭和の香りがする懐古的なバンドである。
 
「何やったんですか? あの人はクスリはやってなさそうだし」
「千里、あんたクスリやってる奴とやってない奴って分かる?」
「曲を見ても分かるし、顔見ても分かりますよ。クスリやってる人って、本当は外してはいけないタガが外れてるんです」
 
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「じゃ、****はどう思う?」
「マリファナかエクスタシーだと思います。顔そのものは健康だけど曲が向こうに逝ってるんです。あれは習慣性のないものを使ってます。多分スランプに陥った時に使ったら良い曲ができたので、詰まる度に使ってるんじゃないかと想像しますが、その内完全に壊れます」
 
「なるほど。いつかは破綻する気はしてた。で、海野は実は子宮筋腫でね」
「あの人、いつの間に女性になったんですか?」
「去年、私が寝てる間に拉致して病院に連れてって手術しちゃったから」
「あらあら可哀想に」
「女の身体、結構気に入ってるらしいよ。自分で自分のおっぱいに欲情するらしいから」
「欲情しても自分とはセックスできないのは不便ですね。だけどファンが知ったらショックでしょうね。結婚したい!とか言ってる女の子、大勢居ますよ」
「まあレスビアンを覚えてもらえば」
 
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何の話をしてるんだ?という感じで夏恋が顔をしかめている。
 
「で、実際問題として何かの病気ですか?」
「うん。ただの更年期障害だよ」
「はいはい。それでどんな曲書けばいいんですか?」
「演歌なんだけどいい?」
「誰が歌うんですか?」
「坂本旬子。タイトルは『玄界灘・女ひとり旅』で」
「ああ。この部屋から玄界灘が見えてますよ」
「それはちょうどいい」
「歌詞は?」
「こちらで適当な人に頼むから曲だけ書いて送ってくれる?」
「了解です。明後日まででいいですか?」
「明日の朝までにできない?」
「明日も試合なんでもう寝ないと叱られます!」
「何時までに寝るの?」
「11時就寝です」
「まだ40分あるじゃん」
「その間に書けっていうんですか?」
「あんたならできる。埋め曲のレベルでいいからさ」
 
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「分かりました。書きます」
「じゃ、よろしくー」
 

「という訳で私はお仕事するから、みんなおしゃべりしてて」
 
と言って千里は旅行鞄から五線紙を取りだし、窓際の椅子に座って心をアルファ状態にする。
 
暢子たちも察してくれて千里の邪魔をしないように、3人(暢子・寿絵・夏恋)で適当におしゃべりしていてくれる。ほんの数週間前、まだ第一次合宿が始まった頃は暢子や千里に敬語を使っていた夏恋も、最近はふつうにタメで話すようになってきた。それはそのまま夏恋のコート上での自信にも直結している。
 
今日の試合でも、あとから考えると勝敗を決することになったルーズボールに根性で飛びついて確保したのが夏恋である。現在のハイレベルなN高レギュラーの一角に食い込もうという意欲が、そのままプレイでの意欲に繋がっている。今は《ラッキーガール》でも、そのうち、常に期待されたプレイができるようになりたいと夏恋は暢子や千里の前で言っていた。確かに期待されていないからこそ《ラッキーガール》と言われるのだ。千里や暢子は勝負を決めるゴールを入れても「当然の働き」としか思われない。
 
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千里は頼まれた曲を夜の海を見ながら30分ほどで書き上げ、★★レコードの加藤課長宛にホテルのFAXを借りて送信しておいた。「埋め曲」のレベルなら、かなりの部分を「頭で」書くことが出来るので、短時間でも何とかなるのである。演歌ではおなじみの音運び、また海野博晃さんっぽいフレーズを入れる。これは夏休みの自由研究の工作でもするような感じで、わりと楽しい作業である。
 
でも千里は後から、この曲を海野博晃作曲のクレジットで、8月22日発売のシングルのタイトル曲に使ったからと聞いて、ぶっ飛んだ。海野さんは
 
「まるで俺が書いたみたいだ! 俺の曲ってことにしていい?」
 
と言って喜んでいたらしい。作曲印税・著作権使用料は普通は山分けなのだが、この曲に関しては、海野さんは全額をこちらにくれた。演歌はカラオケの著作権使用料が凄いので、千里の学資として大いに寄与した。
 
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8月1日の四回戦(準々決勝)は男子が唐津市中心部にある唐津市文化体育館、女子が10kmほど離れた所にある鎮西スポーツセンターで行われたのだが、2日の準決勝はどちらも唐津市文化体育館で行われる。女子の試合が午前中に行われて、男子の試合が午後からである。
 
一般に日本のバスケットの試合は女子が前座で男子が真打ちという感じの扱いになっている。しかし結果的に千里たちの試合が午前なので、お昼過ぎに帰る貴司たちも、その試合を最後まで観戦することが可能である。
 
この日第1試合は10時から岐阜F女子高と東京T高校であったが、千里たちはそれを見ないことにして、朝食後すぐにお寺に行き座禅をした。千里たちの試合は11:40からである。9時半にお寺を出て、昨日も協力してもらった中学校に行き、軽く汗を流す。そしてハンバーガーを「軽く」食べてから会場に入った。第1試合はやはり岐阜F女子高が勝っていた。
 
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「よし、明日は岐阜F女子高とやるぞ」
「うん。頑張ろう」
「今日は150点取るぞ!」
と言い合う。
 
みんなそれぞれに開き直りの心境に達してしまったようであった。やはり昨日がいちばん迷いがあった感じである。
 

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整列する。握手をして試合開始であるが、その時、久井奈さんと握手したJ学園キャプテンの花園亜津子が、千里のそばに来て
 
「ね。今日はスリーポイント競争をしようよ」
と笑顔で言った。
 
千里は目をパチクリさせた。花園さんは中学時代の同輩である、みどりさんにも手を振り、みどりさんもそれに応じていた。
 

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ティップオフ。
 
J学園の中丸さんと留実子で争い、中丸さんが勝ってポイントガードの入野さんが確保。そのまま攻めあがってくる。花園さんには千里が付いている。入野さんから矢のようなパス。キャッチすると、いきなりスリーを撃つ。
 
が千里はタイミングよくジャンプ。指を当てて軌道を変える。
 
ボールはバックボードには当たるがゴールには入らずに落ちてくる。リバウンドを留実子が取った。
 
「ふーん。なかなか」
と花園さんは千里に言った。
 
N高校の攻撃。
 
久井奈さんがドリブルでボールをフロントコートに運ぶ。
 
左側の千里には花園さん、右側の暢子には日吉さんが付いている。久井奈さんが暢子の方に振りかぶるが、J学園はこの程度のフェイントには引っかからない。ボールが手を離れるまで注視している。
 
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が、ほんとにそちらに向けて投げるので選手が動く。
 
がそのボールをそばに居た穂礼さんが途中カットしてバウンドパスで千里に渡す。この間、花園さんは千里の方を向いたままで、1度も暢子の方は見なかった。
 
千里と花園さんがマッチアップ。
 
千里はパスを受け取ったまま、ボールを保持している。足はどちらもまだ動かしていない。千里の身体が左に動く。花園さんは逆の右に重心を移す。次の瞬間、千里は本当に花園さんの左をドリブルで抜いて彼女の向こう側に回り込んだ。
 
即撃つ。
 
入って2点。
 
試合はN高校の先制で始まった。
 
「ふーん。やはり私の敵にふさわしい」
と花園さんは他人事のように千里の傍で言った。
 
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J学園が攻撃してきた場合、ポイントガードの入野さんは、だいたい花園さんに渡して遠くからシュートを撃つパターンと、パワーフォワードの日吉さんに渡して近くからシュートするパターンとを使い分けている。長身のセンター中丸さんはリバウンド係で、スモールフォワードの大秋さんは作戦に変化を付ける。
 
日吉さんと暢子のマッチアップは五分五分という感じであった。暢子はだいたい5割程度の確率で日吉さんを停めていた。
 
一方花園さんと千里のマッチアップ、取り敢えず第1ピリオドでは千里の全勝だった。花園さんは千里を1度も抜けなかったし、スリーは全部千里にブロックされるか、指で軌道を変えられた。
 
N高校が攻める場合も、久井奈さんから暢子にパスして中に飛び込んでシュートを狙うパターンと千里にパスしてスリーを狙うパターンとを使い分ける。
 
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こちらでのマッチアップでは、暢子は7割くらい日吉さんに停められた。しかし千里は花園さんに全勝で、左右のどちらかから抜いて向こう側に出たりあるいは抜くように見せかけてスリーを撃ったりした。スリーは第1ピリオドに5本撃ち、2本は花園さんにブロックされたものの、3本は放り込んだ。花園さんを抜いた上でのツーポイントシュートも3本撃って全部入れた。結局千里はこの第1ピリオドで15点も取っている。
 
最初、まるで千里と遊ぶかのように色々声を掛けていた花園さんの表情が段々険しくなり、やがて声も掛けずに真剣に対峙するようになる。しかし千里はマッチアップで全く花園さんに負けなかった。
 
結局第1ピリオドを終わって、14対24とN高校がダブルスコアに近いリードになっていた。
 
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「出だしは好調。このまま頑張ろう」
「愛知J学園相手にセーフティーリードは有り得ないからね」
「30点差あっても多分あっという間に追いつかれる」
「気持ちで負けないようにしよう」
 
「なんかこないだ水巻君(1年生の男子部員)と話してたら、気合い入ってると試合中に唐突にあそこが大きくなったりするらしいですよ」
と揚羽が言い出す。
 
「ああ、男の子はそんなものかもね」
「あそこは男の子の中心だから」
「女はやはり中心は子宮かな」
「あ、それは思うことある。あの付近に気持ちを集中すると落ち着くんだよ」
 
「千里は自分の中心はどの辺の感覚?」
「私も子宮だよ。そこに気を集中する」
「やはり千里って子宮があるんだっけ?」
「女の子だもん。あるよ」
「やはりそうだったのか」
「まあ子宮が無きゃ生理も無いよね」
 
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