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■女の子たちのインターハイ・高2編(7)

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ハーフタイムで休んでいた時、千里は目の端に飛鳥時代の宮廷衣装のような服を着た女性を見た気がした。
 
千里の無言の意志を勝手に先読みして、その女性を《こうちゃん》が捕まえてくる。これは松浦佐用姫の宮殿で見た采女だ。
 
『何してるんですか?』
『あ、いえ、ちょっとメンテを』
と何だか彼女は焦っている。
 
『千里、こいつ向こうの15番に何かしてたぜ』
と《こうちゃん》。
『橋田さんに?』
『ああ。あの選手の足になんか重しが付いてるね。さっき前半終了間際に千里とボールを取り合って争った時に、それが外れたんで、それをまた結び直したんだろ』
『なんでそんなことを?』
 
『あ、いえ。先日あの者を姫様の宮に招いた時、物を投げつけてきたのでその罰として』
 
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あの時、姫様が言ってたのはそれか!
 
『可哀想だよ。外してあげてよ』
『でも姫様に無礼なことをしたので』
『でも今試合中だよ。試合中にそんなんで動きが悪くなったら思いっきりプレイできないもん。選手同士が全力で戦ってこそ試合は面白くなるから、それは姫様も望まないことだと思うよ』
 
『しかしあの者に足枷が付いていたほうが、そなたは有利なのでは?』
『試合はお互い対等な条件で戦うべきもの』
 
『でも私の一存で外すわけには』
『だったら、その紐を私が外す。それであなたは試合が終わった後で再度結んだらどう? それなら命令違反にはならないでしょ? 試合中は動き回っていて、うまく付けられなかったと言えば良いよ』
 
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『はい、それなら』
 

それで千里は《りくちゃん》に命じる。
 
『あの15番の子の足に結びつけられている紐を切って』
『了解〜』
 
千里はそれでチームメイトに告げる。
 
「橋田さん、多分後半は見違えると思う。ちょっと覚悟して掛かろう」
「へー」
 

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第3ピリオドでN高校は暢子を休ませた。雪子・千里・穂礼・寿絵・揚羽というラインナップで始める。
 
橋田さんとのマッチアップで千里は本当に彼女が見違えた!と思った。何だか本人も首をひねっているが、動きが全く違う。前のピリオドまでは結構スピードでも振り切ることができていたのに、このピリオドではスピードでは振り切れない。むしろ向こうがこちらを上回る速度で回り込んでパス筋を封鎖したりするし、シュートを撃っても、物凄く高く飛ぶので、千里のシュートはかなり彼女に叩き落とされた。
 
ゲーム中はめったに千里に声を掛けない《りくちゃん》が言った。
『千里、紐を切ったこと後悔してない?』
『全然。この人最高だよ! こういうプレイヤーと対峙できてこそインターハイだよ』
『時々思うけど、千里ってMだろ?』
『M? なぁにそれ?』
『あ、いいよ別に』
《りくちゃん》が恥ずかしがっている感じなので千里は何だろう?と思った。
 
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リバウンド争いも熾烈だった。熊野さんは背が高いので留実子とでもかなり勝率が高かったが、揚羽にそもそもリバウンドを取りやすいポジションを明け渡さない。その上で高い場所でボールを弾くので、揚羽のジャンプがボールに届かないことがしばしばあった。
 
こちらはゾーンで守っているので、向こうも簡単には得点できないのだが、それでも、千里は橋田さんにかなり封じられているしで、このピリオドではC学園はかなり追い上げてきた。このピリオドを終えて76対88と詰め寄られる。
 
「やはり強豪は底力が凄い」
「何とか逃げ切れるかなあ」
という声が出ていたが、それを暢子が一蹴する。
 
「逃げ切ろうという気持ちになったらそこで負け」
「そうそう。もっと突き放すぞという気持ちで行かなきゃ」
と久井奈さんも言う。久井奈さんはこういう場面での心の持ち方のコントロールが上手い。
 
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最終ピリオド。橋田さんはそのまま出て千里のマーカーをしている。センターは留実子を入れる。ポイントガードは久井奈さんに、そして暢子も戻す。
 
このピリオドでも橋田さんはかなり千里の動きを封じていたが、その間に暢子が今度はスタンドプレイでどんどん得点をあげていく。暢子は15分近く休んで体力が回復しているので、パス回しなどせずにどんどんひとりでボールを持ったまま中に侵入してはゴールにボールを放り込んでいく。結構強引なプレイなのだが、チャージングは全く取られず、それどころか相手選手がブロッキングを取られたりしていた。
 

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5分経過した所で86対102となっていたが、ここでC学園の要求でタイムアウトが取られる。なんか揉めてる!?
 
橋田さんが「え?」と言った後、一瞬千里を見た。そして何か反論したようであった。監督と言い争ってるような感じだったが、橋田さんは結局外されてしまった。
 
「何だろうね?」
とこちらのベンチでは話している。
 
「多分橋田さんに千里じゃなくて暢子をマークしろと監督が言って、それに橋田さんが反発したんだと思う」
と久井奈さんが言う。
 
「なるほど」
「いや、私が監督でもそういう指示を出すと思う。だって暢子、第4ピリオドこの5分で8点取ってるもん」
「でもそれで千里をフリーにしたらどうなるか分かってないよね」
と寿絵。
 
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「千里の凄さは対峙してみないと分からないのさ」
と暢子。
 
暢子はスポーツドリンクを1本一気飲みする。
「よし、行くぞ」
 
と言ってコートに戻る。
 

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結局、千里のマークには3年生の松隈さんが入った。暢子に熊野さんがつく。
 
松隈さんも充分凄いプレイヤーである。しかし第3ピリオドと第4ピリオド途中まで橋田さんと対峙していた千里にとっては、全く敵ではなかった。橋田さんとなら、4-5m移動してそこから突然の変化まで入れて振りきれるかどうか微妙なのだが、松隈さんは、ほぼ瞬発力だけでフリーになることができた。また彼女は橋田さんに比べて「意識の隙」が多く、瞬発力を使わなくても相手の目の前から消えることができた。
 
それで久井奈さんや穂礼さんからのパスを受けて千里はどんどん撃つ。それで第4ピリオド後半だけで千里は4本のスリーを放り込んだ。
 
一方の暢子も熊野さんとのマッチアップには負けない。熊野さんは身体能力は高いので、リバウンドには強いのだが、通常のマッチアップではまだ経験不足な感じである。多分C学園のような強豪にいるゆえに試合への出場機会が少なく経験も浅くなっているのだろう。結局暢子も第4ピリオド後半で6点取った。前半よりペースが落ちたのは、千里がフリーになるので、そちらのルートを多用したからである。
 
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これを見て、向こうの監督も橋田さんを下げたことを後悔したようであった。残り2分を切ってからゴールで時計が止まったタイミングで橋田さんを再投入。当然橋田さんは千里をマークする。暢子のマークにはキャプテンの小橋さんが付いた。これで千里は簡単にフリーにはなれなくなったが、それでも1度だけうまくマークを外してスリーを撃った。一方の小橋さんはさすがに熊野さんよりはずっとマークが上手い。それでも暢子の変化あふれる攻撃には対応しきれないようで、何度か「えー!?」という声を出していた。
 
結局この試合、124対94の大差で千里たち旭川N高校が勝った。これで千里たちはBEST8になる。
 

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「私たちこれでBEST何になったんだっけ?」
と寿絵が訊く。
 
「BEST8だよ」
と千里。
 
「なんか凄い成績のような気がする」
「凄いと思う」
 
「スラムダンクの赤木さんが強豪の大学チームに勧誘された時、BEST8というのが条件だったんだよね」
とみどりが言う。
 
「それをクリアしたのか」
「スラムダンクって結局BEST何になったんだっけ?」
「BEST16」
「それを越えちゃったのか」
「なんかすごーい!」
 
「でもBEST1まで行こうよ」
と暢子が言う。
 
「BEST1って?」
「優勝」
「おっ、凄い」
 
「でもこれからはC学園みたいなチームと毎日やることになる」
「ひゃー」
 
「今日、橋田さんが第1ピリオドから出てて、しかも最初から調子良かったら負けてたかもね」
「歴史にifは無いのさ」
「お、なんか格好いいセリフ」
 
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試合終了後、ロビーでばったりとC学園の選手数人に会ったので、思わずお互いに声を掛け合い、また握手する。
 
「村山さん、凄いです!」
と橋田さんが言うが
 
「橋田さんも凄いです。でも、前半と後半で見違えた」
と千里も言った。
 
「あ、そうそう。なんか数日前から足に違和感があったんですが、この試合のハーフタイムに休んでいた時、急に楽になったんですよ」
 
千里の目の端で、例の采女が何だかこそこそやっている。
 
「橋田さん、鏡山神社にお参りに行った方がいいかも」
「へ?」
「私、神社の巫女なんですよね。その巫女としての忠告」
「へー!」
 
熊野さんは留実子となんか意気投合したみたいであれこれ話していた。
 
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「花和さん、凄く男らしくて格好いい」
「熊野さんも格好いいじゃないですか」
「やはり女は強くないといけないよね」
「ああ、僕は強いのが好き」
「花和さん、ボク少女? 実はボクもなんだよね〜」
 
そばで2人の会話を聞いていたら、まるで男同士の会話だ!? 結局熊野さんと留実子はメールのアドレスも交換していたようである。
 
その留実子を通して後から聞いた話では、C学園はこの試合の後、せっかく唐津まで来たしというので鏡山に登り自分たちが熱戦をした唐津の市街地を眺めて、ウィンターカップに向けて再起を誓ったらしいが、その時、橋田さんは鏡山神社にお参りし、それで橋田さんの「足の違和感」は治ったらしい。
 

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一方千里たちはこの日は試合が終わった後、ベンチに座った13人と南野コーチとで近隣の温泉に出かけて、試合の疲れを癒やした。
 
「お、ここ筋肉痛に効くらしい」
「冷え性にもいいって」
「あんた冷え性なの?」
「冬になると手足の先の温度が凄く低下するんだよね。冬山とかいくと凍傷とかやりそうで怖い」
 
そんなことを言いながら少しぬるぬるした感じの温泉のお湯につかり、今日の試合などのことも話していた時、近くで着メロが鳴る。これはインターハイ・バスケのテーマ曲『走れ!翔べ!撃て!』だ!
 
「はい」
と言って電話を取る人の姿がある。千里たちはこの温泉のいちばん広い『佐用姫の湯』に入っているのだが、電話を取った人物は隣の少し小さい『かぐや姫の湯』
に入っている。
 
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湯船の中で電話など取るので、みんなそちらを注目する。が、千里は一瞬で顔を埋める。が遅かった!
 
雨宮先生と視線が合ってしまい、向こうから咎めるような視線が来るので、仕方無く再度向こうを見て笑顔で会釈する。
 
「へー。南部梅林が倒れたの?」
 
こちらのグループがざわつく。南部梅林は1990年代に『君の瞳にアイス』『恋の登りサッカー』などダジャレのタイトルの歌をいくつかヒットさせたシンガー・ソングライターだが、最近はあまり歌手としての活動はしておらず、作曲家的な状態になっていて、主としてアイドルに楽曲を提供してまあまあ売れている。中堅の作曲家という感じである。
 
「ふーん。一酸化炭素中毒ね〜。それ自殺じゃなくて?」
「はいはい。勝手な憶測はしませんよ。まあ大麻とか金魚じゃなくて良かったね」
「ほほぉ。それで石丸公子に渡さないといけない曲が無いのね。いつまでに用意すればいい?」
「了解了解」
 
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と雨宮先生はこちらを見ながら言う。何だかいやーな予感がする。
 
「え?ここ? 温泉だけど」
「周囲に人がいないかって?」
「ああ。いるけど、口の硬い子だから大丈夫よ」
 
などと先生は言っている。千里たちは顔を見合わせている。
 
それで雨宮先生は電話を切った。そしておもむろにこちらの湯に移ってきて言う。
 
「あれ〜、千里じゃん」
 
千里は苦笑しながら返事する。
 
「先生、なんでこんなところにおられるんですか?」
「あんたこそ、なんでこんな所にいるのよ?」
「今インターハイですから」
「ああ、あんた出場してるんだっけ?」
「開会式で『走れ!翔べ!撃て!』を聞いた時は感無量でした」
「ふーん。自分で会場で聞けて良かったね」
「ありがとうございます」
 
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