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■女の子たちのインターハイ・高2編(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-08-23
 
しかし暢子は強引だ。昭ちゃんの手を引いて、部屋の外に出ると
「ちょっとコンビニまで行って来ようよ」
などと言ってエレベータの方に行く。昭ちゃんは抵抗している。
 
そんなことをしていたら、久井奈さんたちの部屋に居た南野コーチが廊下に出て来た。
 
「あんたたち、それいじめじゃないよね?」
と暢子に厳しい顔で訊く。
 
「昭ちゃんが可愛いから、もっと可愛くなるようにしてあげてるんですよぉ」
などと暢子は弁解している。
 
すると昭ちゃん本人が言う。
「大丈夫です。ボク、こういうの好きです」
 
「うーん。まあ本人が好きならいいけど、湧見君。不快に感じてたら遠慮無く私に言って」
「はい」
 
「よし。コーチの許可も取れたし、昭ちゃん、コンビニまで行くぞ」
と暢子。
 
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「えー?ほんとに行くんですか?」
と昭ちゃんは言いながらも、自分で好きだと言ったので、結局暢子に引っ張られてそのまま1階に降りて行っていた。
 

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「千里何見てんの?」
と暢子が声を掛けた。お風呂に入った後、千里たちは部屋で少し涼んでいた。
 
なお、昭ちゃんは「女湯に来ない?」と暢子が誘ったものの「さすがに無理です」と言って男湯の方に逃げて行った後、自分の部屋に戻ったようである。このホテルではお風呂は大浴場に行ってもいいし、部屋の風呂に入ってもいい。多くの生徒はのびのびとした感じを求めて大浴場に行った。
 
「葉月ちゃんに撮ってきてもらった愛知J学園の試合」
「おぉ、見せて見せて」
と暢子が言うのでまた最初から再生する。
 
愛知J学園は昨年のインターハイ優勝校なので当然シードされており今年は2回戦から。つまり今日が初戦であった。1回戦を勝ち上がってきた学校にダブルスコアで快勝している。
 
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「凄いなあ・・・」
「ここと当たった場合、花園さんのマークは私にやらせてもらえないかなあ。暢子がやることになってたけど」
と千里は言った。
 
「今日の金子さんとのマッチアップでも千里凄かったよね。宇田先生に言ってみるといいよ」
 
「ボールをもらってから撃つまでの時間がほんとに短いよね。身体に無駄な動きが全然無いんだよ。低い角度で撃ってボールの滞空時間も短いからブロックしにくい。ただ発射角度が低いということは、私みたいな背の低いプレイヤーにも何とかなる可能性はある」
「それは言えるな」
 
結局2人で40分間の試合を全部見た。
 
「最後まで行っても全然衰えないよね」
「うん。凄いスタミナ持ってる」
「千里も凄いじゃん」
「私のはハッタリと誤魔化しだもん。スタミナが持っているように見せてるだけ。でも花園さんはホントにスタミナが持ってる」
「ああ、千里は誤魔化すのもうまい」
 
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一方の愛知J学園が泊まっているホテル。
 
「亜津子、何見てるの?」
と日吉さんが声を掛けた。
 
「旭川N高校のビデオ。偵察隊に撮って来てもらったから」
と花園亜津子は答える。
 
「そこと当たるんだっけ?」
「当たる可能性はある」
 
それで日吉さんが組合せ表を見るが
「この山からは福岡C学園あたりが来るんじゃないの? そこそんなに強いの?」
と言う。
 
「いや、実は中学時代の同輩が入っているチームなんで、ちょっと見てたんだよ。でもここのシューターが凄い。ちょっと待って。撃つ所見せるから」
 
と言って花園亜津子は千里がシュートする場面を出して日吉さんに見せる。
 
「きれいなフォームだね」
「まだ発達途上という感じ。半年後か1年後が怖い。まあ1年後は私居ないけど」
「でもそんな凄いシューターなら話題になっても良さそうなのに」
 
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「この子、1回戦でも2回戦でも相手チームの卓越した選手にピタリとマークして一切仕事をさせなかったんだよ。そちらでエネルギー使っているから自分のシュートはあまり撃ってない。でもビデオで確認したら1回戦でも2回戦でも撃ったスリーポイントシュートはブロックされなかった限り全部入れてる。つまり物凄くコントロールがいい」
「すごっ」
 
「こことやってみたいなあ」
と亜津子は楽しそうに言った。
 
結局2人は旭川N高校と宮城N高校との試合を40分間全部見た。
 
「マークの外し方が凄くうまい」
「2通りの外し方をしてるよね。ひとつは普通に瞬発力で振り切る方法。もうひとつは相手が一瞬他に意識を移した瞬間に静かに目の前から消える方法。この時は足音がほとんどしてないと思う。ハード法とソフト法」
 
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「それってF女子高の前田さんと似たタイプじゃない?」
「うん。この子のマークをする場合、一瞬たりとも気を抜けない」
「凄まじく消耗しそう」
「体力と精神力が必要だよ。この子とやるには」
 
「あの、間違ってパスされたボールを外に放り投げちゃったのはどうなんだろ?」
と日吉さん。
「私もそうしたかも。ユニフォームのロゴが似てるからそれで誤認したんだと思うのよね。たぶんこの12番、近眼か何かで顔まで識別できてないんだよ。でもそういうのでボールもらって得点すると、後ろめたさが残るんだ。自分の心理状態に迷いを生じさせないためには相手にボールを返した方がいい。まあそれで点を取られても自分で取り返すという自信がないとできないプレイかもね」
と亜津子。
 
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「私だったらラッキー!と思って、そのまま攻め上がるなあ」
と日吉さん。
「うん。それが普通のプレイだと思うよ」
と亜津子は微笑んで言う。
 
「しかしこの子最後までスタミナがよく持つね。金子さんとは対決したことあるけど、あの人、かなりタフだよね。それなのに最後は金子さんが完全にスタミナ切れしてる」
 
「この子、体力を消耗しない身体の使い方をしてるんだよ。走る時は走るのに必要な筋肉だけ、撃つ時は撃つのに必要な筋肉だけ、ドリブルする時はドリブルに必要な筋肉だけを使っている。それ以外の部分は常に眠らせている。だから燃費がものすごくいいはず。多分少食」
「へー!」
 
「ここ見てご覧よ。右手でドリブルしてる時、左手はダランとしてる。そちらは脱力してるんだよ。ここ、ほら立ち止まっている時は足の力も抜いてる。これ膝カックンすると簡単に倒れるよ」
 
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「膝カックンはファウルだよね」
「うん。ディスクオリファイング・ファウル取られるかも。だから脱力してる」
「なるほど」
 
「修行を積んだ禅僧とかが、こういう筋肉の使い方をする」
「それって凄いのでは?」
 
「禅僧って食事の摂取カロリーが1日に1200-1400kcalと、普通の人の半分くらいなのに、かなり激しい修行をするでしょう? そういう燃費の良い使い方をするから、それに耐えられる。この子はそういう身体の使い方をしてるんだよ。本当にスタミナがある訳ではないと思う」
 
「どうやってそんなの身につけたのかな?」
「そうだなあ。。。。天性のものもありそうだけど、それだけじゃない。お寺で何年か修行してたりして。あるいは山伏みたいに山駆けとかしてたりして」
「山伏女子高生?」
 
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「さて、明日は福岡C学園な訳だが、合宿の時にも言ったように、のびのびと戦おう」
と宇田先生は言った。
 
今回のインターハイでは当たる可能性のある学校のことを合宿の時にひとつひとつ検討して対策を考えている。福岡C学園はインターハイ・ウィンターカップの上位常連校である。
 

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合宿の時の検討会。
 
「基本的には札幌P高校と戦うくらいのつもりで頑張る必要がある」
と宇田先生はその時言った。
 
「逆に札幌P高校とやるつもりで戦えば勝てる見込みがあるってことですよね。私たちP高校と何度か良い試合をしたもん」
「うん。そう考えよう。気合いで負けたら試合前に勝敗が決してしまう」
 
「ここは組織力の高いチームなんだよね」
と福岡県大会の偵察をしてくれたOGの三隅さんは言った。
 
「むろん個々の選手の能力も高いけど、誰かズバ抜けて卓越した選手がいる訳ではない。組織で攻めてきて突破口を開き、確実に点を取っていくし、守備でもゾーンを基本にして、みんなで守る」
 
「そういう所は逆に個人技で突破すればいいんじゃないですか?」
「組織だった攻めは向こうは全部対応しちゃうと思うんだよね。だからイレギュラーな動きをする個人には混乱する可能性はある。ただ、たいていのそういう個人技に卓越した選手とは当たった経験があるはず」
 
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「そういうイレギュラーな動きをする選手が3人も4人も居れば、けっこう翻弄されませんか?」
「可能性はあるね」
 
「じゃ、先発は千里、暢子、揚羽、雪子、夏恋で」
と久井奈さんが言う。
 
「変人軍団だな」
とレギュラーの中では最も常識人っぽい穂礼が言う。
 
「そして連携をあまり考えず、各々自分がひとりでプレイしているつもりで。NBAの選手になった気分で」
と久井奈さんは付け加えた。
 
「要するにこの試合ではガン&ランで行くんだな」
と暢子が言ったが
 
「ラン&ガンね」
と寿絵が訂正した。
 
「ガン&ランだと、多分スリーを撃ってから自分でリバウンド取りに行くんだ」
「それはあまりにも凄すぎる」
 

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「でもこういう所とやる時は、最初が肝心ですよね」
と穂礼さんが言う。
 
「そうそう。序盤から食らいついていくことが必要」
と久井奈さんも同意見。
 
「漫画だと強豪相手に大差を付けられるも、そこで底力を出して逆転、なんてのよくあるけど、強豪の方が絶対底力がある。日々激しい練習を積み重ねてきているのが強豪だもん。ここは多分私たちの倍くらい練習してる」
と穂礼さん。
 
「こういう強豪チームに大量リード奪われたらほぼ負け確定。絶対に最初から競っていく。それしか勝機は無い」
と久井奈さん。
 

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そしてインハイ直前になって、練習に協力してくれた福岡K女学園の選手からもここは個人技で攻めて行く選手に弱いという情報がもたらされ、事前の検討内容の妥当性が追認されたのであった。
 
福岡C学園もシードされているので2回戦からであった。その試合は偵察係の萌夏が撮影してきてくれているので、前夜にはそれを見た。
 
「15番の橋田さんって、なんかセンスいいと思わない?」
「うん。2年生みたいね」
とメンバー表を確認して言う。
 
「背番号から想像するとギリギリでメンバーに入ったんだろうけど、個人的な素質はいちばん良いって気がするよ」
「15番という番号の割りには出場時間が結構長い感じだね」
「第4ピリオドは全部出てたね」
 
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インターハイのベンチ枠は12人なので、背番号は4番から15番までである。4番は通常キャプテンが付けるし、スターティング・ファイブはだいたい若い番号の選手である。
 
「でも何だろう。動きが少し遅い」
「体調悪いのかなあ」
 
「12番の熊野さんって背が高いね」
「これ180cm以上ある気がする」
「メンバー表では179cmになってるよ」
「まあその数字は自己申告だから」
「千里も166cmと申告してるけど、本当は170cm近くありそうな気がする」
 
「だけど熊野さん、この試合では1度もコートインしなかったね」
「背が高いけど、あまり上手くない?」
「いや、上手くないなら、そもそもベンチに入らない」
「この人も2年生か」
「熊野さんと橋田さんの2人だけが2年生で残りは3年生だね」
 
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「やはりほとんど3年生で構成しているってチームは多いよね」
「逆に2年生が多いのは強豪校にしばしば見られる特色」
「各学年ごとに強い子を勧誘して入れてるからね」
「うちも実は強豪校だったりして」
「でも福岡C学園は強いけど3年生優先っぽい」
 
「その中で2年生で入っているということは、やはりかなり上手いんだと思うよ」
 
「でも熊野さんって、ちょっと見た目、男っぽくない?」
「あ、思った」
「性別を疑いたくなったりして」
「性別に疑義があって出場しなかったんだったりして」
「疑義があったら、その前に検査を受けさせられているよ」
 

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