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■夏の日の想い出・第三章(14)

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翌25日は名古屋、その翌日は横浜でキャンペーンをして、27日は休養日となった。28日が那覇なので、他のメンバーは28日朝の便で移動することになっていたが、私と政子だけ27日の午後の便で那覇に飛び、麻美さんのお見舞いに行った。麻美さんはとても元気で、4月に会った時よりもかなり顔色が良くなっていた。体調がいいので、最近は歩行器を使って歩く練習などもしているということであった。
 
その日はお見舞いの後、那覇の町でのんびりしようと思っていたのだが、どこからか聞きつけた、なじみのFM局のパーソナリティさんが電話を掛けてきて、私たちはふたりでFM局に赴き、夕方の番組に飛び入りで出演して、明日キャンペーンをすることを話した。
 
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「今回はローズクォーツの方のキャンペーンですか」
「そうです。『ビトゥイーン・ラブ』はふたつのメロディーが絡み合うきれいな曲ですし『あなたとお散歩』もとってもキュートな曲なので、お近くの方はぜひいらしてくださいね」
 
「マリちゃんも歌うんですか?」
「いいえ。歌いません」
「私は4月のライブの時はスタッフで行ってたので役得でマリちゃんの歌を聴くことができたんですけどね。堂々と歌ってるし、上手いし、このままステージ復帰するのかと思ったんですけど。夏フェスでも歌いましたよね」
 
「ええ。年内にはもう1回くらい、日本のどこかで歌うかも知れません」
 
「ちょっと、マリ、それまだ非公開情報!」
と私は慌てて言ったが、生放送で流れてしまったものはどうにもならない。
 
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マリの爆弾発言は、沖縄のリスナーによりネットに書き込まれ、30分以内には全国のファンの知るところとなった。
 
★★レコードや事務所などに問い合わせが殺到したがどこも「確かに年内に1度ローズ+リリーのライブを予定していますが、詳細はのちほど発表します」
とだけ答えた。
 
金華山で突然政子が歌いたいと言った後、私はすぐに美智子と町添さんに政子がやる気になっているので、ぜひ今年中に1度ライブをしたいということを伝えていた。すると翌日には町添さんから、そのライブの企画案を作ったよという連絡があり(町添さんと浦中さんの電話会談で概要が決まったようであった)、その計画は「未公開資料」として、上島先生、○○プロ、△△社、そしてUTPに開示されていた。
 
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が、いつ発表するかというのもまだ決まっていなかったので、協定違反と言われないかと私は肝を冷やしたのだが、慌てて電話をすると町添さんは笑っていたし、浦中さんも津田さんも「事前に内容について連絡は受けていたのでノープロブレム」と寛大な言い方をしてくれたので、ほっと胸をなで下ろした。
 

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その日の宜野湾市内のホテル。政子は
「私の発言、まずかった?」と訊いた。
 
さすがに本人もちょっとやばかったかなと思ったのだろうが、私は
「大丈夫だよ。一応事前に協議はしていたし。でも気を付けてね」
と言った。
「ごめんねー。で、いつライブするの?」
「あれ、まだ見てないんだっけ? って旅先だからマーサはパソコン持ってきてなかったね」
「うん」
 
私は政子がまだメールを見ていなくて良かったと思った。見ていたら場所と日時までしゃべっていたかも知れない。
 
「これだよ」
と言って、私は町添部長から送られてきたメールを見せる。
 
「大分?」
「だって、去年の12月に大分に行ったとき、マーサったら関鯖食べたいから今年も12月に大分に来て、ライブするって言ったじゃん」
 
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「あ!そうだ。関鯖食べなくちゃ! 冬!よく覚えてくれてたね。大好き」
と言って、政子は私に抱きついてキスした。
 

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自分の失言で少し政子も凹んでいたようではあったが、夕食にタコライスとアグー豚のトンカツを食べるとたちまち元気になった。食事の後少し休んだらホテル内のプールに行って一緒に泳ぎ、エステで身体をもみほぐしてもらった。
 
私もゴーヤートリートメントで全身をマッサージしてもらうと、あまりの気持ち良さに途中で眠ってしまったくらいであった。
 
「丁寧にエステしてもらったから身体が軽い気がする」と政子。
「私も。なんか疲れの溜まっていた所をきれいに解放してもらった感じ」と私。
 
「でもこういうエステって女性専科が多いよね。今日受けたメニューも女性専用だったし」
「まあ、女性客と男性客を同じ部屋で裸にできないしね」
「冬は女性の身体になれて良かったね。こういうのが受けられるから」
「そうだね。別にエステしてもらいたいから女になった訳じゃないけどね」
 
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「冬はどうして女の身体になりたいって思ったの?」
「うーん・・・・何でだろう・・・・」
「じゃ質問変えて、最初に女の子になりたいと思ったのって、いつ頃?」
「・・・・こないだ。うちのお母ちゃんから、お前の小さい頃の写真が出てきたっていってメールで送ってきたんだ」
「へー」
 
「普及価格帯のデジカメが発売されて間もない頃だよ。QV-10って機種で当時のCPUは非力だから320x240ドットなんだけどね。でもこれ」
 
私はその写真を開いて政子に見せた。
 
「わあ、可愛い女の子! って、これ冬?」
「うん」
と言って私は微笑んだ。そこには、ツインテールの髪で麦わら帽子をかぶり、サマードレスを着た、3歳の私の姿があった。
 
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「この写真、小学生の頃は何度か見たことあったんだけどね。その後見てなかったから、消しちゃったか、行方不明になったんだろうなと思ってたんだけど」
 
「冬と正望君との結婚式ではこれぜひプロジェクターで映して参列者に見せたいね」
「やめてー。恥ずかしいよ」
 

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翌日は午前中にクォーツのメンバーが到着。お昼から那覇市内の数ヶ所でキャンペーンを行った。そしてその日は私たちが前泊したのと同じホテルに泊まる。夕方、そのホテル内のレストランでみんなで食事をした。
 
「ここ、いいホテルだなあ。4月に来た時も思ったけど」とヤス。
「去年沖縄に来た時はふつうのビジネスホテルだったけどね」とサト。
 
「ローズクォーツの『夏の日の想い出』、ローズ+リリーの『涙のピアス』がミリオン行ったから、グレードが上がったんですよ」と氷川さん。
「でもこのあとヒットが出なかったら、たちまちグレードが下がるね」と美智子。
 
「昔は一流ホテルに泊まってたのに、とか言うハメにならないよう頑張ろう」とタカ。「全く。でもヒットは運もあるからね」とサト。
 
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「でも今のレコード業界『1万枚売れたらヒット』みたいな雰囲気になってきているから、その中でミリオンを連発している、ローズ+リリーとかXANFUSとか、スカイヤーズって、レコード会社としては超VIPなんですよ」と氷川さん。
 
私は思った。政子の失言が問題にされなかったのも、その特別待遇あってのことなのだろうと。
 
「でも、ケイちゃんの曲がやはり去年の夏から突然グレードアップしたよね。それ以前の曲もいい曲が多いんだけど」とヤスが言う。
「あ、その説には俺も賛成」とサト。
 
「去年の夏に凄いヒーラーさんに出会って、ケイは体内の波動を女性型に変更してもらったんです。それでおそらく、ケイの体内の能力が上昇したんですよ。それまでは男の部分と女の部分が混在して充分なパワーが出なかったのが、完全に女になったからフルパワー出るようになったんだと思う」
と政子が言う。
 
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「性転換したのでスッキリしてパワーアップしたんですね?」とヤス。
 
「でも今年ミリオンを出した曲はみんな昔の曲なんですよね。『影たちの夜』
は高校を卒業した直後、『天使に逢えたら』と『A Young Maiden』は高校2年の時の作品」と私。
 
「そのあたりは突発的に凄くきれいにチューンしたんだろうね。マリちゃんもケイちゃんも天才型だから、時々凄いのができちゃう。でも去年の夏以降の曲はコンスタントに凄い。今年の曲だって悪くないよ。『風龍祭』は80万枚。あんな実験的な曲でこのセールスは凄いよ」とサト。
 
美智子も頷いている。
 
「『祝愛宴』のお陰で雅楽に興味を持つ人が増えたみたいですよ。逆に雅楽に関わっていた人たちでローズ+リリーのファンが増えたみたいです。でも、古い曲は今年出したふたつの自主制作アルバムでだいたい尽きました?」
と氷川さん。
 
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「そうですね。だいたい尽きたけど・・・・」
「けど?」
「1個、行方不明の楽譜があるんですよね。私とマリが初めて一緒に書いた作品なんですが」
「へー」
「高校1年の時の作品で。その頃はMIDIツール使ってなかったから、譜面をパソコンに入力してないんですよね。高2の時に譜面の紛失に気付いてその時点の記憶で書き出したものはあるのですが、微妙に違う気がして。マリは詩を書いたら即忘れちゃう人だし」
 
「それ、見つかるといいですね」
 

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翌日は朝の飛行機で大阪を経由して高松に行き、その翌日30日は広島に移動して各々の地でキャンペーンをした。そして31日は休養日となったので、私と政子は宮島に渡った。
 
ここはどうしても観光地になっているので、できるだけ観光客の少ない早朝にお参りしようということで、朝1番のフェリーを使った。それでもお婆さんたちの団体さんと一緒になってしまった。私と政子は少し早歩きして先に行き、喧噪に巻き込まれないようにした。
 
お参りする。お揃いのブレスレットがまた共鳴した。今度は響きが水平に広がっていくような感覚を覚えた。
 
「冬、金華山は黄色、竹生島は青だって言ってたよね。ここは何色だと思った?」
「赤」
政子も頷いている。彼女もたぶん似たような感覚を感じているのだろう。
 
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お参りした後、参道の商店街で紅葉饅頭を買って、フェリーターミナルの近くで一緒に食べていたら、政子が何か考えている風であった。
 
「どうしたの?」と声を掛けるが
「うん」と言ったまま政子は微笑んでいる。珍しい反応だ。
 
「ねぇ、私が赤ちゃん産むしたら、いつ頃がいいかな?」と政子は唐突に訊いた。「ふーん。道治君の赤ちゃん、産みたくなったの?」と私。
 
政子は先月くらいから新しい彼氏を作って付き合い始めていた。彼氏がとても熱心で、政子にもう夢中という雰囲気で、私も微笑ましく思っていた。
 
「ああ、道治の子供か・・・・彼の子供だったら産んでもいいな」
「ん?道治君とのこと考えてたんじゃなかったの?」
 
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「特に誰かのってんじゃなくてさ。やはり在学中は難しいでしょ?」
「休学が必要になるかもね」
「それやると母ちゃんに叱られるな。でも大学卒業したら、私、ライブ活動に完全復帰すると思うんだ」
「お、とうとう復帰する気になったか」
「在学中も何度か歌うかも知れないけど、限定的でいい?」
「うん、いいよ」
 
「するとたくさん休んでいたのに、復帰してすぐに出産で休んだりしたら、町添さんに悪いもん。だから大学卒業してすぐ産むのも無し」
「それに、私たちの世代の女性歌手って結婚したり出産したら商品価値が下がるからさ」
「うん。それは意識してる。私たちって性まで商品の一部だもんね。でも最初の子供、30歳前には産みたいのよね」
「そうだね」
「じゃ、27歳くらいで産もうかなあ」
「まあ、そのくらいの年齢になったら、子供産んでも町添さんだって、むしろ祝福してくれるんじゃない?」
 
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「じゃ、決めた。私、27歳で子供産む」
「ふふふ。いいんじゃない?」
「私の子供は冬の子供だよ」
「そんなこと言ってたね」
「子育て、一緒にしてくれる?」
「女同士だから、そのあたりってやりやすいよね。手伝えることは何でも手伝うよ」
「じゃ、おっぱいあげるのも手伝ってね」
「そんな無茶な!」
 

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翌日9月1日は神戸で、そしてキャンペーンの最終日2日は福岡でイベントを行った。2日は日曜なので、そのあと月火の3,4日はお休みとなる。私たち以外のメンバーは2日の夕方の飛行機で東京に帰ってしまったが、私たちは博多で1泊した上で、3日朝からレンタカーを借りて、宗像大社にお参りに行った。
 
広い駐車場に車を停め拝殿の方へ進んでいったが、ピリリとした空気を感じた。緊張する。拝殿で二拝二拍手一拝する。またお揃いのブレスが共鳴する。心地良い。
 
その後、青葉から「絶対行ってみて」と言われていた奥の宮の方へ行く。
 
「うそ・・・・」と政子が声を上げた。
 
「ここ、お伊勢さんを切り出してきたみたいな場所だね」
「うんうん。凄くきれい!」
 
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伊勢の神宮で見るような古風なお社が立っていて、またここの空気が素晴らしくきれい。私たちはそこでしばらく見とれていたが、心が本当に洗われていくような気分だった。ここに来て良かった、と本当に思った。
 
ここで少しゆっくり過ごした後、私たちは車で神湊まで行った。フェリーに車ごと乗船して筑紫大島に渡る。まずは港の近くの宗像大社中津宮にお参りした。
 
「ちょっと黄金山神社と空気が似てない?」
「あ、それは人が少ないからかも」
「なるほど」
 
参拝しているのは私たちだけである。ここまでお参りにくる人は滅多にいないのだろう。そこでお参りした後、島の反対側にある沖津宮の遙拝所まで行った。
 
中津宮にだけお参りするなら車と一緒に渡る必要は無かったのだが、徒歩でここまで来るのは辛そうだったので、お金は掛かるが車と一緒に渡ってきたのであった。
 
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ここは巨大な扉が置かれていた。この扉の向こうに女人禁制の地・沖ノ島がある。遙か海の向こうの島に思いを寄せながら、私たちはお参りをした。
 

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■夏の日の想い出・第三章(14)

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