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■夏の日の想い出・第三章(6)

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「ファンはローズ+リリーの本格的な活動再開を心待ちにしているんだよ。いや僕もね、巷で《隠れたミリオンセラー》と言われているローズ+リリーの『神様お願い』を何でシングルカットして一般発売しないんだ?って、こないだも社長直々に言われて、答えに窮したよ」
 
「あれ、youtubeに上げたPVの参照回数も凄まじいですね」
「公開しない契約になっているので表には出してないけど、あの曲の有償ダウンロード数は200万件を越えている」
「えー!?」
 
「カラオケ、有線放送、放送局関係での印税も凄まじいことになってるよ。JASRACも、この曲と去年の『恋座流星群』の印税は特別に他のとは違う方法で計算してくれている。ふつうの計算方法ではかなり少なくなっちゃうんだよね」
「単独CDとしては出してませんからね」
 
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ただこの「神様お願い」は収益の全てを東日本大震災の被災地に寄付することになっている。いくらダウンロードされても、私たちの収入にはならない。しかし200万件ダウンロードされたら、2億円以上の寄付になっているはずである。
 
「収益を全額寄付することにしたこと、後悔したくならない?」と町添さん。「正直、今一瞬思いました」と私。
 
「でも、この曲でローズ+リリーのファンはかなり増えたね。2億円、3億円くらい寄付しても、宣伝費と考えると安いものかも知れないよ。『夏の日の想い出』がミリオン行った背景のひとつは『神様お願い』のダブルミリオンでファン層が拡大したことがあると思う」
 
「ただマリちゃんが、なかなかやる気を出してくれなくて。無理強いするとよけい悪いようですし」と美智子。
 
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「一緒に暮らしてるケイちゃんとしては、そのあたりどうなの?」
「マリはけっこうやる気出す時もあるんですけどね。まだ基本的にはあまり人前であれこれやりたくないみたいで。でも、昨年の春には実は1度、ライブハウスで歌ったことあるんですよね。ハプニング的なものでしたけど」
 
「ほほぉ」
「演奏していたバンドのボーカルの人が店内を走り回って、マリの手をつかんで、君たち可愛いね、ちょっとステージに来ない?なんて言われて連れて行かれて、ノリでそのまま、そのバンドの人たちと一緒に10曲ほど歌ったんですよね」
「10曲も!コンサート1回分じゃん。それは見たかったなあ」
 
「去年の5月、今年の5月には鍋島先生の追悼番組で生で歌ってますしね」
「うんうん。歌唱力はどんどん上がってるじゃんと僕は思った」
「毎日自宅のカラオケで最低20曲は歌ってるみたいですから。歌のレッスンにもここ1年ほど、ずっと通ってますし」
「偉いね」
「たぶん、何かきっかけがあったら、歌ってみようかなと言い出す気はします」
 
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「じゃ、そのあたりの煽動はケイちゃんに任せることにしよう。今度のローズクォーツの新曲キャンペーンだけど、あれケイちゃんひとりで全国回ることにしてたね?」
 
「はい」
「マリちゃんを連れて行きなよ。旅先のホテルは全部ダブルにするから」
「分かりました。代理マネージャーということにして連れて行きます」
 

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「だけどケイちゃんが入ってきた時、本気で誰だ?と一瞬思ったね」
 
「でも、何か背広に物凄い違和感がありましたね」
「うん。男物の背広を着ている女の子、にしか見えなかった」
「ケイに男装させるのは無理っぽいですね」
 
私は室内でふつうの服装に着替えさせてもらっている。
 
「帰りはもう深夜になるから大丈夫だろうし、その格好で帰っていいよ。今、加藤君(町添部長の部下で課長)を呼んでるから、彼に各々の自宅まで送らせるから」
「ありがとうございます」
 
「ケイちゃん、性転換手術の跡は痛まないの?」
「最初の3ヶ月くらいまではけっこう痛かったんです。でも6月に偶然知りあった凄腕のヒーラーさんにヒーリングしてもらったら痛みが取れてしまいました。その人のお勧めで、胸の豊胸バッグも抜いちゃったんですよね。実は下の方より胸の方がもっと痛かったのですが、ヒーリングのおかげでどちらも痛みがなくなってしまいました。みんなに夏頃から調子上がったねと言われたのですが、それもひとつはヒーリングのお陰だと私は思っています」
 
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「私も胸のバッグを抜くって聞いた時はびっくりしたんですけどね」と美智子。
「8月頭の時点でEカップだったんですけど、シリコン抜いてCカップになって。でも10月頃にはEカップに戻っちゃいました」
「それもヒーリングなの?」
 
「ええ、そうです。結局、ヒーリングするのに、シリコンが入っていると異物だから、その部分にきちんと『気』が通らないということで。抜いてヒーリングしてもらって、凄く楽になりました」
 
「ケイは実は今生理もあるんですよ」と美智子。
「へ!?」
 
「そのヒーラーさんに体内の波動を女性型に変えてもらったので、体内で勝手に女性ホルモンが生産されるようになっちゃって。だから私、もう女性ホルモンの製剤は飲んでいません。そしてバストが発達した上に生理まで始まっちゃったんです。お医者さんに見てもらったら、人工的に作ったヴァギナの奥の方が子宮の代理をしているようだと言ってました」と私は説明した。
 
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「何か凄いね。世の中には凄いヒーラーがいるもんだね」
「まだ中学生なんですけどね。多分日本で五指に入る実力者だと思います」
「それは凄い。将来が楽しみだね」
「彼女もMTFなんですけどね」
「へー」
「アナウンサー志望だそうですよ」
「ほほお」
 

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12月10日。マキが結婚式を挙げた。私は正望と一緒に出席したのだが「婚約はしてないから」などと言って、席は離れた場所にしてもらった。しかしロビーに出ると、こっそり手をつないだりしていた。
 
この結婚式の披露宴で、私と政子は一緒に『ふたりの愛ランド』を歌った。
 
その日の朝、私は朝からステーキを焼いて朝食にした。
「わあ、今日の朝御飯は豪華だね」と政子が言う。
「今日は忙しいからスタミナ付けておかなくちゃと思ってね。朝からステーキは入らない?」と私。
「ううん。お肉大好き」と言って、政子はニコニコ顔で食べている。
結構食べたかなと思った所で、私はふと思いついたかのように政子に言ってみた。
 
「ねぇ、マキの結婚式だからさ。私たちふたりで何か歌ってお祝いしてあげない?」
すると政子は
「そうだね。『ふたりの愛ランド』とか歌わない?」
と本人から言い出したのであった。
 
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ローズ+リリーが、100人近い人数の前で歌うのは3年ぶりのことで、たくさん写真を撮られた。マスコミ関係者も多数来ていたので、あちこちの放送局のブログなどにも写真が貼られたし、翌日のスポーツ新聞にも1面で報道されていた。新聞によってはマキの写真より大きく載っていて、ちょっと申し訳ない感じであった。
 
披露宴が終わり、花嫁さんが会場を出て行く時にブーケを投げたら私の方に飛んできて、つい私が受け止めてしまった。
 
「きゃー、私なんかが受け止めてよかったのかしら?」と焦っていると、みんなから「次の花嫁さん、頑張ってね」などと言われる。私はすぐにいつものノリになり、ブーケを右手で高く掲げると「ありがとう」と笑顔で応えた。
 
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披露宴が終わったあと、みんなは二次会の方に流れて行った。私も正望と一緒にそちらに行きたかったのだが、仕事が待っていた。
 
物陰で正望にキスして別れた後、私と政子とサトの3人で会場を抜け出し、タクシーで都内の別のホテルに向かった。そこで、YS大賞の授賞式が行われるのであった。ローズクォーツの『夏の日の想い出』とローズ+リリーの『Spell on You』
がいづれも優秀賞を受賞していた。
 
私たちは結婚式に参列するのにイブニングドレスや礼服を着ていたのだが、授賞式用にサトは普通のスーツに着替え、私と政子はお揃いのミニスカの衣装に着替えた。★★レコードの南さんには、もっと大人っぽい衣装を頼んでいたのだが、町添さんが「君たち用にミニスカの衣装用意させたから」などと電話してきて、こういう衣装を着る羽目になった。
 
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「でも、こういう衣装を着るのも悪くないよね」などと授賞式会場の控え室で政子は楽しそうにしている。
 
「ついでにステージで歌う?」
「パス」
「ふふふ」
「あれ? ブーケそのまま持って来ちゃったの?」
「うん。綺麗だからこのまま自宅まで持ち帰ろうかと思って」
 
「次の花嫁さん、なんて言われてたけど、正望君と結婚するの、7年後なんでしょ?」
「うーん。婚約するのが7年後だから結婚するのはもう少し先」
「なんでー? 7年も待たせたらそのまま結婚すればいいのに」
「婚約してから結婚まで7年かかったりしてね」
 
そこに同じ控え室を使っているXANFUSのふたりが近づいてきた。
「こんにちは〜」
「こんにちは〜」
と言って、私たちはお互いにハグする。XANFUSとは昔から会う度にこれをやっている。
 
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「あれ? きれいなブーケ!」
「うん。結婚式からここに来たから」
「え? ケイちゃんとマリちゃん、とうとう結婚したの?」
「違う違う。うちのバンドのリーダーのマキが結婚して、私たちその結婚式に出席してたのよ。花嫁さんが投げたブーケを私が受け取っちゃって」
 
「あ、じゃ次にマリちゃんとケイちゃんが結婚するのね」
「えっと・・・」
「ケイちゃんがブーケを受け取ったのなら、ケイちゃんが花嫁さんでマリちゃんが花婿さんかな?」
「あ、それでもいいよ」などとマリは言っている。
 
そういう冗談はさておいて、私たちは音楽界の噂などで、しばし盛り上がった。
 

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ほどなく受賞式が始まる。式では、私とサトで『夏の日の想い出』の賞状と記念品を受け取り、続けて私と政子で『Spell on You』の賞状と記念品を受け取った。
 
政子は高校時代に『甘い蜜/涙の影』でBH音楽賞を受賞した時、私と一緒に授賞式に出席したことがある。授賞式なるものに出席するのは2年ぶりであった。
 
賞状をもらった後、マイクを向けられる。私が『夏の日の想い出』の方のコメントを言ったので司会者さんは『Spell on You』の方でのコメントを求めて、政子にマイクを向けた。
 
「大変名誉ある賞を頂きありがとうございます。ひとえにファンのみなさんのお陰です。また素敵な音楽を作って、みなさんのもとにお届けしたいです」
と政子は笑顔で言った。
 
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テンプレートみたいな発言だが、マイクを突然向けられてもこの程度のことは言えるようになったんだなと、私は正直驚いた。
 
そこでその日自宅に戻ってから、ブーケのお花を花瓶に活けながら私は政子に言ってみた。
 
「明日から私全国キャンペーンで飛び回るけど、ここのところ忙しかったから冷凍の御飯ストックが無いんだよね。マーサ、ひとりで御飯作って食べられる?」
「いつまでだっけ?」
 
「18日まで」
「えー? 一週間も冬がいなくて、御飯のストックも無しで、私餓死しちゃうよ」
「じゃ、いっそのこと、私と一緒にキャンペーンで全国回る?」
「行く!」
 
「じゃ、いつものように臨時マネージャーということで」
「了解」
「何ならライブで私と一緒に歌ってもいいけど」
「パス」
 
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私は微笑んだ。まだ無理しなくてもいい。しかし私は政子が私と一緒に全国を回ってくれることになったことを、美智子と町添さんに連絡した。
 
なおブーケのお花は私たちが不在だとお世話できないので、ここの鍵を持っている友人の礼美に連絡して明日引き取りにきてもらうことにした。礼美は「じゃ、私が次の花嫁さんになっちゃうよ」などと言っていた。
 

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この全国キャンペーンの旅は九州から北海道まで駆け抜けたが、大分と京都で、地元のプロモーターの社長さんと『偶然』遭遇して食事を一緒にした。ふたりとも、元々マリの熱烈なファンで、話しているとマリもかなり気分が良くなっていたようであった。
 
「ローズ+リリーが復活したらぜひ大分でライブしてくださいよ」
と大分の社長さん。
「はい。今日食べた関鯖が美味しかったから、また来たいです」
「関鯖なら秋の終わりから冬がシーズンですよ」
「じゃ、来年も今くらいに来ようかな・・・・」
 
私と社長は顔を見合わせた。今ここで「じゃ来年の冬に大分でライブやる?」と訊きたいところだけど、敢えて訊かずに余韻を残しておいた方が良さそうだと私は思った。社長さんも同じように思った感じであった。
 
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京都で会った社長さんはダイレクトに
「マリさん、そろそろステージに復活しないんですか?」と訊いた。
「そうですね。5年後くらいなら、またやってもいいかな」とマリは答える。
「5年って長いですね・・・」
 
「マリが言う時間がだんだん短くなってきているんですよ。最初の頃は50年後とか言っていたのが30年後20年後10年後となってきて、この秋くらいからは5年後って言ってるので、たぶん実際には1〜2年後にはローズ+リリーの復活はあるかな、と思い始めているところなんですけどね」と私。
 
「ふふ」と政子はコメントせずに笑っていた。
 
政子は社長さんに、やはり今年発売したアルバムが物凄く売れて、たくさんのファンレターを頂いたので、かなり自分もやる気になってきているということを言っていた。
 
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新潟では本当に偶然に、解散した人気バンド、クリッパーズのnakaに遭遇した。今は充電中だというnakaに政子は「寂しくないですか?音楽しないでいるの」
などと訊いた。
 
それに対して naka は「マリちゃんこそ、3年も休養したら、そろそろ活動再開していいんじゃない?」と言った。
 
すると政子は「そうだなあ」と言って、遠くを見つめるような目をした。
 

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■夏の日の想い出・第三章(6)

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