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■夏の日の想い出・第三章(10)

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「しかし、ミリオンが4連発来ていたら、次は絶対ミリオン行かないものを」
と言って、私は私は新しい音源『祝愛宴』を町添さんに聴かせた。
 
「これは・・・・こんなもの聴いたことない!」
 
「音楽大学に通っている友人を通じて、そこの大学の雅楽部の人たちにお願いして演奏してもらって、それにあわせて歌いました。私が最初MIDIで作った音源を持って行ったら、これどうやって作ったの?と逆に向こうから聞かれましたよ。向こうでも雅楽のMIDI化、いろいろ試しているそうですけど、苦労しているみたいで」
「音程が難しいの?」
「確かに音程は難しいです。各楽器がそれぞれ独自の音程で演奏していますから。でも音程だけではなく、他にもあれこれと。私はこれまるでプログラムみたいな記述で書いてるんですよね。このMIDI」
と言って、私はMIDIの記述を見せた。
 
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「ほんとにプログラムだね。これ」
「雅楽部の人たちにも参考資料として渡してきました」
「これをタイトル曲で出すの?」
「まさか。さすがにタイトル曲にはできません」
と言って、私はタイトル曲にする予定の『風龍祭』を聴かせた。
 
「安心した!」と町添さん。
「ふつうに格好良い曲ですよね」
「うんうん。『Spell on You』とか『影たちの夜』とかの流れに近い曲だよね」
「はい。最初作ったメロディーから、ある程度《受け》を考えて調整しています。もうひとつの曲はこれです」
と言って、私は『恋降里』を聴かせる。
 
「この3つの曲は先日九州に行った時に作った曲なんですよ」
「向こうでマリちゃん、歌ったんだってね」
「ええ。町添部長の作戦が当たりました。阿蘇で歌いましたし、それから戻って来てから鬼怒川温泉のイベントでも歌いました」
「かなり、やる気になってきているね」
 
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「ええ。たぶん、ファンからワーっと騒がれる状況でない所でなら歌えるんじゃないかという気がします」
「そしたら、そういう状況をいろいろ作ってあげるよ」
「ありがとうございます。あと御飯もあるかな。阿蘇で歌った時は牛串をもらって、それで上機嫌になりましたから」
「ほほお。マリちゃんに歌わせたければ食べさせるんだな」
「効果あると思います」
 
「それで、この3曲を聴いてもらって上島先生に書いて頂いた曲がこれです」
といって『夢舞空』を聴かせる。
 
「さすが上島君だ」と部長。
「凄いですよね。一晩でこれ書けるんだから。今回は私もちょっと自信があったんですけどね。それを打ち砕かれました。やはり上島先生は私が永遠に追い越せない存在です」
「そうかな。僕には上島君が凄い曲見せられて、負けてられないと思って必死でピアノに向かった姿が目に浮かぶようだが」などと部長は笑いながら言っていた。
 
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年度が変わり4月4日。ローズクォーツの7枚目のシングル『艶やかに光って/闇の女王』
が発売された。私たちは政子と太田さんまで加えた6人で4日から16日まで全国を駆け巡って新曲キャンペーンをした。政子がマネージャー代わりなので美智子は来ていないが、★★レコードの氷川さんが帯同してくれて、4月1日に正式入社になった氷川さんにとっても最初の本格的な仕事になった。
 
このキャンペーンの中で私たちは13日に熊本・鹿児島に行き、14日那覇、15日横浜・埼玉、というスケジュールになっていたのだが、行程では13日の鹿児島が終わった後そのまま沖縄に移動して泊まり、沖縄に2泊して15日朝の東京行きの飛行機で戻り横浜のキャンペーンに行くようになっていた。
 
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14日土曜日の沖縄でのキャンペーンは午前中で終了。
 
そしてその日の午後、実はローズ+リリーのシークレット・ライブを行ったのであった。
 
このライブは出演アーティストが誰かというのを伏せたまま全国のFM局で参加者を女性限定(中学生以上)・2人単位の応募で募集した。当選者の最寄り空港から那覇空港までの往復航空券と那覇での1拍(後泊)が主催者側の負担で、最寄り空港までの交通費と食費は本人負担という条件であった。
 
ネットでは、実際の出演者は誰だろうか?というので、その日スケジュールの空いているアーティストで、FMを聴いているような世代に人気の人、という線で予想する人たちがいた。4月14日のスケジュールが空いていて、比較的大物のアーティストとして5組ほどの名前が挙がっていたが、その中にローズ+リリーの名前は入っていなかった。それはそうである。ローズ+リリーはライブ活動を休止中のはずなのだから!
 
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このライブに政子を出すため、町添さん・私・美智子の3人で話し合い、作戦を立てた。『天使に逢えたら』が凄まじく売れているので、そのお祝いと称して私と氷川さんと政子の3人で、特選黒毛和牛・しゃぶしゃぶの食べ放題に行った。お金は氷川さん持ちである。目立たないように遅い時間に行ったこともあり、お店ではまさか女3人でそんなに食べるとは思ってもいなかったようで、途中でお肉が足りなくなり、慌てて冷凍ストックのお肉を解凍したり近隣の支店からも食材を転送したりして対応したようであった。
 
たらふく食べてさすがの政子も「おなかいっぱい」と言ったところで、氷川さんが
 
「そうそう。今度★★レコード創立20周年で1年間に7回全国でシークレット・ライブをやるんだけどね。沖縄でやるシークレット・ライブで、マリちゃんとケイちゃん、歌ってくれないかなあ」と打診すると
 
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「へー、沖縄か」などと言っている。かなり上機嫌だ。普段なら「パス」とか「歌わないよお」とか即答するところである。
 
氷川さんが「宿泊はラグナガーデン全日空ホテル。外の景色が見えるシャワールーム付きのスイートルーム。ホテルにはプールやフィットネスもあるよ。たぶん御飯も美味しいよ」と言うと
「あ、そこって以前泊まった所だっけ?」と私に尋ねる。
 
「うんうん。1年半前に麻美さんのお見舞に行った時に泊まった所だね」と私もまるで今聞いたかのように言う。
「でも沖縄なら、今回、麻美さんを招待してライブを見せられるといいね。氷川さん、そういうのいいですよね? 私たちのファンで難病と闘っている子なんですけど」と私。
 
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「ああ、いいですよ。そのくらいの席の都合は付けます」
と氷川さんも、そういう話を今聞いたみたいに言う。
 
すると政子は頷くようにして
「そうか。麻美さん少し元気になってるって言ってたね。いいよ。歌うよ」
と政子は言った。
 
しかし政子を説得するには食べさせることが一番なんだ、というのを私も改めて認識したが、政子は「じゃ、歌うから、この後、今度は焼肉に行きましょう」
と言って、氷川さんを絶句させたのであった。
 

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シークレット・ライブの伴奏は、ローズクォーツとスターキッズの合体ユニットで行われた。B.マキ G1.タカ G2.近藤 Dr.サト KB1.太田 KB2.月丘 Sax/Fl.宝珠 Vn.鷹野 Tp/Perc.酒向 という豪華ラインナップで、これだけの大規模ユニットでの伴奏というのは、めったにないことであった。更にスリファーズがバック・コーラスで入ってくれた。
 
ライブは幕を下ろしたまま、いきなり『キュピパラ・ペポリカ』の前奏から始まり、その前奏で初めて出演するアーティストが分かった観衆から大きなどよめきが聞かれた。その会場にいた人がみな、予想していなかったアーティストであった。ただ4人を除いては。
 
会場の右端ドアのそばに車椅子に乗った麻美さんがいた。付き添いの看護婦さん、そしてお母さんと親友の陽奈さんも含めて、このシークレット・ライブに特別招待されて来ていた。右側ドアのそばに陣取っているのは、万一容態が悪化した場合に、すぐ出られるようにである。念のため救急車も1台、待機させてあった。
 
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『キュピパラ・ペポリカ』は本来ローズクォーツのヒット曲である。そこで前奏を聴いて、出演するのはローズクォーツと思った人が多かったようだが、幕が開いてみると、マリとケイが並んでいて、前奏に引き続きふたりで歌い出したので、どよめきはすぐに黄色い歓声に変わった。
(『キュピパラ・ペポリカ』・『夏の日の想い出』はツインボーカルの曲で、元々マリとケイがふたりで歌って成立する曲である)
 
歌い終わったところで、私たちは挨拶をする。
 
「みなさん、こんにちは。ローズ+リリーのケイです」
「御無沙汰しておりました。ローズ+リリーのマリです」
 
「今日のシークレット・ライブは、私ケイとマリのユニット、ローズ+リリーでやらせて頂きます。ネット見てたらXANFUSを予想していた人も結構いたようだったけど、XANFUSファンの方、御免ね−。できるだけみんなが知っているような曲を歌って、誰にでも楽しんでもらえるライブにしたいと思います。伴奏をしてくれるのは、ローズクォーツとスターキッズの特別合体バンドです」
 
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私たちはアニメでおなじみの『影たちの夜』、CMで比較的知られている『花模様』、私たちの休養期間の最大ヒット曲である『恋座流星群』、また同じく休養期間中の曲で当時の女子中高生の間で評価の高かった『涙の影』、ワールドヒットのカバーである『長い道』、震災絡みで「隠れたミリオンヒット」となった『神様お願い』と歌っていった。『神様お願い』を歌った時、客席の麻美さんが涙ぐんでいた。
 
ここでバンドのメンバー、そしてコーラスをしてくれているスリファーズの面々をひとりずつ紹介し、私たちふたりはいったん下がる。バンドメンバーも下がって、マイナスワン音源でスリファーズがヒット曲『メルリビオン』と『アラベスク』を歌った。スリファーズがそれを歌ってから、いったん下がったのと入れ替わりに、お色直しした私と政子が再登場。
 
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スターキッズのメンバーと太田さんだけが入ってアコスティックな伴奏で『天使に逢えたら』を歌う。私の高音の最高域付近を使っているので、そのハイトーンが会場に響き、みんな静かに聴くムードで手拍子も停止していた。
 
その後ローズクォーツとスリファーズのメンバーも戻って一転してダンスナンバー『Spell on You』を歌うと、リズムを取る手拍子が復活。会場は一気に熱を帯びる。続けて多くの10代女性を泣かせてしまった『A Young Maiden』を歌うと、リズムを打つ人もあるが、動作を停めてしんみりとした表情で聴いている人たちもいる。
 
次に t.A.T.u. のヒット曲『All the things she said』を英語で歌うが、お約束で歌の途中で私とマリがキスをすると、会場は「キャー」という声で満ちた。
 
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続いてスイートヴァニラズから提供された『ペチカ』、スカイヤーズから提供された『略奪宣言』、そしてこれも震災絡みでよく巷で流れた『帰郷』と歌い、最後は『夏の日の想い出』で締める。
 
ここで観客がアンコールを求めたので、私たちは(お色直しせずに)再登場してアンコール用としてはおなじみになった『ふたりの愛ランド』を歌うと、会場は熱狂の渦となった。
 
そしてセカンドアンコールは、バンドメンバーとスリファーズが退場し、私がピアノを弾きながら『Sweet Memories』をふたりだけで静かに歌い幕が降りた。拍手が10分くらい鳴り止まなかった。
 
こうして2008年12月13日のロシアフェアのステージ以来、1218日間にわたり(ハプニング的、または気まぐれでの歌唱を除き)観客を前にした演奏から遠ざかっていた政子は、とうとうライブ会場のステージに戻ってきたのである。
 
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私と政子はステージが終わると、真っ先に麻美さんたちが戻ったはずの病院に行った。
 
麻美さんはとても元気だった。ステージをアンコールまで全部見てから病院に戻ったし、付き添ってくれた看護婦さんも血圧や脈拍をずっとチェックしているほかは特にすることは無かったようで、容態は安定していたということだった。
 
「私もう感激でした。このまま死んでもいいと思った」と麻美さん。
「だめだよ、死んでは。またそのうち沖縄にライブで来るからね。その時も来てよね」
と政子は言った。自分でまたライブすると明言している!
 
「はい。頑張ります」と麻美さんも言っている。
 
私たちは病室の外で陽奈さんや麻美さんのお母さんに話を聞き、麻美さんの状態が次第に良い方向に向かいつつあり、先月から薬をワンランク軽いものに変えたという話も聞き、お母さんにお母さん自身が無理しないように言った。
 
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マリがステージに立ったというのはライブ直後、多くの観客によりネットに書き込まれ、大きな騒ぎとなった。報道各社から「マリはライブ活動に復帰するのか?」という問い合わせが殺到したので、私と美智子のふたりで現地のテレビ局に行って記者会見を開き、見解を述べるとともに質問に答えた。
 
「基本的にはマリはまだライブ活動を休養中です。但し、いつかはステージに戻ってくると本人も言っています。今回は★★レコードさんの設立20周年企画ということで、特別にライブステージに立ちましたが、当面ローズ+リリーのライブツアーなどをやる予定はありませんし、テレビなどへの出演も予定は入っていません。ただ、ラジオ番組ではこれまでと同様、外から見えないスタジオで生演奏をすることはありますし、今回と同様の突発的なライブに稀にマリが出演する可能性はあります」
 
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と私が用意していた原稿を読み上げ、そのあと記者さんたちの質問に答えた。
 
今回はあくまで特別なもの、という話で一応ファンたちも納得はしたようであったが、ぜひ何かの機会にライブを、という要望が、★★レコード、△△社、○○プロ、UTPにかなり寄せられ、私が使っている twitter のアカウント宛てにも大量に「マリちゃんとケイちゃんのふたりのステージ見たいです」というツイートが投稿された。
 
「でも、ファンが大量に集まっている所ではまだ歌えないんだよね〜、政子は」
「そこが難しい所だよね」
と私と美智子は事務所に戻ってから、ため息を付きながら語り合った。
 
「でも今回のライブの成功に味を占めて、町添さんは似たような企画をどんどん持ってくるだろうね」
「でも、出演に同意させるために使う食費が凄まじくなる気がする」
 
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なお、このシークレットライブの様子はJFNを通じて翌月ほぼノーカットで(スリファーズが歌った2曲も込みで)放送されたが聴取率が凄まじかったようであった。
 

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■夏の日の想い出・第三章(10)

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