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■夏の日の想い出・第三章(3)

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夕方、麻美さんは意識を回復したが、まだまだICUから出られる状態ではなかったので、控えめなお見舞をしたが、私たちの顔を見て、涙を流して喜んでいた。『神様お願い』のことを話すと聴きたいというので、今朝ICレコーダに録音したものを聞かせる。麻美さんは嬉しそうにしていた。
 
私たちはその日は宜野湾市の全日空ホテルに泊まった。ゆったりとした部屋を確保できたので政子も満足そうであった。私たちはホテルの部屋であらためてMIDI演奏にあわせて『神様お願い』を歌ってICレコーダに録音。データをお魚のUSBメモリにコピーした。
 
「これ、明日渡してあげよう」と私。
「でも何とか持ちこたえられて良かったね」と政子。
「やはり若いから体力あるからかもね」
「私、若いけど、あまり体力無いかも」
「疲れたら休んでいいんだよ」
「うん」
私たちはその夜、麻美さんが助かった嬉しさも手伝って、かなり深く愛し合った。
 
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当時私たちは愛し合う時に枕元に「御守り」の避妊具を置いておき、一線を越える場合は開封するルールだったが、私が途中で何度か「開封する?」と政子に聞いたほど、その日は激しかった。しかし政子は「まだギリギリ越えてない」と言って開封しなかった。
(この「避妊具の御守り」は高校2年の秋に始めて大学2年の秋まで3年間私たちのルールにしていた。その3年間で御守りを開封したのは4回だけである)
 
「だけど陽奈さんが面白いこと言ってたね」
と一息ついたところで政子が言い出した。
 
「うん?」
「私と冬って、それぞれ凄い力を持っているけど、ひとつひとつの力が片方だけにあるって」
「ああ」
「もしかしたら、物凄い天才が出来てしまうところを、このままでは凄すぎると思って、神様がふたつに分割して、私と冬が生まれたんだったりしてって」
 
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「面白い見解だね。だったら、こうやって私たちが愛し合って一心同体になると、超天才が復活するのかもね」
「仮面ライダーWみたい」と政子は面白そうに言う。
 
「きっとね。それだから赤ちゃん産む能力も私だけにあるんだよ。冬が赤ちゃん産めなくても私が産めるから、私が産む子供は冬の子供でもあるの」
「うん。そう思わせてもらおうかな。この後、性転換手術して女の身体を獲得したとしても妊娠出産だけは叶わないから」
 
「それと、私たちの作る曲も私たちの子供みたいなものだけどね」と政子が言う。
 
「確かに私たちって、愛し合った後、いい曲が書けてるよね?」と私も言う。「ああ、それは時々思う」と政子。
 
「じゃ、今たくさん愛し合ったから、良い曲が書けたりして」
「よし」
 
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と言うと、政子は部屋の引き出しからホテルのレターペーパーを取り出し、そこに愛用のボールペンで、詩を書き始めた。私はコーヒーを入れながら、その作業を見守った。
 
10分ほどで書き上げ『夜間飛行』というタイトルを書いて、こちらに渡した。私はそれを見ながら五線紙に音符を書き入れて行く。
 
「私見慣れてるから、何も感じないけど、たぶんこんなに高速に音符を書いていけるのって、きっと凄い能力だよね」
「政子が詩を書くスピードも凄いと思うよ。それに政子って、ほとんど書き直しをしないよね」
「自分のイメージの源泉をダイレクトに書き出していく感じだから、修正するってのは、あり得ない。冬だって、曲自体の修正はほとんどしないでしょ。アレンジはたくさんいじるけど」
「うん。最初に頭の中に浮かんだメロディーが最高のメロディー」
 
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「モーツァルト型だよね。ベートーヴェンの楽譜ってたくさん修正の跡があるけど、モーツァルトの楽譜ってそういうのが全然無いっていうし」
「ああ、モーツァルトには親近感を感じるよ」
 
この日書いた曲『夜間飛行』は、かなり出来が良かったので、アルバムなどに入れたり、他のアーティストに提供したりせず、ローズ+リリーのシングルとして発売できる機会を待ったので、結局リリースしたのは2年後になった。
 

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年が明けて2011年の1月、FM局からまたローズ+リリーの特集をしたいのだけど、新しい音源などはないかという打診をされた。
 
そこで私たちは音源制作は完了しているもののまだ発売していないアルバム『after 2 years』の音源の一部を放送局に提供するとともに、『神様お願い』
『イチャイチャしたいの』『帰郷』という3曲を新たに吹き込んだ。
 
『神様お願い』は沖縄で難病と闘病中のファン、麻美さんを応援するのに作った曲である。早めに音源製作したかったので使うことにした。
 
『帰郷』は2010年10月に石巻で作った曲である。ローズクォーツの「どさ回りライブ」で石巻に行っていた時、政子が陣中見舞いに来たので、夜、私と政子のふたりで地元のスナックに行き、少しくつろいでいた。その時、隣に座っていた女性が、東京にずっと行ってて10年ぶりにこちらに戻って来たと言っていて、私たちは何となく彼女と会話していたのだが、その時、突然できてしまったのが『帰郷』であった。(この女性はこの後の震災では実家が全壊したものの本人は無事だった)。
 
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その『帰郷』のアレンジを自宅マンションでしていた時、政子が例によって私にあれこれイタズラを仕掛けてきた。政子は私が作業中や電話中によくこういうことをする。「もうやめてよね」などと言ったら、突然やめるので、どうしたのかと思ったら「紙ちょうだい」と言う。
 
「ティッシュペーパー?」
「違う違う。書く紙よ」
「あ、ごめん」
と言って、そばにあったレターセットを渡した。前日姉がマンションにやってきて「押し入れから出て来たからあげる」と言って置いていったベティちゃんのレターセットである。
 
「ベティちゃんってセクシーだな」と政子。
「うんうん。ませた感じだよね」
「思いついた詩にピッタリ」
と言って、政子は私のスカートの中で! 詩を書き上げた。更に私がその詩に曲を付ける間、政子はずっと私のあの付近にイタズラをしていた。そうやってできたのが『イチヤイチャしたいの』であるが、とても作曲経緯を人には言えない曲である。しかしこの曲は上島先生が「エロ可愛い曲だ」と絶賛していたので、今回の音源制作で採用することにした。
 
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録音は1月中旬にローズクォーツのメンバーに伴奏してもらって、私と政子の2人が歌い1日で3曲を収録した。放送は下旬であったが、私たちが提供した音源を掛けながら、スリーピーマイスの3人がナビゲートしてくれた。
 
スリーピーマイスは私たちがデビューしたすぐ後くらいにデビューした3人組のボーカル・ユニットだが、顔出しNGというポリシーを貫いている。そのスリーピーマイスにとって、映像の見えないラジオというのは絶好のメディアなので、彼女たちのラジオへの出演は多い。彼女たちは3人で漫才のようなノリで楽しく楽曲を紹介してくれて、番組への反響は良かった。
 
するとそれに刺激されて、カラオケ・有線放送などの各社や他のラジオ局からも音源を提供してもらえないかという打診が相次いだので、私たちは昨年似たような感じで限定リリースした『恋座流星群』と同様に、この3曲に加えて春くらいに発売予定(だったが震災で予定が吹き飛び結局7月に発売した)のアルバム『after 2 years』から、政子が中学生の時に書いた詩に曲を付けた『用具室の秘密』、スカイヤーズ伴奏でローズ+リリーが歌う『Spell on You』
を加えて5曲入りのシングルを2000枚限定でプレスし、放送局、有線放送、カラオケなどに頒布した。
 
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むろん沖縄の麻美さんにも1枚送った。
 

ところがそんなことをしていた直後に大震災が起きて、日本中であらゆるものがリセットされた感じであったが、その超自粛ムードで「ポポポポーン」以外の広告が無くなってしまったような時期に、『神様お願い』や『帰郷』が震災復興への祈り、また津波の被害や原発事故で故郷を追われた人たちが、いつかあそこに戻りたいという願いを込められているようだと言われ、かなりラジオ局や有線放送でオンエアされた。また震災と関係無く『Spell on You』は格好良い曲なのでカラオケで歌う人がかなり出た。
 
4月20日、★★レコードでは所属している12組のアーティストから1曲ずつ提供してもらった「震災救済アルバム」を1枚3000円(単独ダウンロード1曲300円)で緊急発売した。売上額の全額を被災地に寄付するという企画である。このアルバムにローズ+リリーの『神様お願い』が収録された。他にはAYAの『手をつなごう』、百瀬みゆきの『私のふるさと』なども収録されていた。
 
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ローズ+リリーは2009年1月発売の『甘い蜜』から2011年11月発売の『涙のピアス』
まで2年10ヶ月もの間、シングルを発売していなかったのだが、この曲はその時期に唯一単独購入が可能になった楽曲だった。
 
震災救済アルバム内の『神様お願い』の単独ダウンロード数は公表はされなかったものの実際には6月までに150万件あったことを私たちは町添さんから聞いた。100万を越えているのではというのは、ネット上の噂でもかなり流布していて「隠れたミリオンセラー」と呼ばれていた。
 

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大学2年の夏頃以降のことを書く前に、もうひとつ「ローズクォーツのリーダー」
問題のことを書いておこう。
 
5月下旬に○○プロで「被災地巡り」のツアーをして欲しいということを言われた時、私たちは電気事情の悪い避難所では、やはり電気を使わない楽器で演奏をしなければということで、どういう楽器を使うか、みんなで御飯を食べながら話し合っていた。その時、タカが「そのあたり、リーダーとしてはどう思う?」
と発言した。
 
みんながマキの方を見るが、マキは何も言わずに黙っている。たまりかねて美智子が「マキちゃん、どうよ?」と聞いたら
 
「あ、リーダーって俺?」などと言う。
「リーダーがマキじゃなかったら誰なのさ?」とサトが言うが、マキはおもむろにこんなことを言い出した。
 
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「いや、俺、クォーツのリーダーではあるけど、ローズクォーツのリーダーって決めてなかったんじゃないかという気がして」
「はあ?」
「何のこと?」
「だってローズクォーツは、クォーツとケイが合体したユニットだから。その時点でちゃんとリーダーを決めておくべきだったんだろうけど」とマキ。
 
「そんなの別にわざわざ決めなくても、マキがリーダーだと思ってたけど」と私。「同じく」とタカ。
「右に同じ」とサト。
 
「それで?最近少しいじけてたのは?」と美智子。
「ああ、こないだの音源制作で自作曲を出さなかったのはそのあたりか」とタカ。
 
「いや、実際問題として、ライブではだいたいサトの合図で演奏始めることが多いし、MCはケイがしてるし、レコーディングでもケイが全体のまとめをしてるし、ローズクォーツの会計はだいたいタカがしてくれているし、配信での個別ダウンロードでは、一番多いのが上島先生の作品、その次がケイの作品で、その次が民謡で、俺の作品って、あんまり個別ダウンロードされてないし、ラジオ局とかに出演した時はだいたいケイとサトでほとんどしゃべっているし・・・・」
 
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「ああ、ほんとにいじけてるな」とタカ。
「それぞれがみな得意なことしているだけだから気にすることないでしょ」と美智子。「ローズクォーツのポリシーはマキの考え方が基本になってるんじゃない?」と私。
「そうそう。でもそれをあまり口に出してしゃべってくれないから、ラジオとかでは、俺とケイでしゃべってる。もっとたくさんしゃべってもいいのに」とサト。
 
「んだ。まあ、俺もあまりしゃべらないけど。レコーディングでもマキがいつまでも悩んでるからケイが『じゃ、とりあえずこうしてみよう』と言って作業が進んでいく。マキの指示を待っていると完成に100年かかる。ライブで合図をサトが出すのも同様の理由だろ?」とタカ。
「会計もマキがやったらどんぶり勘定になっちゃうからタカがしてる」とサト。
 
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「じゃ、投票であらためてリーダーを決めない?」と私。
「ああ、それいいかもね」とタカ。
「じゃ、私が議長するね」と美智子。
 
「リーダーはタカだと思う人?」「0人」
「リーダーはサトだと思う人?」「0人」
「リーダーはケイだと思う人?」「1人」ここでマキが手を挙げた。
「リーダーはマキだと思う人?」「3人」私とタカとサトが手を挙げた。
 
「ということで、多数決でローズクォーツのリーダーはマキに決定」と美智子。私とサトとタカが拍手する。
 
「いいのかなあ・・・俺がリーダーで・・・」
「投票で決まったし、頑張ってよ」と美智子。
「うん。じゃ、少し頑張ってみる」
 
ということで「少し頑張ってみた」マキが、次に書いた曲『南十字星』は良い出来で、個別ダウンロードでも、同時に発表した曲がみな凄すぎたので順位としては4位であったが、それまでの作品のダウンロード数に比べると格段に多かったので、マキも少しだけ自信がついたようであった。そのあと結構レコーディングでも積極的に意見を出すようになった。
 
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それでもやはり人前でしゃべったり、交渉事などは不得手な様子で、対外折衝などは基本的には美智子か私が、細かい技術的な打ち合わせではタカが行くことが多かったし、ラジオ番組でのトークは相変わらずほとんど私とサトでしゃべっていた。
 

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■夏の日の想い出・第三章(3)

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