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■夏の日の想い出・第三章(8)

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2012年3月8日から13日に掛けて、私と政子は車を使って九州まで往復し、阿蘇と宮崎でイベントや音源制作に参加してきた。
 
例によって「マリちゃんを連れて行きなよ」と町添さんから言われたのであれこれやって誘うものの、ちょうどレコーディングが終わった所で疲れていたこともあり「私、寝てる」とか「カップ麺食べてる」などと言って、なかなかうんと言わなかったが「マーサが行かないならコトを誘ってみようかな」などと言ったら「そんなこと言ったら死刑」などと言って、やっと行く気になってくれた。
 
(政子は私が男の子と愛し合うのは全然気にならないが、女の子には嫉妬するらしい)
 
実際の用事であるが、阿蘇の方は『天使に逢えたら』の曲が、元々私たちが高校生の時の修学旅行で阿蘇を訪れた時に作ったものなので、そのことを言ったら阿蘇の観光協会からぜひ、こちらの観光PRに使わせてくれと言われ、その件での訪問であった。
 
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宮崎の方は前年秋にリリースした『花模様』が、たまたまそちらの酒造メーカーの製品と同じ名前であったため、CMに使わせてくれということで、私たちの声をそのCMに入れるのに、訪れたものであった。
 
実際問題として、どちらも私たちが行かなければならないような案件ではない。CMだって、私たちがしゃべる部分を録音して現地に送れば済むことだった。
 
しかし町添さんは「旅先」という環境で、政子のやる気を刺激したかったのである。その町添さんのもくろみは美事に成功した。
 
阿蘇ではイベントで私がひとりで(政子のパートは音源で流して)歌うつもりでいたのだが、政子は直前に牛串をおごってもらったので機嫌が良くなり、「私も歌おうかな」と言い出したので、ボーカルを完全に抜いた音源を流してふたりで歌った。
 
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東京で政子が歌ったら、翌日のスポーツ紙の一面にどーんと書かれること間違い無しであるが、田舎だし地元の町の広報誌の片隅に小さく写真が載る程度である。そもそも『歌手が人前で歌った』ことを誰も特別に思う訳がないのである!
 

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阿蘇から宮崎に移動する途中、私たちは霧島SAで車中泊をしたのだが、その夜、不思議な夢を見た。
 
私と政子が随分古風な衣装を身につけていた。私たちは神殿のような場所で並んで跪いた。そこに巫女さんのような人がやってきたが、顔を見たら親友の琴絵だ! 琴絵は白い土器(かわらけ)の杯を大中小3段に重ねて持っている。
 
琴絵は最初に小さな杯に白い古風な壺に入ったお酒を注いだ。政子がそれを手に取り、少し飲んで私に渡す。私はそれをまた少し飲んで政子に返す。それを政子が飲み干した。
 
次いで中サイズの杯にお酒を注ぐと、私に手渡したので、私が少し飲んで政子に渡し、政子が少し飲んで私に返し、残りを私が飲み干した。
 
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最後に琴絵は大きな杯にお酒の残りを全部注ぎ、政子に渡す。政子はそれをけっこう飲んでから私に渡し、私は残っているものの半分くらいまで飲んでから政子に返す。そして残りを政子が全部飲んだ。
 
その後、琴絵は鈴の付いた首飾りを、まず政子に、そして私に掛けてくれた。首飾りは大きなものが2つと小さなものが1つあった。私たちの後ろの方から小さな女の子が歩いて来て、私たちの間に入り、琴絵は最後にその子にも鈴の首飾りを掛けてくれた。
 

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私たちは目が覚めたが、目が覚めてから、私と政子のふたりが同じ夢を見ていたことを知った。不思議な夢だと思っていたら、その日宮崎で訪れた酒造メーカーで、お酒を試飲していたら、夢の中で飲んだのと同じお酒があった。
 
私たちが驚いていたら、社長さんが「気に入ったのでしたら差し上げましょう」
などといって、そのお酒を1箱(6本)くれた。
 
更にそこのメーカーの関連会社で酒器を作っている工房に行ったら、夢で見たのとそっくりの、土器の杯3枚セットがあった。これも私たちは頂いてしまった。
 
更には、九州から帰ってから鬼怒川温泉のイベントに行ったら、そこで遭遇した、前々から知っているリュークガールズのマネージャーさんから御守りの鈴を3つもらってしまった。
 
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そうして、夢の中に出て来た小道具が全部現実に揃ってしまったのであった。
 
この鬼怒川温泉でのイベントでも再び政子は歌った。
 
私たちの直前に歌ったリュークガールズが、とても良い雰囲気の歌唱をして会場の雰囲気もとても良くなっていた。するとそれを見て感動したかのように「私も出ていい?」などと言うので、ふたりで『影たちの夜』を歌った。政子は陶酔したような歌い方をし、私たちはステージ上でキスもした。
 
リュークガールスの朋香が「同い年とは思えない色気!」と驚いていた。
 
「影たちの夜」は2年前に鬼怒川温泉にふたりで泊まった時に書いた曲である。その夜、私たちは初めて「避妊具の御守り」を開封し、極めて濃厚に愛し合った。最高に熱い夜から生まれたのが、この熱い歌で、私たちは歌いながら2年前の夜のことを思い出していた。
 
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私たちが鬼怒川温泉から戻った翌3月18日の夕方。友人の琴絵と仁恵が私たちのマンションにやってきた。
 
「最近、マンションの方にいる確率が高いね」と琴絵。
「ここのところずっと仕事が続いてるのよね。するとこちらの方が放送局とかスタジオとかに出るのに便利だし」と私。
「帰るのにも便利だしね」と政子。「深夜に帰りたい時、私の家まで帰ると、タクシー代1万円以上かかるもん」
「やっぱり時間というものの無い仕事だよね」
「高校の時はなりゆきで仕事してたけど、今は自分たちで選んで仕事してるから」
 
「でもそれだけ活用してるなら、このマンション借りて良かったじゃん」と仁恵。
「ほんとほんと。借りた時は、こんな凄い家賃払っていけるのかって思ったし、最初の9ヶ月は貯金を取り崩して家賃払ってたからね」
「ここの家賃の9ヶ月分って計算すると気が遠くなるな」と琴絵。
 
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「あの年の年末頃に、ローズクォーツがボチボチ売れ始めて、一方でローズ+リリーの新曲のカラオケの分の印税が入り始めて、SPSやELFILIESも売れたので、ああ何とかなるかもと思ったけど、やはり、スリファーズがいきなりプラチナディスク達成したのが大きかった。春奈ちゃん様々だったよ。それでもJASRACからの支払いはCD分が3ヶ月遅れ、他は半年遅れだから、実際に印税で家賃を払えるようになったのは去年の4月頃からだったね」
 
「ここの家賃って冬ひとりで払ってるの?」
「ふたりで折半してる。その代わり、私の家の光熱費や固定資産税も冬と折半してる」と政子。
「車に関する費用もふたりで払ってるよ」
「食費も共同の財布から払ってるね」
 
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「そもそも、ふたりがバラバラにいることないよね?」
「うん。私がひとりでいるのは、冬が仕事で地方に行ってる時だけ」
「じゃ、ちゃんと同居してるのね」
「うん。ここにいるか、うちの家にいるかはその日次第だけどね」
「こちらが仕事場、向こうは休息の場って感じだよね」
「そうそう。冬がオフの日はけっこう向こうでのんびり過ごすもんね」
 
「ということで、結婚おめでとう」「おめでとう」と琴絵と仁恵。
「ありがとう」「ありがとう」と私と政子。
 
高千穂であの夢を見た翌朝、琴絵は「結婚おめでとう」というメールを私たちの携帯に送ってきた。
 
あの夜、私と政子も同じものを見ていたが、その夢の中で結婚式を司る巫女の役をしてくれていた琴絵もやはり同じ夢を見ていたのであった。
 
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「私たちが結婚しちゃってるということは、この4人だけの認識ということで」
「いつ結婚したの?」
「私たちの認識的には2年前の3月23日の晩。翌朝『影たちの夜』を書いた」
「おお、あと5日で結婚2周年か」
「でも結婚してるね、という意識を持ったのはあの夢を見た晩」
「たしかにふたりって大学に入った後、ほとんど同居状態だったよね」
 
「なんかさ、夢の中で私が巫女さんになって、ふたりの三三九度をしてあげたんだけど、物凄く現実感のある夢だったから、ふたりに『結婚おめでとう』ってメールしてみたら、両方から即『ありがとう』って返信あったから、本当に結婚したのか!って正直驚いた」
「私と冬とコトの3人が同じ夢を見たみたいね」
 
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「あの夢で見た冬と政子の衣装、ちょっと調べてみたんだけど、冬が着ていたのは、飛鳥時代くらいの女性の服、政子が着ていたのは同じくらいの時代の男性の服だったみたい」と琴絵。
「三三九度で私が先に飲んだからね。あ、私の方が男役なのかって思ったよ」
と政子も言う。
 
「つまり、政子が夫で、冬が奥さんってことか。でも、私だけその夢を見てないってのが悔しい」と仁恵。
 
「でもふたりって実は夫婦じゃないの?って最初に言ったのもコトだよね。あれたしか大学1年の6月くらいだったよ」と私。
「うん。あれは単にふたりをからかっただけだけどね」と琴絵。
「でもあの年の3月に結婚していたのなら、その時期は新婚ほやほやだった訳か」
と仁恵。
 
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「でも、ふたりとも彼氏との関係はどうするの?」
「それは私たちの関係とは別」
「つまりふたりとも重婚するつもり?」
「うん」と私と政子。
「こう開き直られてると文句言えないな」と琴絵。
 
「ということで取り敢えずケーキ」とふたりは荷物の中から大きなラウンドケーキを取り出す。
「わあ、凄い」
「その前に、あらためて私たちの前で三三九度しない?」
「えへへ。こないだから3回リアルでもやった」
と言って、私は三三九度の杯セット
と、酒造会社で頂いた日本酒「花霧」を
出してくる。
 
「あの夢を見た翌日、訪問したお酒屋さんで頂いたんだよね。夢の中で飲んだのと同じ味だったからびっくりした」
「三三九度の杯も夢で見たのとそっくりだったね」
「凄いね。ふたりとも実は霊能者だったりして」
「それはない。でも霊感は少しあるよね」
「うん。それはあるから詩や曲が書けるんだと思う」
 
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琴絵がお酒を注ぐ役をしてくれて、私たちはふたりの前で三三九度をした。そのあと、グラスを出して来て、そのお酒を私がふたりにも注いであげた。
「わあ、このお酒美味しいね」
「美味しいでしょ?どーんと一升瓶6本もらっちゃったから、1本あげるよ」
「おっ、もらって行こう」
「ついでにファンからの頂き物のウィスキーとかお菓子とかも少し持って行かない?」
「頂きます」
「仁恵のアパートに置いておけば、いいよね」と琴絵。
「うん。なんか、うちのアパートが寄り合い所になっちゃってるのよね。真菜香とか、勝手に入って寝てたりするし」
 
「鍵渡してるの?」
「ううん。渡してないけど、合い鍵の隠し場所を知ってる」
「ああ。ガスメーターの中とか?」
「そんな不用心なことはしないよ。郵便受けの天井にマグネットで貼り付け。でも郵便受けを開けるには回転式数字キーを開けないといけないから、その番号を知らないと取り出せない」
 
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「その数字を知ってるということか」
「私、回転式の鍵は数字知らなくても開けられるけど」と政子。
「うん。私も開けられるけど、ガスメーターの中よりはマシでしょ」
「まあ、鍵ってある意味、気休めだしね」
 
その日は琴絵たちが持ってきてくれたケーキを食べ、用意していたチキンとかポテトやタマネギのフライとか、ピザとか、おにぎりとかを出してきて食べて、夜遅くまで4人で話していた。
 

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翌日はちょうど、水戸の放送局に出演する予定があったので、琴絵と仁恵を千葉まで車に乗せていき(日本酒と焼酎を1本ずつ、それからウィスキーを3本、お菓子の箱を5箱、仁恵のアパートに置いてきた)、そのまま政子と2人で水戸まで行った。
 
放送局ではパーソナリティさんとトークしながら、『影たちの夜/天使に逢えたら』
を流してもらったし、先月ローズクォーツでリリースした『Rose Quarts plays Rock』
というコンセプト・アルバムも紹介してもらい、その中からポール・アンカの『Diana』とABBAの『Dancing Queen』も流してもらった。
 
「これローズクォーツのCDですが、今流れた『Dancing Queen』はマリさんも歌ってますよね」
「ええ、最近ローズクォーツの音源制作にはたいていマリも参加しています」
「ローズ+リリーの音源制作でもローズクォーツが伴奏することが多いですよね」
「はい、今流してもらった『影たちの夜』とかはスターキッズというバンドが伴奏をしているのですが、昨年秋に出した『花模様』とかはローズクォーツが伴奏しています」
 
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「ローズクォーツの演奏にマリちゃんが参加しているのと、ローズ+リリーの伴奏をローズクォーツがしているのって、ひょっとして同じになりません?」
「メンツは同じですね」と私は笑って答える。
 
「でもローズクォーツとローズ+リリーはコンセプトが違いますから」と私。
「コーヒーに牛乳を入れたらミルクコーヒーになって、コーヒーと牛乳を同時に器に注げばカフェオレになるようなものかな」と政子。
「ああ、面白いたとえですね。じゃカフェラテは?」
 
「うーん。カフェラテはエスプレッソですから、クォーツのメンバーが酔っぱらって演奏するとか」と私。
「私とケイまで酔っぱらってたら、カプチーノですね」
「おお、そういうのも見てみたいですね」
 
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「指輪買ってあげようか?」
と私は放送局からの帰り、政子に言った。
 
「でも冬のエンゲージリングは正望君が買ってくれたんでしょ?」
「うん。サイズ確認のために1度だけ付けた。心が転びそうになった」
「そのまま受け取っちゃえば良かったのに」
「受け取るのはたぶん5-6年先、あるいは歌手を引退したら。マーサとはもうエンゲージじゃなくてマリッジリングでいい気がする。付けられないけど」
 
「そうだなあ・・・・ブレスレットにしない?おそろいのブレスレット持ってるの。付けなくてもいいけど、付ければお互いの関係を再確認できるような」
「うん。それもいいね」
 
私たちは東京に戻ると一緒に宝石店に行き、おそろいのプラチナ・ブレスレットを求めた。
 
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そして自宅に戻るとそれを腕につけ、私たちはキスをした。
 
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■夏の日の想い出・第三章(8)

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