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■夏の日の想い出・第三章(9)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-05-07
 
「記念写真撮ろうよ」「うん」
 
私たちはいったんブレスを外し、一緒に美容室に行って髪をセットした。それから自宅に戻ると、お互いにお気に入りのドレスをチョイスして身に付ける。そしてブレスレットと鈴をつけると、それが見えるようにして、セルフタイマーで写真を撮った。
 
「けっこう結婚写真っぽくなったね」
「振袖で並んだ写真も撮ろうよ。プレスは振袖には合わないから外していいけど」
「うん。じゃ、明日それやろう」
 
私たちは美容室に電話して振袖の着付けの予約を入れた。
 
そして翌20日。朝から美容室に行って振袖の着付けをしてもらった上で、また自宅で記念写真を撮ろうとしていたら、ふらりと姉がやってきたので、これ幸いとカメラ係になってもらい、振袖で並んでいる所を何枚か撮ってもらった。ブレスは付けていないが、鈴の方は付けている。
 
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「豪華な振袖だね。華やかだなあ。成人式の写真に追加するの?」
「ううん。結婚式だよ」
「あ、誰かの結婚式に行くの?」
「ううん。私たちが結婚するの。というか、しちゃったの」
「えー!? でも、あんた、正望君はどうすんのよ?」
「彼ともそのうち結婚するよ。そちらとこちらは別」
「重婚か!」
「うん」
「私もそのうち彼氏作って結婚するから、重婚予定」と政子。
 
私がお茶を入れようとしたら「その振袖でするな〜」と姉が慌てるように言い、自分でお茶を入れてくれたので、リビングで九州旅行で見た夢や、その後、夢で見たのと同じような杯・お酒・鈴をもらったことを話す。
 
「不思議な縁で、やはりあんたたちは結ばれているのね」
と姉は感心するように言っていた。
 
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私たちは振袖姿を1時間ほど満喫してから、振袖を脱ぎ、またドレスを着てブレスと鈴を付け、姉に再度写真を撮ってもらった。パソコンのモニターで見てみると、昨日撮ったのよりぐっときれいに撮れている。やはりセルフ・タイマーと人が撮ったのは違う!と思った。
 
私と政子が「結婚した」ことを知っていたのは、そういう訳で、琴絵・仁恵と、うちの姉の3人だけである。(さらにもうひとりいるが後ほど記述)
 
「だけど、結婚式の夢でもうひとり鈴をもらった女の子が誰なのか見当もつかないんだよね。私には男性機能は無いから、私と政子の間に何かの間違いで子供ができちゃうようなこともあり得ないし」
 
「そうだねぇ。でも、それきっと冬と政子さんの子供なんだよ」
と姉は言った。
 
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「もしかしたら、ふたりが日々作っている歌の象徴なのかもね。あなたたち、まるで自分の子供を作るかのように、歌を作っているでしょ」
「あれ?それって、以前みっちゃんにも似たようなこと言われたことある」
「きっとふたりが作り出す何万曲という歌の象徴がその子供だよ」
 
「じゃ、この鈴は机の引き出しじゃなくてCD棚に入れておこう」
 
私はそう言って、鈴を居間に置いているガラス戸付きのCD棚のいちばん上の段に置いた。この段にはローズ+リリーのCDのみが並んでいる。棚のこの段はまだまだたっぷり空きがある。この棚がいっぱいになる頃に何か起きるのかも知れないな、という気がふとした。
 

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姉に私と政子の「結婚記念写真」を撮ってもらった翌3月21日はローズ+リリーの「第1自主制作アルバム」の発売日であった。
 
これは私と政子がローズ+リリーを始める直前、高校2年の7月に、その時までに作り溜めていた曲を、スタジオを3時間だけ借りてふたりで吹き込んだものがベースである。当時の演奏部分は私がMIDIの打ち込みで作ったものであったが、今回発売するにあたり、ローズクォーツ(キーボードは太田さん)に演奏してもらって差し替えを行った。ボーカル部分だけは当時のままであるが電気的な編集でノイズを減らしたり、不用意に混入した雑音などを除去する加工だけ行っている。
 
タイトルは企画段階では「Before 0 year」と呼ばれていたのだが、正式な発売にあたって『Month before Rose+Lily, A Young Maiden』という名前になった。『A Young Maiden』はタイトル曲であるが、発売前にプロモーションでもこの曲をかなり流したので、物凄い反響があった。
 
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私たちや★★レコードでも予測していたが「もしかして当時マリちゃん妊娠してたんですか?」という問い合わせが凄まじい数来た。問い合わせてきたのは大半が10代の女の子たちだった。
 
★★レコード・△△社・○○プロ・UTPの、どの窓口でも「マリは妊娠していません。詳しいことはアルバムのライナーノートに書いてあります」と答えた。
 
この曲は私と政子が『JUNO』という映画を見て感動して書いた曲なのである。それは17歳の少女が不用意に妊娠し、出産する過程を描いた映画であるが、生まれてくる子供の里親になってくれる人を探し、その里親夫婦の夫の方からJUNOが誘惑され、結果的にその夫婦が離婚したり、JUNOは子供の父親である同級生の男の子ときちんと話し合うことができるようになったりというJUNO自身の成長の物語でもあった。
 
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そのことはライナー・ノートに書いているのだが、そんな所まで読まずに単純に曲を聴いて、これはきっと詩を書いたマリ自身が妊娠して、そのことを書いた歌ではと思い込んでしまったファンが多数いたようであった。
 
中には、この時期マリは婚約していたからその人の子供ではとか、実はマリとケイの子供ではとか、その子供は実は生まれていて今3歳になってるはず、などという勝手な憶測をする人たちまで現れる始末であった。
 
『A Young Maiden』だけの単独ダウンロードもできるように設定していたので、アルバムの売れ行きも凄かったが、この曲単独のダウンロードも凄かった。発売後一週間で『A Young Maiden』単独のダウンロードが50万件を超えたため私たちは緊急に町添さんと話し合い、この曲のシングルカットを決めた。
 
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さんざん要望のあった『神様お願い』とのカップリングで発売することになり、発売日は4月18日(水)と定められた。
 

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2012年3月22日。『Month before Rose+Lily, A Young Maiden』が発売された翌日。私は町添部長と2人だけで、また都内の料亭でお昼御飯を食べながら、秘密の会談をしていた。主たる話題は、先月スキャンダルを起こして半謹慎中の上島先生のことであった。
 
あの事件の責任を取って上島先生は当面、テレビやイベントへの出演を控えることになったため、その代わりの出演者を確保するのに、放送局やイベント主催者は大変な様子であった。
 
幾つかの音楽イベントで上島先生が審査員やゲストなどとして出演することになっていたもので、私と政子に代わりに出演してくれないかというのを町添さんから打診された。
 
「歌うんじゃないから、マリも嫌がらないと思います。それに色々御恩のある上島先生の代理ですから。そういうのはマリのお母さんも認めてくれるんですよ」
と私は答えた。
 
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「助かるよ。これが一応スケジュールね」
と言って部長から見せられる。幸いにもライブなどとのスケジュールの衝突は無いが、レコーディングなどとの衝突はあるので、そのあたりは内部的に調整が必要だなと、私は思った。
 
「しかし『天使に逢えたら/影たちの夜』は凄い売れ行きだね。あと少しでミリオン突破するよ。いや、今日あたりもう突破したかも知れない」
と町添部長が言う。
「ありがたいです。なかなか発売のチャンスが無かった曲なので、日の目を見させてあげられただけでも嬉しかったのですが」と私は答える。
 
この日は『Month before Rose+Lily』の発売翌日だったので、その曲のことは「反響が凄いね」という話だけで終わってしまい、私も町添さんもまさか凄い売上になるとは思ってもいなかったので、その曲の話題はあまり出なかった。
 
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町添さんは、ローズ+リリーのCD/DLの売上の数字を、自分のiPhoneの画面でこちらに見せてくれた。しかしさすが大企業の部長さんだけあって、iPhoneにセキュリティ・ケーブルが取り付けてあり、服のベルトとつながっている。
 
「あれ? iPhoneって、こんなケーブル取り付けられる所ありましたっけ?」
「本体のネジ穴を使って取り付けてるんだよ。改造に当たるからメーカー保証は受けられなくなるけどね」
「なるほど! 私のにも付けよう」
「これ、特殊な製品なんだよね」と言って、町添さんはそのセキュリティケーブルを売っている会社を教えてくれた。
 
「それで本題。この数字を見てみて」
 
甘い蜜 105万枚 
ベスト 41万枚 
After 2 years 54万枚 
After 3 years 64万枚 
涙のピアス 108万枚 
可愛くなろう 68万枚 
天使に逢えたら 98万枚 
 --------------- 
夏の日の想い出 118万枚 
 
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「ローズクォーツの方の売上は『夏の日の想い出』を除くと、だいたい10万枚程度がmaxの感じなんだよね」
と町添さん。
「うーん。。。。。」
 
「ローズ+リリーは『可愛くなろう』が80万枚くらいで停まりそうなんだけど、その前後で、『甘い蜜』・『涙のピアス』・『天使に逢えたら』がミリオン。しかしだね」
「はい」
 
「『可愛くなろう』は元々『涙のピアス』と一緒に売る予定だったものだよね。だから合わせると実は200万枚近く売れているんじゃないかという意見もある。すると『甘い蜜』から始まってミリオン3連発なんだよね」
「少し強引ですね」と私は町添さんの言葉に笑った。
 
「更に12月にも言ったけど、『夏の日の想い出』はマリちゃんも加わって制作しているから、これはむしろローズ+リリーの作品と考えた方がいいのではという説も根強くてね」
 
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「するとミリオン4連発ですか」
「そうそう。そういう説もある。実際ローズクォーツの『起承転決』は15万枚しか売れてないからなあ。いや、今の御時世に15万枚は充分優秀なんだけどね」
 
「ファンがたくさんいるはずの大物アーティストの作品が数千枚しか売れてないですからね」
「そうなんだよ。今音楽業界は悲惨な状態。その中で★★レコードは、上島ファミリーや君たち、スリーピーマイスやXANFUSに、スカイヤーズと、プラチナディスクを連発するアーティストがいて、何とか勝ち組になっているんだけどね」
 
私は頷いた。
 
「そういう中でローズ+リリーは本当にうちの中核になるアーティストのひとつだから、大きく力を入れていくつもり。担当を南君から氷川君に移したのもね、ローズクォーツはやはり男性的なバンドだけど、ローズ+リリーは女性ユニットでファン層も女性が多いから、女性の感性で売っていかなきゃダメだと思ったからだよ」
「なるほど」
 
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「スリファーズもやはり女性ユニットなのに女の子のファンが多いし、そもそもスリファーズの楽曲はケイちゃんたちが作っているから、一緒がいいと思ったし、ローズクォーツはローズ+リリーと分離不能だから、結局この3組を担当させることにした。氷川君は新人だけど、うちの期待のエースだしね」
 
「あの人、楽曲の知識量が凄まじいですね。私が鼻歌で何か歌っていたら、『ああ、○○の◇◇◇◇ですね』なんて、歌手と曲名を即言えるんですよね」
 
「氷川君の家のCDやアナログレコードのライブラリは凄いみたいだよ。お母さんもお父さんもコレクターだったらしくて、お母さんの方は主として1970年代以来のポップス・ロック系のレコードやCDを持ってて、お父さんの方は洋楽とクラシックのコレクションが多いと言っていた。子供の頃からいつも何か音楽が掛かっている家だったらしいね」
 
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「へー。凄いですね」
「その代わりテレビは無かったらしい。学校で友達の話題に付いていけなくて苦労したみたいだけどね」
「そういう育て方は充分『あり』だと思います」
「うん。強い子だと問題無い」
「あの人、かなり精神的に強い人みたい。それでいて受容力が大きい」
「うんうん」
 
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