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■夏の日の想い出・止まれ進め(10)

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みんな拍手をする。26-27歳の女性が言った。
 
「充分セミプロなら名乗れる。このくらいでプロ名乗ってる人もたくさん居る」
「じゃ合格だね」
「うん。合格合格」
 
ということで邦生さんはドラムスになった。楽器4つも持って来たのに!
 
「ホルンちゃんのギターは一昨日聞かせてもらった。ギター弾きが君だけみたいだから、君がギターね」
「はい」
 
「それでプリムちゃんがベースで」
「分かりました」
 
「ルミナちゃんはエレクトーンも弾くんだったね」
「はい6級持ってます」
「セミプロレベルだね。じゃ君がキーボード」
「はい」
 

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あれ〜プリムさん、ベースとか書いてないのにと思うが、この付近は先行して演奏させてみてたのかなと日和は思った(*10).
 
一方吉田は
「なるほど。自分のドラムスは別として音楽能力の高い信濃町ガールズでリズムセクションを固めるのか。練習時間の取れない中、うまい方法だ」
と考えていた。
 
「それでフローラちゃんはヴィブラフォンで」
「はい」
 
「それでは久美子ちゃんはアルトサックス、世梨奈ちゃんはフルート、美津穂ちゃんはクラリネット、コルネちゃんはヴァイオリンで」
 
「ああ、きれいにまとまった」
「すごーい!」
 
へー。ヴァイオリンなんて伴奏に使うものだったのか。ギターとベースとピアノにドラムス、あとせいぜいサックスくらいかと思ってた、と日和は思った。萌花がヴァイオリンケースを日和に渡してくれた。
 
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(*10) 正解。一度、プリム・ルミナ・ホルンの3人と打ち合わせていた。一応↓が暫定的に提出していた編成表。
 
Gt.入瀬ホルン B.七石プリム KB.麻生ルミナ Dr.吉田邦生 Fl.田中世梨奈 Cla.上野美津穂 ASax.日高久美子 Ch.入瀬コルネ・夏江フローラ
 
もし邦生のドラムスに問題があったら、プリムにドラムスを打ってもらい、邦生にはトランペットをお願いする。ベースはルミナ、キーボードをフローラと移動させるつもりだった。
 
他のグループでも結構直前の担当楽器移動が起きていた。
 

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「それでは今日は解散します。明日の朝から練習お願いします」
と川内さんは言った。
 
「すみません。譜面は?」
と邦生さんが尋ねる。
 
「明日の朝までにこの編成用のアレンジを書かせます」
「え〜〜!?」
 
演奏曲目は9:30の西宮ネオンが5曲と、16:30の川内みねか4曲ということだった。でも今夜一晩で9曲編曲して明日1日で覚える?大変だぁ!と日和は思った。
 

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「あ、コルネちゃんとホルンちゃんはちょっと来て。衣裳合わせしよう」
というので萌花と一緒に部長に付いていく。
 
先日の奈良時代のものとはまるで違う、普通の時代劇で見るような感じの女性の衣裳がいくつか用意されている。衣裳係さん?は日和と萌花を見て
 
「これが似合うかな」
と言って、それぞれ羽織ってみた。
 
なるほどー。衣裳合わせってサイズを確認するのではなく、色合いとかを見るのかと思い至った。
 
少し試行錯誤した上で「この色合いのにしましょう」と言われた。部長さんも頷いている。
 
「ふたりとも結構派手なのが似合うね」
「ですね。だからその役にピッタリだと思いますよ」
 
何の役をするんだろう。どうも萌花と姉妹あるいは先日のドラマみたいに2人でセットの役っぽい気がするけどと日和は思った。またこの時代の髪型に結った鬘(かつら)を制作するということで日和も萌花も頭のサイズを計られた。
 
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「お姉ちゃん、すごく小顔だね」
「ぼく洋服も萌花のお下がり着てますー」
「なるほどねー」
 

それで解放されて自分の部屋に戻った。
 
部屋にケトル、スティックコーヒーなどもあるので、お湯を沸かしてキャラメルマキアートを入れて飲みながら、渡された、西宮ネオン君、川内みねかちゃん、の歌9曲を入れたMP3レコーダーを取り敢えず聴いた。
 
西宮ネオンのはわりと単純な伴奏が入っているなあと思う。ヴァイオリンの音は入ってないけど、根音をハイトーンで弾いていればいいのかな?と思った。
 
川内みねかちゃんって聞いたことないけど、凄く可愛い曲だなと思った。ぼくがあまり女の子アイドル知らないから聞いたことないだけで売れてる歌手なのかななどとも思う。西宮ネオンの曲に比べて“曲のできがいい”と思った。多分名のある作曲家の手による曲なのだろう。
 
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日和は聞き終わると、少しヴァイオリン練習しておこうと思い、ケースから取出すと、部屋に置いてある電子キーボードでソの音を出してG線を合わせ、そこから5度ずつ上に、D線・A線・E線と合わせる。そして軽〜く『ツィゴイネルワイゼン』を弾き始めた!
 

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翌日は朝7時に朝食がデリバーされてきた。それで御飯を食べていると、またデリバーに音がするので見てみるとスコアが入っている。総譜とヴァイオリンのみのパート譜である。これ印刷するだけでも大変そうと思った。
 
8時過ぎ、館内放送?がある。
 
「お早うございます。川内です。みなさんの所に西宮ネオンの分のスコアをお届けしました。それで各自練習していて下さい。16時から合わせます、川内みねかの分は明日のネオンのステージが終わった所でお渡しします」
 
ああ、なるほどまずは最初の演奏に集中したほうがいいよねと思った。それでスコアをざっと読んでからヴァイオリン・パートを練習するが、簡単だなあと思った。これなら初見でも行けそうと思った。
 
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10時頃、萌花が部屋にやってきた。
 
「一緒に練習しよ」
「うん。いいけどギターとヴァイオリンではあまり“一緒に”練習にはならないと思うけど」
「いいじゃん、各々練習してればいいのよ」
「そだねー」
 
「あれ?お弁当食べないの?」
「とても入らない」
「じゃ残ってる分もらっていい?」
「いいけど」
 
それで萌花は日和が残したお弁当を食べていた。なんか7月までの日常風景だし、ドラマの撮影でこちらに滞在した間もこんな感じだった。
 
食べ終わると萌花はベッドに横になり!?その状態でギターを弾いている。そんな弾き方があるのか?
 

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「寂しくしてない?」
と日和は訊いてみた。
 
「ああ、それは平気。みんな優しいし。ここは派閥とかもないんだって先輩が言ってたよ。そういう分派行動的なものを社長が嫌ってるからって。だから逆に誰とでも仲良くできない子には辛いかもね」
「ああ。でもそれならモエは大丈夫だ」
「うん。居心地いいよ」
 
萌花はひととおり全曲弾いてから
「これなら初見でも行けたな」
などと言っている。
 
「こちらもー。多分臨時編成のバンドだから易しく弾けるようにアレンジしてるんだよ」
「そうだろねー」
 
と言って、後はギターも持たずに持参のおやつを食べながらずっとおしゃべりしていたが、なかなか楽しそうである。東京に出て来てからの生活が物凄く刺激的で楽しくてたまらないようだ。同じくらいの年齢の子か多いので、その子たちと連日おしゃべりしたりしているらしい。萌花はまさに誰とでも仲よくなる子だから、ほんとに楽しいんだろうなあと思った。
 
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ぼくはどうしようかなあと思う。バスケットも楽しいけど、東京での音楽生活も楽しそうだし。
 
それに日和は高校卒業後のことも考えていた。一応今文系コースに籍を置いているけど、成績は就職コースの子まで含めても学年で最下位付近だし自分が入れる大学は無いと思う。といって高卒で就けるような仕事もあまりピンと来ない。
 
女子だと飲食店のフロア係さんとか事務職とか、お店の売り子とかもありそうだけど、男子の仕事が無いよなと思う(*11)。ぼく非力で力仕事ができないしなどと考えたりする。運送屋さんのドライバーとか荷物持てないし、プログラマーは勤務時間が長くて、凄い体力が必要みたいだし。そもそも自分がプログラムとか書ける気がしない!
 
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それなら、取り敢えず22-23歳くらいまで?、信濃町ガールズとかしてもいいかも知れない気がして来ていた(*12).
 

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(*11) 五月は「ひよりちゃんは性別男と書いた履歴書出しても、女子として配属される」などと言っていた。実際体力が一般的な女子より低いし、男性器も(多分)存在しないから女子扱いで何も問題無い気がする。
 
というか日和は五月などが推察しているように実際に女だということは?生理があるのが何よりの証拠。ただなぜ突然高校1年になって生理が来たのかは不明だが。
 
(*12) この付近は川泉スピンや広瀬のぞみなどと事情が似ている。
 
萌花は日和に
「お姉ちゃんは23-24まで信濃町ガールズやって、その後はお嫁さんになればいいよ」
などと言っていた。
 
ぼくお嫁さんになれるんだっけ?と疑問を感じている。
 
(料理も得意だし、きっといいお嫁さんになれる。ただ赤ちゃん産むにはもう少し身体を鍛えないと大変だと思う。体力が無さ過ぎる)
 
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お昼は萌花は日和の部屋にいることを連絡し、一緒に配送してもらってこちらで一緒に食べた。そして13時半頃、川内さんから連絡がある。
 
「みんな伴奏が簡単だ。初見でも行けると言っているので14時から合わせます」
 
やはりみんな簡単だったんだ!
 
それで14時に昨日と同じ117スタジオに行くが、日和は萌花に乗せられてスカート穿いちゃった。少し恥ずかしいけど、知り合いが居ないし、まあいいかなと思った。
 

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それで合わせてみると一発で全曲合った。
 
「時間が無いので易しめのアレンジを依頼したら易しすぎたようですね」
と川内さんも言っていた。
 
「じゃ念のため用意していた、この譜面で『西の街から』だけでも」
と言って渡された譜面を斜め読みすると、さっきのより難しくなってる!
 
「このレベルの譜面5つだと1日では厳しかったかも」
「だから1曲だけ」
 
「多分2曲行けますよ」
と世梨奈さんが言う。
 
2曲は大丈夫だという意見が他からも出るのでもう1曲『夢のアーチ』という曲もレベルの高い譜面をもらった。
 
それで各々部屋に戻って練習し、21時に再度集まることになった。その時点での出来を見て、難しいほうのスコアを使うかどうか決めるという。
 
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「ちょっとベースパート弾いてよ」
と萌花が言う。
 
「うん」
 
それで日和がキーボードでベースパートを弾き、萌花のギターと合わせる。さっきの譜面のように一発では弾けないので、結構つっかかり、つっかかりになったが、萌花は何とか弾きこなした。
 
「お姉ちゃん、ベースパートを通して演奏してMIDI録音してくれない?」
「ああ、なるほど」
 
それで日和はキーボードを録音モードにしてベースパートを弾いていく。少し間違ったが気にせず最後まで弾き通した。
 
「じゃこれを流しながら私練習する。お姉ちゃんもそれに合わせてヴァイオリン弾くといいよ」
「そだねー」
 
それで練習しているとだいたい弾けるが何ヶ所か引っかかる。そこはMIDI再生を停め、各々ゆっくりと弾いて正確に弾けるようにし、またMIDIの再生を再開する。そんなことをしている内、18時頃までにはふたりともほぼ弾けるようになった。ベースパートのMIDIは一度録り直した。
 
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ここで夕食がデリバーされてくるので一緒に食べる。そのあと2曲目を同様に練習していると、これが19時半頃までにはだいたい弾けるようになった。
 
「あとは正確にアットテンポで弾けるように弾き込むだけかな」
「うん。頑張ろう」
 
それでたくさん練習していると20時半頃までには充分自信を持って弾けるようになった。
 

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それで21時にまたスタジオに集まる。
 
合わせてみると2曲とも一発で合った。
 
「あんたたち凄いよ」
と川内さんは言っていた。
 
「結構ギリギリで仕上がったかな」
「おやつ食べながらゲームしたりする時間は無かった」
 
といった声が出ていたので、やはりみんな仕上がったぱかりだったようである。
 
「じゃ通し稽古をしよう」
というので、通して5曲練習した。易しい譜面で3曲。その後、難しい譜面に交換された2曲を再度合わせる。それでこの日は22時半に解散した。
 
「明日は早めに朝食をデリバーさせますので7時半集合で」
 

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それでこの日は寝た。萌花は自分の部屋に帰って寝た。日和は寝る前にナプキンを交換しておいた。
 
翌日は5時に起きてトイレに行ってまたナプキンを交換してから、缶コーヒーを飲んで、そのあと一通り練習した。やはり簡単な3曲は問題無く弾ける。難しい2曲について各々5回くらい練習した。
 
5時半に朝食が配送されてくる。それを食べてから再度練習する。6時半すぎには充分自信が持てるようになった。萌花に連絡したら「今起きたぁ!」という返事。あの子遅くまで誰かとラインでもしてたのではと思った。
 
「練習の手伝いして」と言うので、荷物を持って部屋を出て、萌花の部屋に行った。それで昨日録音したMIDIデータをこちらの部屋のキーボードに入れて再生させ、それに合わせて萌花がギターを弾き、日和もヴァイオリンを弾くというので練習した。でもそれでだいぶうまく弾けるようになったようである。
 
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7:20に一緒に部屋を出てスタジオに向かう。
 

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夏の日の想い出・止まれ進め(10)

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