広告:オトコの娘コミックアンソロジー- ~強制編~ (ミリオンコミックス75)
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■夏の日の想い出・星導きし恋人(15)

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ちなみに、その4000万円のガレオン船(全長23m×最大幅6m×高さ24m 吃水2m)の“設置”はこのようにして行われた。
 
この土地はオープンセットのある場所、池まで含めて私有地である。この船の“建造”チームは、所有者の許可を取って、池のこちら側20m程度を鉄板を立てて区切り、こちら側の水を抜いてしまった。池底の泥を浚渫(しゅんせつ)し、船を“設置”する部分に高さ1mほどのコンクリートの基礎を作る。この基礎は用事が済んでもそのまま放置しておいてよいと土地の所有者は言ってくれた。
 
この工事を見ていて、鳥山は本当にこんな大規模な“工事”までして400万円で納まるのだろうかと不安になり
「これ本当に予算内でおさまるの?」
と尋ねたが
「大丈夫ですよ。この基礎工事で全予算の4分の1くらいです」
と現場監督さんは言っていた。
 
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ここでその“全予算”の額を確認すべきであった!!
 

その上でコンクリートの土台の上に13mの鋼鉄製の竜骨を置く。そして同じく鋼鉄製の肋骨材をボルトで留めていく。竜骨・肋骨を木で作るには、結構しっかりした大きな木が必要で、ガレオン船の肋骨には複雑なカーブをつける加工が必要なので、いっそ鉄で作ったほうが楽だし安く済むらしい。この“船”は浮く必要もないので、重い鋼鉄で船の骨組みを作ってもいいのである。
 
竜骨の上に3本の帆柱(マスト:前面のフォアマスト14m, 中央のメインマスト16m, 後方のミズンマスト9m)を立てる。マストはかなり太い松である。見える所はちゃんと木材で作る必要がある。またマストは人が登るので細い木で作るのは危険である。ここはどうしてもコストが掛かる部分である。メインマストの上部には更にマストを継いで全体で24mになる。そしてマストから横に張り出る帆桁(ヤード)を取り付ける。
 
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2層の甲板(かんぱん:表面の上甲板と中層の中甲板)を設置する。甲板は安価な杉板でできている。弱いし耐久性が無い。甲板は船全体を支える構造物なので、船自体が歪みやすく、船の寿命が短くなる。さすがハリボテである。
 
船の表面に薄い合板の外装板を接着剤で貼り付けていく。これは全く耐久性が無い!撮影中もてばいいだろうという、マジでハリボテである。
 
建造チームは竜骨・肋骨までを1日で作り、マストを1日で立て甲板・船首・そして船首から前方に突き出る“バウスプリット”まで1日で作り、最後に2日かけて外装の合板を貼り付けた。
 
「これ水漏れしません?」
「大丈夫です。防水性は全く無いので、喫水線より下は完全水没します。中甲板まではいいですが、船底に行くには潜水具が必要です」
「やはり・・・」
 
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さすがハリボテである。
 
ともかくも見た目だけのガレオン船はコンクリートの基礎が出来たあとわずか5日で竣工したのである。その後、この池に流れ込んでいる小川の水を長いホースで引いて来て、鉄板の水留めよりこちら側に流し込んだ。
 
水は小石・活性炭の層を通し、更にフィルターまで通し、最終的には塩素消毒もしている。簡易水道に近いレベルである。この水が1週間ほどでこちらの部分を満たし、進水?水没!?は完了したが、この水を入れている間にマストに帆を取り付けた。
 
「くれぐれも風の強い日に展帆しないでくださいね。マストが折れますから」
「でもそれマジな帆船でもそうですよね」
「そうですよ。帆船は女の子のようにデリケートですから」
「分かりました」
「まあこの子は見た目だけの女の子ですが」
「あはは」
 
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また水を入れている間に、ベニヤ板製!のハリボテ砲台(これは放送局のスタッフが作ったもの)も左右10個甲板にボルトで留めた。砲台は海賊対策に必要なものである。武装しているからといって海賊に襲われないわけではないが、海賊は武装している船より武装していない船を狙う。ベニヤ板ではあっても表面に金属光沢のシールを貼っているので、遠目には充分鉄の砲台に見える。シンデレラには大砲を発射して海賊と戦うような場面は無い(そこまでやるともう全然別の物語)。
 
そこまで全部済んでから請求書を送ってもらい、その金額を見て鳥山は青ざめることになる。
 

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そういう訳で“工事”のために池の手前側の水はいったん抜いて池底の泥も取り除いていたし、水も新鮮なものに入れ替え塩素消毒もしていたので、人魚姫が王子を救出する場面も比較的安全に撮影することができたのである。水がきれいなので、水中から撮影した映像もクリアである。また、撮影中に万一船から俳優さんが転落しても助けやすかった(取り敢えず落ちた人はいなかった)。
 
なお、この鳥山渚の“桁読み違い”事件は、鳥山光太郎編成局長や香鳥社長は知らないままになったようである。偶然の作用からアクアが出演してくれたお陰で、4000万円はスポンサー料で充分カバーできたし、それどころか『シンデレラ』が物凄い視聴率だったことで社内で表彰までされたこともあり、鳥嶋もバッくれることにして上に報告しなかったのである。
 
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さてその鳥山が首寸前になりながらも制作した『シンデレラ』だが、放送されると、アクアの性別カムアウトなのではと随分話題になった。そしてシンデレラが男装して航海するなどというのは、今まで無かったコンセプトではと反響が物凄く“シンデレラのシンドルバッド”という企画でシリーズ化されることが決まってしまった。
 
取り敢えず7-9月の3ヶ月間12回で放送される(オリンピックの影響で最終回は10月にずれ込む可能性もある)。
 
主人公は物語のほとんどの部分で男装だが、だいたい30分の放送枠の中で20分くらいの所で女装で登場し、それが事件解決の鍵となる、といったパターンである。女装の時はガラスの靴を履く!
 
ヒーロー物に近いコンセプトで、いわば女装は変身!に相当する。脚本はホームコメディが得意だが、過去に戦隊シリーズの脚本も書いたことのある横沢零花さんである。
 
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しかしこれで鳥山渚プロデューサーの首は完全につながった。鳥山は当面「昔話シリーズ」と「シンドルバッド」の2つのシリーズを担当する。
 
主人公のシンデレラ=シンドルバッド役であるが、鳥山は念のためコスモスに照会する。
 
「アクアちゃんでシンデレラ=シンドルバッドとかダメですよね?」
「だめです」
「だったら、常滑舞音ちゃんも忙しくて無理だろうし、恋珠ルビーちゃん使えない?」
「ああ!彼女だったらいいですよ」
 
そういう訳でルビーは初ドラマ・初主演となった。
 
ルビーは、ローズ+リリーのライブのゲストに出て来た時に、とんぼ返りをしてみせたし、ΨΨテレビ の『3×3大作戦』でも“スポーツ選手並み”の運動能力を見せて金墨円香に感嘆されていたのだが、この『シンドルバッド』も結構な運動能力が求められる。特にマスト(帆柱)を登りヤード(帆桁)に座って居られる筋力・平衡感覚と水泳能力は必須である。
 
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彼女用のガラスの靴も制作された。
 
中学生で使える時間が限られることもあり、ドラマの主役と『3×3』の兼任は困難なので、コスモスがΨΨテレビまで行って謝罪し、『3×3大作戦』は、6月放送分までで降板させてもらうことにした。代わりにルビーの親友でもある花貝パールを使ってくれないかとコスモスは要請した。名古尾プロデューサーや金墨円香もパールと面談して、体力テスト!もさせてパールの採用を決めた。
 
花貝パールは信濃町ガールズの本部メンバー昇格後わずか3ヶ月で地上波のレギュラー番組を持つことになった。今回はルビー自身が登場後3ヶ月での交替となることから後任は同学年かそれより若い子でとテレビ局から要請された。そして『3×3大作戦』という番組自体、運動能力を要求する番組であったため、こういう異例の起用となった。パールは100mを16秒台で走ることができるし、水泳も宮古島の海でたくさん泳いでいて大得意である。
 
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なお、採用時の体力テストの内容が、800m水泳、5000m走、10km自転車というミニ・トライアスロンで、なかなかハードだった:ルビーとYe-Yoも2月にやらされている。
 

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“昔話”シリーズの第4弾は『赤ずきん』でこれはビンゴ・アキちゃんが主演した。実は『シンデレラ』に続いて制作される予定だったのを『人魚姫』が割り込んだのである。そして第5弾は『わらしべ長者』と発表された。
 
主演はアクアで、ここまで5回の作品の内、実に3本で主演するということになったが、この作品にアクアが主演することは、最初の段階で決まっており、ちゃんとスケジュールもとられていた。和泉による“アクアは男の子です”を主張する作品のひとつとして計画されていたのである。
 
3/29(Mon)『火の鳥』アクア主演
6/05(Sat)『シンデレラ』ラピスラズリ→アクア主演
6/19(Sat)『人魚姫』ラピスラズリ主演
7/03(Sat)『赤ずきん』ビンゴ・アキ主演。
7/17(Sat)『わらしべ長者』アクア主演
 
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和泉としては色々“噂”も飛び交っているので、アクアの誕生日より前にこの『わらしべ長者』が放送されるようにしたかった。なお『夏の飛び魚』の放送は、6/6, 13, 20, 27 である。6月に男子水着のアクアを見せて、7月には再度ヒーロー役を演じさせるというのが和泉の計画である。
 
放送は7月なのだが、アクアのスケジュールの都合があるため、撮影は5月下旬から6月上旬に掛けて、実は『赤ずきん』より前に行われた。撮影順序と放送順序が違うのはわりとよくあることである。それで『人魚姫』の撮影が終わると、スタッフはすぐ茨城県の“ワープステーション江戸”に移動して、アクア主演でわらしべ長者を撮影したのである。
 
アクアも『シンデレラ』の後、すぐに『夏の飛び魚』の撮影をして、それが終わると今度は『わらしべ長者』とひたすらドラマの撮影が続く。アクアはこれは『ほのぼの奉行所物語』を降板して良かったと思っていた。『奉行所物語』までやっていたら、身体が4つくらいないと無理だった。
 
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(ちなみに『シンデレラ』はF、『夏の飛び魚』はM、『わらしべ長者』はFが出演する。後述のようにアクアはほぼ女優扱いなのでMでは不都合が起きる)
 

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アクアが“ワープステーション江戸”に入ったのは5月29日(土)である。ここに来たのは昨年春以来1年3ヶ月ぶりである。ちょっと懐かしく感じるくらいであった。『ほのぼの奉行所物語』の撮影とぶつかったりしないのかな?と思ったのだが、この時点で実は『ほのぼの奉行所物語』は視聴率が低迷し、打ち切りが既に決まっていて(公式発表はまだ)、もう撮影は行われていなかった。
 
『わらしべ長者』の配役はこのようになっていた。
 
太郎(主人公)アクア
観音様(声) 秋風コスモス
男の子 中井宏良(劇団色鉛筆)
男の子の母親 小野寺イルザ
志乃(ヒロイン)坂出モナ
志乃の従者 在杢(サウザンズ)
侍 七浜宇菜
志乃の父 鞍持健治
 
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本当にこのシリーズは予算が潤沢である。豪華な顔ぶれである。
 
観音様の声はアフレコではなくプレスコ(先録り)で既にコスモスの声が入っており、観音様の像の後で実際にコスモスの声を流して撮影した。つまりコスモスはワープステーションには行っていない(実際行っている時間は無い)。
 
七浜宇菜の男装はあまりにも普通なので、誰も問題にしていない。もっとも彼女は男性用ロッカーの鍵を渡され
 
「あのぉ、さすがに男性用控室で着替えるのは気が進まないのですが」
と申告して
「あ、ごめーん」
とスタッフさんに謝られていた。
 
ちなみにアクアはいつものように女性用控室である!
 
誰もアクアを男性用控室に入れようなんて、思いもよらない。アクアが男性俳優たちと一緒に着替えられないのは、さすがの和泉も認識している。
 
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