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■夏の日の想い出・星導きし恋人(12)
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彼女が話せないことを知り、王子は彼女を王宮に保護した。彼女は字も知らなかったので、王女の侍女アリナ(内野音子)が人魚姫に字を教えることになった。彼女は記憶喪失で自分の名前も覚えていなかったので、王子が彼女にマリナという名前を付けた。
王宮で暮らす内に王子はマリナに惹かれていく。もとよりマリナは王子が好きなので、ふたりは相思相愛になっていき、やがて結ばれる。(ここはキス:寸止め:のシーンから、ベッドに一緒に寝ているシーンに移る。ふたりが抱き合うシーンは無い。そんなシーンを放送したら松田君は東雲はるこのファンに殺される:アクアとの交際がバレても殺されそうだし、松田君はきっとパリ五輪を見られない!?)
王子はベッドの中で語った。
「2年前に僕は船に乗ってて、その船が沈んでね。その時、幸いにも僕は海岸に流れ着いて、たまたま通り掛かった修道女に助けられたんだけど、沈んだ船から海岸まではかなりの距離があったと思うんだよ。その時、僕は人魚に助けられて海岸まで連れて行ってもらったような記憶があった。実は君はその人魚に似ているんだよ」
マリナ(人魚姫)は、その人魚が私ですと(字で書いて)王子に伝えたい気分だったが、そんなことをしたら王子をたぶらかす異形の者とか言われて殺されるだろうという程度の想像は付く。それでマリナとしては、そのことを決して打ち明けられない。
「私があなたの記憶の中の人に似ていて良かった」
と字で伝えて、ふたりはまたキス(寸止め)して、画面はフェイドアウトする。
王宮および王子の部屋は、キャプレット家とジュリエットの部屋(その後シンデレラの家の居間に改装)を再改装して使用している。
この時期が人魚姫にとって最も幸せな時期だった。王子は海岸で自分を介抱してくれた修道女のことも気に掛かっていると正直にマリナに打ち明けた。
「でも修道女じゃ結婚できないしなあ」
などと王子は言う。だったら私と結婚してくれるのかなあ、とマリナは期待した。
ある日、王宮に西インドから色々珍しいものを持ち帰ったという商人が訪れ、国王に貢ぎ物をしたいということだった。国王は王妃ともどもローマまで行っていたので、国王の代理で王子が応対した。
「これは不思議な物体だな」
「はい、それはゴムと申すものです。押してもすぐ戻りますし、柔らかいのに簡単には壊れない。これはきっと時代を変えるものになります。西インドにしか無いものなのですよ」
などといった会話をしていた時、ふと王子は商人に付き従っている娘に気付いた。
「君は・・・!?」
「王子様、お久しゅうございます」
「お前、殿下と会ったことがあるのか?」
と商人が驚く。
「君は修道院に入っていたのではないの?」
それは浜辺で王子を介抱した娘だった。
「礼儀作法やラテン語などを勉強するのに修道院に入っておりました。つい先月結婚するために修道院を出たんですよ」
「結婚してしまうの?」
「結婚する前に、王子様にもう一度会っておきたかったので、今回の付き添いを志願しました」
「・・・・・」
「あの時から殿下のことがずっと忘れなくなっていたので。でもこうやってもう一度会うことができたので、王子様のことはきれいに忘れてお嫁さんに行くことにします」
「ちょっと君と少しゆっくり話がしたい。君たち、3〜4日王宮に滞在しない?」
王子が王宮のテラスで商人の娘・マリア(町田朱美)と話をしている。そこにマリナ(人魚姫:東雲はるこ)はお茶とフルーツを持って行き、笑顔で
「ゆっくりしていってくださいね」
と書いた紙を見せる。
「奥様ですか?」
とマリアが王子に尋ねる。
「結婚するつもりでいる。彼女は言葉が話せないんだよ。それで筆談している」
「そういう障碍を抱えていると大変ですね。大事にしてあげてくださいね」
とマリアは、マリナを気遣うように王子に言った。
マリナがテラスから下がってきた所で、王子の侍女アリナ(内野音子)が咎めるように言う。
「あんた何やってんのさ?王子を取られるよ」
「え?どういう意味?」
「王子は、浜辺で自分を介抱してくれた修道女のことがずっと気になっていると言ってたんでしょ?その本人が現れたんだから、王子は彼女に言い寄るに決まっている」
「だってあの人、他の人と結婚する予定なのでは?」
「王子との結婚なんて話になったら、先方には謝ってそちらの婚約は解消するでしょ」
「え〜?だったら私はどうなるの?」
「あんたも捨てられることになるよ。もっと王子に迫りなよ。だいたいさ、沈んだ船から王子を助けた人魚ってのがあんたじゃないの?それを王子に言いなよ」
「それはそうなんだけど、私が人魚だったなんて知られたら」
「そんなこと言ってて、王子を取られてもいいの?とにかく今夜は王子にアタック。あたしがお膳立てしてあげるからさ」
「う、うん」
しかし王子は「すまない。今夜はひとりで考えたいことがある」と言って、マリナとの夜の営みを断ったのであった。
アリナが危惧した通り、王子はマリナに結婚の約束を取り消したいと言ってきた。そしてマリアと結婚したいのだと言う。
「済まない。君にも言ったように、僕はあの女性のことをずっと忘れられないでいたんだよ」
マリナが泣くので、王子は本当に申し訳ないと改めて言ってから更に言う。
「君のことは一生面倒を見るから。どこかに君専用のお城を作ってあげるよ。侍女も20人くらい付けて、絶対に暮らしには困らないようにするから」
アリナは自分が処分されることを覚悟で王子に抗議した。
「一国の王子ともあろう御方が、公式な発表はまだだったとはいえ、一度結婚しようと言った人を捨てて、他の女と結婚するというのはどうかと思います」
「それについては本当に済まない。マリナのことは決しておろそかにしないから」
結婚式前夜。
マリナのための城は、古い大公の館を改修して使うことになった。アリナほか20名の侍女がマリナに付いていくことになった。
しかし、実際には結婚式が行われれば人魚姫は失恋が確定し、その瞬間泡となってしまうだろう。それでもマリナは、自分の運命より、王子に捨てられたことを悲しんだ。マリナは王子を沈んだ船から助けた時のことを思い出すように浜辺を歩いていた。
そこに人魚姫の姉(宮村尚子)がやってくる。髪が短い!
「お姉様!?」
「魔女のところに行って、私の髪の毛と交換でこの短剣をもらった。この短剣で王子の心臓を刺せば、お前は人魚に戻ることができる」
このシーンは、本人の髪をまとめてアップした上で男性用!のかつらをつけて撮影している。彼女は元々ロングヘアがトレードマークなので、放送時に宮村尚子と認識できなかった視聴者がかなり居た!
自分が泡になって消えてしまうことはもう恐くなかった。それより何といっても王子が自分を捨てたことに対して軽い恨みもあった。それでマリナは姉からもらった短剣を服の下に隠し、深夜、王子の居室に侵入する。
王子は眠っていた。マリナは服の下の短剣を握りしめ、彼の心臓を刺そうとする。その時、王子が目を覚ました。
「マリナか。びっくりした」
マリナは慌てて短剣を隠した。
「君には本当に済まなかった。君のことは今でも好きだよ」
と王子は言う。
《王子様の結婚を祝福して、キスだけさせてください》
とマリナは字で書いた(以下マリナの言葉は全て筆談)。
「分かった。キスしよう」
と言ってふたりはキスする(むろん寸止め)。
《マリア様と幸せになって下さい》
「ありがとう」
《でも私にもプライドがあります。私のために建ててくださる城は辞退します。侍女とか年金の話もお断りさせて下さい》
「でもそれで暮らしていける?」
《そのくらい何とかしますよ》
「だったら新しい生活を築くまでのつなぎに」
と言って王子は金貨を10枚白い袋に入れて渡してくれたので、それは受け取った。
《それと私のお城の話がキャンセルだから、アリナはどうかマリア様に仕えさせてください》
「本人の意向を訊いてみる」
《ではお幸せに》
「本当に済まなかった」
それでマリナは王子の寝室を出た。そのまま王宮も出る。そして人魚姫は崖に行くと、そこから海に身を投じ、泡と化し消えてしまった。
崖から身を投げるシーンは福井県の東尋坊!で撮影した。
(§§ミュージックのA318で出演者と撮影スタッフを羽田から小松空港に運んだ上で貸し切りバス2台で移動している)。
ここは自殺の名所でもあるが、実は技術の高いハイダイバーにとっては理想的な練習場所でもある。そしてここで本当に崖から飛び込んだのは蕪島順子である。彼・・・じゃなかった、彼女はハイダイビングも得意である。
東雲はるこが飛び込んだら確実に死亡するので人形を使うつもりだったが、山村が「かぶちゃんはハイダイビング得意だからやらせるといいですよ」と言い、本人も50mくらいまでは平気というのでやらせた。実際に使用したのは35-36mほどの崖である。おかげで迫力のある映像になった。
かぶちゃんは「この程度の高さなら頭から着水できますよ」と言ったが、鳥山は「万一のことがあったらまずいから足(尾びれ)から着水して」と指示した。
撮影は崖の上、海上、海中のカメラに加え、空中の2台のドローンで同時撮影した。
かぶちゃんのドレスは風圧で“ダミーの人間足”ごと脱げるようになっており、その下には人魚姫の下半身お魚さん仕様の衣装を着けていた。その状態で着水したので、人魚姫が人間の姿から元の人魚の姿に戻って入水する感じになった。
なお着水の衝撃で貝殻ブラジャーが破損してしまい!かぶちゃんのAAカップくらいの小さなバストが露わになったが、これは放送映像ではCGで海草などを書き加えて自然に隠した。
鳥山さんはかぶちゃんにスタント料として100万円払ってくれたが、大食いの彼はきっと焼肉やスキヤキ・しゃぶしゃぶとかで、1ヶ月で使ってしまう。
なお、水中の“人魚姫”が泡に変化する所はCGである。その部分は東雲はるこ本人を使ってプールの中で撮影した。これは水中で1分くらい息を止めておけばいいので、泳げなくてもできる。実際には東雲はるこは水泳選手並みに肺活量があり、5分までは自信があると言っていた。よくお風呂に潜って息を止めておく練習をしていたらしい。
人魚姫がふと意識を取り戻すと、空中を浮遊していた。そこに風の精霊(松元蘭)が来て「君は優しい心で、自分を犠牲にして人間を助けたから、風の精霊になったんだよ」と告げる。
「私たちは、暑さで苦しんでいる人たちに涼しい風を送ったり、花の香りを広めたり、汚れたものを浄化してきれいにする仕事をしている。そしてこの仕事を300年続けたら、魂をもらえるんだよ」
と説明した。
風の精霊になった人魚姫は、結婚式を挙げたあと庭園を散歩している王子とマリアの傍に吹き寄せた。暑そうにしていたふたりが爽やかな風で涼しさを感じ、微笑む。人魚姫は王子妃に祝福のキスをして、ふたりの幸せを願った。
このシーンは風の精霊の衣装を着けた東雲はるこをピアノ線で吊って、王子妃の頬にキスする所を撮った。怖がるはるこを落ち着かせるため王子妃役の朱美がはるこに何か飲ませていたが、撮影陣は見なかったことにした。
撮影が終わった後で東雲はるこが言った。
「この物語って一般には哀しい結末の物語と思われているけど、必ずしもそうではない気がします」
「うん。ラストシーンは評価が分かれると思うよ。結局人魚姫は自分を裏切った王子を殺すことができなかった。それが物語の答えだと思う。
原作ラストで人魚姫は王子の結婚相手に祝福のキスをする。それが全てを物語っている」
と脚本家さんが言った。
町田朱美のたっての願いでシーンが追加されることになった。
本来のラストシーン(風の精霊になったマリナがマリアに祝福のキスをするシーン)の後、ラピスラズリが歌う挿入歌『Que suis je?』(クスィジュ?「私は何?」)が流れて、次のシーンに続く。
数日後、アリナが崖の上に立ち、じっと海を見ていたら、そこにマリナが風になって吹き寄せる(このシーンは実際にはセットで撮影しており、東雲はるこはセットの崖の所から30cmほど高いブルーシートを掛けた卓球台の上にいる)。
「アリナ」
「やはりマリナだ。あんた今ここにいるよね?」
「うん」
「やはり、あんた死んだのね?」
「私は風の精霊になったの。でも私がどうなったかは誰にも言わないで。特に王子には」
「・・・分かった」
「それとお願い。マリア様を守ってあげて。平民出身の王子妃は苦労すると思うの。でも王子様にも抗議できるほどのあなたなら彼女を守ってあげられると思って」
「あんたがそう言うなら、そうするよ。王子様からもあんたから頼まれたこととして、マリア様に付いてもらえないかとは言われたけど、少し考えさせて欲しいと返事していた所」
「それからね」
と東雲はるこは恥ずかしそうな顔をして言った。
「半年後の満月の晩にね。またここに来てくれない?渡したいものがあるの」
「いいけど」
ここでドラマはエンドロールとなる。ラピスラズリが歌う主題歌『真珠の涙』をバックに、出演者やスタッフが紹介される。そのエンドロールが終わった所で、崖のそばに立つアリナの足下に赤いおくるみと白い金貨の袋があるシーンが3秒流れる。
そして30秒のラストカットに続く。
王子がマリアと話している所に、アリナが赤いおくるみにくるまった赤ん坊を抱いて入ってくる。王子がアリナに尋ねた。
「それは・・・君の子供?」
「何を言っておられるんです?王子様の御子様に決まっているではないですか」
「え〜〜〜!?」
「この姫様にできたら王子様から名前を頂きたいと、マリナ様からの伝言です」
「だったらエアリエルにしましょう。この子、空でも飛びそうな顔をしている」
とマリアが微笑んで言った。
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夏の日の想い出・星導きし恋人(12)