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■春逃(6)
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2月14日(月)の午後、幸花は青葉からの
「東京に戻ります。後は編集で適当によろしく」
というメールを受信し、うっそー!?と思った。
まだ少し、金沢ドイルを入れた絵を撮りたかったのにぃ!
でも重要な大会の前にかなり連れ回したし仕方ないかと思った。でも青葉、東京に行った方がもっと忙しくなるのでは?と心配する。
青葉が逃亡!した件は、編集部の全員にメールした。すると真珠から
「青葉さんの車を預かっているのですが、どうしましょうか?」
という返信が来る。直接電話して話した。
「その車はどうしたんだっけ?」
「11日に編集会議が終わった後、青葉さんを津幡までお送りしたんですよ。そのまま自分も津幡で待機しようと思っていたんですが、月曜までずっと泳いでいるから、いったん帰っていてとおっしゃるので帰ることにしました。でもバイクは放送局に置いたままだったから、帰りの足が無かったんですよね。それを言ったら、だったらマーチで帰るといいよ。必要な時は呼ぶからと言われたので、マーチを借りて金沢の吉田のマンションに戻り、車は近くのTimesに駐めておきました。でもその後、青葉さんからの連絡は無かったんです」
月曜(今日)まで泳いで、そして逃亡したわけか!
でも足はどうしたのだろう?きっと真珠を呼び出すと引き留められるから、誰にも告げずに自力で移動したか?タクシーでレンタカー屋さんまで行き、レンタカー乗り捨てで東京まで行ったのかも知れないと思う。
「じゃ車はずっと駐めっぱなし?」
「はい、そうです」
「だったら駐車料金かなりになってるのでは」
「一応月曜までの駐車場代といって2万円お預かりしましたので、それで足りると思います」
「じゃ悪いけど、明日でもいいから、車は高岡の青葉の家に移動しておいてくれない?」
「はい、やっておきます」
青葉さんからも火曜日以降と言われたしな、と真珠は思った。
邦生は真珠が平然と嘘を言うので「こいつすげー」と思った!
(↑青葉は最強の人物を共犯者にしたと思う。初海には絶対無理だし、明恵はMTF特有の不安定な心を持っている)
2月14日(月)の夕方、真珠は駐車場の精算をしてマーチを出した。
銀行まで邦生を迎えに行き、彼を乗せて香林坊に移動する。地下駐車場に駐めてから「これに着替えなよ」と言って自分のとお揃いの白いドレスを渡す。
「俺今日は紳士用スーツ銀行から持って来たから」
「だってこないだは女の格好で行ったのに今日は男の格好してたら変だよ」
「うっ」
それで結局、邦生はドレスに着替えた。
お化粧もしてもらった。
それで邦生と真珠はお揃いのドレスでティファニーに行き、指輪を受け取った。
邦生が真珠の左手薬指に填めてあげたら、真珠は本当に嬉しそうだった。
「キスキスキス」
と言うので、人前だが、唇にキスした。
お店の人が記念写真まで撮ってくれた。
つまりドレス同士で撮った記念写真が残ることになる。
邦生は「あれ〜。このシーンはデジャヴ(既視感)がある」と思った。(もちろん1/28朝に夢で見たシーン!!)
その後、マンションに戻り、青山の結婚式にふたりで一緒にネット出席した。配送されてきている祝賀会の料理を味わい、途中から接続を切って、いちゃいちゃした。そして、甘いバレンタインの夜を堪能した。
2月15日(火)の朝5時、真珠は邦生を起こした。
「マーチを高岡に持っていきたいから手伝って」
「OK」
それで邦生は、起きて取り敢えずトイレに行ったのだが、おしっこの出方が変である。
「ん?」
と思って股間を見ると、“ちんちんが見当たらない”。
「あいつ、またやったな!」
きれいにタックされていた。
トイレを出てから真珠に言う。
「これ困るよぉ。タック外してよ」
「別に困らないんじゃない?それより出掛けよう」
「うん」
まずマーチに2人で乗って放送局まで行く。ここで真珠が降りて、自分のGSX250Fに乗る。邦生が運転するマーチの後ろを真珠のバイクが走り、高岡まで行く。なおふたりはインカムを付けているので、こういう体制で走っていても、ちゃんと会話ができる。それで信号などで距離が空いた時は、連絡で邦生が待っていたりした。
高岡市内でコンビニに寄り、トイレを借りる。邦生は例によって、凄く後ろの方からおしっこが出るのを体感する。
飲み物(邦生はペットボトルのコーヒー、真珠は紙パックの青汁)とおにぎりを買い、マーチの中で一緒に食べる。それから室内のゴミをできるだけ拾い、ガムテープで座席を掃除する。ゴミ自体もまとめて、邦生の持つリュックに入れた。
青葉邸に到着すると、家の中から千里さんが出て来てくれた。それで千里さんの指定する駐車枠に、マーチを“突っ込んで”駐める(ここはバックで駐めてはいけない。突っ込んで駐めるのがルール:車が家を睨む形にしないため)。
「早朝からお疲れさん。良かったら朝御飯食べていかない?」
「頂きます」
それで頂いたが、千里さんと朋子さんだけが起きていて、子供たちや桃香さんはまだ寝ているようであった。
「君たちゴミがあったら出して」
「ゴミは持ち帰りますよ」
「でも帰りバイクなら荷物を減らしたいでしょ?」
「そうですか?すみません」
「ううん。うちだってゴミは出すからついでだもん」
「ありがとうございます」
こういう所によく気が付くのが千里さんだよな、と真珠は思った。
トイレを借りてからお礼を言い、帰りは真珠のバイクに邦生が同乗して金沢に戻った。これが7時半頃だったので、邦生はそのまま自分のバイクに乗り換えて銀行に出社した。真珠もそのまま大学に向かった。
(結果的に邦生の紳士用スーツはマンションに置き去り!真珠がそれをどうしたかは、読者の想像にお任せする!?)
なお、昨日は真珠がNinja1000で邦生を銀行まで送り、真珠はその後、Ninja1000で学校まで行った。
2月16日(水).
青葉がH銀行に申し入れていた融資の件で梨田課長から青葉に直接連絡があった。
(青葉は練習中だったが、眷属の雪娘が着信に気付いて、スマホをプール内まで持って来てくれた)
「川上さんから申し入れのあった融資の件は審査が通りましたので全額ご融資致しますので」
「ありがとうございます」
「実際の融資の実行は、工事が完了して代金を払う時というので、よいですかね?」
「はい、それで全く問題ありません。よろしくお願いします」
そもそも借りる必要無いし!!
2月24日(木).
月見里折江(玉梨乙子)から邦生に電話が掛かって来て
「融資してもらえたよ。ありがとう」
ということだった。
案件については聞いていなかったのだが、武蔵にテイクアウトを主軸とするレストランを開きたいから、開業資金に2000万融資してという話だったらしい。ランチ店の暖簾分けに近い。スートラの今の経営状態なら、多分そのくらいは3年で返済できると邦生は思った。
なお、スートラ新店舗(スーシシ!)の店長さんは、昔の“数虎”時代からの美人ホステスさんで、今は美魔女主婦をしている人らしい(性別を変更して正式に婚姻している)。40代なのに充分女子大生に見えるとか。本人は「私は生まれてすぐ性転換したから」などと言っていたとか?
「でも吉田ちゃん、すっかり女子社員してるのね」
「え〜?私は普通の男子行員ですけど」
「だって女子制服着てたじゃん」
「男子制服着てますけど」
「だってボタンが左前だったし、ボトムはどう見てもレディス仕様のパンツだったし」
「左前!??」
自分が着ている服をあらためて見てみた邦生は本当にその服が左前になっていることに気付いた。俺いつからこの仕様の服を着てるんだろう?これでたくさん客先も訪問してるぞ?
(1月に長期出張から戻って来て以来!)
落合翠(落合茜=町田朱美の姉)は、2月10日にHonda-Jet
Yellowで能登空港から熊谷の郷愁飛行場に連れてきてもらった。SCC(*4)の車で五反野の女子寮まで移動して妹の部屋に入った。
翠は自分ひとりのためにビジネスジェットを能登空港まで往復させてくれたのに恐縮していたが、§§ミュージックとしては、事務所の大黒柱のひとりである、町田朱美が万が一にも感染する事態になると数十億円規模の損害が出るので、ビジネスジェットの往復くらい、安いものなのである(実際パイロット代を入れても1往復5万円程度)。実際昨年春に濃厚接触者になっただけで7-8億円規模の損害が出ている。
(*4) SCC=§§ call center §§ホールディングが所有する専用ハイヤー会社で、原則として§§ミュージック・♪♪ハウスのタレント(伴奏者を含む)、信濃町バンドのメンバー、両社およびあけぼのテレピの社員、数人の重要な関係者(青葉や千里、丸山アイなど)とその家族しか乗せない。
またA契約・A−契約(*5)のタレントは担当ドライバーを原則として固定にして、多数の接触が起きないようにしている。ドライバーは同居家族を含めて外食・会食禁止、毎日の体温報告、うがいの励行、定期的な感染検査など、厳しい健康管理をされている。むろん、その分給料も高い。
(*5) A−(エーマイナス)契約とは、正式名ではなく俗称で、B契約ではあるものの、報酬はA契約と同じという“運用”である。三田雪代・山本コリン・セレン・クロムなど、数人の信濃町ガールズがこの運用になっている。A契約との違いは、マネージャーが付かないこと、従って営業してもらえないこと、そしてデビューしたタレントとはみなさないので、信濃町ガールズに在籍したままになることである。
マネージャー不足と、彼女たちが抜けると信濃町ガールズの人数(それ以上に品質)が足りなくなることから生まれた暫定的な運用である。概してかなり多忙な子が多く、A契約でも売れてない子(石川ポルカなど!)より、よほど収入が大きくなっている。
“暫定”と言っているが、こういう運用の子たちは永遠に無くならない気がする。
翠は幾つかの音楽大学の入試を受けた。
2月14日♪♪音大
2月17日∫∫音大
2月25日東京藝大
そして25日の入試が終わると、着替えや楽譜などの荷物は妹の部屋に放置したまま、入試会場から直接郷愁飛行場までSCCの車で送ってもらう。そして能登空港に飛ぶ飛行機に乗せてもらったのだが、今回はA318(定員100名)が使用された。
「どちらかの団体さんと一緒ですか?」
「いえ、落合さんひとりです」
「私ひとりでこんな大きな飛行機に乗るの〜〜?」(貧乏体質!)
そして翠を送り届けたA318は、翌日(2/26)、“国際大会日本代表選手選考会”に出場する津幡組の選手と数名のスタッフを熊谷に運んだのである。要するにこのためにA318を使いたかったので、翠はフェリー(回送のこと)のついでだった。
これで津幡組の大半が熊谷に来たので、先に来ていた青葉も彼女たちに合流した。ただひとり、高校生の竹下リルだけは、学校があるので、2月28日まで、ひとり津幡で練習を続ける。そちらはジャネが指導してくれることになっている。
3月1日(火).
竹下リル、落合翠らが高校を卒業した。
翠は、家族らとともに、その日の夜、車で引越荷物を積んで東京に出た。そして茜が江戸川区に建てた新居に入居した。家族らは女子寮からの引越を手伝った上で、3月3日、石川県に戻った。しかしこれで落合茜(町田朱美)と月乃岬(東雲はるこ)が女子寮を退寮して独立した。仕事場への移動はこれまで通り、マネージャーの倉橋光枝や東丸愛美がやってくれるし、料理や買物については新しく雇った付き人の男の娘!篠崎希(しのざき・のぞみ)がすることになっている。彼女は、青葉の高校の後輩(合唱軽音部)である。琵琶が物凄く上手い。
一方、竹下リルは、卒業式が終わったらすぐにお母さんの車で富山空港に移動。そこに迎えに来たHonda-Jet で熊谷に飛び、そこから更にヘリコプターで東京ヘリポート(新木場)まで運んでもらって、深川アリーナに入った。明日から大会に出るリルにできるだけ体力を使わせないための処置である。
一方、他の津幡組はこの日の朝、熊谷から深川アリーナに移動している。
今の時期は、深川アリーナはサブ・プール(4レーン)のみ開放しているので、メインプール(8レーン)を選手たちのために開けた。
(リルと同学年の参加者には、卒業式の出席を諦めた人も多かったようである。これも福岡世界水泳が5月などという変な時期に設定されてしまったせいである。1人だけビジネスジェットとヘリコプターで運ぶなんて、運営資金が豊富な津幡組にしかできないワザである)
国際大会日本代表選手選考会は、3月1-5日となっているが、1日は練習日で競技は2日からである。今回の津幡組の参加スケジュールはこのようになっている。
長距離組(川上・南野・金堂・竹下・(福山))
3/2 10:00 400m(H)
3/2 16:00 400m(F)
3/3 10:22 400-iM(H)
3/3 11:40 800m(H)
3/3 16:46 400-iM(F)
3/4 16:00 800m(F)
3/5 15:30 1500m(Time-F)
H=Heats F=Final
※福山希美は400m free, 400m iM のみエントリー。
200m個人メドレー(金堂・竹下・福山・広島)
3/4 11:36 200-iM(H)
3/4 17:25 200-iM(F)
金堂・竹下は3/4 16:00 に800mを泳いだ後に、17:25から200m個人メドレーを泳いだ。若くないと絶対できない物凄いスタミナである。
短距離組(福山・広島)
3/3 10:41 200m(H)
3/3 17:00 200m(F)
3/4 10:56 100m(H)
3/4 17:02 100m(F)
3/5 10:00 50m(H)
3/5 16:15 50m(F)
唯一の男子、筒石さんの日程はこうなっている。
3/2 11:54 1500m(H)
3/3 16:00 1500m(F)
3/4 11:08 400m(H)
3/4 17:12 400m(F)
3/5 15:58 800m(Time-F)
日程は基本的に午前中に予選を行い、午後は休んで、夕方から決勝を行うスケジュールである。タイム決勝は最終組(過去のタイムが速い人8人)のみを夕方から行い、それ以外の人は午前中に泳ぐことになる。
例によってドーピング検査も厳しい。3月2日の予選終了後に津幡組全員検査され、各競技の決勝後にも、決勝に出た人全員が検査された。更に最終日は午後にまた津幡組は全員検査された。だから青葉は4競技の決勝に出たので合計6回検査されている。多分津幡組の成績がいいのて、特に厳しい検査をされるのかも知れない。しかしその度に、ほぼ全裸になって、JADAの人に見られながらおしっこするというのは、いつものことで慣れてるとはいえ、やはり恥ずかしい。
(服の中に他人の尿の容器を隠し持ち、おしっこしているように見せてそこから偽尿を出すという不正が横行したため、ほぼ全裸にされることになった。男子では偽のペニスを容器に取り付けて、そこから出してみせる者まで居た)
さて競技結果だが、女子長距離陣の成績はこのようであった。
1500 1.川上 2.竹下 3.南野 4.金堂 5.永井
800m 1.川上 2.金堂 3.永井 4.竹下 5.南野
400m 1.竹下 2.金堂 3.川上 4.福井 5.南野
400i 1.金堂 2.川上 3.竹下 4.南野 5.福井
代表には川上・竹下・金堂の3人が確定である。というか津幡組で代表を独占した。福井希美は400mで4位、400m-iM で5位に食い込んだが、代表には届かなかった。津幡組以外では、永井蒔恵が800mで3位に食い込んだ。南野と永井は補欠としてブダペストに行くことになるだろう。
200m個人メドレーでは、日本記録保持者の金堂多江が1位、竹下リルが2位になって、津幡組が代表を独占した。金堂は200-iM 400-iM の二冠で、個人メドレー第一人者の貫禄を示した。広嘴さんが3位、福山希美が4位、榎箸さんは5位、広島夏鈴も6位に入った。2〜6位はほとんど同着に見えた。
短距離組では、福山希美は200mて3位、100mで5位。広島夏鈴は100mで3位、200mで4位で、2人とも世界水泳の代表は逃した。4月の日本選手権でアジア大会の代表の追加招集を目指す(世界水泳の代表は自動的にアジア大会の代表にもなる)。2人は3位なので、補欠としてブダペストには同行することになるだろう。
男子で筒石さんは、400mで1位、1500mで2位になってこの2種目で代表になった。800mは僅差の3位で代表を逃した。但し補欠登録されるはずである。
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