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■春化(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2020-05-22
 
女将(おかみ)さんは客が途切れた所で、渚を店の外に連れ出して、値段が少し高めの洋食屋さんに入り、好きなものを頼んでと言った。渚はカツカレーを頼んだ。女将さんはハンバーグ定食を頼んだ。
 
少し世間話などしながら食事が来るのを待つ。やがて料理が来るので世間話をしながら食べる。食事が終わってデザートが出て来た所で、女将さんは渚の前に銀行の封がしてある札束を置いた。こんな現金見たことないが、きっと100万円だ。
 
そして女将さんは頭をテーブルの上につけるまで頭を下げて言った。
 
「お願い、息子と別れてくれない?」
 
「どういうことでしょうか?」
 

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「あんた、息子と付き合ってるよね?」
「ええ、見ての通りですが」
「結婚するつもり?」
「指輪を見せられて受けとってくれと言われました」
「受けとったの?」
「今年中に返事すると言いました」
「で、気持ちは?」
 
「私、今の状態では彼と法的に結婚できないので、取り敢えず法的に結婚できるようになってから、再度話し合いたいと言っています」
 
「その結婚できないというのは・・・」
「私、男ですから」
 

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「だよね。あんた女にしか見えないけど」
「それでホステス10年やってたんですけどねー」
 
浜川渚は1987年7月6日20:26、青森県佐井村に生まれた。仏ヶ浦で有名な下北半島西岸の小さな村である。中学まで村で育ち、高校はむつ市の高校に下宿して通った。高校卒業後の2006年春、大阪に就職で出て来たが、女装癖!がバレてクビにされる(不当解雇だと思う)。バイク(Honda 250CF "Hornet" MC31) を買ったばかりで絶対に手放したくなかったので、高賃金を期待できそうな所としてゲイバーに面接に行き即採用。でもお客としてきた女性客に
 
「あんた女にしか見えないから、こんな所に居ないでうちにおいでよ」
と勧誘され、お店には謝って在籍3ヶ月でそちらに転職。キャバクラ嬢となった。
 
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それから10年間、2016年までキャバクラ3軒で働いたが、勤めていたお店が潰れたのを機に、自分の年齢も考えて“カタギ”の商売に転じるとにした。2年ほどコンビニでバイトしていたが、昨年2018年に今の町食堂Mount Fujiyamaに転職した。
 
この店名は創業者の苗字が藤山だから!でも常連客からは“富士食堂”と呼ばれていたりする。店の壁に昔の銭湯か?という感じの富士山のタイル絵があり、この店のシンボルになっている。『珍百景』でも取り上げられたことがある。
 
渚自身がよくここにお昼を食べに行っていたのと、お店の“若店長”藤山竜太がコンビニの常連で、お互いに知っていた前提で、彼のお父さんが亡くなり、人手が足りないので、よかったら手伝ってくれないかと頼まれたのである。
 
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竜太は店長ではあるが、実は料理音痴である!それで実際の料理は彼の母親・藤山峰子が作っていて、竜太は会計とか配膳・出前・仕入などの作業をしていた。渚は女なら少し料理の手伝いとかできるだろうと見込まれたのだが、実は峰子より上手かった!
 
それで渚が入ってからのこの食堂は、渚が主として料理を作り、峰子はサポートに回ることになった。おかげで父親の死後一時期客が減っていたのが、持ち直してきた。そして竜太は先月、渚にプロポーズした。
 
実際には渚と竜太はもう昨年の秋から恋人同士の関係にあり、既に半同棲状態にある。一応渚はアパート暮らしなのだが、竜太が渚のアパートに泊まることもあれば、渚が竜太の家(お店が入居しているマンションの4階の部屋)に泊まることもある。
 
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そういう関係なので、今更「息子と付き合ってるよね?」は無い。付き合ってもいない男女が一緒に泊まるわけがない。むろん竜太は渚が肉体的に男であることは承知であり「自分はゲイじゃないけど、渚のことは好き」と言っている。
 

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ちなみに渚は10年間のキャバクラ嬢生活の間に、去勢する一方女性ホルモンを摂取していて、バストは現在Bカップである。喉仏は削り、足や脇・顔などの無駄毛も永久脱毛しているので、女性として全く違和感が無い。むろん堂々と温泉の女湯に入る。肩なども、張ってくる前に去勢したので、女性のような撫で肩である。ウェストもくびれ、ヒップは大きい安産型だ。
 
竜太とのナイトライフでは、M傾向のある竜太をたっぷり言葉責めして高揚させてから、最後は口や手あるいはスマタで逝かせている。渚はAを使うのは好きではないので、竜太との関係では使用しない。渚はキャバクラ勤めの時期はお客さんには一度も身体を許しておらず、一度50代の既婚男性と半年ほどにわたり恋愛をしたことがあるだけである。彼が既婚ということもあり、別れたものの、彼のセックスは優しく、渚に「女としての自信」を持たせてくれた。本当に褒め上手な人だった。実はスマタの技術は彼に指導してもらったものである。「だいぶうまくなった。もはや普通の女より気持ちいい」と言ってもらった。
 
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なお、渚はおっぱいもあるし、下は常時タックしていて、実は竜太は渚の男性器を目にしたことがない。単に“穴”が無いだけだが、実際にはスマタで竜太を逝かせてしまうので(元彼に褒められた程だし)、渚の数年前に1年ほど女性と交際したことのある良太にも、渚に“穴”がないことに、最初の数回は全く気づかなかったらしい。男だなんて信じられないというので、あそこを接着していることを手で触らせてみせて、やっと納得してくれた。竜太は渚が男と知っても別れるとは言わなかった。玉が無いのなら女と同じなんて言ってくれた。
 
「その内、性転換手術とかするの?」
「自分としては今のままでも特に不便してないんたけどね」
「女になって僕と結婚してくれない?」
「もう私たち結婚しているものと思ってた」
「だったらアパート引き払って一緒に住もうよ」
「お母さん認めてくれるかなあ」
「今更な気がするけど」
 
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なんて言っていたのだが、どうも案の定、自分が男であると聞いた峰子は、息子と別れてくれと言ってきた。
 
「でも竜太さんはどうおっしゃってるんですか?」
「絶対別れないと言っている。だからあんたから身を引いて欲しい」
「私は別れたくないです。結婚できないなら彼の愛人でもいいですよ」
「愛人?」
 
「店のお客さんにも馴染んでもらっているし、料理長兼竜太さんの愛人とかは、いけません?私、入籍(誤用)にはこだわりませんよ」
 
「それならいいかも知れないけど・・・でも私、孫の顔を見たいんだよ」
 

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「私、物凄くひょっとしたら赤ちゃん産めるかも」
と渚は言った。
 
「卵巣の移植手術とかあるんだっけ?」
「私、わりと霊感強いんですよ。自分が赤ちゃんに授乳している姿を遠視したことがあるから、自分は産めるのかも知れないという予感があって」
 
「へー」
 
「最悪ですよ、竜太さんの種であれば、私の遺伝子上の子供でなかったとしても構いませんよね?」
 
峰子は一瞬考えたものの
「構わない」
と言った。
 
「だったら、女将さん、この100万円もらってもいい?」
「うん」
「それと1ヶ月くらい休みもらえません?行ってきたい所があるの」
「いいよ。海外で性転換手術受けてくるとか?」
 
それには渚は答えず
「ちょっと準備も必要だから、そうだなあ。9月下旬から10月上旬くらいまで。連休にぶつけて9月21日(土)から10月14日(日)くらいまでお休みもらませんか」
と渚はスマホのカレンダーを見ながら言った。
 
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「うん。OK」
「それで私が竜太さんの赤ちゃん産めそうだったら結婚を認めてください。自分で産めそうでなくても、女将さんが孫の顔が見られるように何とかしてみます。それで私はこれまで通り料理長兼竜太さんの愛人ということで」
 
「考えてもいい」
 

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それで渚は9月から10月に掛けて3週間ちょっとのお休みをいただくことになった。その夜、竜太は店が終わった後、渚と一緒に彼女のアパートに来て彼女を抱いた上で言った。
 
「俺、絶対お前と別れないから。休みを取るのはいいけど、絶対ちゃんと帰ってこいよ。そして俺の指輪を受けとってくれ」
 
渚は返事した。
「帰ってくるよ。心配しないで。指輪を受けとるかどうかはその時決めさせてね」
 

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それで渚はもらった100万円で、バイク店に行きゴールドウイング・ワルキューレ(Gold Wing Valkyrie, or GOLDWING F6C 1832cc 水平対向6気筒!)の中古を買っちゃったのである。それで3週間どこかにツーリングしてくる魂胆だ。町食堂に転職して以来全く休めずツーリングできていなかったので、欲求不満が溜まっていた。
 
ワルキューレって女戦士という感じで格好いい!と思った。なんか派手なバイクだし。これまではCB600F Hornet(PC36)に乗っていたが、売却してワルキューレの購入資金の一部に充てた。
 
女将さんに「準備が必要」と言ったのは、バイクの買い換え・受け取りに時間が必要だったからである! 渚は女の身体になりたくないわけではないが、実は手術を受けるのが少し恐い。「痛いよぉ」とか「死ぬかと思った」なんて話を聞くとビビってしまう。
 
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竜太との関係は愛人でもいいかなと思っている。誰か友人にお金を渡して代理母になってもらえないかなあ、などとも考えていたのである。“子宮が遊んでる”子はたくさんいるし。人工授精とか面倒くさいから、一晩竜太と寝てもらって妊娠してくれてもいいし。
 

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H君は明日のペニス移植手術を控えて入院していたのだが、この日(2019.8.7). 急にお腹の調子が悪くなり、落ち着いた後トイレに来た。そしておしっこをしたら“出てくる感じ”が違うので、自分のお股を見てみて仰天した。
 
今までは、何も無いお股に、おしっこの出てくる穴がポツンと開いているだけだったのが、皮膚に縦の亀裂ができていて、おしっこはその亀裂の中から出てきているのである。亀裂のあちこちからはみ出してきている感覚なので、指でその亀裂を開いてみた。
 
すると亀裂の中の1ヶ所からおしっこは出てくるようである。
 
やがておしっこが終わった時、その付近一帯がたくさん濡れている。それでトイレットペーパーを取って拭いたが、たくさん拭かなければならず、大変だった。亀裂を開くのに使った左手の指も濡れているのでそれも拭く。
 
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なんでこういうことになっているんだろう?という疑問はあったものの、取り敢えず便器から立ち上がり、パンツを穿き、ズボンを穿く。個室を出て手を洗い、部屋に戻った。
 
体調はいいみたいなので、また本を開いてさっきの続きを読む。この本のいい所は、ひとつひとつの話が短いので「続きが気になって」読み続けて夜更かししたりすることがないことである。2〜3個読み飛ばしても平気だし、1度読んだのをまた読んでしまっても気にならない。それでなかなか結末も楽しめる。
 
それで読んでいる内に唐突に、そのことに思い至った。
 
「もしかして、俺、女になってない?」
 
それでベッドの周囲のカーテンを引いて他の患者さんからは見えないようにした上で、ベッドの上でズボンとトランクスを脱いでみた。そしてお股をあらためてよく見てみる。
 
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うん、これって女のお股って気がする。
 
女のお股なんて、じっくり見たことはないけど、母ちゃんのお股がたぶんこんな感じだった気がする。母ちゃんのお股をじっくり見たわけではないが、噂によると女のお股って、なんか割れ目があって、その中におしっこの出てくる所があるんだと聞いた気がする。それって、まさに今の俺のお股じゃん!
 

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H君はドキドキしながら、その“割れ目”を開いてみた。あらためて観察する。
 
おしっこが出て来たのは・・・ここみたい。なんか穴がある気がする。それより少し手前になんだかコリコリした所があって触ると凄く気持ちいい。まるで、ちんちんがあった頃、それをいじっていた時のような気持ち良さ。これって何なんだろう?そしてずっと指を後ろのほうにやっていくと、直接は見えないのだが、割れ目の一番後ろの所に、おしっこが出てくる穴より大きな穴があることに気づく。
 
これは何だろう?これも何か出てくる穴?うんこが出てくる穴は別にあるし。ここからは何が出てくるんだろう?と考えたが分からなかった。
 
H君は10分くらいそこを観察していたが、あまり長時間見ていてはいけない気がして、トランクスを穿き、ズボンもあげた。そして手をウェットティッシュで拭いた。
 
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再度ベッドの上で本を読んでいるが、急に気になる。
 
それで本を左手で持ったまま、右手を毛布の中でそっと下にやり、服の中に入れ、割れ目の中に入れて、例のコリコリした所を触る。
 
なんか凄く気持ちいいんですけど!?
 
H君は本は放置して、目を瞑り、そっとその快感に身を委ねた。
 

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最初どうすればいいのかよく分からなかったものの、その内そこの上で指を往復させたり、回転したりすると気持ちいいことに気づく。
 
これいい〜〜!こんな感覚初めて!ちんちんいじってるより気持ちいい気がする!快感が「ダイレクト」な感じなのである。
 

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