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■お気に召すまま2022(20)

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モナの歌が終わったところで“緞帳”(どんちょう)が降りてきて、画面を覆う。
 
その緞帳の隙間から青いドレス姿のアクアが出てきて最後の口上を“男声で”述べる。
 
「女がエピローグ(終わりの挨拶)をするというのも流行りませんが、座長が冒頭の挨拶をするよりはまだマシかも知れません。『良きワインに枝看板は要らぬ』(*112) と申しますが、良き芝居にはエピローグなど必要無いのでしょう」
 
「しかし本当に良いワインには本当に素敵な枝看板があったりするものです。そして良いお芝居は、良いエピローグをすることで気持ち良く見終えられるものです」
 
「でもそれを私に任せるなんて大間違いですね!私は良い口上ができないばかりか、だいたい皆様に気に入って頂けるような良い演技もできません。土下座して、気に入って下さいとおねだりしても仕方ないですし」
 
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「私に残された道は、皆様におまじないを掛けて気に入ってもらえるようにしてしまうことくらい。まずは女性の皆様へ。ペポリカ・チェルシカ!皆様が好きな人に(*109) そそぐ愛に掛けてこのお芝居が皆様を楽しませてくれますように。次に男性の皆様へ。ペポリカ・チェルシカ!皆様が惚れた相手にそそぐ愛に掛けて―ニヤニヤしておられる所を見ると恋愛が嫌いという方は少ないようですね―皆様と相手のかた(*109) との愛に掛けて、このお芝居が皆様を楽しませてくれますように」
 
「もし私が女だったら(*113)、私を喜ばせるようなおひげの方、私を好きになってくださりそうなお顔の方、私が苦手でない吐息の方、の多くにキスをしてさしあげるのですが。そして素敵なおひげの方、素敵なお顔の方、素敵な吐息の方はきっと皆さん、私がお辞儀をして下がる時に拍手をしてくださるでしょう」
 
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アクアはそう述べると、ドレスの裙を両手で持ち膝を曲げる挨拶(カーテシー)を笑顔でしてから緞帳の中に消えた(*111)。多数の拍手が鳴り響く。
 
アクアが歌う『チェルシカの天使』(*114) (大宮万葉作詞作曲)が流れる。緞帳がいったんあがり、画面に出演者の多くが並んでカメラに向かって手を振った。
 
(この場面は撮影最終日に撮ったので、その日来ていなかった人はここには映っていない)
 

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(*109) 原文では
O women, for the love you bear to men,
O men, for the love you bear to women
 
となっていて、女性客には「男性への愛」、男性客には「女性との愛」と言っているが、恋愛相手の性別は限定しないほうがよいという考え方から、この映画では、好きな相手・惚れた相手、という表現にした。
 
宗教規律の厳しい国の版では敢えて性別を限定した訳語を当てた所もある。
 

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(*110) 洞窟前のセットで緞帳が“降りる”のはCGである。降りた緞帳からアクアが出てくる場面以降は越谷の小鳩ホールで撮影した。出演者一同が春日部の撮影スタジオからバスで越谷に移動してから撮影している。女優さんたちはお化粧直しもしている。
 
越谷の小鳩ホールのステージには、春日部のスタジオの洞窟前セットを模したセットが作られていて、そこで最後のカーテンコールを撮影している、ただし洞窟は書き割り!であり、楽士たちは木製のスツールに座っている。よりお芝居っぽく見せるためである。
 
(*111) ロザリンド役のアクアが緞帳の内側に戻る時、カーテン内にも一瞬青いドレス姿の人物が居るのが見える。これは映画公開の直後に発売されたDVDでもしっかり確認できる。顔は映っていないが、海外ではこれに気付いた多くの人が「挨拶したのがアクア弟で、カーテンの中に居たのがアクア姉で、ふたりは同じ衣裳を着けていたのだろう」と言った。
 
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映画会社は中に居たのはボディダブルの今井葉月ですと説明している。
 

(*112) 原文 good wine needs no bush. 直訳すると「良いワインには木の枝は要らない」。ここで bush というのは、ワイナリーや酒屋などで、その年の新酒ができた、あるいは入荷した時に、そのサインとしてぶどうのツタの葉(grape vine leaves) をまるで暖簾(のれん)のような感じに、店の軒先に飾るものである。bush に対する定着した訳語が存在しないので“枝看板”と訳した。
 
日本の酒蔵で新酒ができた時に杉玉を飾るのと同じ風習である。元々古代ローマの風習らしく、日本の杉玉もこの風習が伝わって日本風にアレンジされて生まれたものだろう。
 
要するにこの言葉は、良い品質のものには宣伝は不要であるという意味。
 
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ロザリンドの口上では、よく言われる言葉であるかのように言っているが、このシェイクスピアの『お気に召すまま』以前には、この言葉が引用された例が見当たらないらしい。俗世間で言われていたことばなのかも知れない。
 
(シェイクスピアのオリジナル格言だったりして)
 

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(*113) この口上は“ロザリンド”のセリフではなく“ロザリンド役の俳優”のセリフである。だからしゃべっているのは男性なので「私が女だったら」という前提が成り立たないから、ロザリンド役の俳優が観客にキスしてまわることはない。
 
だからこのセリフはロザリンドを女優さんが演じた場合は言うことができない。女性キャラクターを演じる男性俳優のみがこの口上を言うことができる。
 
この口上は現実と虚構が入り乱れる、この劇にふさわしい締め口上だった。
 
アクアがロザリンド役をしたからこの口上は言えたのである。
 
もっとも“アクアは女なのか男なのか”という議論を巻き起こすことになるのだが。
 
アクアはこのエピローグを男声で話しているので、海外ではこの映画のロザリンドを“ダブルキャストで演じたアクア姉弟の内の弟のほうMr.AQUA=MAQURA”が述べたものと捉えられた。
 
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(*114) この曲はアクアの8月(映画公開の直前)発売予定のアルバムに収録された曲で、実は映画の完成後に制作された。しかしこの歌の中に出てくる“ハイメン・ペポリカ・チェルシカ”という呪文が映画に使える!と思ったコスモスからの依頼で急遽映画の最後に挿入されることになった。そしてアクアの最後のエピローグ(終わり口上)も録り直された。
 
“ペポリカ・チェルシカ”というのは、2011年8月に青葉がケイの前で言ったジョークが元になっている。この年ローズ+リリーは2年ぶりの新曲
『キュピパラ・ペポリカ』を発表した。この言葉はケイが夢の中で聞いたことばでケイ自身も意味が分からないと言った。ところがその時青葉は言った。
 
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「え?スペイン語でしょ?」
「スペイン語なの?」
「マリさん、スペイン語できるし。だから書いたんだと思ったのに」
「どういう意味?」
 
「cupi para peporica, cupi para celusica って定型句ですよ」
「へー」
「peporica(ペポリカ) も celusica(チェルシカ)も香辛料の名前。peporicaはすごく辛い唐辛子。celusicaの方はあまり辛くないです」
「ほほお」
 
「paraは英語の for に当たる前置詞」
「あ、それは分かる」
「cupiは cupido の省略形で天使のことです」
「なるほど」
「だから、ペポリカの天使、チェルシカの天使、というので、これは恋に効く呪文として知られてるんです」
 
「ほんと!?」
「嘘です」
 

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今回青葉はアクアの“Angel High”というアルバムに入れる曲を書いてほしいと言われて、天使というのから11年前のジョークをふと思い出した。それで『チェルシカの天使』という曲を書き、曲の一部にケイの許可を得てローズ+リリーの『キュピパラ・ペポリカ』のメロディーの一部をチェレスタで取り込んでいる(チェレスタは通りがかり!の氷川詩津紅を徴用して弾いてもらった)。
 
映画に使うという話になってから歌詞を少し改訂してもらった。“クピド・ペポリカ・チェルシカ”となっていた歌詞を“ハイメン・ペポリカ・チェルシカ”に変えてもらった。それに元々クピド(キューピッド)もハイメンも愛の神エロテスのメンバーである。
 
エロテスのメンバー:−
 
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●エロス(愛の芽生え/=キューピッド(クピド)/日本でいえば愛染明王)
●アンテロス(愛のお返し)
●へディロゴス(甘いおしゃべり)
●ヘルマフロディトス(愛の結合/日本でいえば歓喜仏or道祖神)
●ヒメロス(愛の衝動)
●ヒュメナイオス(結婚と生殖/=ハイメン)
●ポトス(不在の人への愛)
 

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かくしてこの映画のサウンドトラックは下記のような構成になった。
 
『お気に召すまま』(アクア/ヒロシ版)
『緑の森の木の下で』★(ヒロシ)
『吹けよ吹け冬の風よ』★(ヒロシ)
『愛しのオリバー』★(マルティン・グローツァー)
『私を口説いて』(アクア)
『鹿仕留めたら何もらう?』★(松田理史)
『それは彼女と彼でした』★(金平糖)
『ごめんね。私女の子だったの』(アクア)
『アーデンのカノン』(アーデンの森アンサンブル)
『婚礼は大ジュノーの栄誉』★(金平糖)
『お気に召すまま』(坂出モナ with 金平糖)
『チェルシカの天使』(アクア)
 
12曲もの楽曲が使用されているが、昔からこの劇はミュージカルなのではという意見もある。12曲中★を付けた5曲がシェイクスピアの戯曲に歌詞が掲載されているものである。その他に婚礼の場でも楽人たちの演奏が指定されていて、映画ではそこで『アーデンのカノン』を演奏した。
 
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『チェルシカの天使』の歌に乗せてタイトルロールが表示された。
 
ロザリンド アクア
ギャニミード アクア
 
ここはいつものようにラテン文字圏版では
 
Rosalind SAQUMA.
Ganymede MAQURA.
 
と表示されてから、文字が躍るように動き回って
 
Rosalind MS.AQUA
Ganymede MR.AQUA
という形に落ち着くアニメーションになっている。
 
以下タイトルロールが続く。
 
オーランド Stephan Schmelzer
 
フィービー 七浜宇菜
 
タッチストーン Martin Grotzer
 
シーリア(エイリーナ) 姫路スピカ
 
ジョージ 佐川伝二
フレデリック 光山明剛
 
ジェイクズ Linus Richter
 
オードリー 坂出モナ
シルヴィアス 鈴本信彦
マーガレット 栗原リア
ウィリアム 花園裕紀
 
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オリバー Christof Hennig
アダム 山村俊朗
 
アミアン 中山洋介
ルブラン 松田理史
アルジャン 江藤レナ
ニコラス 西宮ネオン
 
マーテクスト牧師 揚浜フラフラ
ルボー 木取道雄
シャンジュ イービル小林
 
雌ライオン 常滑真音
ハイメン 槇原歌音
 
ヒスペリア 古屋あらた
従者ショコラ 山鹿クロム
従者ビスクィ 三陸セレン
従者マカロン 鈴原さくら
ロザリンドの介添役 水谷康恵・水谷雪花
シーリアの介添役 松島ふうか
ジョージの御者 伊藤春貴
 
楽人
リーガル 村山千里
ヴァイオリン 鈴木真知子・伊藤ソナタ・桂城由佳菜
ヴィオール 生方芳雄
バロックフルート 古城風花・近藤七星・鮎川ゆま
指揮 蘭若アスカ
 
ダンサー 信濃町ガールズ
レスラーたち 北陸プロレス
 
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老牧師 August Sielmann
 
語り手 今井葉月
女優係 夕波もえこ
男優係 立山煌
ドイツ人楽屋係 本田覚
説明板係 広瀬みづほ
 
(間を空けて)
 
コリン 藤原中臣
 
(間を空けて)
 
原作:ウィリアム・シェイクスピア
脚本(英語)幹本ダイアナ
脚本(日本語)小森勇子
脚本(ドイツ語)Silvia Belger
脚本(フランス語)Marion Varela
 
大道具 あけぼのTV・大和映像
小道具 あけぼのTV
時代考証 阪口裕子
衣裳 近代衣裳研究所・オーロラ服飾学院・葵デザイン事務所
メイクアップ パーラー今岡
協力 サマーガールズ出版・フェニックストライン・ムーラン
協力 ハイウィット牧場・鐘近牧場
主要撮影場所 ゆりかもめスタジオ(§§ミュージック)
主要録音場所 小鳩シティ(ムーラン)
 
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監督:河村貞治
撮影(助監督):美高鏡子
撮影:矢本かえで
撮影:田崎潤也
撮影助手:香田正和・西原マロン・平井紗耶香
美術監督 屋敷ラムダ
視覚効果 まほろばグラフィックス
録音・音響効果 まほろばサウンド
 
プロデューサー:大曽根三朗(大和映像)、August Sielmann (Mond Blume)
サブプロデューサー:秋風コスモス(§§ミュージック)
 
最後に
 
THE END

das Ende
Fin
 
と表示されて、その下に
 
著作制作:YMA (Yamato Eizo/ Mond Blume/ Akebono TV)
 
と著作権表示が出た。
 
 
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お気に召すまま2022(20)

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