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■お気に召すまま2022(13)

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場面が変わる。広瀬みづほは「公爵たちの洞窟前」と書かれた板を持っている(原作第4幕第2場)。
 
貴族たちが仕留めた鹿(*66) を運んで来る。
 
ジェイクズ (Linus Richter) がそれを見て言う。
「この鹿を仕留めたのは誰?」
 
「私です」
とルブラン(松田理史)が言う。
 
「卿をローマの凱旋者のように公爵の所に連れて行こう。鹿の角を付けてやったらどうかね?こんな時に歌う歌は無いかな」
 
「ありますよ」
とルブラン。
 
「じゃ歌って」
とジェイクズ。
 

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「だったら僕が伴奏しよう」
と言ってアミアン(中山洋介)がリュートを洞窟の中から持ってくる。彼がリュートを鳴らしてくれて、ルブラン(松田理史)は歌う。
 
『鹿仕留めたら何もらう?(What shall he have that killed the deer)』
(シェイクスピア作詞・加糖珈琲訳詞・ヒロシ作曲)
 
「鹿仕留めたら何もらう?」
「鹿の毛皮と付ける角(つの)」
「帰りながら歌うんだ」
「他の物は荷物だけど」
「角(つの)付けてても、おかしくない」
「一家伝来の冠だ」
「親父の親父も付けた角(つの)」
「親父だって付けた角(つの)」
「角(つの)だ、角(つの)だ、立派な角(つの)だ」
「笑うんじゃねーよ、立派な角(つの)」
 
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松田は鹿の角を“取って”自分の頭に両手で付けてこの歌を歌った。
 

監督の「カット」という声が掛かる。でもカメラは映し続けている!
 
「それ足と足の間に付けてやっても良かったな」
と中山洋介(アミアン役)は言う。
 
「いや。それやったら、役から降ろされそうだから自粛しときます」
と松田理史(ルブラン役)。
 
「宇菜ちゃんあげようか?ちんちん欲しくない?」
と中山洋介。
 
「要らなーい。ヒロシちゃんこそ、奧さんのお土産にしたら?」
と宇菜(フィービー役)。
 
「あいつ面白がってぽくに入れようとするだろうからやめとく」
とヒロシ。
 
「ああ、フェイちゃんならやりそう」
と数人の声。
 
ヒロシと妻(夫?)のフェイとの関係では、フェイが男役でヒロシが女役なのは友人たちの間でも、ファンの間でも!知れ渡っている。(フェイがブログに書いている!家庭内ではヒロシはほぼ女装、フェイは男装らしい。ふたりは実はゲイの夫婦に近い/事実上のビアン夫婦という説もある。実際2人揃って可愛い服を着て外出しているのもよく見掛けられている)
 
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「それ先が尖ってるし枝分かれしてて入れられる側は痛いよね」
と松田理史まで嫌そうに言う。
 
「でも宇菜ちゃん男の子になりたくないの?」
「それは愚問だけど、性転換手術までするつもりは無いよ。それにぼくが性転換したら人気急落して事務所からも叱られそうだし。まあアクアが性転換して男になるよりはまだショックは少ないかもしれないけど」
 
(以上の会話は撮影された後で、撮影していることを出演者に報された!)
 

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(*66) 撮影に使用したのは2mほどもある鹿の“ぬいぐるみ”である!小道具係さんの力作(大道具ではないのか??)。鹿っぽい色の布を縫って作り、中に“プチプチ”を詰めたもので重さは2kgほどである。これを男性4人(アミアン・ルブラン・アルジャン・ニコラス:中山洋介・松田理史・江藤レナ・西宮ネオン)で、いかにも重そうに運んできた。
 
角(つの)の素材は樹脂。左右対称のものを3Dプリンタで作ってあり、本体から簡単に外れるようになっているので、それを松田理史はひょいと取り外して、両手で頭に乗せて歌を歌った。
 
この映画はリアリズムを全く求めていない。むしろこれが“お芝居”であることを様々な手法で強調している、だからここではリアルの鹿の死体も使わないしCGで描き加えるなどということもしない。
 
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場面が変わる。広瀬みづほは「アーデンの森のどこか」と書かれた板を持っている(原作で敢えて省略された場面)。
 
木陰で男 (Christof Hennig) が寝ている。男はヒゲも伸び放題、髪はボサボサで(*67) 着ている服も薄汚れてくたびれている、
 
そこに雌ライオン(常滑真音!)が静かに歩み寄る。雌ライオンは男の様子を見ている。男の首には大きな緑色の蛇が巻き付いている。
 
そこに男が1人 (Stephan Schmelzer) が通りかかる。寝ている男を見てギョッとする。彼は一瞬ためらうような顔をしたが、意を決したように近づくと、寝ている男の首に巻き付いていた“蛇”を両手で掴み、向こうの方まで放り投げた。
 
そして彼はライオンに気がついた。
 
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ライオンが「がおー」と声をあげて威嚇する。男はライオンを睨む。
 
ライオンが男に飛びかかってくるが、格闘になる。
 
寝ていた男がさすがに目を覚まして起き上がる。目の前で起きている格闘を見て声を出せずに様子を見ている。
 
やがて格闘の決着が付き、ライオンは動かなくなった。戦っていた男は大きな息をしていた。
 

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(*67) この撮影のため、オリバー役のクリストフ・ヘンニッヒは一週間ヒゲを剃らずに伸び放題にして撮影に臨んだ。今回の映画でほぼ唯一リアリズム路線?で撮影したシーンである。彼は
 
「だったら服も一週間着てますよ」
と言って、一週着続けた服で撮影している。更に撮影直前に土の上でゴロゴロ転がって服を泥だらけにした。なお衛生上の観点から下着だけは毎日交換していた。
 
撮影後シャワーを浴びて新しい服に着替えたら、とても着持ち良かったらしい。その後、理容師さんにヒゲを剃ってもらい、髪も整えてもらってから、この後に出てくる、ギャニミードに会いに行くシーンの撮影に臨んだ。
 
「ほんとに生まれ変わったような気持ちで撮影できた」
と言っていた。
 
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「すっきりしたでしょ?」
「うん。なんか性転換でもしたような気分だ」
「ほんとにお股まですっきりしてたりして」
 

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場面が変わり、女性用楽屋が映っている。そこにライオンの着ぐるみを着た常滑真音が入ってくる。
 
「いやあ、参った参った」
と言って、“着ぐるみを脱ぐ”。
 
「舞音ちゃん、お疲れ様ー」
と坂出モナ(オードリー役)が声を掛ける。
 
「さすがコスプレ女王」
と姫路スピカ(シーリア役)。
 
「私最初ライオネス役と聞いて、ライオネスという人物名かと思った」
「猫、犬、ライオンとこなして次はクマかパンダか」
「あ、パンダやってみたい」
 
「格闘は結構様(さま)になってたよ」
と七浜宇菜(フィービー役)が言った。
 
「そうですか?相手を殴り倒すつもりでやってと言われたから必死で戦ったけど、簡単に組敷かれて寸止めで殴られた所で死んだふりした」
 
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「さすがレスリングのチャンピオンで柔道二段だよね」
とモナ。
 
「私結構シュメルツァーさん殴ったけど、全く利いてなかったみたい」
と舞音。
 
「まあ普通の女子のパンチでは全く利かないだろうね」
と宇菜は笑っている。
 
「でも今回はセリフが無くて楽だった」
「でもこの後、この楽屋シーンのセリフを英語・ドイツ語・フランス語でアフレコしなければならない」
 
「嘘!?これ撮ってるの?」
「何を今更」
「あ、カメラが居る!」
 

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広瀬みづほが「フレデリック邸」と書かれた板を持っている(原作で省略された場面)。
 
「何、みんなアーデンの森にいるだと?」
とフレデリック(光山明剛)は確認する。
 
「どうもそのようです。前公爵様も、その側近たちも、ドゥボアの兄弟も。そして何やら画策しているのではということです」
とルボー(木取道雄)は言う。
 
「シーリアは?」
「分かりません。しかしドゥボア殿の三男もいるようですから、そこに一緒におられるのかも」
「よし兵士たちを動かして全員捕縛するぞ。兄上もそろそろこの世から引退なさっても良い頃だ」
「ではすぐ手配します」
と言って、ルボーは出て行った。
 

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広瀬みづほが「ロザリンドの家の前」と書かれた板を持っている(原作第4幕第3場)。
 
男装のロザリンドが怒っている。
「一体どうなってんのよ!?もうとっくに2時間過ぎたじゃん。オーランドはどこに居るの?」
 
シーリアが言う。
「あの人はきっと恋に溺れて自分でももう訳が分からなくなってるのよ。きっと弓矢を持って出掛けて、そのままどこかで寝てるんじゃないかな。あ、誰か来た」
 
画面左手からシルヴィアス(鈴本信彦)がやってくる。
 
「こんにちは。お使いで来ました。私のフィービーからあなた様にこれを届けてと言われました。私は内容は見ていないのですが、何やら難しい顔をして書いておりましたので、角(かど)の立つ内容でしたら、申し訳ありません」
とシルヴィアスは言う。
 
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ロザリンドは手紙を一読したが、厳しい顔をして男声で言った。
 
「角の立つも何も、こんな手紙を読んだら忍耐の女神だって怒り出すぞ。これが我慢できるなら何でも我慢できるだろう。女を殴る訳にも行かないから代わりにお前を殴ってやろうか?」
 
「申し訳ありません。フィービーは田舎育ちなものですから、ちゃんとした文章の書き方を知らないんです。どうかお許しを」
 
「この手紙ではぼくは美男ではないし、無礼で高慢で、たとえ男というものが不死鳥のように稀少なものになっても好きになれないと書かれている。いや待て。そもそも女にこんな文章が書ける訳がない。これはお前が自分で書いたか、女を唆して書かせたのではないか?どんなにがさつな女でも、女にこんな手紙が書ける訳がない」
 
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「そんなことはないです。だいたい僕は中身も知りませんし。一体何と書いてあるのでしょうか?」
 
「じゃ読んでやろうか。『私の愛しいギャニミード様。あなたはきっと天使の生まれ変わりなのではないでしょうか』だと。全く何という侮辱だ。私は人間ではないと言っている。こんなひどい言葉は女では思いつかないぞ」
 
「えっと。それが侮辱なのですか?」
 
「更にこう続いておる。『あなたを一目見て以来、私の心は乱れに乱れ、心臓がドキドキと痛んで、もう死にそうな気分です』。要するに、私がいることで気持ちが不安になり、目障りで邪魔だと非難している」
 
「非難には聞こえませんけど」
 
「『あなたの目の色、あなたの声の響き、全てが私を夢中にさせます。どうかこの私の心を静めるために私に会いに来て下さい。そしてもしこの恋が叶わぬものならば、いっそのこと私をあなたの手で殺して下さい』。つまり近くに来たら死にそうだから自分の近くに来るなということだ。これが喧嘩を売る言葉でなくて何だろうか?」
 
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「あのぉ、喧嘩を売っているようには聞こえないのですが」
 
「私に同情してそんなことを言っているのか?だったらあの女の所に行ってぼくの言葉を伝えろ。お前が私のことを愛しているというのなら、私はお前にこう命令する。シルヴィアスを愛してやれ、とな。いいか?シルヴィアス、ぼくは君がぼくに頼まない限りはフィービーを相手にはしない。さぁ、行ってこい。もし君がフィービーを愛しているのならね」
 
それでロザリンドはシルヴィアスを押し出すようにして帰らせた。
 

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