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■お気に召すまま2022(5)

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場面が変わる。広瀬みづほは「どこかの道の途中」と書かれた板を持っている(原作に無い場面)。
 
オーランド(Stephan Schmelzer)とアダム(山村俊朗)が画面右手(舞台なら上手)から歩いてくる。アダムが遅れがちでオーランドは少し待っている。
 
「アダム大丈夫か」
「大丈夫です。あと10kmも歩けば村に出るはずです。頑張りましょう」
 
そこに左手から覆面をした5-6人の男が出てくる。
 
「おい、お前ら、金目のものを置いていけ。そしたら命までは取らん」
と男の1人が言う。
 
「なんで金目のものを出さなければならない?どういう理由か教えてくれ」
とオーランドは言った。
 
「物わかりの悪い兄ちゃんだなあ。そんなに死にたいのか?」
と言って、男が短剣を抜いてオーランドに迫るが、オーランドは彼の手首を握って短剣を落とさせると、彼の腕を取って背負い投げで男を地面に叩きつけた。男は動かない。気絶したようである(実は本当に気絶した!)。
 
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「喧嘩するのか?俺は喧嘩は大好きだ。全員相手にするぞ」
とオーランドが言う。
 
「ごめんなさい!退散します!」
と残った男の1人が言い、みんなで親分を抱えて去って行った。
 
「なんだ? もう終わりか?つまらん」
とオーランドは言った。
 

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公開時の観客の声。
「サンダーバットさん、今回は蹴られなくてよかったな」
「シュメルツァーに蹴られたらマジで男子廃業だろうな」
「実はさっきアクアに蹴られたので既に男子廃業してたりして」
 

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場面が変わる。広瀬みづほは「公爵たちの洞窟前」と書かれた板を持っている(原作第2幕第5場)。
 
洞窟か映っている。洞窟の入口には風が吹き込まないように戸が設けられており、貴族たちがその戸から出てくる。
 
アミアン(中山洋介)がリュートを弾きながら『緑の森の木の下で (Under the Greenwood tree)』(シェイクスピア作詞・加糖珈琲訳詞・ヒロシ作曲)を歌う。森の中の暮らしがどんなに素晴らしいものであるかを歌った歌である。
 
アミアン(歌)「緑の森の木の下で。僕と一緒に寝転んで楽しい歌を鳥のさえずりに乗せて歌おうよ。ここに来て、ここに来て、ここに来て。ここに敵は居ない。ただ冬と荒天があるだけ」
 
(中山は最初に伴奏を録音し、それをヘッドホンで聴きながら録音時にマイクの前で歌を歌った。撮影時にはその伴奏と歌がミックスされたものを聴きながらリュートを弾いた。微妙なタイミングのずれは技術者さんが頑張って合わせた!)
 
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ジェイクズ「もっと歌って歌って」
アミアン「歌ってると鬱になるんだけど」
ジェイクズ「それがいいんだよ。僕はイタチが卵の中身を吸い出すように歌の中から憂鬱を吸い出すんだ」
 
アミアン「今日は喉の調子が悪いんだ。あまりお気に召さないと思うけど」
ジェイクズ「僕が喜ぶように歌われては困る。単に歌ってくれたらいい。さあ2番の歌詞に行こう。1番・2番っていうよね?」
アミアン「お気に召すように呼んで下さい」
ジェイクズ「まあ名前は何でもいい。さあ続きを」
 

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アミアン「まあリクエストされたし適当に歌うか」
ジェイクズ「ありがとう。感謝するよ。でも本当の感謝ならいいけど、心のこもってない“ありがとう”はむしろ不愉快になるよね。あれは猿が2匹出会ったようなものだ。ボーイにチップをやって『ありがとうございます』と言われても、全然嬉しくない。さあ歌おう、黙って聴いてるから」
 
アミアン「じゃ歌っている間に皆さんは夕食の準備をお願いします。そうそう、ジェイクズ卿、公爵が今日はずっとあなたを探してましたよ」
ジェイクズ「今日は公爵を避けていたので。あれこれ議論をしたがるんだもん。僕だって色々考えはするけど、最後は全部忘れてしまう。さあ歌行こう行こう」
 
みんな寄ってきて焚き火の周囲に輪を作る。
 
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アミアン(歌)「野心のある人はここには来ないほうがいい」
一同(歌)「ここでは太陽の下で暮らし、自分の食べる物は自分で探し、何でも得られたものは喜んで食べる。ここに来て、ここに来て、ここに来て。ここに敵は居ない。ただ冬と荒天があるだけ」
 
ジェイクズ「私が昨日考えた詩を提供しよう」
アミアン「よろしく」
ジェイクズ「こんな感じ:ここに来た奴はみんな糞になる。富と楽な生活を捨て、頭の足りない奴が喜ぶ。ダクデイム(ducdame)、ダクデイム、ダクデイム、ここにあるのは馬鹿ばかり。自分もその馬鹿。ここに来たら」
 
アミアン「ダクデイム(ducdame)って何?」
ジェイクズ「ギリシャの呪文なんだよ。これを唱えると馬鹿が寄ってきて輪になる」
 
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輪になって歌っていた一同が一瞬顔を見合わせる。
 
「さて僕は一眠りするよ。じゃね。眠れなかったら古代エジプト以来の長男を呪ってやる」
と言ってジェイクズは洞窟の中に消える。
 
アミアンは「ぼくは公爵を探して来るよ」と言って、リュートを置き、画面右手に消える。
 

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場面が変わる。広瀬みづほは「アーデンの森の別の場所」と書かれた板を持っている(原作第2幕第6場)。
 
オーランド (Stephan Schmelzer) がアダム(山村大造)を支えるようにして歩いてくる。しかしアダムは座り込んでしまう。
 
「しっかりしろ、アダム」
「若旦那様。私はもう駄目です。ここをもう私のお墓にしたいと思います。長い間、ありがとうございました」
「何を言っているんだ?まだお前は死ぬ時では無い。ここで少し休んでろ。俺が何か食べ物を調達してくる。いいか、俺が戻るまでちゃんと待ってるんだぞ」
と言って、座り込んだアダムを置いたまま、オーランドはどこかに走って行く。
 

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場面が戻る。広瀬みづほは「さっきの貴族たちの場所」と書かれた板を持っている(原作第2幕第7場)。
 
貴族たちが森の中で夕食の準備をしていたら、アミアンが公爵を連れて来る。そして食べようとしていたら、そこに抜き身の剣を手に持つ男(オーランド)が現れる。
 
「お前ら動くな。その食事に手を付けようとしたら殺すぞ」
とオーランドが言う。
 
「なんだ?この牡鶏(おんどり)は?」
とジェイクズが言う。
 
(うるさい牡鶏(おんどり cock)→威張ったような口をきく者の喩え)
 
顔色ひとつ変えずに公爵が男に言う。
「いきなり剣を抜いて乱暴なことを言うのは飢えてるからか?それとも物の言い方も知らない田舎者か?」
 
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オーランドが言う。
「前のほうが正解だ。一応街で育った。しかし全く余裕の無い状態で礼儀正しくすることができない」
 
「取り敢えず、ぶどうでもどう?あ?僕が触ったら殺されるか」
とジェイクズ。
 

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「何が欲しいんだ?乱暴なことをせずに、穏やかに頼めば私たちも穏やかに応じられるのに」
と公爵。
 
「飢え死にしそうなんだ。食べさせてくれ」
とオーランド。
 
「座って食べるがいい。歓迎しよう」
と公爵。
 
「そんな優しい言葉を。お許しください。森は荒っぽい場所かと思い、荒っぽい行動に出てしまいました。この剣は納めます」
と言ってオーランドは剣を鞘に仕舞う。
 
「あるいはかつては教会の鐘が鳴ると日曜ごとに礼拝をなさっていた方々なのでしょうか」
 
「そのような日々もあったな。聖なる哀れみに心を動かされて涙したこともあるし、善き人のもてなしを受けて暖かい心を感じたこともある。それが分かったら、そなたもそこに穏やかに腰をおろすがよい。ここにあるものがお前の役に立つなら存分に取って食べなさい」
 
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と公爵は言う。
 

「ありがとうございます。しかし、実は私は哀れな年寄りを一人連れております。80歳をすぎているにも関わらず(*22)、私のためを思い、弱った足をひきずり一緒に付いてきてくれたものが今飢えに苦しんでおります。その哀れな子鹿に餌をやるまでは私が先にお食事に手をつける訳には参りません」
 
とオーランドは泣きながら言った。
 
「だったら、その年寄りもここに呼んでくるがよい。それまでは我々も食べずに待っていよう」
と公爵。
 
「ありがとうございます。あなた様に神の祝福がありますように」
 
とオーランドは言うと、走って行った。
 
(*22) 先の場面でアダムは「もうすぐ80歳になる年まで」と言っているが(テキストによっては70歳)、ここでオーランドは80歳過ぎと言っている。哀れんでもらうためにわざと上の年齢を言ったのか、それともオーランドはアダムを80歳越えと思っていたのかは不明。
 
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公爵が言う。
 
「見るがよい。今もこの世の広大な舞台の上には、様々な人間模様が繰り広げられているのだ」
 
ジェイクズが言う。
 
「その通りです。この世自体が大きな舞台で、全ての人はそこで色々な役を演じる役者なのです。多くの人は生涯の間に7つの役を演じ分けます。最初は赤ん坊。母親に抱かれてピーピー泣いています。次は学生時代。カバンを抱えて学校に通い、教室でノートにペンを走らせます。第3が恋人時代。大きなため息をついて愛しの人に恋の歌を書き送ります。第4が兵隊時代。名誉欲に取り付かれ喧嘩にあけくれ、世間の思惑ばかり気にしています。第5が裁判官時代。太鼓腹にいかめしい目つきで、もっともらしい格言や月並みの言葉ばかりを並べ立てます。第6はもうろく時代。老眼鏡をかけ腰には古ぼけた巾着をさげ、過去の栄光にしがみついている。そして最後に来るのが忘却の時代。全てを忘れて無になる」
 
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やがてアダムを抱えたオーランドが戻って来た。
 
「待っていたぞ。その大事な荷物をおろして、何でも食べさせるがよい」
と後者。
 
「この年寄りに代わり、厚くお礼を申し上げます」
とオーランド。
 
「そうしてくださいまし。私は今、自分でお礼を述べる力もない」
とアダムはかすれるような声で言う。
 
「よく来てくれた。さぁ、どんどん食べてくれ。しばらくは素性は尋ねないことにしよう。煩わしい思いはさせたくないし」
と公爵。
 
オーランドがアダムに食事を取ってやる。アダムは、ゆっくりと少しずつ口にする。
 
「アミアン歌え」
「はい」
 

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アミアンがリュートを弾きながら『吹けよ吹け冬の風よ (Blow, blow, thou winter wind)』(シェイクスピア作詞・加糖珈琲訳詞・ヒロシ作曲)を歌う。
 
アミアン(歌)「吹けよ吹け、冬の風よ。お前はそう冷酷じゃない。恩知らずの人間に比べたら。お前の牙はそう鋭くない。お前の息は荒々しいけど」
 
「ハイホー歌えハイホー。緑の柊(ひいらぎ)に。友情なんて見せかけで、愛はただの愚。ハイホー柊(ひいらぎ)よ。ここの生活は楽しい」
 
「凍えよ凍え。厳しい空よ。それは大して噛まない。忘れられた恩ほどは。お前は水を凍らせるけど、お前の針はそう尖ってない。友に忘れられることほどは」
 
「ハイホー歌えハイホー。緑の柊(ひいらぎ)に。友情なんて見せかけで、愛はただの愚。ハイホー柊(ひいらぎ)よ。ここの生活は楽しい」
 
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歌を聴きながら公爵は独白のようにオーランドを見て語る。
 
「しかし、君はあのローランドによく似ている。その老人にも記憶があるぞ。もし君があのローランドの息子であったら私は大歓迎だ。私はローランドを可愛がっていたジョージ・ドゥ・モンド公爵(*23) だよ。腹がふくれて落ち着いたら色々と積もる話もしたいものだな」
 

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(*23) 原文「I am the Duke that loved your Father」。ジョージは“公爵”を名乗っており、“前公爵”などとは言っていない。つまりジョージは弟による公爵位の簒奪を認めていない。
 

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